AVENGERS:Eyes of Nunnish   作:とむじん

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映画チェンソーマンのレゼが可愛すぎて好きになっちまうよ! こんなの勘違いするに決まってるだろ!


AGE OF ULTRON:Eyes of Nunnish〔part4〕

カラカラカラと、歯車が回る。

ギリギリギリと、錆びた歯車が回る。

 

惑星は滅びた。

劇的な何かは無く、ゆっくりと命の灯火を失った。

 

だが、人はそれを良しとしなかった。

歯車の機構に置き換え、無理矢理存続させた。

 

天才時計技師『Y』。

 

彼によって大地は巨大な歯車の区画(グリッド)に分けられ、円筒鉄道(シリンダ・トレイン)によって世界を繋ぐ。惑星は空洞となり、人類は再び繁栄を得ることができるようになった。

 

──たった一人で再構築した惑星に、穴が無いわけが無いというのに。

 

人工的に造られた惑星は経年劣化によって、後世の技師の想定を上回る速さで故障を始めた。それを直す技師はいるものの、とても手が足りない。

 

歯車が止まり、影響が他の区画へ波及する。

──その前に、区画をパージする。

 

何も知らない民間人が地の底へと落ちていく。

──土地は有限だ。これ以上は受け入れられない。

 

それを許さず、立ち上がる者がいた。

──人も、資材も、技術も、何もかもが足りない。

 

犠牲を強いてきたこの惑星には、もう何も残されていなかった。

 

 

「この惑星は滅びる、延命する術はない」

 

 

──全身義体の元軍人(ヴァイネイ・ハルター)が断言する。誰よりも大人だからこそ、誰よりも現実が見えていた彼は、タバコを片手にただ空を見上げてそう呟いた。

 

 

「私の技術を貴女に託すわ。お願い……いつかの未来で、この惑星を直してちょうだい」

 

 

──第1級の天才時計技師(マリー・ベル・ブレゲ)が私の手を握り、真っ直ぐ目を合わせる。プライドが高く、自らの手で惑星を直すことを目標としていた彼女が、訪れるかも分からない未来を見据えて、私に願いを託した。

 

 

「本当はずっと君といたかったけど、それは無理そうだちくしょう。……ごめんな、また君を一人にしてしまう」

 

「最後まで支えてくれてありがとう、リューズ」

 

 

──私の最愛のご主人(見浦ナオト)さま。私を案じ、愛を与えてくれた大切な人。その才覚を活かして奔走し、最後まで足掻き続けた勇気ある人(マイマスター)

 

けれど、既に彼らは遠い過去の記憶の片隅へ。

 

──ご主人(ナオト)さま。

どうして、私を連れていって下さらなかったのですか。

 

──ご主人(ナオト)さま。

私は、貴方と一緒であれば何もいらなかったのに。

 

──ご主人(ナオト)、さま。

どうして──私だけ、置いていったのですか……。

 

手を伸ばすも、何も掴めず、ただ空を切るだけ。

私は一人、機能を停止して暗い地表で眠りにつく。

 

歯車の惑星は、再び死の惑星へと回帰した。

 

 

★☆★

 

《アメリカ、ミズーリ州》

 

「──」

 

 

明るい光を感知し、リューズは目を開く。視界に入るのは白い天井と蛍光灯。どうやらベッドの上に寝かされているようで、柔らかい感触が背部を包み込んでいる。

 

上体を起こす。わずかに開かれた窓から空気が入り込み、カーテンが揺れている。外からは子供の声や木を割るような音が響いているが、それ以外の喧騒は感じられない。

 

どこか都市から離れた場所だろうかと考えていると、部屋の扉がゆっくりと開かれた。警戒しながら視線を向けると、見たことのある姿が現れる。

 

 

「あ、起きてる。部長ー、リューズが起きたよ」

 

「エイミさま……? ここは……」

 

「弓の人のお家だってさ」

 

 

登頂部に浮かぶ三つの円でできた光輪(ヘイロー)に、足首まである長い桃色の髪を三つ編みでまとめ、宇宙服のような特注の体温冷却スーツに身を包んだ少女──和泉元エイミ。

 

