AVENGERS:Eyes of Nunnish   作:とむじん

17 / 30
納得がいかなくて書いたり消したりVtuberにハマったりしてたら2ヶ月も経ってた。時が経つのは早いなぁ。

いつもよりちょっとだけ長め。


GUARDIANS OF THE GALAXY:Problem Solver MITSUHA〔part4〕

《採掘コロニー・ノーウェア》

 

 

かつて宇宙に存在した巨大な生物の亡骸、その頭部をくり貫いて改造した採掘コロニー。素行の悪い者が多く集まり、武器や宇宙船の素材を採掘、販売を行っている場所。

 

船渠の端っこに宇宙船を停泊させ、中からは不機嫌そうな光波と、フロストノヴァが降りてくる。扉の内側からはユナとメイプルが手を振って見送りをしていた。

 

 

「ごめんねエレーナ、私とメイプルが着いて行けなくて。流石に指名手配されてる私達が行くのはね」

 

「……その着ぐるみを脱げば目立たないのでは?」

 

「これを脱ぐと役に立たないんだよ私。船で待機してるから、中からピーター・クィルを追い立ててくれる? 連絡をくれたらこう、挟み撃ちで捕まえるよ」

 

 

申し訳なさそうに話すユナに、了解したと返事をする。どのみち宇宙船を守るための待機係は必要であるため、誰かが残らなければならない。

 

それよりも懸念としては、まだ謝ることのできていない光波と行動しなければならないということ。気まずい空気に視線を逸らしそうになるフロストノヴァの胸に、ユナが軽く拳の甲をぶつけた。

 

 

「……頑張りなさいよ」

 

「ああ、ありがとう。……それじゃあ行ってくる」

 

「二人とも気をつけてねー!」

 

 

元気なメイプルの声に見送られ、フロストノヴァと光波は歩き始める。ノーウェアにおいて唯一指名手配を逃れていた光波は、ユナやメイプル達との関連性を疑われないよう、顔を隠すようにフードを深く被って進んで行く。その後ろをフロストノヴァが着いていく形だが、その間に会話はない。

 

その均衡を最初に破ったのは、フロストノヴァだった。雑踏の中、足を止めて言葉を紡ぐ。

 

 

「……光波、すまなかった」

 

 

はっきりとした言葉に、光波は足を止めて振り返る。フードから覗く表情は影に隠れてよく見えないが、目があるだろう場所を見つめながら話を続ける。

 

 

「お前達の事が嫌いだとか、そういうことじゃないんだ。私の復讐に巻き込みたくなくて、離れるべきだと早合点してしまった」

 

「…………」

 

「それ以外にも私には隠し事が、ある。離れるという選択肢が出たのはそれが理由で、その……わ、たしの体には──」

 

「ストップ。……いいよ、もう怒ってないからさ」

 

 

震える声で話すフロストノヴァの言葉に被せるよう、光波は声を出した。話すことに対してどこか怯えのような感情を含んで、顔を青くしている彼女が見ていられなかったためだ。

 

フロストノヴァに近付き、手を引いて周りに人がいない路地へと入る。壁を背に、フードを外して視線を合わせた。困ったように微笑んで、申し訳なさそうに眉を寄せる。

 

 

「……少し、寂しかっただけ。エレーナ、あの時凄く苦しそうな顔をしてて、ここで別れたら二度と会えないような気がしたから、怒ったフリをしただけなの」

 

「そう、なのか……?」

 

「こっちこそごめん。……言いたくないことを言わせるつもりはなかったんだ。その続きを今話す必要はないよ。エレーナが話したいと思った時で構わないし、話さなくったっていい。……その話の内容が理由で、別れることになったとしても、いい」

 

 

真っ直ぐに見てくる光波に、フロストノヴァは言葉が出なかった。自身の胸元に手を当てて服を握り締める光波に、彼女がどれだけ苦しい気持ちを抱えていたのかを理解する。

 

 

「けれど、もし別れの時が来たとしても、次に会う約束をしたいって思うから──私のお兄ちゃんみたいに、突然いなくなって欲しくない、から──だから、その時は“笑顔”で別れよう」

