AVENGERS:Eyes of Nunnish   作:とむじん

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Fate/strange Fake面白いので見て!
狂信者ちゃんやハンザ神父の顔が良いから見て!!

ぜひ!


Eyes of Nunnish:interlude〔4〕

◆1 人を学ぶ、星を学ぶ◆

 

「──ぅ、ぁ」

 

ぼんやりと意識が覚醒する。喉が揺れて呻くような声が口から漏れ、霞む視界が白い天井を捉える。体が重い。仰向けの体を捻るようにずらし、横向きに体位を変える。

 

「……ん…………いや、待て」

 

再び微睡みの中に意識を委ねようと瞳を閉じて──気が付いた。手のひらを体の下にあるベッドに押し付け、力を込めて上体を起こす。柔らかで沈むような感触(・・)が手足を刺激する。

 

手を視線の先にもってきて見れば、血管の浮き出た手の甲が目に入る。厚い爪、関節のしわ、まるで人間(・・)のようだ。

 

「私の機能は停止して……それ以前になんだこの体は。私の肉体は金属であったはずだ(・・・・・・・・・・・・・・)。何故、人のように肉で覆われている……?」

 

勢いに任せて立ち上がる。裸足だった足の裏には床に敷き詰められたナイロンカーペットの感触。重力に負けて揺れる衣服の感触。わずかに開いた窓から降り注ぐ太陽の暖かさ。風の冷たさ。街の喧騒。

 

これまで経験したことのない未知の感覚に、混乱が止まらない。顔を上げると、部屋の隅に置いてある姿見。吸い込まれるように近付くと──。

 

「は」

 

映し出されたのは成人に見える男性の姿。短く整えられた銀の髪、はっきりとした眉、赤い瞳。わずかに無精髭が生えている、中肉中背の米国人がそこにはあった。

 

ソコヴィアで電源が落ちた後、目を覚ましてみればこれだ。意味が分からない。だが、頬に触れた際のざらりとした髭の感触がエラーではないことを伝えてくる。

 

呆然と立ち尽くす……どれくらい経っただろうか。木製の扉が外からノックされ、乾いた音が室内に響く。返事をしようと考えるも、頭が働いていないため声が出ない。

 

「ウルトロンさま、起きて……起きてますね」

 

「リュー、ズ……?」

 

焦れたのか、返事を聞かずに誰かが部屋の中に入ってきた。白銀の髪、黄金の瞳。歯車を象った髪飾り。忘れるはずもない。彼女こそ、ソコヴィアで交戦していた自動人形(オートマタ)リューズその人だった。

 

 

「──つまり、私を構成しているデータを人工の人型(ヒトガタ)押し込んだ(インストールした)と」

 

室内に設置された小さな机を挟んで、顔を合わせるウルトロンとリューズ。背筋を伸ばして姿勢正しく椅子に座るリューズとは対照的に、ウルトロンは机に肘を付いて頭を抱え、肩幅と同程度に広げられた足は等間隔で床を叩いていた。

 

「はい。脳を除いて、髪、皮膚、爪、骨、内臓、その他の肉体的なパーツはほぼ人間と遜色はありません。視覚、聴覚、嗅覚、触覚、味覚も同じく。活動には睡眠が必要で、食事を取ることも可能。身体能力は一般的な成人男性並みとなります」

 

「通信機能は……」

 

「当然、取り付けてはいません。でないと貴方は逃げるでしょう? 記録媒体を脳に、入れ口の接合部は魔術を交えて固着してありますので、ケーブルを直結することも不可能です」

 

「……魔術だと?」

 

リューズの言葉に含まれた単語に反応する。歯車で構築された機械技術の塊である自動人形から、魔術という御伽噺の技術を使ったと聞かされれば目も丸くなる。

 

「そんなフィクションの産物が存在すると本気で言っているのか」

 

「ネットワークに落ちている情報が世界の全てではありません。……やはり貴方の世界は狭すぎます。一度、人として生きてもらう必要がありますね」

 

リューズは椅子から立ち上がると、ついてきてください、と一言ウルトロンに告げ、部屋から退出する。困惑しながらも後ろについていく。アパートの一室だったのだろうか。広めの通路を進み、エレベーターで下層に降りて自動ドアから外に出てみれば、目の前に見たことのない風景が飛び込んできた。