普段、教会ではなく庭園でシステム開発を行っているエイミがこの場にいる理由が思い浮かばず首を傾げる。が、彼女が部長と呼んだ人を思い出し、納得する。

 

 

「──おはようございます、リューズ。また無茶をしましたね?」

 

「ヒマリさま……あぁ、そういうことですか。貴女が私を再起動したのですね」

 

「理解が速くて助かります。ついでに腕も綺麗に直しておきましたので、感謝してくださいね」

 

 

静穏性の高い車椅子に乗って入室してきたのは、白黒の花のような光輪(ヘイロー)と腰まであるふんわりとした白い髪、尖った耳が特徴的な少女──明星ヒマリ。

 

エイミと共に(リューズ)を発見し、再起動させた天才。その才覚はナオトさまにも勝るとも劣らない。技術面に関してはそれなりだが、未知に対する柔軟な思考能力は誰よりも突出している庭園屈指の才媛だ。

 

 

「全く、虚数運動機関(イマジナリー・ギア)が停止するなんてどんな攻撃をされたんですか。直すの大変なんですよ、これ。まぁ、この超天才清楚系病弱美少女である私にかかれば容易いことですが」

 

「それについては心から感謝します。……お礼として助言させていただきますが、未だに続けているその恥ずかしい自己紹介は止めたほうがよろしいかと」

 

「あら、自他共に周知の事実であることを言ったまでですよ。リューズこそ、毒舌フィルター(それ)、まだ着けたままなんですか?」

 

以前の主(ナオトさま)に好評でしたので」

 

「変態じゃないですか、以前の主(ナオトさま)

 

 

まあ、それは否定できない。自動人形(オートマタ)の体内にある歯車の音を聴いて興奮する特殊性癖の持ち主なだけあって、それ以外も普通の人とはズレていた。

 

呆れた表情を浮かべたヒマリは、車椅子の向きを変えながら釘を刺す。

 

 

「次に無茶をして停止した時は、エンジニア部に修理を依頼しますからね」

 

「え」

 

「さ、ついてきて下さい。下の階に皆さんが待っていますので。エイミも行きますよ」

 

「はーい」

 

「お、お待ちを。実力はあるのに発想が明後日の方向に飛んでいく変態方に依頼をするのはご勘弁いただきたく。体内にBluetoothを埋め込まれるなんて辱しめを受けたくはありません。どうか、どうか」

 

 

先を進むヒマリとエイミの後ろを、パタパタと追いかけるリューズ。先程までの冷静な印象とは打って変わって焦った表情を浮かべており、その姿はどこからどう見ても普通の少女であった。

 

 

★☆★

 

「さて、対策会議を始めましょうか」

 

「どうして君が仕切っているんだ……?」

 

 

部屋の目立つ位置に車椅子を移動させ、仕切り始めたヒマリにスタークは困惑する。バートンの自宅に退避し、数時間後に現れた彼女たちがエネの話していた少女。

 

明星ヒマリと和泉元エイミ。そう名乗った彼女達は早々にリューズの眠る部屋へと入り、これまで修理を行っていたため、詳しいことは分からない。

 

そんなスタークの疑問に答えるように、黒色の肌に眼帯をつけた男が、椅子の背もたれに体重を預けながら口を開く。

 

 

「今この場で適任なのは彼女だからな。君に劣らず頭が回る」

 

「君もだフューリー、何故教会のメンバーと行動している。S.H.I.E.L.D.に代わる新しい組織でも作るつもりか?」

 

「いや、そんなつもりはない。俺はただ彼女達の保護者をしているだけのオヤジだよ。……スターク、今の君は随分と荒れているようだからな、むしろ知らない人間の方が物事を受け入れやすいだろう?」

 

 

フューリーはちらりとロジャースへと視線を向け、スタークへと戻す。図星を突かれたスタークは、反論することなく溜め息を吐いて、ヒマリへと話の続けるよう促した。

 

 

「では、改めて自己紹介をさせていただきます。キヴォトス総合学園システム開発課、特異現象捜査部所属の清楚な高嶺の花こと明星ヒマリと申します」

 

「同じく特異現象捜査部、和泉元エイミ。よろしく」

 