 

 

歯を見せるように、“にっ”と花のように笑う光波。フロストノヴァ自身がかつて経験した別れは『死別』だけで、見てきた表情は『怒り』や『悲しみ』ばかりだったため、笑顔で再会の約束をするという発想がなかった。目から鱗が落ちるような感覚に、フロストノヴァは目を見開く。

 

 

「それまでは絶対に逃がさないからね。ユナとメイプルにも手伝って貰うから!」

 

「──ああ、約束しよう。笑顔で、だな」

 

「うん! じゃあほら、仲直りの握手! さっさかピーター・クィルを捕まえてお金をゲットするぞ!」

 

 

すっかり元通りとなった光波に手を引かれ、雑踏の中を縫うように進んで行く。躊躇無く手をとった光波の背に、かつて自身の力を制御できずにいたフロストノヴァを抱き締めてくれた義父の優しい面影が重なって──けれどそれは、まばたきと共に霧散したのだった。

 

 

★☆★

 

 

《コレクターの拠点・出入口》

 

 

幾多の廃材を積み重ねて作られた拠点。その周囲にある監視システムをフロストノヴァが凍らせ、目隠しをしていく。光波の存在もコレクターにバレている可能性があるため、二人は隠密に徹しながら侵入口を探す。

 

 

「うーん、やっぱり抜け穴は無さそうかも」

 

「正面から入るしかないな」

 

「仕方ないかぁ。エレーナ、私が扉を開くからサポートをお願い」

 

「ああ、了解」

 

 

フロストノヴァがいつでもアーツを発動させられるように構えたことを確認してから、光波は取っ手を掴む。一呼吸置いて、素早く静かに扉を開いた──瞬間。

 

 

ドォンッ!!

 

 

「え──ぶッ!?」

 

「み、光波ー!!」

 

 

内側で膨張した巨大なパワーの波動と共に、入り口から紫色の光が漏れ出し、爆発音と共に衝撃で金属の扉が外へと吹っ飛んだ。光波もろとも。

 

顔面に分厚い金属の塊が直撃し、光波はそのまま意識を失った。勢いのままに倒れる光波を受け止めながら、氷で扉を受け流す。重い金属音を鳴り響かせながら、扉は側の建物へと直撃し、壁をぶち抜いてようやく止まる。

 

近くを歩いていた荒くれ者達が野次馬のように視線を向ける。そんな中、鼻血を垂れ流しながら目を回す光波を抱えたまま、軽く肩を揺する。

 

 

「お、おい大丈夫か!?」

 

「きゅぅ……」

 

「ああもう……ユナ、メイプル、聞こえるか! 光波が気を失って倒れた! 今から一度戻──」

 

 

幸い、命に別状はなさそうではあるが、完全に気を失ってしまっていた。通信機を使って宇宙船に残っているユナ達に連絡を取ろうとしたが──コレクターの拠点から飛び出してきたガモーラやピーター・クィル達の姿に、思わず言葉が詰まってしまう。

 

 

「────」

 

 

更に、小型の宇宙船が周囲を囲み始める。ゆっくりと降下し、目の前に一機、着陸した。積み込み口が開き、中から青い肌のクリー人、ロナンが降りてくる。大きな鎚のような武器を杖のように使って地面を突き鳴らす。しん、と空気が静まった中、ロナンは口を開く。

 

 

「よくも裏切ってくれたなガモーラ」

 

「どうしてあんたがここに……」

 

「おかしなことを言う。自分達の居場所を無差別に発信していたのはお前だろう? ……オーブを渡せ。命だけは奪わないでやろう」

 

「……ドラックスか! アイツ!」

 

 

手を差し出すロナン。その先には、ガモーラが持つ紫色の輝きを放つ銀色の球体、オーブ。コレクターの拠点の扉を吹き飛ばした光と同じ輝きが漏れ出している。類いまれなるアーツの使い手であるフロストノヴァは、その球体から溢れるパワーを感じ取り、冷や汗を流していた。

 