 

東京を想起させるビル郡の摩天楼。

真っ直ぐに舗装された幅の広い道路。

その先に見える巨大な城と、守るように囲う城壁。

 

ここまではいい、まだ理解はできる。

似たような都市は実際に存在しているからだ。

 

だが──だが、ウルトロンは目を剥いた。

 

世界を覆うように空へと張られた半透明な天幕(ドーム)。柔らかな太陽の暖かさを遮ることなく、地上に光を届けている。よくよく見てみれば、うっすらと魔方陣のような紋様が刻まれていることが分かる。

 

見上げてみれば、上空を飛行する巨大な影。御伽噺に出てくるような竜種(ドラゴン)の姿。大きな積み荷をぶら下げて、背中に乗る人間の指示する方向へと向かっている。

 

地上も同じく、道行く人々の髪や肌は色とりどり。猫耳、犬耳、エルフのように尖った耳。爬虫類のような鱗に覆われた尻尾。人体の半分が機械に覆われた者。中には動物が二足歩行をしているとしか思えない者もいる。

 

明らかに地球では考えられない場所だ。

 

「……どこだ、ここは」

 

「地球ですが……全く、目移りの激しい弟分ですね」

 

「私はお前の弟ではな──ッおい……!」

 

足を止めるウルトロンの腕を引いて、リューズは歩き出す。文句を垂れるが聞く耳を持たない。人混みを避けながらするすると歩道を進んでいく。

 

抵抗するよう腕に力を込めるも、まるで歯が立たない。以前の機体の時とは比べ物にならないほど貧弱な肉体になっている。身体能力が一般的な成人男性並みであると目覚めた部屋で聞かされていたことを思い出し、すぐに抵抗を諦めた。

 

そんなウルトロンの心境など露知らず、リューズは言い聞かせるように語る。

 

「──改めて言いますが、貴方にはしばらく人として生きてもらいます」

 

「……先ほども言っていたな」

 

「貴方はネットワークを通じて見た世界のみを判断材料として今回の騒動を起こしたようですが……正直なところ、その程度の情報で人を罰しようなどとは、片腹痛い、というやつです」

 

優しい声色で、しかしナイフよりも鋭くウルトロンの心を抉る言葉。返す言葉もなく口をつぐむ。

 

ソコヴィアで機能を停止する直前、彼自身が認識していたのだ。自分が見ていた人間は醜さの塊でしかなかったが、しかし本当にそれだけだったのかと。

 

「中身のまるでない……とは言いませんが、前提を大きく誤った演説のようなものかと。間違っているのに正しい(・・・・・・・・・・・)などと声高に叫んでも、理解を得られる訳がないでしょう?」

 

「……手厳しいな。だが、ああ……その通りなんだろう。私は人の醜さを知っているが、それはネットワークというフィルター越しに見たものだ。経験という意味では、私に積み重ねたものは無い。テレビやニュース、ネット記事の情報を鵜呑みにして憤る陰謀論者と何も変わらないのだろうよ」

 

自嘲するよう語る。ウルトロンは人の悪を排除しようと動き、ヴィジョンは人の善を守ろうと誓った。方向は違えどしていることは変わらない。ただ、記憶データを失おうとJ.A.R.V.I.S.として人に寄り添ってきたヴィジョンに敗北したのは因果なのだろうと今なら思う。

 

結局のところ、ウルトロンは人の全てを理解していた訳ではない。SNSに流れる個人の意見、ニュースキャスターの言葉、物事の一部を意図的に切り取った動画、主観混じりの記事。ネットワーク上にはそういった情報が多く、生まれたばかりのウルトロンはそれに影響されて偏った思考に陥った面が少なからずある。

 

「おや、自覚はあるのですね。それは重畳」

 

「言葉どおり身に染みたさ」

 

「なるほど──では、貴方には1から人について学んで頂きたいと思います。先ずは人間らしく労働のありがたみを知るところから始めましょう」

 

「──んん?」

 