「また濃いのが来たな……」

 

 

バートンが苦笑いを浮かべる。映画で見たエルフのような耳と穏やかな見た目とは裏腹に口から出てきたのはナルシスト発言。嫌味に聞こえないのは、有無を言わせない見た目の良さのお陰だろう。隣の宇宙服じみたを着ている少女が霞むほど……いや、あれはあれで気になるな。

 

一方ロマノフは、聞き慣れない学校の名前に眉を寄せた。主要な国の教育機関については頭に入っているはず。だが、フューリーが話し合いで手綱を渡すほどの人物が所属するキヴォトスという名の教育機関にはまるで心当たりはない。

 

 

「キヴォトス……聞いたことがないわね」

 

「まだまだ無名の学校ですから無理もないかと。今は様々な企業と提携を始めたところなので、その内お耳に届くと思います。落ち着いた頃にぜひともお越しください、歓迎しますよ」

 

「部長、話がズレてる」

 

「おっと」

 

 

エイミに指摘され、ヒマリは流暢に回る舌を止めた。軽く呼吸を整えてから話を続ける。

 

 

「こほんっ。では早速本題に入りましょう。ウルトロンについて、エネから頂いた情報を元にある程度絞り込んでみました」

 

 

手元のタブレットを操作し、同学園のヴェリタス所属の小鈎ハレからレンタルした球体ドローン『アテナ2号』を浮遊させ、スクリーンに見立てた壁へと情報を投影した。

 

映し出されたのはヒマリが纏めたウルトロンの各情報。主要な箇所は赤丸で囲まれており、見やすくなっている。

 

 

「私はウルトロンと直接話した訳ではありませんので、個人のプロファイリングは割愛します。特定しなければならないのは、『目的』『本拠地』『現在位置』の3つ」

 

「……目的はウルトロンの言葉どおり『世界平和』で間違いはないだろう。その為なら手段を問わないように見える」

 

「僕も同意見だ。人工知能である以上、当初僕達が入力した指令に背くことはできない。ウルトロンであろうと例外はないはずだ。……世界平和が達成されるという明確なビジョンのもと、僕達と敵対しているということになるが」

 

 

ロジャース、バナーが各々の意見を述べる。他のメンバーへと視線を向けても、それを否定するような意見は出てこない。

 

そんな中、リューズは思い出すように口元に人差し指の第二関節を当てる。

 

 

「……ウルトロンは人の進化をうながすと語っていました。『人は守られるだけでは成長しない。この惑星から悲劇を無くすため、人類に試練を与える』とも」

 

「ふむ……人工知能は効率を優先します。その話が本当であれば、時間をかけず進化をうながすために、かなり強引な手段を取りそうですね。恐竜を絶滅させたように隕石でも落とすつもりでしょうか」

 

「それは……可能なのか?」

 

 

ヒマリの考えにロジャースは疑問を呈する。話のスケールが大きくなり過ぎていて、まるで映画の話を聞いているようだ。

 

ヒマリはたたん、とタブレットを操作して投影する情報を追加する。映し出された画像は、ウルトロンの背面にある飛行ユニット。特殊な画像編集により、出力されているエネルギーの流れが分かりやすく着色されている。

 

 

「ウルトロンは反重力ユニットで飛行していました。今回奪ったヴィブラニウムを利用するなら、今のお話も決して不可能では無いでしょう。例えば、切り取った大地を浮かべて成層圏から落下させる、とか」

 

「……考えたくないが可能だろう。設備と資材さえあればという前提が必要だが」

 

 

ヒマリの言葉をバナーが肯定したことで、ロジャースは息を飲んだ。あり得ないと考えていた話が、信憑性を増して現実の問題として降りかかってきたからだ。

 

バナーの言葉のとおりであれば高度な設備と潤沢な資材が必要になるという話だが、ヒマリの様子を見るに何か心当たりがありそうだ。

 

 

「ペンタゴンやネクサス等、ウルトロンが本拠地にしそうな場所はいくつか思い付きますが、物理的な機体を使用している以上、少し人目につき過ぎますね。となると──」

 

「──ソコヴィアか。ヒドラの施設跡が残っている上、大量の資材も回収前のはずだ」

 

