AVENGERS:Eyes of Nunnish   作:とむじん

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ベクター星と三月なのかがいちゃいちゃしてるお話が見たい。ベクター星の軽率な無自覚イケメンムーヴで恥じらう三月なのかからしか取れない栄養素がある。そしてその後、ネジが外れた行動で三月なのかをスンッとさせてくれ。落差で風邪を引きたい。


IRON MAN 3:girl who doesn't kill〔part5〕

「──それで、どうなったのさ」

 

明るい金髪をリボンで両サイドに結った頭を傾けて、アニスフィアは椅子の背もたれに肘をつけ、イングリスに尋ねた。

 

──トニー・スタークを中心としたゴタゴタが収まってから約2週間、S.H.I.E.L.D.の事情聴取がようやく終わり、教会に帰ってきたイングリスを待っていたのは、藤乃の出迎えと、アニスフィア含む好奇心で動く兄弟姉妹達による質問責めだった。

 

千束は心臓の影響で病院に送られ、そもそも埠頭の件を話せる人はイングリスしかいない。けれど、取り調べに数日拘束されたイングリスに話す気力は無く、後で話すと一言残し、自室のベッドへと倒れ伏した。

 

そして翌日、学校へ行った弟妹を除いた家族に取り囲まれて、再び事情聴取が始まったため、イングリスは嘆息混じりに席へと着いたのだった。

 

 

「拗らせたおじさんがいたのでブッ飛ばして来ました。トニーさんと二人で」

 

「こじらせ」

 

「はい。詳細は良く分かりませんでしたけど、一昔前にトニーさんから待ちぼうけを受けたようで」

 

「あー、納得。悪評凄いからねー」

 

「チサト、笑顔で文句言ってた」

 

 

アニスフィアは両腕を組んで頷き、一昨日、藤乃と一緒に千束のお見舞いに行ったラファエラは、病室で一緒に撮った写真を掲げながら呟く。生来のお人好しである千束を間近で見てきた教会住みメンバーは、そうだろうと首を縦に振る。

 

 

「そうでしょうとも。……そういえばリューズ、チサトの手術って今日でしたっけ?」

 

「はい。開始時間は午前10時からですので、そろそろ始まる頃合いかと。昨日、手術が怖いだの、痛いのは嫌だのと情けない電話がかかってきましたから、付き添いにシスターが手術室前で待機しています」

 

 

白銀の髪と歯車の髪飾りを揺らし、リューズと呼ばれた少女がイングリスの問いに答えた。時計に視線を移すと、長針が頂点を指す頃。上手く行けば、数時間で終わるだろう──などと考えて、ふと、昨日の事を思い出した。

 

 

「──アベンジャーズに誘われたの忘れてました……」

 

「は!?」

 

「……あ、嘘、今のナシ──」

 

「なるかぁ! キリキリ話して貰おうか!」

 

 

うっかり呟いた言葉が火をつけた。詰め寄って来たアニスフィアを避けるように地面を蹴って距離を取ると、ラファエラとリューズが左右から挟み込むように近付いて来る姿が見える。これから起こる事を想像してため息をつくと、イングリスは玄関へと駆け出した。

 

 

「逃げるが勝ち!」

 

「させるか、リューズ!」

 

「【虚数時間(デュアル・タイム)】──起動シークウェンス、開始します」

 

「ちょ、それはズル──」

 

 

そうして、追いかけっこが始まり──それが終わったのは、夜間に藤乃が帰ってきた頃だった。

 

 

★☆★

 

 

その夜。

 

手術が無事に終了し、チサトは病室へと戻された。脈拍を読み取る機械の音と、緩やかな呼吸音が響く中、藤乃は千束の手を軽く握り締め、上下する胸元に視線を寄せる。

 

トニー・スタークが自身の手術を後回しにしてまで作成した、ヴィブラニウム製の心臓。アーク・リアクターと同じ技術が使われており、今後120年以上の鼓動を代替できるオーバーテクノロジー。

 

それを作ったトニー・スタークも、今頃は自身の心臓付近から金属片を取り除く手術に挑んでいる頃だろう。見た結果と同じなら、アーマー依存症も治っているはず。

 

 

「千束、よく頑張りました」

 

 

優しく、千束の頭を撫でる。まだ全身麻酔が切れていないため反応は無い。さらりと髪を軽く指で整えると、そのまま立ち上がって部屋を後にする。

 

 

「……私も頑張らないと」

 

 

張った糸のような藤乃の声は、薄暗い病院の廊下に溶けていった

 

 

★☆★

 

 

数日後。

 

 

「ホイップクリームマシマシのパンケーキが食べたい!」

 

 

目が覚めた千束は、すっかり元気を取り戻していた。まだベッドから起き上がることは許されていないものの、見舞いに来た藤乃に病院食の文句を叫ぶ程度には体力も戻っている。

