AVENGERS:Eyes of Nunnish 作:とむじん
※誤字報告ありがとうございます!
《惑星ザンダー衛星軌道上》
「ロナン様、まもなく惑星ザンダーの大気圏へ入ります。向こう側からもこちらを視認しているようで、ノバ軍警察も集まりつつあるようですが……」
「構わん、羽虫なぞ踏み潰してしまえ」
「はっ!」
その命令に、報告に来た部下は操縦室へと連絡を入れる。わずかな間の後、巨大宇宙戦艦ダーク・アスターはゆっくりと大気圏へ突入し始めた。空気との摩擦熱により、装甲が赤く熱されながら降下する。
ロナンは格下を見下すように瞳を細め、視線を落とした。手に持つコズミ・ロッドの先端に埋め込まれたオーブから流れる無限のパワーに、口角を上げ──同時に、サノスの言葉が脳裏に過る。
『お前にそれは使いこなせん』
「……サノスめ、余程この力を恐れていると見える。私を侮ったことを後悔するがいい」
耳に残るその言葉を振り払う。所詮、あのサノスも羽虫と何も変わらないのだと結論付け、コズミ・ロッドの下先で床を叩いた。
まずは、あの目障りな惑星を滅ぼす。そして次は奴を──。と、そこまで巡らせていた考えを中断するように、慌てた様子の部下が駆け寄ってくる。
「ろ、ロナン様! 前方より飛来する小型宇宙船が!」
「何を騒いでいる、撃ち落とせばいいだろう」
「そ、それが……こちらの砲撃を
「なんだと? 映像を映し出せ!」
ホログラムによる映像が空中に映し出される。明らかに戦闘向けではない小型の宇宙船。その外壁には大楯を持つ少女が振り落とされないようにロープで吊るされ、あり得ない軌道を描きながら砲撃を全て防ぎきっている。
「なんだ、あれは」
「わ、分かりません……! しかも、その後方にはラヴェジャーズ所有のものと思われる小型宇宙船の姿も複数あり──」
「何故あのゴミ共がこの星にいる!」
予想外の事態に立ち上がり、怒りの声をあげるロナン。だが、その反応が対応までの判断を遅らせた。
小型宇宙船は躊躇なく、加速した状態でダーク・アスターの正面下部へ直撃し、内部へと到達。船体を大きく揺らし、ロナンは耐えきれずに床に膝をついた。
★☆★
《数刻前》
光波が持ち込んだホワイトボードに突入ルートを書き記している中、クィルが発言する。指先が示すのは、ダーク・アスターへ向けられた一本の突入航路。クィルの宇宙船【ミラノ号】に乗船し、砲撃を回避または防御するというもの。
「なぁ、班を二つに分けた方が突入の成功確率は上がると思うんだが。集中砲火されたら流石に機体が耐えられないぞ」
「確かに、普通なら分けた方がいいかもね。けどまぁ、メイプルがいるから砲撃で落とされることはないよ。例え、ラヴェジャーズの砲撃を受けても、メイプルには傷痕一つ付けられない。要塞を相手取るのと変わらないからね」
「えへへへへ、それほどでも」
光波は自信を持って断言する。だらしない顔で照れるメイプル。事実、先のノーウェアでは人間ピンボールされても目を回す程度だった。けれど、見た目はどう見てもティーンの少女にしか見えないため、どうも信じられなかったクィルは首を傾げる。
「……本当かぁ?」
「試してみようか」
「は?」
クィルの疑問に対し、光波はおもむろに銃を取り出すと、躊躇なくメイプルの額に鉛弾をぶちこんだ。衝撃で椅子から後方へと倒れるメイプルに、クィル達は思わず立ち上がる。ガモーラは愛剣を抜き放つと、先端を光波へと突きつけた。
「……アンタ、仲間なんじゃなかったの!?」
「待って待って! ほら、メイプルを見てよ!」
メイプルを指差しながら慌てて弁明する光波。ガモーラ達は警戒したまま視線をメイプルへ向ける。そこには、自分の額を撫でながら起き上がる無傷のメイプルの姿。
「びっくりした! 何するの光波!」
「いや、これが一番分かりやすいかなって」
「先に言ってくれてもいいでしょ!」
「ごめんて」