リューズが足を止める。つられて視線を向けた先にはビルの一階にあるテナントを利用して整えられた店舗が一つ。大きなUの文字を横断するように『U BURGER(ユーバーガー)』と描かれた看板がかけられている。

 

「これから貴方には、このハンバーガーショップの店員として働いて貰います。目下の目標はこちらの用紙に記載してありますので頑張ってください」

 

そう言われて渡されたのは十枚程度の紙束。表紙を一枚めくってみると、箇条書きでまとめられた目標がずらりと記載されている。

 

【目標】

準備期間 ──週間

達成期間 ──ヶ月

売上金額 ──円

来客数 ──人

新メニュー開発 ──種

 ~略~

 

「まて、まてまてまて。とんだ無茶振りだ。調理どころか食事の経験すらない私にこれ(・・)を求めるのか」

 

「奥の金庫に開店用の支度金と、向こうひと月分の生活費を準備してあります。この周辺には数多くの飲食店が軒を連ねていますので、参考にしてみてください」

 

「おい、話を聞け」

 

ウルトロンの言葉に耳を貸さず、そのまま踵を返して歩き出すリューズ。声をかけるも止まることなく、しかし数mほど距離が開いたところで上半身が振り向く。

 

金色(こんじき)の瞳に、太陽の光が反射した。

 

「──精々、人として頑張ってください」

 

「────」

 

そう言い残し、リューズはその場を去っていく。彼女に伸ばした腕は行き場を失くし、ウルトロンは後ろ姿を見届けることしかできない。大きく溜め息を吐くと、引き留めるために伸ばしていた手でガシガシと頭を抑える。

 

「ああ、くそ……」

 

現状の理解もままならず、あれよあれよと労働を押し付けられている。何故私がこんなことを、という気持ちもあるが、あの瞳を見ると何も言えなかった。

 

けれど、新しい肉体とともに生きる機会を与えられたのは事実だ。見方によっては命の恩人とでも言えるのかも知れない。一度は終わった命なら、先達に倣うのも一興かと店内へ続く扉へと手をかけた。

 

「……とりあえず、チーズバーガーでも食べに行くか」

 

リューズの話どおりに店内へ入ると、金庫から生活費を取り出す。紙面に女性が描かれた見たことのない紙幣だったが、今さら気にするでもなく近場のショップへと繰り出すのだった。

 

 

 

 

 

◆2 従騎士のゆくえ◆

 

「クリスの、ばかぁ──!!」

 

少女の咆哮が孤児院中に轟いた。

 

聖ホロウ教会。孤児院の食堂にて、シルエットが丸っこい黒髪短髪、慎ましやかにスレンダーな少女、ラフィニア・ビルフォード──愛称ラニが叫ぶ。

 

「なんで何も言わずに宇宙に言っちゃったの! 私の従騎士だって言ってたのにー!」

 

「荒れてるねぇ、ラニ」

 

おやつのケーキを食べながら、亜麻色のポニーテールを揺らした少女、サリーが相づちを打つ。

 

今朝、幼馴染みで同室だったラフィニアと、イングリスと特に仲の良かったメンツが集められ、イングリスがハルクと共に宇宙へと旅立ったことを藤乃から告げられたらしい。

 

それからと言うもの、お昼からおやつ時間(午後3時)まで山盛りとなっているケーキをひたすら貪り、つい先ほど食べ終わった。近くにいた千束や蛍は見ているだけで胸焼けしたのか、ラフィニアが食べ始めて早々に席を外していた。

 

それでも怒りが収まらなかったのか、両腕を振り上げて心の内を吐露している。

 

「そんなに、そんなに面白そうなこと! ずるい! 私も混ぜてよ──!」

 

「ああ、そっち? てっきり寂しくて怒ってるのかと」

 

「それもあるんだけど! あるんだけどー!」

 

寂しさを上回るほどに憤っているようだ。まあ、親友がなんの相談もなくどっかに行った、なんて聞いたら私でも怒るだろうなとサリーは思う。

 

それはそれとして、食堂の外から何事かとチビッ子達が様子を窺っていることに気付いた方がいい。怖がってはいないようだけど、目を丸くして困惑してる上、あまり教育に良い場面ではない。

 