あれを目の前にした瞬間から、フロストノヴァの頭から復讐の文字はかき消えていた。星一つすら簡単に破壊できるほどのパワー。今すぐこのコロニーを離れなければ、大切な人達がまた死んでしまう。そんな予感に脳内で警鐘が鳴り続けていて──。

 

 

「──凍り付け!」

 

 

気が付けば、体が勝手に動いていた。踏み出した爪先から発生した冷気が、ガモーラとロナンの間に巨大な氷壁を構築する。特にロナンへは念入りに、瓦礫を巻き込んで手足を氷で固定した。

 

突然の現象に驚くガモーラとロナン。驚愕の表情でフロストノヴァへと視線を向ける。一度相対しているガモーラは、何故お前がここにと言わんばかりだ。

 

──ああ、くそ。何をしているんだ私は!

 

心の中で一人ごちる。まるでガモーラを守るように氷壁を構築してしまった。これではザンダーでの行動と矛盾する。けれど、それが間違った行動であるとも思えなかった。

 

ロナンのことは知っている。その悪名はフロストノヴァが住んでいた惑星にも聞こえたほど。オーブとやらを渡せば星の一つや二つ、簡単に滅ぼされてしまうだろう。業腹だが、少なくとも今この瞬間において、正しい行いをしているのはガモーラ達の方であった──で、あるのなら。

 

 

「……おい、私が時間を稼ぐからさっさとここから逃げろ。ついでにピーター・クィル、そいつを死んでも守れ。絶対にその球体を渡すなよ」

 

「お前、あの時の……!」

 

「あんた、なんで……」

 

「言っている場合か。何かは知らないが、その球体から途方もないパワーを感じる。あのロナンに渡れば、星一つ簡単に滅びるだろうな。最初の犠牲はザンダーあたりか?」

 

 

反対側で、ロナンが力任せに手足の氷を砕いたのだろう。振動と共に、氷壁に大きく罅が入っていく。時間稼ぎもそう長くは持たない。

 

鋭い目つきでガモーラを睨み付けると、心の中の黒いモノを吐き出すように告げる。

 

 

「言っておくが、今でもお前を殺したいさ。憎くて仕方がない。──けれど、そんなことよりも、今は大切なモノを取り零したくない、それだけだ。分かったなら早く行け!」

 

「……ッ」

 

「ちょ、待てってガモーラ!」

 

「おいクィル! ああクソッ、グルート! お前は宇宙船を守ってろ!」

 

「私はグルート」

 

 

フロストノヴァの言葉に反応し、ガモーラは飛び出すように駆け出した。一人用の採掘用のマイニング・ポッドに駆け込むと、そのままエンジンを吹かして飛行を開始する。敵の小型宇宙船も追いかけるように飛び出した。慌てたクィルとロケットも近くのポッドに乗り込み、後を追う。

 

 

「……ユナ、メイプル、ガモーラ達の援護を頼む。光波は物陰に隠したから無事なはずだ」

 

『クリーの宇宙船が見えたから、なんとなく状況は分かるよ。それにしても、あいつらロナンに追われてたんだ。しかもオーブ……噂でしか知らないけど、本当にあったんだ』

 

「ロナンの足止めは私がしよう。オーブとやらを渡すわけにはいかない」

 

『無理はしないでね』

 

「ああ、光波と約束したからな」

 

 

──再会の約束をせずに居なくなることはない。

 

氷壁が大きな音を立てて砕ける。その奥からは、衣服の裾が凍ったロナンがフロストノヴァを睨み付けていた。

 

 

「……ガモーラの仲間か? 邪魔立てするならその命をもって償ってもらうぞ」

 

「クリー人のロナン・ジ・アキューザー。知っているぞ、サノスに尻尾を振る狐だろう? あいにくと、オーブとやらをお前に渡すわけにはいかなくてな」

 

「……貴様」

 

 

嘘だ。ロナンのことなど、噂程度しか知らない。直接本人を見たのも、声を聞いたのも初めてだ。

 

だが挑発の効果はあったようで、肌を裂くような怒りが空気を震わせ、ロナンの殺気が鋭くなる。通信機を使ってなにやら部下に命令を残すと、見下ろすように氷のような視線を向ける。