 

 

「はいはい。退院したら作ってあげますから、大人しくしましょうね」

 

「病院食はもう嫌なんだよう……。なんなのあれ、味しないし、もそもそするしぃ……」

 

「担当医の許可が出るまでは我慢ですよ」

 

「やだぁー!」

 

 

これなら予定よりも早く退院できそうだと考える藤乃。その時、廊下から部屋の扉を叩く音が聞こえてきた。

 

 

「失礼、チサト・ニシキギの部屋はこちらかな」

 

「はい。どうぞ、お入りください」

 

 

渋い男性の声。藤乃の返事に、扉が開かれる。そこには自走式の車椅子に腰かけたトニー・スタークの姿が見え、千束は驚いたように目を見開いた。

 

 

「トニーさん! お久しぶりです!」

 

「ああ、久しぶり。元気そうで何よりだよ。その調子なら、心臓の方も問題はなさそうだな。──キミがフジノ・アサガミか」

 

「えぇ、初めまして」

 

「キミとも話をしたいのだが……」

 

「それは後程。千束に用事があって来たのでしょう? 私は少し席を外しますよ」

 

「そうか、すまないな」

 

 

貴重品を手に、藤乃は白杖を突いて退室する。それを見届けてから、トニーは車椅子を千束のベッドの側につけた。手に持っていた見舞いの品を棚に置くと、本題を告げる。

 

 

「遅くなってすまない。今日は感謝を伝えに来たんだ。──ありがとう、ペッパーを守ってくれて。お蔭で僕も、自分のすべき事に集中できた」

 

「ふふん、迷える子羊に手を差し伸べるのはあたりまえですよトニーさん。こちらこそ、心臓を作ってくれてありがとうございます」

 

「気にしなくていい。……本当ならイングリス君にも挨拶をしたかったのだが、タイミングが無くてね。彼女が伏兵の大部分を抑えてくれたから、キリアンとの決着もつけられたんだ」

 

「私から伝えますよ。トニーさんも忙しいでしょ? 近いうちにお見舞いに来てくれるらしいので」

 

「それは助かる。機会があれば直接礼をすると伝えてほしい」

 

「はい!」

 

 

端末を手に取り、メモ機能を使ってトニーとの会話を残していく。そんなハツラツとした千束の姿を、どこか遠いところを見るような瞳で眺めてしまう。

 

 

「──君は強いな」

 

「へ……? 私は強くないですよ。今回も途中で動けなくなったし……。退院したら、体力を取り戻さないと」

 

「いや、身体強度のことじゃなくて、心の話だ。……僕はこれまで、あまり他人を信用できなくてね。スーツに依存していたのも、人に弱みを知られたくなくて、恐怖を一人で抱えていたからなんだ」

 

 

若い頃、両親が事故死したことで頼れる人はいなくなった。金を持っていたトニーの周りに集まってくるのはそういうやつら(・・・・・・・)ばかりだった。そんな中、寂しさを埋めるように多くの女性と関係を持つようになったが、それが心の支えになることはなかった。

 

今回だって、ペッパーやローディに心の内を吐露することができなかった。だが、千束の行動を知ってから、少し考え直してみたのだ。まずは、身近な人を信じてみようと、そう思うようになった。

 

 

「だから、まぁ。手に負えない事柄に対峙した際に、家族を頼ることができるのはとても『強い』ことだと、僕は思う」

 

「そうなんですかね……?」

 

「……キミを真似て、ペッパーやローディに悩みを打ち明けてみた。そうしたら、驚いたことに散々悩んでいた事が全て霧散してな。スーツ依存も、心臓の金属片を取り除く手術を受ける覚悟が決まったのも、キミのお蔭だ」

 

「それは、トニーさんが──」

 

 

手を向けて、千束の言葉を遮る。アメリカで育っていても、身体に流れる日本人の血液は謙虚さを強くしているらしいが、彼女にはトニー・スターク(この私)の心を救った者としての自覚を持って欲しいと、いつもどおり自分勝手に言葉を告げる。

 

 

「キミはヒーローだよ。僕にとっては間違いなくね」

 

「──」

 

「もうこんな時間か。そろそろ戻らないとペッパーに怒られてしまいそうだ。──今度は、アベンジャーズとして会える事を願っているよ」

 

 

そう告げて、トニーは病室から退室する。数分の静寂の後、扉をノックする音が聞こえ、藤乃が戻ってきた。顔を隠している指の隙間から、赤くなった頬がチラリと見えた。

 

 

「千束」

 

「いま、見ないで。恥ずかしいから」

 

「そんなに嬉しかったんですか?」

 

「……うん」

 

 