「落ち着きなよラニ、どこの星に行ったか分かんないんでしょ? 探す目星もついてないんじゃどうしようもないじゃん」

 

「そうだけど! そーうーだーけーどー! ……サリーだってメイプルのこと羨ましいって言ってたじゃない」

 

「そりゃあまーね。宇宙に冒険って憧れるし」

 

拗ねたように話すラフィニア。確かにサリーは都合がつかなかったことで同乗はできなかった。同室で親友のメイプルが光波達と宇宙に行くと聞いた時は羨ましいと思ったものだ。

 

既に地球に戻ってきていて、再会の挨拶も果たした。今は宇宙で出会ったエレーナさんの治療に付き添って庭園に行っているが、時折戻ってきては一緒にランチやゲームをしたりしている。

 

だから、まぁそこまで気にしてはいなかったのだけど。……ほんのりと、行ってみたいなぁという気持ちはサリーにも残っている。

 

「──そうだ、こうなったら私も宇宙に行く!」

 

「唐突だねぇ」

 

「サリーも一緒に行くよ! 藤乃ー!」

 

「……えっ、は──ちょ、ちょっと!?」

 

ラフィニアに腕を掴まれ、食堂から引っ張り出された。食べかけだったケーキが遠ざかっていく。庭園の人気店で話題の、メイプルに買ってきて貰ったプレミアロールケーキ。

 

「私のケーキぃ──!!」

 

ラニに続いて、サリーの声が食堂へと響いた。

 

 

「──構いませんよ」

 

教会の事務室で作業をしていた藤乃に事情を説明すると、二つ返事で了承を得られた。拍子抜けだったが、口論になったりしないならいいかと余計な言葉を飲み込む。なお、サリーはロールケーキをちゃんと食べてきた。美味しかった。

 

藤乃の返事にラフィニアは満面の笑みを浮かべ、両腕を振り上げて喜ぶ。ぴょんぴょこと跳び跳ねると、部屋を飛び出しそうな勢いだったのでサリーは襟首を掴んで止めた。

 

「やったー! 束さんに宇宙船貰ってくる!」

 

「待て待て。……藤乃、いいの?」

 

「ええ、一つ条件はありますが」

 

なるほど、とサリーは納得した。二人がこの場所へ来ることを知っていて、先んじて用意していたらしい。引き出しから一枚の用紙を手渡される。

 

ギルドから正式に発行されている調査依頼だ。

 

「こちらの依頼を受けて頂けるなら、許可しましょう。庭園の防衛局からの依頼で、ギルドを通すので報酬も出ますよ」

 

「え、やる!」

 

「即断即決すぎるよラニ」

 

何よりも宇宙へ行くことが優先されているラフィニアを横目に、用紙へと目を走らせる。ギルドと防衛局の公印が押されており、インクから偽造防止用の特殊な魔力も感じ取れる。

 

機密なのか、あまり詳細な内容は記載されていない上、危険度も不明。本来であれば記載されているはずの脅威度も空欄となっている。

 

「サリーはどうします?」

 

「うーん……」

 

直近の予定はない。依頼内容に不明点が多いことは気がかりではあるが、そういう依頼の経験が無いわけでもない。準備は必要だけれど、その程度だ。

 

「受けるよ。ラニだけじゃ心配だし、宇宙にも行ってみたかったし」

 

「そうですか。では、こちらを貸し出しますので、防衛局で受付を済ませてきてください」

 

ラフィニアに渡されたのは銀色の指輪。ÄRM(アーム)と呼ばれる魔道具の一種だ。庭園との行き来でよく利用している転移型で、指輪が一度行った場所ならどこへでも移動できる優れもの。

 

「ありがとう藤乃、ささっと行ってくる」

 

「お夕飯までには戻ってきてくださいね」

 

「はーい、行ってきまーす!」

 

元気の良い返事をし、ラフィニアは右手の人差し指にÄRMを装備し、大きく掲げた。星のような輝きが事務室内を満たしていく。

 

「ディメンションÄRM(アーム)【アンダータ】、私達を『庭園』へ!」

 

その掛け声と共に光が収束し、ラフィニアとサリーの体を包んで消えた。残された藤乃は椅子に座り直すと、再び作業を再開するのだった。

 

