金の笛を奏でて   作:frio

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第十六話「憤怒であり傲慢」

「………。」

 

「…大丈夫か、彰人。」

 

「…なんつうか、久しぶりに頭使った気分…マジで疲れた。」

 

 彰人、冬弥の二人は、近いテストに向けて図書館で勉強をしたばかりである。想像した難易度以上だったため、勉強時間は長時間となり、本当なら練習時間を設けようとしていたところ、ものの見事ご破算となっていた。

 

「……こはねが今日体調不良で休むって連絡があってよかった…。」

 

「白石も、大苦戦していたな。」

 

「冬弥くんに頼んで正解だった…ありがとう冬弥くん…。」

 

「つかもう頭いてえし、帰りどこか甘いモンでも食べてから…お?」

 

 彰人は、ふと見覚えのある先輩を、視界の端で捉えた。

 

「…あれ、問題児二人に…あと暁山と…見覚えあるが誰だ?」

 

「え?…問題児二人ってことは、天馬先輩と神代先輩?…瑞希もいるって…ああ、あの子は確か草薙さん…どうしたんだろ…?」

 

「ああ、いい、いい…今日はもう疲れたんだ。ほっといて帰ろうぜ…。」

 

「む?…この声は…彰人ではないか、ちょうどよかった。どうかオレたちを助けてくれないか!?」

 

「うわ……見つかっちまった…!」

 

 猫もびっくりな聴覚で見つけた司は、イノシシのように勢いよく彰人へ走る。その後ろを、類はゆっくりついてきながら、暁山は白石へと泣きつき、寧々は呆れながら合流する。

 

「いやー聞いてよ杏、類が屋上に忘れ物しちゃって…しかもまどかが機嫌悪そうでさぁ、屋上に入りづらいんだよぉ。」

 

「え、夜崎さん機嫌悪げ…?それは災難ね…。」

 

「あぁ?…ああ、夜崎センパイか…機嫌悪いって、いつも不機嫌そうだが…?」

 

「いやそれがさぁ、いつにも増して機嫌悪くて…弟君、どうか盾になって!」

 

「あ“?…んでオレが…。」

 

「ふぁ~…ちょっと早く来すぎたわ…って、彰人あんた、まだ学校居たの?」

 

「げ…姉貴も来やがった…。」

 

「何よ、げ、って…まあいいわ。て、瑞希もいるじゃない。何かあったの?」

 

「お、絵名じゃん。おはよ~…屋上行きたいんだけど、怖い人がいてさぁ…。」

 

「ふぅん…彰人、あんた行ったら?」

 

「んでオレに任せようとするんだよ!?つか、神代センパイと司センパイ、こういうとき物怖じする奴じゃないっしょ、何ビビってるんすか。」

 

「よよよ…僕は怖がりなのに、ひどいなぁ東雲くんは…。」

 

「まあ…なんだ、その…何を言っても舌打ちをくらってだな…少しノイローゼになってしまった…オレはもうあそこに行きたくない…。」

 

「司先輩を退けるとは…彰人、屋上にいる人は想像以上に厄介かもしれないぞ。」

 

「はいはい、そうだな…ってお前、夜崎センパイのこと知ってるだろ!変人たちの間で涼しい顔してるって有名な…!」

 

「む…変人とはオレのことか…?仕方があるまい。年中輝いていたら、誰でも驚くだろう。人気者というのは困るものだな!ハッハッハッハ!!」

 

「そうだね……ッツ!せっかくだし、内蔵電球でもっと光らないかい?司君!」

 

「…おい、それって安全だろうな…?」

 

「あ…あの…そろそろ話を進めたほうが…。」

 

「みんな~~!!!」

 

「…遅かった…。」

 

 ただでさえグダっていた状況が、えむが入ってくることでまた違う方向にグダり始めてしまった。

 

 実は何やら話したいことがあるとえむから連絡をもらっていた寧々は、えむにばれる前にさっさと類の発明品を持ち帰り、万全な状態にしたかったのだが、伝える前に彰人たちに出会い、引っ込み思案な寧々にはつらい状況になってしまっている。

 

 さあどうやって路線を戻そうか…そう考えていると、意外な人物が何やら話を切り出してきた。えむだ。

 

「…っは!そうだった…ねえねえ類君、司君、寧々ちゃん…ちょっと手伝ってほしいことがあるんだけど…。」

 

「…それは今じゃないとだめなのか?」

 

