ちょっとバタついているが故に今回は箸休めだ。小皿の漬物感覚で召し上がってほしい。
この辺りには時々出入りしていたんだ。
地元ってわけじゃないが、腕のいい医者が常駐しているデカい病院があって、お袋をよく連れてきていた。
近くにはちょっと高くつくが美味い飯とハイセンスなジャズが聞けるいいレストランがあってな。治療の経過が良ければ晩飯はいつもそこで食べた。
最近はグラウンド・ゼロって呼ばれているらしい。おかしな名前だ。なんでもこのクソみたいな地獄が始まった最初のきっかけは、ここでの衝突かららしい。
あの頃は我が物顔でのさばっていた民間軍事会社の社員どもも、今じゃ大部分がアスファルトの染みになっただろうよ。
俺達はその染みから、日用品や武器弾薬、食料に資材を拝借していく。どうせ腐って誰のものでもなくなるんだ。俺がもらったって罰は当たらんよ。
この地域の呼び名が変わってしまったように、俺や俺達の名前も変わっていった。
スカベンジャーズ。ゴミ拾い屋。省略してスカブ。
俺達は誰からも拾われることのなくなったゴミを漁り、回収し、誰かの役に立たせていく。または自分の役に立たせる。いいだろ? 物は言いようだな。
結局はゴミを転売したり混ぜ込んだりごまかしたりして、今日を生きて明日につなぐ。
面白いことなんて何にもねぇよ。守るものも、守りてぇものもない。なにも、なにもない。
お袋がどうなったか? 聞くなよ。まぁ死んだよ。殺されたわけじゃない。この騒動が原因なのか、それとも寿命なのかはわからない。
お袋が死んじまったから、そろそろ街から出ようとしたらもう遅かった。晴れて地獄の住人になった。
まぁいいんだ。そんなことより、この辺りの情報が知りたいんだってな?
あくまで根城にしてるだけだ。俺は情報屋じゃねぇし、それで食ってるわけでもねぇから期待しないでくれよ。
まぁでもこの食料がたんまり入ったバックパック分の〝おしゃべり〟はするつもりだ。
いったいどこで手に入れたんだ?
あーなるほど。そうか内務省の職員ってのはすげぇんだな。ん? あぁ〝元〟だったか。これは失礼したぜ。悪く思うなよ。褒めてんだ。自由になったんだろ? いいことだ。
ここ一か月くらいのことだけどな、どうもスナイパーがいるらしい。
仲間が何人も死んでいる。だがな、何処から撃たれたのか、何で撃たれているのか、そんで肝心の撃った奴の姿がこれまで一切割れてねぇ。
仲間の中には奴を〝始まりの幽霊〟とか言ってるのもいる。最初は冗談だったんだが、死んだ人数が二十を超えたあたりからいつの間にか誰もバカにしなくなった。おかげで通りは歩けねぇよ。買い物に行きたいなら地下を使ったほうがいい。じゃなきゃお釣りより先に弾を受け取ることになる。
地下なら安全かって?
どうだろうな。完全に安全なわけじゃない。まだ一桁にとどまっているが、死ぬ奴はいる。
幽霊の正体はたぶんPMCだ。それも一人だろう。気味が悪いぜ。殺した死体を漁りに来るかと思ったんだけどな。いつまで待っても出てこねぇんだ。
それでしびれを切らした仲間が死んだ奴の武器を回収しに行こうと姿を出したら、まず足をぶち抜かれた。そいつは動けなくなって俺を呼んでいたけどな、二十秒後には頭から脳みそをまき散らしちまった。
まるで映画の中のスナイパーだ。そうだろ? タチが悪いぜ。
アンタのお仲間はどうなんだ。見た感じじゃまるで歴戦の兵士みたいにいい装備を着こんでるじゃねぇか。あの陰湿なクソ幽霊を片付けられるのか?
そうか。そりゃいいな。わかった。
仲間にも伝えておくよ。ずいぶん数は減っちまったが、まだガキの教室を埋めるくらいの人数は残ってるからな。
悪くねぇ話だ。俺は協力するし、たぶん仲間もあの幽霊退治をしてくれるってんなら喜んで手を貸すぜ。
ところでそのバカみてぇにデカい銃は何だ? 車に付け忘れたのか。
はは、嘘だろ? それを持って? あんたすげぇな。その銃、何て言うんだ。
へぇ、RPDねぇ。知らねぇや。銃に詳しいわけじゃねぇ。前の仕事か? セキュリティだよ。銃は使ってたが
ま、そんじゃこれからはよろしくな。
あんた名前は?
そうか、コロンタイって呼べばいいんだな。わかった。
あのムカつくクソ幽霊を死んだ仲間のところに送って