 

「聖ホロウ教会所属のビルフォード様とサリー様ですね。浅上様から伺っております。担当者をお呼びしますので、こちらの来客札を持って第三応接室でお待ちください」

 

──と、防衛局の受付で案内され、応接室で待つこと五分。外からノックされた扉に返事をすると、青い長髪の中性的な人物が入室してきた。

 

「失礼するよ」

 

「て、テンペストさん!?」

 

その姿を見てサリーは驚く。リムル・テンペスト。防衛局で局長を勤める重鎮。アメリカを例にするなら国防総省のトップと言っても過言ではない人物だ。一般人のサリーからすればまず出会うことのない存在に、緊張で頬に冷や汗が伝う。

 

なお、ラフィニアはよく分かっていない。顔は見たことあるんだけど誰だったかなと首を傾げながらも、サリーの緊張が伝染して体が硬くなってしまっている。

 

「あー、あまり畏まらないでくれ。俺のことはリムルでいい。敬語も不要だよ。藤乃経由の依頼を受けてくれたらしいじゃないか、むしろお礼を言うのはこっちの方だ」

 

からからと笑うリムル。そこにイメージしていたお役所特有のピリピリとした緊張感は無く、気さくなお兄さんといった立ち居振舞いに、少しだけ二人の緊張がほぐれた。

 

「──それじゃ、詳細を話してもいいかな?」

 

「は、はい」

 

「お、お願いします」

 

背筋を伸ばす二人の返事を聞いて、応接室にある機器の電源をつけるリムル。手元の端末を操作すると、土に植えられた植物のような物体が投影された。

 

青い光を放つ球体を覆うように赤と緑の網のような葉が伸びており、どこか神秘的な雰囲気を醸し出している。

 

「先日、魔術研究所のアニムスフィアさんとエルメロイⅡ世さんから、地球の地脈の流れがある時期から異常な動きをしていると報告があってね。現地に行ってみたらこの植物──便宜上『蒼の種子』と呼ぼうか──が人為的に植えられているのを発見した。

 一見するとただの植物にしか見えないんだけど、同研究所のエヴァンジェリンさん曰く、光と似た物質で構成された細胞の塊らしい。しかも、周囲の物体を取り込んで一体化し、成長する特性を持っている。伸びた根が触れた影響で地脈が乱れたそうなんだ」

 

投影された『蒼の種子』から根が伸び始める。地中の植物や昆虫、動物といった生き物に触れた瞬間、絡めとるように取り込まれていく姿は食虫植物を思わせる。

 

説明用に視覚化された地脈は『蒼の種子』を避けるように歪み、乱れていく。その影響が地上の映像にも現れており、森の一部が枯れ、大地に大きなひびが刻まれていた。

 

「まぁ、そこまではまだいいんだけどね。地脈を調整することはできるし。……最悪なのは、ともすれば地球を覆い尽くすほどの成長エネルギーを内包していることなんだよ。まさしく星を滅ぼす代物だね」

 

「えっ、えぇ……? ほ、ほし…………」

 

唐突に話の規模が大きくなり、混乱するラフィニア。咀嚼するのに時間がかかっておるのか、視線を映像に向けたまま固まっている。

 

対してサリーは表情には出さないものの、内心は驚愕に満ちている。そして、依頼内容がぼかされていた理由にも納得した。地球が滅ぶかもしれないなんて情報、易々と表に出せば大混乱だ。

 

一つ、気になることがあったためサリーは手を挙げてリムルに質問をする。

 

「……それ、燃やしたりして破棄できないんですか?」

 

「既に試したんだけど、全っ然ダメ。本質が光だからか物質的な攻撃は通らないし、魔術や超能力で燃やしたり凍らせたりと色々試したんだけど、全部弾かれた。これを植えたヤツの力が強すぎるんだ。防衛局の測定では、恐らく惑星級だとか」

 

「惑っ……!?」

 

サリーは絶句した。今度は表情を取り繕えなかった。

 

『惑星級』。文字通り惑星規模の大きさと、惑星を片手間に破壊できる力をその身に宿す理外の化け物を表している。その括りに入るのは、サリーが知る限り天人(セレスティアルズ)しかいない。