 

 

「ネビュラ、ガモーラを追え──獣風情が、相手の実力も分からないらしい」

 

「試してみるか?」

 

「──殺す」

 

 

手のひらを上に向け、親指以外の指を前後に動かす。余裕綽々な雰囲気でわざと大袈裟に煽ると、ロナンは大槌を構え、ゆっくりと歩き出した。

 

 

「──見つけたぞロナン!!」

 

 

その時、予想外の出来事が起こる。建物の壁を突き破るように禿頭の男が飛び出してきたのだ。灰色の肌に、身体中に赤い紋様を刻んでいる恰幅の良い男。前腕と同じ長さのナイフを構えて、怒りの表情でロナンを睨んでいた。

 

 

「妻と娘の敵! 心臓にこの刃を突き立ててやる!」

 

「誰だお前は、邪魔をするな」

 

「ドラックスだ! 破壊者の名にかけて、お前を殺す!」

 

 

ドラックス……先ほど、ガモーラが悪態を吐いていた時に出た名前だ。ロナン達を呼び寄せた張本人だろう。聞く限り、復讐のために周りの迷惑を省みずに行ったのだと考えられる。……ザンダーでの自分自身もこう見えていたのかと思い、フロストノヴァは途端に頬が熱くなる。

 

けれど、その気持ちが分かるのも事実。それに、ヘイトが分散して時間が稼ぎやすくなるのは都合がいい。あの様子では、どうせこちらの言葉など聞かないだろう。ドラックスには悪いが、彼を前衛にして後衛から動きを止めることを優先させてもらう。

 

 

「……頼むぞ。ユナ、メイプル」

 

 

★☆★

 

 

ノーウェア内を縦横無尽に駆ける複数の宇宙船。逃走するガモーラが乗るマイニング・ポッドを、ロナンの部下が小型宇宙船を使って追いかけている。

 

その中腹にはガモーラと同じポッドに乗ったクィルとロケットが陣取り、頑丈な機体で体当たりを行って後ろから小型宇宙船を撃墜していく。

 

そして最後方からは、フロストノヴァから連絡を受けたユナの運転する宇宙船がガモーラを追う。唯一の装備である機銃の照準を敵の小型宇宙船へ向け、エンジンを撃ち抜くことで的確に落としていく。

 

 

『わ゛ーー!! 酔っちゃうよ落ちちゃうよーー!!』

 

「ごめんメイプル我慢して──防御、上!」

 

『か、【カバームーブ】! 【カバー】!』

 

 

ユナの乗る宇宙船の外側には、ロープで落ちないように繋がれたメイプルが目を回しながら外壁に掴まっていた。大盾を構えて、小型宇宙船からの攻撃を全て受け切る。

 

上下感覚が分からなくなるほどに動き回る宇宙船についていけている──訳ではなく、修得したスキルで無理矢理動いて防御しているだけではあるが、宇宙船には掠り傷すらついていない。けれど、ノーウェアの狭い歓楽街を上下左右に駆け巡る中、あちこちから飛んでくる攻撃を動き回って防ぐのは非常に辛い。地球で経験した車酔いなんて可愛いもので、メイプルは既に吐き気を堪えてグロッキーだ。その上……。

 

 

「ガモーラ! ピーター・クィル! 後、アライグマ! もうちょっと広いところに出てくれない!? 援護し辛いんだけど!?」

 

『誰がアライグマだコラァ! その宇宙船バラして売り払うぞ!』

 

『先に後ろのヤツらをどうにかしてくれる!? このポッド、スピードが遅すぎて撒けないのよ!』

 

『なんで俺だけフルネーム?』

 

「ああ! もう! めんどくさい!」

 

 

ウサ耳メカニック謹製の通信機で彼らの回線に無理矢理割り込んでいるが、先程からずっとこの調子。個々の我が強すぎてまるで話が進まない。

 

──そもそもユナ自身、あまり会話が得意な方ではない。両親に見捨てられ、祖父に育てられた経験のある彼女にとって、孤児院の大人を除き、基本的に大人は信用できない存在だった。光波に誘われて宇宙に出た後も、光波、メイプル、フロストノヴァ以外は同年代か幼い子供と話すくらいで、大人と話すことはほとんど無い。