何事もなくたちあがり、光波に詰め寄るメイプル。足元にはひしゃげた銃弾が転がり、直撃したはずの額には痕すら見当たらない。規格外の頑丈さに、言葉を失う面々。少なくとも、言うだけの根拠はあるようだ。
「というわけで、不意打ちで頭部に銃弾を当てても無傷なのは証拠にならない?」
「……なる。わかった、嬢ちゃんの案でいこう。戦力を分散させずに済むなら、それに越した事はないし」
「となると、後は突入後の行動ね。ダーク・アスターにはサカアラン兵の軍勢が乗っているから──」
得意気な光波に同意し、作戦を立て始めるクィルとガモーラ。色々と言いたいことはあったが、時間が無いこともあり、とりあえずは考えないことにした。
後方では、ロケットが狂人を見る目を光波に向けながら、ドン引きした様子で言葉を溢した。
「……アイツ狂ってるな」
「ウチの狂人筆頭だよ。もう慣れたけど」
「
ユナが同意し、グルートが頷く。フロストノヴァは体力回復のため別室で休んでおり、ドラックスはホワイトボードに集中しているため、この場にそれを否定する人はいなかった。
★☆★
《そして、今》
衝撃と共に着陸したミラノ号から、クィルとガモーラが真っ先に飛び出した。通路から湧き出すサカアラン兵を迎撃しながらクィルは後方にいるメンバーに指示を出す。
「本当に突入できるとは思わなかったわ!」
「俺もだ! よし、次の行動に移るぞ! 各自、作戦通りに散開! 確実にロナンを叩くぞ!」
「クィル! オーブの件、忘れんじゃねぇぞ!」
「分かってるよヨンドゥ! さっさと行け!」
「エレーナ! ……無理しないでよね!」
「ユナこそ、無事を祈る」
「皆、気をつけてね!」
メイプルの言葉を最後に、ユナとロケット、グルートは左舷、メイプルとヨンドゥは右舷へと走り出す。中央へ集まってくるサカアラン兵達の足止めだ。
残ったクィル、ガモーラ、ドラックス、フロストノヴァは上部への階段を駆け上がる。到着した場所には、操縦室を含む重要な部屋へと繋がる複数の通路。ガモーラは正面の通路を指す。
「ロナンのいる操縦室はこの先の広間の奥よ。ただ、入口は厚い隔壁で塞がれているわ。私が道を開くから、皆は先に──」
──行って、と言葉を続ける前に、左の扉から青い人型が飛び出す。地球の警棒に似た武器を二本携え、先頭を進んでいたガモーラへ押し込むように振り下ろす。
「──行かせる訳がないでしょう!」
「ネ──ビュラ……ッ!?」
大きく体重をかけられた攻撃によって、ガモーラは別の通路へと押し込まれる。何度も振るわれる攻撃を捌きながら後退するガモーラに加勢をするため、クィルが愛用のブラスターを構えて叫ぶ
「ガモーラ!」
「私はいいから、先に進んでクィル! 扉は私が必ず──」
「黙りな!」
「ぐッ……!」
ネビュラがガモーラの腹部を蹴り飛ばし、二人は通路の奥へと姿を消した。クィルは追いかけようと踏み出すが、その肩をフロストノヴァが掴んで止める。
「……先に進むぞクィル、私達がするべきことはロナンを倒すことだろう」
「くそッ……」
「奴は私を殺しかけた女だぞ、信じてやれ」
「この女の言う通りだクィル、ガモーラは強い女だ」
「分かってる……行くぞ」
ドラックスの言葉にクィルはブラスターを下ろし、ガモーラが押し込まれた通路を一瞥すると、二人を伴って指し示された通路へと駆け出した。
★☆★
《同時刻:惑星ザンダー、地上付近》
遥か上空に見え始めたダーク・アスター。それを監視しながら、ラヴェジャーズ所属のクラグリンは通信機越しに聞こえてくる光波の声に顔をしかめながら、返答をする。
「クラグリン、ダーク・アスターの様子はどう?」
『ゆっくり降下してるが、まだ大気圏外だ。ネクロクラフトも出ていない。……それより、本当に大丈夫なんだろうな』
「ノバ軍のこと? 大丈夫、少なくともこの状況で銃口がこちらに向くことは無いって」
『……お頭を信用してるから話に乗ったが、俺はまだお前のことを信用していないからな』