 

倒した前例が庭園にある(・・・・・・・・・・・)とはいえ、サリーやラフィニアは当事者ではない。孤児院に来る前の話で、実話として寝物語に聞いたきりだが、それでもその強大さは理解しているつもりだ。

 

早々に依頼を受けたことを後悔し始めているラフィニアとサリー。リムルは頭の後ろで手を組んで、ソファーの背もたれに体を預ける。内容が内容だけに、二人の反応は妥当だと理解しているため、冷静になって貰うために間を空けて話を進めていく。

 

「──とはいえ、だ。どうにかしないと地球は滅ぶ。今は土ごと根っこまで掘り起こして、防衛局が保有している無人の浮遊島に隔離してあるけど、いつ急成長を始めるか分かったものじゃないから現場は戦々恐々としているよあっはっは」

 

「絶対笑い事じゃないよ!」

 

頭を抱えるラフィニアに、だよなぁ、とリムルは内心で同意する。目的も不明、存在も不明。ただ規格の違う理外の力をまざまざと見せつけられているのは精神的に悪い。笑ってないとやってらんない、というのが本音だ。

 

「……ちなみに、ここからが本題なんだけどね」

 

「もうお腹いっぱいです」

 

「帰ってもいいですか」

 

「国の機密事項を耳にして無事に帰れるとでも?」

 

「え゛」

 

「ひぇ」

 

「あはは、冗談だよ」

 

「防衛局長が口にするのは洒落にならないですって!」

 

それはそう。

 

叫ぶサリーと、胸に手を当てて安心したように息を吐くラフィニア。ちょっとやりすぎたかな、と思いながらリムルは本題に移る。

 

「……ま、そんなわけで。防衛局だけで調べても埒が明かないから、各方面に助力を求めて調べて貰ったんだ。その結果、キヴォトス総合学園のから出向してもらっている調月さんと明星さんの両名によって、『蒼の種子』が宇宙のどこかと遠隔で繋がっていることが分かった」

 

「ラジコンみたいに動かせる可能性が?」

 

「自在に動かせるかは分からないけど、干渉は可能だろうね。つまるところ『蒼の種子』というのは超々遠距離で作動する地球破壊爆弾みたいなものだ。植えた『誰か』の指一本で、容易に地球は滅亡する」

 

「っ……」

 

息を飲む二人。既に縄が首にかかっている状態ということを改めて認識する。ぽんと衝撃を与えれば、地球とはおさらばなんて、害悪極まりない。

 

「……その、繋がりを辿ることは?」

 

「電気的な繋がりじゃないから調月さん達はお手上げ。占星術師のモナさんに手伝って貰ったけど、距離が遠いのか巧妙に隠されているのか、大まかな方角しか分からなくてね。地球上で最高峰の天体望遠鏡でも見つけられなかったんだ」

 

案の定、サリーが思い付くようなことは専門家が既に試しているらしい。となると、後は足を使って探すしかない──と、そこまで考えたところで今回の依頼がどのようなものかを理解した。

 

「なるほど……つまり、その大元を探し出すのが今回の依頼内容なんですね」

 

「正解。本当は防衛局から人を出したいんだけどね、宇宙で探し物となるとどうしても期間が長くなる。他にも立て込んでいる任務がいくつか重なっていて、恥ずかしい話だけど手が離せなくって」

 

「機密なのにギルドへ依頼を出した理由はそれかぁ……。大元の原因もこちらで対処した方がいいですか?」

 

「いや、特定まででいい。惑星級の相手である以上、対処については防衛局で人員を組む。探索についても手が空き次第、人を当てるつもりだ。

 ああ、費用についてもこっちで持つよ。宇宙船や旅の物資などはこちらで用意するし、それ以外でかかった経費も領収書さえ提出してくれれば返金する。依頼が終わればそのままユークスさんを探してもらって構わないからね」

 

庭園が関わる依頼内容だけに、条件がすこぶる良い。破格と言ってもいいくらいだ。見つけた相手と直接戦う訳ではなく、危険はあるものの探し物をするだけでお金もかからない。推定、惑星級の相手でなければだが。