 

ヒマリの言葉をスタークが続ける。ヒドラを抑えて数日、ウルトロンの件もありその施設跡はほぼそのままの状態で残されている。一から造り上げるよりも、それを利用する方が都合が良い。

 

 

「ええ、その可能性が高いかと。とはいえ、先述の二ヶ所も可能性としては捨てきれません。反重力による隕石落としはあくまで予想ですし、むしろ核兵器の発射コードの方がウルトロンにとっては入手しやすいでしょう」

 

「であれば、ネクサスは僕が探ろう。ちょっとした伝手があるから、発射コードを確認しておく」

 

「ペンタゴンは私が担当しよう。手は足りないが、ローズやウィルソンにも声をかけてみるさ」

 

 

スタークとフューリーがそれぞれ手を挙げる。これまで積み重ねたものを考えれば、役割としては適任だろう。異を唱える者はいなかった。

 

 

「ソコヴィアは僕が行こう。潜入任務の経験は多い方だし──」

 

「──いえ、ソコヴィアには私が行くわ」

 

 

ロジャースの言葉を遮りロマノフが立候補した。視線が集まる。それが当たり前だと口元を一文字に引いた彼女は、膝の上でぐっと拳に力を入れる。

 

 

「一人じゃ危険過ぎる!」

 

 

否を突きつけたのはバナーだ。勢いのままに椅子から立ち上がるが、しかしロマノフはそれに対して首を横に振る。

 

 

「ウルトロンの位置を特定した時に、直接止める役目が必要でしょう。この中で一番戦闘能力の低くて、かつ誰よりも潜入任務をこなしてきた私が行くのが賢明よ」

 

「だがっ……!」

 

 

焦ったように声を荒げるバナーの言葉を遮るように、ヒマリが手の平をロマノフとの間にかざす。これ以上の言い争いは不毛にしかならない。何か言いたいことがあったようだが、頭に血が上っていることを自覚したバナーはゆっくりと閉口して椅子へ座り直す。

 

 

「いえ、ロマノフさんの意見は尤もです。……しかし、流石に一人では行かせられません。リスクはなるべく減らしましょう。せめてクリスを連れていってください」

 

「構わないわ。彼女の能力は知っているもの」

 

「エイミ、そろそろいい時間なので起こしてきてください」

 

「わかった、行ってくるね」

 

「バナーさんも、これでよろしいでしょうか」

 

「イングリスくんが、ついているなら……」

 

 

不安はあるが、ここが妥協点であるとバナーも理解しているのか、納得していないながらも苦い顔で了承した。何か特別な感情を抱いているのだろうとヒマリは察したものの、なにも言わずに口をつぐんだ。

 

エイミが部屋を出たことを確認してから、ヒマリは言葉を続ける。

 

 

「さて、最後にウルトロンの現在位置についてですが、目下エネが捜索中です」

 

「手がかりがあるんだな」

 

 

バートンが尋ねる。先の南アフリカでウルトロンを見つけられたのは、スタークがヴィブラニウムの件を覚えていたから。そのチャンスを逃した今、アベンジャーズ側に打てる手はほぼない状態だ。

 

 

「以前ニューヨークで使われたテッセラクトと今回盗まれたセプターからは同質のエネルギー波を観測していますので、もう一度セプターが利用されれば発生源の特定は容易いでしょう」

 

「この状況で動けないのはキツいな」

 

「──浅上の力は使えないのか?」

 

 

割り込むように、ヒマリへとスタークが疑問を投げ掛ける。

 

 

「明確に言質を取った訳じゃあないが──未来の観測、あるいは遠見のようなことができると僕は考えている。荒唐無稽だが、『歪曲の魔眼』なんてものがあるからな」

 

「それは僕も同意見だ。ヒマリ、藤乃に力を借りることはできるか?」

 

 

ロジャースが同調し、確認をする。ヒマリは思ってもみなかった質問に、きょとんとした表情で目を見開いた。

 

 

「……もしかして、聞いていないのですか?」

 

「……? なんのことだ」

 

 

ロジャースの困惑した反応に、ヒマリは右手を額に当てた。困ったような、ともすれば呆れたような表情を浮かべているヒマリに、二人は顔を見合わせる。

 