 

つまり、彼女もまた我の強い女なのだ。状況からユナ自身が話さなければならないため仕方なく会話をしているだけで、そうでなければ積極的に言葉を交わすことすらしないだろう。

 

 

「メイプル! ちょっと我慢してね!」

 

『え゛っ、ちょ、あ゛──!!』

 

 

ユナが操縦桿を激しく動かす。宇宙船が旋回し、人の少ない裏路地へと突入した。同時にロープで繋がれたメイプルが振り子のように振り回され、悲鳴と共に壁や天井に叩き付けられる。ダメージは一切無いが、ピンボールのようにぶつかった壁が代わりに砕けていく。

 

ユナの目的は先回りをすること。狭い場所でひたすら追いかけっこをしても埒が明かないと、狭い通路を進んでいく。

 

 

「──ここッ!」

 

 

何度か角を曲がった先で、宇宙船は通路から飛び出した。目の前には先頭を飛ぶガモーラと、それを追いかける小型宇宙船の数々。狙いを定め、機銃を掃射する。金属の破砕音とともに小型宇宙船が大きく数を減らしていく。

 

──しかし、それをモノともせずに別の小型宇宙船がガモーラへと突き進む。中に乗っているのは、青い肌のルフォモイド人。体のほとんどを機械で構成された彼女、ネビュラは機銃の弾幕を避けきると、ユナを無視してガモーラへとレーザーキャノンを発射する。

 

 

『オーブを渡しな、ガモーラ!』

 

『ぐ……っ!?』

 

『半数はあの邪魔な宇宙船を撃ち落とせ!』

 

「こ、んのッ……! メイプル!!」

 

『うっ、ぷ……か、【カバームーブ】、【カバー】!』

 

 

ガモーラの乗るポッドをかするようにレーザーが通り過ぎ、内部を揺らす。慌てて舵を切るが、向かう先へとレーザーキャノンが連射されるため、網に追い込まれる魚のようにコロニーの外へと誘導されていく。

 

 

「えぇい、邪魔!」

 

 

ユナ達が乗る宇宙船へ敵の小型宇宙船が殺到する。メイプルの防御に助けられながら、船体を翻す。一機一機はそう強くもないが、小型なため機動力が高く、なにより数が多い。建物に隠れながら反撃するが、時間がかかりすぎる。ガモーラ達と完全に引き離されてしまった。

 

 

『あ、おいガモーラ戻れ! そのポッドは採掘用で宇宙航行はできない! 狙い撃ちにされるぞ!』

 

 

クィルの声がスピーカーから響く。ユナは視線を向けると、ネビュラに追い込まれたガモーラはポッドで宇宙へと逃げていた。意図して逃げているわけではなく、ネビュラ率いるクリーの小型宇宙船に囲まれ、進行方向を誘導されている。

 

名前の通り、採掘用ポッドはあくまでコロニー内で素材の採掘に使うものだ。非常に頑丈でパワーもあり、岩盤の崩落程度はものともしないが、エンジンの構造は宇宙空間での航行を想定していない。案の定、出力が低下し、そのまま航行不能になってしまう。あれではただのスペースデブリと変わらない。

 

クィル、ロケットに続いて、小型宇宙船を撃退し終えたユナは急いでガモーラの救出へと向かう。しかし、先行した二人が乗っているのも同じ採掘用のポッドである以上、ノーウェアから離れれば行動不動になってしまう。

 

 

『待っ──』

 

『死ね』

 

 

先行したクィル達の目の前で、ガモーラの乗るポッドにネビュラが放ったレーザーキャノンが直撃する。攻撃に耐えきれず、全体に亀裂が入り、砕けた機体からガモーラが宇宙空間へと放り出された。

 

体内から酸素が霧散し、体の表面が凍り付いていく。力を失ったガモーラの手からオーブが滑り落ち、なけなしの力を振るって手を伸ばすも、ネビュラによってあっさりと回収されてしまった。

 

 