「分かってる、行動で示すよ」
肩を竦めながら返事をする光波。突入しているヨンドゥの代理としてラヴェジャーズの指揮を預かっているのだが、協力者とはいえ仲間ですらない、ましてや小娘の下に就くことが気に食わないのだろう。ヨンドゥが離れてからはずっとこんな感じだった。
そんな時、通信が光波へと届く。通信番号はザンダーのもの。ようやく来たと、光波は口角を上げながら通信機のスイッチを入れる。響いてきたのは、渋い男性の声。
『──私はノバ軍隊長のガーサン・サアルだ、聞こえているか』
「もしもし、聞こえているよ」
『もしもし……?』
地球の癖でうっかり口にした言葉に反応され、光波は返答に困って開いた口から言葉にならない声が漏れる。妙な間の後、思考が戻った光波は返答をする。
「気にしないで、方言みたいなものだから。それより、メッセージは見てくれたみたいだね」
『ああ、見た。空の戦艦を見ればロナンの件は事実だと分かる。だが──お前達犯罪者のことは信用できない』
「それ、本日二度目。あと、私は賠償金払ったでしょ」
『やらかしたことは事実だろう。だから、信用させてみろ』
「……了解。それじゃ、作戦があるから聞いてくれる? ノバ軍の協力が必要不可欠なんだ」
『構わないが、本部と通信を共有させてもらうぞ──よし、それで作戦とは?』
「──ダーク・アスターを墜とす。ノバ軍にはスター・ブラスターの連結機能を使って、落下の軌道を海へ誘導してほしい」
★☆★
《ダーク・アスター、右舷》
「【パラライズシャウト】!」
空間を駆けるようにメイプルから電撃が走り、武器を構えて迫るサカアラン兵へと命中する。筋肉が痙攣し、膝から崩れ落ちる彼らの心臓を寸分違わない精度で【ヤカの矢】が貫き、ヨンドゥの手元へと戻った瞬間に倒れ伏した。
「ハハッ! 便利な道具を持ってんだな。どこで手に入れたんだ?」
「教えないよ! おじさん、絶対悪いことに使うでしょ?」
「そりゃそうだ。俺は悪党だからな」
「じゃあダメ!」
「ケチくせぇこと言うなよ」
黒い盾でサカアラン兵の攻撃を受け流しながら、メイプルは返事をする。ギラギラと光る目は、宝を前にした盗人そのものだ。
「ん? おじさんストップ!」
不意にメイプルが足を止め、ヨンドゥを手で制する。視線を通路の奥に向けると、金属が軋むような音が響いてきた。盾と矢を構え、意識を集中させて警戒する二人。
暗闇の奥から現れたのは、地面を砕きながら暴れまわる巨大なモンスターだった。
「GAAAAAAAA!!」
大きな口と複数の触手。まるでタコの頭の先端に化け物の顔が張り付いたような生き物が迫ってきた。見たこともない生物に、メイプルは目を見開く。
「な、何あれ!?」
「アビリスクだ! クソッ、逃げるぞ嬢ちゃん! アイツの体皮は頑丈過ぎて、オレの矢でも貫けねぇ。恐らくだが、電撃も吸収しちまうぞ!」
物理が効かず、電撃無効の能力を持つモンスター。振り下ろされる触手を盾で防ぎながら、今の自分ができることを考える。
【パラライズシャウト】は多分吸収される。【カバー】と【カバームーブ】は防御用で、今の【悪食】はここまで巨大なモンスターを食べきることはできない。防御に特化しているメイプルには、攻撃の手数が足りない。
と、そこで一つ思い出す。被害が大きすぎて、使えていなかった力。多分、使うと後でユナに怒られるだろうが、今はそんなことを言っている場合ではない。
「おじさん、アビリスクって毒は効く?」
「はぁ? 口があるなら物理的な食事もしてるだろうし、体内に吸収させることはできるだろうが……。あの巨体だ、生半可な量じゃ意味はないぞ」
「効くかもしれないなら、試してみる!」
「何を──」
短刀を上へと向け、メイプルは叫ぶ。
「【
瞬間、巨大な三つ首の毒の竜が短刀の先端から飛び出した。大きな咆哮を上げ、アビリスクの頭部を包み込むように濁流が降下する。