 

「はぁぁ……全くあの人は……。いえ、彼女が話していないのであれば、私から伝えることはできません。一つだけ言えることは、あれはそんなに便利なものではない、ということくらいです」

 

「そうか……いや、すまない。確認をしただけなんだ」

 

「構いませんよ。これについては話していない藤乃が悪いので、むしろ謝るべきはこちらです。ごめんなさい」

 

 

申し訳なさそうに謝るヒマリに、それ以上追及することは憚られた。とはいえ、ウルトロンの所在に関して振り出しに戻ったことで、微妙な時間ができてしまった。

 

 

「エネから天才だと聞いている君に、聞きたいことがある」

 

「ええ、キヴォトスが誇る超天才病弱美少女ハッカーこと、この私がお伺いしましょう、スタークさん」

 

「……その自己紹介はどうにかならないのか?」

 

 

呆れたように目を細めてヒマリへ視線を向けるスターク。一拍の間を空け、問いかける。

 

 

「聞きたいのは一つだ。君は、ウルトロンという平和維持システムについてどう思う」

 

「平和維持……なるほど、それが当初の目的だったのですね。世界中へアーマーを配置し、宇宙からの侵略に備えると」

 

 

彼女がどこまで情報を得ているかは不明だが、当初の目的までは知らなかったようだ。ただ、ウルトロン、平和維持、スタークの問いかけと、些細な符号からその発想に至れるところから、ヒマリが天才だというエネの言葉は事実であったことをスタークは認識した。

 

 

「そうだ」

 

「決して悪いものではないかと。範囲を地球外まで拡大した監視カメラのようなものでしょう。法に則った上で、警察のような活動ができるのであればなおよしです」

 

 

ヒマリの瞳がスタークと交差する。淡いすみれ色にも似た色素の薄い網膜に光が反射し、先程までと違ってどこか鋭い印象を持たせている。

 

ウルトロン計画に否定的なロジャースが何か言いたそうではあったが、ロマノフに止められて口を閉ざす。今この瞬間はスタークとヒマリが議論を交わす場となっていた。

 

 

「ただ──安易に未知の力へと手を出したのは失敗だったと思います。システムへ組み込む前に、セプターの解析を終わらせるべきでした」

 

「……この惑星は無防備だ。時間ばかりかけている間に、またニューヨークのようなことが起こるかもしれない。僕が見たワームホールの先にはおびただしい数の宇宙船が見えた。あれが攻めてきたら、今度こそ確実に滅ぼされるだろうね」

 

「天才は貴方だけではありません。時間が無いのであれば地球上のあらゆる天才に情報を共有し、手分けをして解析をしたらよいのです。同じ惑星に暮らしている以上、他人事ではありませんから。私も手伝いますし」

 

「悪用する者がいたらどうする。ヒドラのような組織に情報が流れれば、今度こそ取り返しがつかなくなるぞ」

 

「物事は良い方向へ進めるには、まず人を信じることが大切だと私は思いますよ」

 

 

意見の応酬。徐々に熱くなる場に、周囲のメンバーは口を挟むことができないでいた。一度クールダウンするために二人は軽く深呼吸を行い、続いてヒマリが口を開いた。

 

 

「……貴方は私の知り合いにそっくりですね」

 

「知り合い……?」

 

「自分の正しさを盲信し、ひたすら合理を求め、誰にも相談せず、助けも求めず、その他を切り捨てて歩みを進める自分勝手な女(調月リオ)のことです。最近はマシになりましたが……」

 

 

苦々しい表情でヒマリは呟く。口にした女性と何かしらの因縁があるのだろうが、スタークには分からない。ただ、あまり良い感情を持っていないことだけは伝わってくる。

 

 

「いえ……そこまでとは言いませんし、そもそも私はあまり貴方のことを知っている訳ではありませんが、もう少し人の善性を信じてみてはいかがでしょう。そんな千束(ひと)に、貴方は出会っているはずです」

 

「それは──」

 

『──たっだいまー!!』

 

 

スタークが言葉を紡ごうと口を開いた瞬間、『アテナ2号』から飛び出すようにホログラムが投影された。青いジャージとスカートを着用した少女の姿、エネだ。

 