『──オーブの回収が完了した。全隊、撤退しろ』

 

 

一瞬、ガモーラと目線が交差するも、ネビュラは冷めた目をそらして部下へと指示を出した。ノーウェアに集まっていたクリーの小型宇宙船が次々と浮かび上がり、ネビュラを先頭にワープゲートを潜っていく。

 

残されたのは、砕けたポッドの機体と、宙に浮かぶガモーラの姿だけ。薄れる意識の中、ガモーラの瞳に映ったのは、少し離れた場所にある採掘用ポッドから飛び出したピーター・クィルの姿だった。

 

 

──────

────

──

 

 

差し向けられたロナンの部下達を蹴散らして、ようやく追い付いたかと思えば、宇宙空間に投げ出されたガモーラと、彼女を救おうと宇宙空間に飛び出してマスクの酸素供給機能を彼女に使うクィルの姿。マスクも一つしか無いため、ガモーラに押し付けた彼も意識を失っている。

 

二人を回収するべくユナは宇宙船を側へ寄せてハッチを開いた。宇宙服を着たメイプルが外へ飛び出し、意識を失っている二人を抱えると、腰に結んだワイヤーを巻き取りながら宇宙船へと戻る。ハッチを閉めてから空間を酸素で満たすと、突然取り込んだ酸素に意識を失っていたクィルが咳き込んだ。

 

 

「よい……しょ、っと! ぅっぷ……ねぇユナ、私の扱いひどすぎない? 体が傷つかなくても、心は傷つくんだよ?」

 

『いいからほら、手を動かして。二人を寝かせたらノーウェアに戻るよ』

 

「もうちょっと優しくしてもバチは当たらないと思うなぁ」

 

 

文句を言いながらも二人を寝かせてから、メイプルは椅子に座って宇宙服を脱ぎ捨て、一息つく。ユナの運転する宇宙船に括り付けられて振り回されたために気持ち悪さが残っているが、仮にも女の子としてのプライドで無理矢理吐き気を抑え込んだ。

 

 

「う、うぅ……」

 

「あ、起きた? 大丈夫? 気分が悪いとか、痛いところとかある?」

 

「っ! ガモーラは!?」

 

「クィルさんの隣で寝てるよ」

 

 

目覚めたクィルは、慌てた様子で周囲を見渡した。メイプルの言葉に反応し、隣に寝かされて呼吸をしているガモーラを見つけると、安心したかのように大きく息を吐く。

 

 

「……あぁ、宇宙船の周りで跳ねてた嬢ちゃんか」

 

「メイプルだよ、よろしくね」

 

「あれで怪我一つ見当たらないって、どんな体してんだ?」

 

「ふっふん、頑丈さには自信があるからね!」

 

「いや、別に褒めたわけじゃないんだが……それより、ここは何処だ? 気を失ってからどれくらい経った?」

 

「うーん、まだ数分くらいかな。ここは私達の宇宙船で、これからノーウェアに戻るところだけど……」

 

 

メイプルの言葉に、頭が痛いとばかりにクィルは自分の顔に手を当てた。言葉にならない声が口から漏れ、背中を丸めて大きくうつむく。突然の行動に、メイプルは不思議そうに首を傾げた。

 

 

「どうしたの?」

 

「先に謝っておく、悪かった」

 

「え、何──」

 

 

メイプルが問いを返すよりも前に、運転席からユナが走って戻ってきた。同時に、窓からライトの人工的な明かりが差し込む。メイプルが視線を外に向けると、複数の巨大な宇宙船がこちらを囲んでいた。ガモーラ助けに採掘用ポッドから出る直前、クィルが呼び出したラヴェジャーズの宇宙船だ。

 

 

「ちょっと! なんでラヴェジャーズがここにいるの!」

 

「あー、他に助かる方法が思いつかったんだよ。俺ってあいつらに指名手配されてるし、呼んだらすぐに来ると思ったんだが……」

 

「それで殺されたら意味ないでしょうが! というか、このタイミングだと私達まで仲間だと思われるでしょ!?」

 

 