纏わりつく毒にアビリスクは暴れまわる。壁や床に触手を叩き付けてもがくが、しばらくすると力尽きたように動かなくなった。
唖然とするヨンドゥに気付かないまま、メイプルは短刀をしまった。毒の竜なんてあまりに恐ろしい光景。だが、ヨンドゥの脳裏に浮かぶのは『その力を手に入れたら』というような、ラヴェジャーズらしい感想だった。
「よし、効いた! これで最後みたいだし、皆のところへ戻るよおじさん!」
無邪気に喜ぶメイプルに、ヨンドゥは改めて声をかける。
「……なぁ嬢ちゃん、ウチに来ねぇか?」
「行かない!」
「そんな固いこと言わずによ」
「やだー!」
★☆★
《ダーク・アスター、左舷》
「私は、グルート!」
グルートは腕を一気に成長させ、通路から湧くサカアラン兵の腹部を串刺しにすると、それを大きく振り回して周囲を囲む兵士ごとなぎ払って行く。
その後方ではユナが周囲を警戒しつつ、ロケットは破壊した壁面から引っ張り出したケーブルへと端末を繋ぎ、ダーク・アスター内のネットワークへアクセスを試みていた。
「いいぞグルート! そのまま時間を稼いどけ!」
「ロケット、操作完了までどの程度かかる?」
「舵を海へ切るだけでいいんだろ? 邪魔さえ入らなければ、5分以内に切り替えてやらぁ」
「頼むよ──って、何あれ」
左舷の奥、隔壁が上がり、奥から巨大なモンスター──アビリスクが出現する。
「アビリスクだ、クソッ! グルートじゃ手に負えねぇぞ!」
「なら交代する──グルート!」
「
グルートと立ち位置を交代、グルートはロケットの護衛、ユナが前衛となってアビリスクへと相対する。
空気を震わす咆哮。触手のような手足をバタつかせ、アビリスクは大口を開けて突撃をしてくる。
「【くま──パンチ】!」
側面に回り込み、壁へと押し込むように拳を振るう。
しかし、無傷。派手に吹っ飛んだものの、皮膚が頑丈過ぎて決定打にならない。
むしろ、怒らせてしまったことで触手が暴れまわり、周囲の被害が大きくなる。
「思ったよりも硬いな……!」
迫り来るアビリスクの触手をロケットへ近付かせないよう、何度も拳を振るって弾くが、元気なまま。
「めんどくさい! 内側から焼いてやる!」
「それは無理だ! そいつの内臓は体皮と同じくらいには頑丈だからな!」
「はぁ!? ああもう、だったら──ゴリ押す!」
アビリスクの顎を撃ち抜くアッパーカット! かなりの重量があるはずの生き物が、宙に浮く。更に体重を乗せた拳を胴体に叩き付け、動けないよう壁面に押し付けた。
「【くま──ラッシュ】!!」
隙だらけになった体へ、拳を連打。壁と拳に挟まれながら、アビリスクは呻く。打撃自体はあまり効いていない。しかし、押し付けられている壁はダメージを蓄積しており、アビリスクへ拳が叩き付けられる度に大きくひび割れていく。
「カッ、飛べぇ──!!」
トドメとばかりに大きく振りかぶり、ユナの拳が直撃すると同時に壁面が砕け散る。外へ放り出されたアビリスクは勢いのまま、咆哮を上げながら海へと落下していく。
「はぁ、はぁ……やっと終わった……」
「私はグルート」
「あ~、なんて?」
「すげぇってさ。その細い体のどこにそんな力があるんだ?」
「……この服のお陰だよ。それより、アクセスはできた?」
「焦んなって、もう少しだ」
ロケットは最後のスイッチを押す。装置が起動し、青色の光が点滅した。ロケットはそれを隠すように、壊した壁の破片を積み上げる。
「よし、完了だ。直に航路がバレないようズレていくようにした。さっさとズラかるぞ」
「私はグルート」
クィル達と合流すべく、ロケットとグルートは駆け足で来た道を戻る。ユナも後方を警戒しながら、その後ろを追った。
★☆★
《ダーク・アスター、隔壁操作室》
地表からの援護射撃によって大きく穴が開いた部屋。ガモーラとネビュラは互いの武器をぶつけ合う。ネビュラの黒い瞳が、ガモーラへ憎悪を突き立てる。
「父を裏切って、自分が殺し損ねた女と行動するなんてね……!」