これまで、何度か人を助けたことはある。お礼の言葉だってそうだ。けれど、面と向かって『キミは僕のヒーロー』だなんて言葉を言われたのは初めてで、それがこんなにむず痒くて、嬉しいものだとは思わなかった。

 

 

「……ねぇ、藤乃」

 

「はい」

 

「感謝されるのって、やっぱり嬉しいね」

 

 

眉を垂れさせて、恥ずかしそうに微笑む千束に、藤乃も同調するように笑みを返した。

 

 

★☆★

 

 

数分前。

 

病室から出てきたトニーは、藤乃を探すために視線を動かす。少し離れたラウンジのベンチに座っている藤乃を見つけると、自身の乗る車椅子を動かして近付いていく。

 

 

「待たせてしまったかな」

 

「いいえ。千束とのお話は順調に?」

 

「あぁ。ティーンには少し刺激が強かったかもしれないが」

 

「あの子もヒーローに憧れていましたし、丁度良かったと思いますよ」

 

「……盗み聞きか?」

 

「いいえ。『予測』の範疇、とだけ答えておきましょうか」

 

 

のらりくらりと言葉を返されるトニー。フューリーから降りてきたロマノフの情報と一致する言動。あの時、地球外生命体を撃破した事実と、目の前にいる華奢な女性とのギャップに混乱しそうになる。

 

 

「キミの、目的はなんだ?」

 

「おや、随分と直接的に聞くのですね」

 

「遠回りは苦手なんだ。……特殊な子供を集め、人の言葉を先回りするように話す──端から見れば、自身が怪しい行動をしていることくらい理解しているだろう?」

 

 

責めている訳ではない。しかし、疑いの視線が藤乃に刺さる。普通の孤児院であればともかく、特殊な子供のみを集めている点は、戦争などの争いに使う可能性を考える人も出てくる。

錦木千束の屈託のない笑顔を見れば、そういった人を道具として利用する人間でないことは理解できる。しかし、実際に対面してみれば、いたずらの神様(ロキ)とは違う意味で信用し辛い相手だと感じてしまう。

 

 

「自覚はあります。改めるつもりは今のところありませんが」

 

「……」

 

「それと、目的ですか……。分かりやすく言うと、きたる災厄に備えるため、でしょうか」

 

「……それは、ロキの連れてきた軍隊のことか?」

 

 

トニーの問いに、藤乃は答えなかった。ニコリと笑顔を浮かべるだけで、口はつぐんだまま。それはまるで、自分で考えてみろと言わんばかりの、挑発的なものだった。

 

 

「答えるつもりはないんだな」

 

「ええ。それは、貴方自身が見つけるべき答えですから」

 

「──……そうか、分かった」

 

 

なるほど、ニック・フューリーに似ているのだとトニーは理解した。悪ではないが、自身の目的に則って行動する秘密主義者。そのためなら、基本的に手段は選ばない。違う点は、子供に好かれているところくらいか。

 

こういう手合いは、余程の事がない限り、心の内を吐露することはない。少なくとも、ロクに交流を重ねていない自分では特に。トニーは嘆息し、別れを告げると藤乃に背を向けた。

 

 

「──ですが一つだけ」

 

 

先程までとは違う、澄んだ柔らかい声が聞こえた。

 

 

「千束の行動に感じた感情を、どうか忘れないでください。スターク様」

 

「……あぁ、分かっているさ」

 

 

★☆★

 

 

遠い、遠い、宇宙の果て。

地球から、遥か何億光年と離れた場所のとある星。

 

地表は分厚い氷に覆われ、その一部は大きく抉れており、地の底が見えないほどに深く、暗い。

 

そんな穴の中から、氷の礫が転がる音が聞こえた。淵から飛び出したのは、華奢な人間の腕。震える手で力強く地面を掴むと、そのまま地表へと体を投げ出した。

 

仰向けに転がると、空に広がる灰色の雲。奴らがこの星を攻めてから何年経っただろうか。地下に隠れた人以外は全て死に、かつては美しかった空も、二度と星を映すことはない。

 

少女は、奴らに復讐するため、外へ出た。

 

頭部から生えた長い耳と、長く手入れをしていなかった白銀の髪を風が揺らす。寒さに体を震わせながらも、鼻筋から頬にかけて横一文字の傷が付いた顔をしかめて歩き出す。

 

目的の物があるかは分からない。奴らに壊されているかもしれない。けれど、この身がどうなろうと、父を、母を、仲間を殺した罪は、必ず償わせる。

 

 

「必ず、必ず殺してやるぞ──サノスッ!!」

 

 

無力にうちひしがれた幼い子供はもういない。

 

新星した霜の少女(フロストノヴァ)は、決意を胸に空へと叫んだ。

 

 

 

 

 

【Lycoris will return】




【RyuZU〈リューズ〉(MCU)】
・出典『クロックワーク・プラネット』
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