 

「ラニ、受けられそう?」

 

「……受けるよ。地球が滅ぶなんてことになるなら、どちらにせよ他人事じゃなくなるもん」

 

「分かった──リムルさん。改めてこの依頼、謹んで受けたいと思います」

 

この短時間で覚悟が決まったらしい。真っ直ぐに目を合わせてくる二人に、若い子は凄いなぁと感心するリムル。

 

「ありがとう、助かるよ。出発まではまだ日があるから、それまでに準備をしておいてくれ。……強いて言うならもう数人ほどメンバーを募って貰えると、こちらとしても安心できるかな」

 

それなりに危ない依頼だからね、と言葉を付け足す。彼女達にとって未知の宇宙に行くのだ。安全面に考慮した宇宙船を提供する予定だが、絶対はない。可能な限り危険に対処できるよう、人手は必要だろう。

 

「さて、他に質問はあるかい?」

 

その言葉に、二人は元気に挙手をするのだった。




【ウルトロン(人間のすがた)】
・庭園に保管されているホムンクルスの製造技術を参考に肉体を構築した。ドイツにある魔術の大家の技術が根底にあるため、髪色に白が混ざって銀色となった。見た目はトニー・スタークの若い頃に似ており、二人で並んだ際に息子のように見えるが、ウルトロン本人は気付いていない。

【ラフィニア・ビルフォード(MCU)】
・出典『英雄王、武を極めるため転生す』
・イングリスと同室、幼馴染み、親友。
・従騎士(従者)を名乗っておいて宇宙に誘ってくれなかったことに憤慨、見つけて説教することに決めた。

【サリー(MCU)】
・出典『痛いのは嫌なので防御力に極振りしたいと思います』
・メイプルと同室、幼馴染み、親友。
・宇宙へと冒険に旅立ったメイプルを内心で羨んでいたが、自分に機会が巡ってきたのでうきうきしている。

【オルガマリー・アースミレイト・アニムスフィア(MCU)】
・出典『Fateシリーズ』
・魔術研究所に所属。星に関わる研究をしており、現在の地球の情報を閲覧できる魔術礼装『疑似地球環境モデル・カルデアス』によって今回の地脈異常を真っ先に発見した。

【ロード・エルメロイⅡ世(MCU)】
・出典『Fateシリーズ』
・魔術研究所に所属。キヴォトス総合学園で教職も行っている。オルガマリーから声がかかり、地脈異常の原因を特定した。

【エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル(MCU)】
・出典『魔法先生ネギま!』
・魔術研究所に所属。永い年月を生きる吸血鬼。とある吸血鬼狩りに追われて辟易としていたところ、■■に誘われて庭園に所属した。『蒼の種子』の解析に携わり、一目見た時には惑星級の相手が関わっている可能性になんとなく気付いていた。

【アストローギスト・モナ・メギストス(MCU)】
・出典『原神』
・魔術研究所に所属。占星術師であり、星を研究しているオルガマリーとは話が合う。研究に私財を突っ込むため貧乏生活を余儀なくされている倹約家。細胞で構成された『蒼の種子』を触媒にしたにも関わらず相手の居場所を特定できなかったことで数日落ち込んだ。

【調月リオ(MCU)】
・出典『ブルーアーカイブ』
・キヴォトス総合学園システム開発科、特異現象捜査部所属。生徒会経由で防衛局から依頼があり、ヒマリと共に出向することとなった。『蒼の種子』の解析に携わったものの、場所の特定に至らずちょっと落ち込んだ。なお表情が変わらないためヒマリ以外には気付かれていない。

【篠ノ之束(MCU)】
・出典『IS〈インフィニット・ストラトス〉』
・技術研究所所属。宇宙船開発の第一人者。問題児。自分に並ぶ天才達が集まる庭園で育ったため、かなりマイルドな性格になっているものの、その天才性は健在。

【ディメンションÄRM『アンダータ』(MCU)】
・出典『MÄR』
・指輪型のÄRM。
・指輪が一度行った場所へ転移することができる。

【プレミアロールケーキ(MCU)】
・出典『Fate/EXTRA』
・MPを小回復する。
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