「くっ……!」
「父の命令を遂行できていなかったわけだ、ガモーラ!」
ネビュラの言葉が突き刺さる。サノスの命令云々ではなく、フロストノヴァと行動していることについてだ。散々サノスにガモーラと比較されてきたネビュラにとって、彼女の失敗はさぞ嬉しいのだろう。
「正義の味方のつもり? 父と共に散々虐殺の限りを尽くしたお前が、そちら側に立てるとでも思っているのか!?」
否定はしない。サノスに逆らえなかったとはいえ、殺しに手を染めたのはガモーラだ。多くの人を殺した。罪はガモーラ自身にあるし、それを否定するつもりはない。
惑星に降り立つ度に、そこに住まう人口の半数を殺戮する。最低最悪ではあるが、少なくともその場においてサノスは宣言をもって手を下していた。大義を掲げ、その手を血で濡らしていた。
しかし、インフィニティ・ストーンを使用するなら話は別だ。コレクターが語っていたデシメーションによる人口の削減は、選択の余地が無く、人を強制的に削除する。逃げることすら許されない。被害を受ける側にとって抗うことすらできない、人を消すだけの作業に成り下がる。
ガモーラにとって、許容できなかったのはそれだ。
……三流の言い訳でしかない。殺戮を繰り返してきたガモーラが言える義理ではない。けれど、ザンダーでフロストノヴァが生きている姿を見た時、安堵した──して、しまったのだ。
だから、私は──。
「──私は今、この惑星を救うためにここにいるのよ」
「ふざ──けるなァ!!」
激昂。ネビュラの声が悲鳴のように響き渡る。
「私の体はお前に負ける度に機械に置き換えられてきた……! 既に中身は全くの別物で、ルフォモイドの皮を被っただけのバケモノだ! なのに、どうしてお前だけ……!」
「ネビュラ、私は──!」
「黙れ! 何もかもを持っているくせに、あの苦痛を知らないくせに……私を、見下すな──」
ネビュラのショックスタッフが振り下ろされる。対してガモーラは、愛剣であるゴッドスレイヤーを地面へと放り投げた。もう、姉妹で武器を向け合いたくはなかったのだ。
けれど、それは悪手だった。ネビュラからしてみれば、自分がナメられているんだと認識してしまってもおかしくはない。……といよりも、事実、ネビュラは怒り心頭だ。
「お前はァ!!」
ガモーラは振り下ろされたショックスタッフを正面から掴む。放出された電撃が体内を駆け巡り、苦痛にあえぐガモーラを押し潰そうとネビュラは体重をかけた。
その一瞬の隙、わずかなタイミングをガモーラは見逃さなかった。ネビュラの体重を利用し、彼女の足を払って投げ飛ばす。
地面にバウンドするネビュラ。体が宙に浮き、装甲に開いた穴から転げ落ちる。幸い、飛び出していた鉄筋に手が引っ掛かるが、体は宙へと吊るされた。
「お願いネビュラ、私達に手を貸して……!」
「……断る、誰がお前の手など取るか」
「ネビュラ!」
ガモーラの伸ばした手は届かなかった。ネビュラは地上へと落下し、その体はすぐに機体の陰へと隠れ、見えなくなった。
わずかな逡巡。ガモーラは何も掴めなかった手のひらを握り込み、隔壁の操作盤へと視線を向けた。
★☆★
《ダーク・アスター、操縦室前広間》
「っ! 扉が開いたぞ!」
分厚い隔壁が開き、内部が見えた。管制室内、その中央にロナンは立っていた。入り口に背中を向け、しかしその鋭い眼孔をこちらに向けている。
「よく来た、薄汚い羽虫ども──」
「氷れ──!!」
会話をするつもりはない。悠長に会話を行おうとして油断したロナンな手足を、フロストノヴァは氷で固定する。膂力で砕かれるだろうが、一瞬でも動きを止められるのはノーウェアで確認済みだ。
「今だ、撃てッ!」
クィルの合図と共に、ドラックスが抱えていた大砲ハドロン・エンフォーサーから砲弾が放たれた。製作者であるロケット曰く『月を壊す』とのこと。
ロナンはそれを避けられず、その大言壮語に劣らない衝撃と共に、爆音と爆炎が視界を覆った。