「あ、ううん!今すぐには難しいんだけど…元気づけてほしい人がいるんだぁ!」

 

「ふぅん…まあいいと思うけど…まずは今目の前に出てる問題から片付けない?」

 

「待て待て、まだ了承していないだろう!?」

 

「おや?司君。君は元気づけてほしいと頼まれたら、無視をするスターなのかい?…これはまた新しいスターだねぇ。」

 

「っぐ…わかったわかった。少なくともわが団員に協力しないものはいない。ただ、それを行うためにも、今は類の発明品をだな…。」

 

 ぶぅうぅうぅん…と、なにやら蜂が羽ばたいているような音が聞こえ始めた。

 

「…おや、この音は…どうやらボクの蜜蜂型カメラが、誰かによって操られているみたいだ。特に目立ったものははないけど、なかなか大きい良い音がするだろう?」

 

「…この距離でこの音は近所迷惑よ!?また風紀委員がいろいろ言われちゃうじゃん…。」

 

「…仕方ねえ。おい、姉貴。」

 

「…っは…寝ちゃってた…あによ。」

 

「オレだけ向かうのは癪だ、手伝え。」

 

「はぁ?…なんでよ、危ないじゃない。」

 

「屋上にいる奴は別に悪い奴じゃねえし、手をこっちに出してくるような奴じゃねえよ。」

 

「あ、そう。…仕方ないわねぇ、あんた私のために、パンケーキ買って帰って冷蔵庫の中に入れておきなさい。」

 

「へいへい…。」

 

 このまま時間が経ってしまえば、絵名の授業が始まり、自分たちの体力が減るばかりだ。そう考えた彰人は、さっさとどうにかしてやろうと屋上へと向かう。

 

 がちゃり、とドアを開ける。そこには機嫌が悪い、と顔に書いてあるかのような、渋い顔をしている夜崎まどかがいた。

 

「…お疲れ様です、夜崎センパイ。」

 

「…東雲か…今私は機嫌が悪い。何の用だ?」

 

「…何の用だって、あんたねぇ…こっちは迷惑を掛けられてるの!さっさとその奇天烈な機械返しなさいよ!」

 

 うわ、絵名ったら辛辣ぅ…という声が後ろから聞こえるが、聞こえなかったと無視をする。

 

「…これか。もう帰ったと思っていたが…どうやら、私が神代たちの害を与えていたらしい。…詫びよう、すまなかった。」

 

 まどかの不機嫌なオーラは少し霧散し、蜜蜂型カメラを奇麗に着地させ、類へと返却をした。

 

 ひそひそと、悪い人じゃないだろ、今余計なこと言わないと東雲姉弟が小声でつぶやいている。まどかに聞こえていたが、客観的に見て自分が悪者のため、特に何も思うことはなかった。

 

「…夜崎くん。」

 

「…何かな、神代。」

 

「少し感想を聞かせてくれないかな、その蜜蜂型カメラ、使ってみてどうだった?」

 

 まどかはジロリと類をにらむ。無言で次の言葉を待つ類は、どうやら引く気はない。まどかはわかりやすくため息をついた。

 

「…そうだな。…なんといえばいいか…正直、そこまでいい音に聴こえなかった。これで満足か。」

 

「ふむ…何かあったんだね、夜崎くん。」

 

 まどかは明確に舌打ちをし、帰ろうとする。

 

「ま、待ちたまえ!類に舌打ちをするとは…一体全体、どうしたんだまどか…お前らしくないぞ…?」

 

「…天馬、元来の私はこんなにしょうもない。お前や、類、暁山に見せる気はなかったが、そうずけずけと来たら必然とこうなってしまうと覚えてもらえると助かる…つまり、放っておいてくれないか。」

 

 それだけ言い残し、その場をまた去ろうとするが、杏によって止められる。

 

「…白石?」

 

「…今なら、風紀委員っぽいし、私らしい言葉なんじゃないかなって…このまま見送ったら、明日から夜崎先輩、学校来なくなりそうだから…お願いですから、少しだけでもいいので何があったのか話してくれませんか…?」

 

「…すでにもうオレたちは巻き込まれてんだ。責任取って説明、お願いしますよセンパイ。」

 

 少しでも穴があれば、ここを抜けられると判断したまどかはあたりを見回すも、全員が自分に向けて固唾をのんで見守られており、どうにも何かしない限り離れてくれないだろうとわかった。

 

「…仕方ない、か…だがな、私はここに来てから何も変わっていない。それだけは頭においておけ。」

 

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