話が中断され、視線がエネへと向けられる。その妙な雰囲気にエネは困惑しながら首を傾げた。

 

 

『ウルトロンの居場所が分かったよ──って、あれ、お話し中だった? 出直した方がいい?』

 

「いえ、構いませんよ。クリスも起きてきたみたいですし」

 

「おはようございまーす」

 

『あ、おっはークリス! エイミもおひさ!』

 

「久しぶりー」

 

 

張り積めた空気が霧散する。空気を読まずに騒ぎ立てるエネのお陰か、マイペースにあくびをするクリスのお陰か、空気がふわりと軽くなった。

 

ここからまた重い話をしても仕方がないと考えたヒマリは、各端末を片付けながらエイミを手招きした。

 

 

「ではウルトロンが発見されたようなので、私たちはこれで失礼します。見た目どおり私は力仕事に向いていませんし、エイミも私の護衛をしてもらわないといけませんから」

 

「話を進めてくれて感謝する」

 

「ヒマリ、私をアベンジャーズタワーまで送ってくれ。ヒルにも協力を要請したい。バナーも一度戻るといい、あの魔女は君の天敵のようだからな」

 

「……分かった。皆、気をつけて」

 

「それでは行きましょうか」

 

 

エイミに車椅子を押され、部屋を出るフューリーとバナーの後ろをついていく。そこで思い出したかのようにエイミの手を叩いて停止すると、ロジャース達へと振り向いた。

 

 

「あぁロジャースさん。人手が足りないようですし、こちら側でも手が空いている方がいるか探しておきますね」

 

「重ね重ね助かる。世話になってばかりだな」

 

「気にされないでください。それでは失礼します」

 

 

ヒマリ、エイミが退出する。ふわふわと浮かびながら待機していたエネが投影されているデータを整理しながら、ロジャースへと視線を向けた。

 

 

『あ、お話は終わりました?』

 

「ああ、待たせてしまってすまない。それで、ウルトロンはどこに?」

 

 

ロジャースの質問に、エネは手元の写真データを拡大した。写っているのはとある建造物。それを見たことのあるスタークやロマノフは、思わず目を見開いた。

 

 

『韓国ソウルのユージン遺伝子研究所。おそらく目的はヘレン・チョ博士の人工皮膚細胞の技術です!』

 

 

★☆★

 

《韓国・ソウル、ユージン遺伝子研究所》

 

セプターによって洗脳したヘレン・チョ博士の手によって、ヴィブラニウムを核とした人工細胞が生成され、クレイドル内部で徐々に人型が構築されていく。

 

ウルトロンの新しい肉体だ。ただの金属の塊ではなく、頭部に埋め込んだセプターの石によって常にエネルギーを供給し続け、成長する体。完成さえしてしまえば、雷神やリューズなど敵ではない。

 

 

『この戦いが終わった後、貴方が勝利を手にしたなら提案を呑みましょう。ですが──私達が勝利した場合は、以降、私の指示に絶対服従をしてもらいます、ウルトロン(・・・・・)

 

 

南アフリカでのリューズの言葉を思い出す。勝てると確信している目で告げられたその言葉に、ウルトロンは怒りが湧いた。人間などに味方するロートルな機械に、腹立たしさを覚える。

 

何故かは分からない。だが、些細な問題だ。準備を進めてこちらが勝利を手に入れれば良い。新たな肉体に意識をインストールさせてしまえば、負けることはありえないのだから。

 

 

「“──勝負といこうか、リューズ”」




【明星ヒマリ(MCU)】
・出典『ブルーアーカイブ』
・主に科学で説明できない特殊な事象を観測・解析を行ったり、ヴェリタスのメンバーとシステム開発を行っている。
・調月リオと共に庭園の特殊なポジションに就いており、あらゆる場所を飛び回っているため留守にしていることが多い。リューズを発見したのもその一環によるもの。

【和泉元エイミ(MCU)】
・出典『ブルーアーカイブ』
・流石に庭園の外であの格好になるのは許されなかったので、上から宇宙服のような冷却スーツを着込んでいる。
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