ガクンとユナ達が乗る宇宙船が揺れた。接舷したラヴェジャーズの宇宙船から荒くれものが下船し、こちらの宇宙船の扉を無理矢理こじ開けようとしているのか、金属が叩きつける音が船内に響き渡る。

 

 

「悪かったって、後は俺が何とかするさ。考えもあるし」

 

「信用、できるかぁ──!!」

 

 

怒りに満ちたユナの叫び声とともに、ついに扉がこじ開けられた。

 

 

★☆★

 

 

《ノーウェア・コレクター拠点前戦闘跡》

 

 

──フロストノヴァとドラックス。二人は間違いなく、ロナンを相手に時間を稼ぐことができていた。

 

フロストノヴァが手足を凍らせ、ドラックスが攻撃をする。ドラックスへの攻撃は氷壁で防御。種族特有の膂力で砕かれるが、一瞬は防ぐことができるため、回避へ意識を割くことができていた──のだが。

 

ドラックスの攻撃やフロストノヴァの氷結では、ロナンにまるでダメージを与えることができなかった。千日手……いや、ロナンの攻撃がドラックスに当たり始めたことから、膠着状態から劣勢へと状況が変化する。

 

 

「いい加減──しつこいぞ!!」

 

「ぐッ──」

 

 

ロナンの拳が顔面へと直撃し、ドラックスは後方へと殴り飛ばされた。頭部から地面へと落下し、そのまま気を失ってしまう。更に追撃を試みようとするロナンに対し、フロストノヴァは氷塊を飛ばそうと力を込め──体内から弾けるような激痛に、悲鳴を上げて崩れ落ちた。

 

 

「ガ──ァァァアアアッ!?」

 

 

襟から覗く鎖骨に見える黒い結晶──源石(オリジニウム)。アーツの多用により、体表の源石(オリジニウム)が拡大。体表を這うだけでなく、体内を喰い破り始めたのだ。

 

ロナンは一瞥することもなくドラックスの元へ近寄ると、襟首を掴んで持ち上げ、黄色く濁った薬品に満ちた水槽へと放り込まれた。気を失ったドラックスは、そのまま底へと沈んでいく。

 

砕けた巨大な氷の欠片と倒壊した建物に囲まれて、ロナンは地面に踞るフロストノヴァを冷たく見下ろしていた。耳に付けた通信機にネビュラから連絡が入ったことを確認し、頬についた傷を擦りながら、鼻を鳴らす。

 

 

「フン、ここまでか。私に傷を付けたことは褒めてやる……が、所詮はイキがる雑魚ばかりだったな」

 

「ハッ……ハッ……ぅ、ゲホッ……」

 

「オーブは手に入れた、お前たちにはもう用はない。そのまま虫のように野垂れ死ね」

 

「ク、ソ……ッ……」

 

 

ロナンはそう吐き捨てると小型宇宙船に乗り込み、その場から離れていく。残されたフロストノヴァは、体内を侵食するよう源石(オリジニウム)の痛みに耐えながら、その背中を睨み付ける。

 

けれど、それも長くは続かない。朦朧とする意識の中、ユナ達に連絡を取ろうと端末を取り出したところで、フロストノヴァは力尽き、意識を失った。

 

 

「……私は、グルート」

 

 

そんな二人と隠されていた光波を、クリーの雑兵を片付け終えたグルートが回収する。端末を拾い、クィルが所有する宇宙船に乗り込むと、相棒であるロケットの元へと急ぐのだった。




【ユナ(MCU)】
・幼い頃に出会った熊に貰った着ぐるみを装備している。
・熊の加護が宿っており、成長に合わせてサイズが変わったり、常に清潔な状態を保っていたりと便利。便利過ぎてお風呂に入る以外は常に着用しているため、同期には彼女のことを熊の妖精と勘違いしている子も多い。

【メイプル(MCU)】
・自身の成長過程・行程がスキルツリーとして視覚化できる能力持ち。トラブルメーカー。
・様々なトラブルに巻き込まれては怪我をして、という過程を繰り返した結果、防御力特化型のフィジカルモンスターと化した。

【源石(MCU)】
・鉱石病の元となる、黒く半透明の結晶。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。