金の笛を奏でて   作:frio

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第十九話「停滞と焦り」

 この一週間、暁燈に対して、各々報告しあいながら、自分なりのアプローチを行った。

 

 お昼休み

 

「…はい、ともちゃん先輩、あーん!」

 

「咲希、のっとどぅーいっと咲希、タンマ、タイム、一人で食べれる、審判ヘルプ。」

 

「…むぅ、志歩審判員!判定は…?」

 

「…はぁ、なんで私が…しょうがないか。セーフで。」

 

「横暴だ、身内びいきだ…!」

 

「アップルパイ、いくらでもありますからねぇ?」

 

「咲希、次はこれとかいいんじゃないかな。食い合わせばっちりだよ。」

 

「一歌までも…どうして…。でも心当たりしかない…悔しい、けどおいしい…もぐもぐ。」

 

 …放課後。

 

「健全な精神は健全な肉体から!運動すれば、陰鬱な気持ちなんて…。」

 

「うぃ、市内十週終わり。」

 

「うぇええ、燈先輩、愛莉ちゃんや遥ちゃんに軽くついてってるぅ?!なんでぇ!?」

 

「吹奏楽部は文化部きっての体育会系、覚えて損なし。」

 

「…根性も中々ですね、暁先輩。…負けてられないかも。」

 

「うふふ、こうして一緒にトレーニングしてると、なんだかあのやり取りが嘘みたいになってきちゃうくらい、楽しいわねぇ!…ねえ、やっぱり、撤回ってできないかしら…。」

 

「…ごめん、雫。」

 

「…もう!筋トレ3セット十回、そのあとは燈、今回はあんたもダンスもしてもらうからね!」

 

「や、やけくそ感…。」

 

 ………帰り道。

 

「…以上、ビビッドバッドスクワッドでした。路上ライブを聴いていただき、ありがとうございました…!」

 

「ヒュー、よかったぞこはねちゃん!」

 

「杏ちゃんもキレッキレだったぜぇ!」

 

「さらに磨きを挙げたなぁ、冬弥、彰人!」

 

「えへへ…どうでしたか?暁先輩。」

 

「…ん、とっても良かった。サイコー。」

 

「…うーん、あんまり響いていない?」

 

「…いや…あの、暁さん。…もしかして、アレンジとか考えていたりしていませんでしたか?」

 

「……………。」

 

「こいつは図星みたいだな。」

 

「…よかったらバックで演奏しませんか?」

 

「…冬弥くん、嫌じゃないの?噂でクラシック苦手だって…。」

 

「確かに苦手です。でも前に聴いた、燈さんのソロ、とても心に迫る良い演奏でした。…きっとこの人と一緒に歌ったら、気持ちいと思えるほどに。」

 

「冬弥がここまで押すとは…暁さん、俺は逃がしませんからね。」

 

「うぐぐ…さわやかイケメンどもめ…。」

 

「あともう少しって感じだね、こはね!」

 

「うん、がんばろ、杏ちゃん!」

 

 果てには家でも。

 

「…奏、居間で作曲することはないんじゃないかなぁって、燈は思ったりしてるけど…。」

 

「…。」ッジ

 

「…っう…わかった、わかったから、ジトっとした目で見ないで…。」

 

「…。」カリカリ

 

「…そうだ、ご飯作らないと…。」

 

「一週間だけ、望月さんにお願いしているから、燈は何もしないでもいいよ。」

 

「…えぇ…?か、奏に私の手料理、味わってほしいな…とか…。」

 

「…なら前言撤回して、そうすればいつだってできる。」

 

「…うっ、そ、それは…。」

 

「…燈は強情だね。」

 

「…奏に言われたくない。」

 

 暁燈は、こうして一週間、いろんな人たちと遊んだりしていた。

 しかし、揺らいでいることはわかっても、最後の一線を越えることができず、次第に全員焦りが見えてきてしまう。

 

 だんだんと目に見えてくる焦りは、むしろ燈に悲しませてしまう。もはや、手詰まりになっていた。

 

「…作戦会議、これで6回目ね。」

 

「うぅ無理ぃ…ともちゃん先輩強情だよぉ…。」

 

「…どうする、一歌。」

 

「…ごめん、私もあとどうすればいいか…穂波のほうは、何か変わった…?」

 

「…ううん、だめみたい…。奏さんも、何か行動しているけど、まだ動けそうにないから…。」

 

「ど、どうしようどうしようどうしよう!?あ、あと取れる手段って…ゆ、誘拐とか?!!?」

 

「…みのり、落ち着いて。それじゃ本末転倒だし、誰も幸せになれないから。」

 

「…弱ったわねぇ…ほら、まふゆちゃん。大丈夫だから、ね?」

 

「…何のこと?」

 

「最近まふゆちゃんがどんな気持ちになっているのか、わかるようになったのよ!寒かったら、私で暖を取ってもいいから、ね?」

 

「…。」

 

「…えむちゃん、今朝比奈先輩どんな気持ちかわかったりする、かな…?」

 

「うん、すこし柔らかい感じがするよ、こはねちゃん!」

 

「えむちゃん、すごい…!」

 

「…私たちの関係が良くなってるだけ、マシかしら…神高のほうはどう?」

 

「こっちは全然だめー。会おうとしても、なんかすぐ気づかれて逃げられちゃうんだぁ。」

 

「…。」

 

「言っておくが類、あのやり取りは必然だった、と俺は思う。…類はその中でも貧乏くじを引いてくれただけだ。だから気落ちするこはないし、責任は全部俺がもつ!団長としての役割だからな。」

 

「…大丈夫だよ、司君。次の手はどうするべきか、考えているだけだから。」

 

嘘つきなんだから…寧々はそう思いながら、類を尊重して呟くことは控えた。

 

「…はぁ、彰人。あんたがもう夜崎さんを捕まえたらいいんじゃない?この中で一番力強そうだし…。」

 

「あぁ?…んなわけあるかよ。一番体力バカなのは司センパイだ。」

 

「…そうね、その通りだわ。」

 

「この状況下で司先輩がいるのは、心の支柱になってくれてとてもありがたいです。」

 

「フゥーン、ありがたく思えよ、冬弥!」

 

「…あんたも大変ね。」

 

「そいつぁどうも。」

 

 今も元気に腹から声をだす司に、思わずげんなりする絵名であった。

 

「…にしても絵名、意外と慌ててない?」

 

「何よ、瑞希。私が薄情って言いたいの?」

 

なんでそんな曲解するのさぁ…とぶー垂れる瑞希に、絵名は優し気に微笑んで

 

「こういう時、なんとなくわかるのよ。…きっとあの子がなんとかしちゃうんじゃないかって。だから、今はその子が自由に動けるように、舗装するのが大事なんじゃないかしら。」

 

 あの子…ああ、あの子か。

 瑞希は意地が悪そうな顔をした。多分言ったら怒られるであろう、ベタ惚れなんだからという言葉を、噛み殺しながら。

 

「…引っ越しは明日、ね。…もう、手がないのかしら。」

 

「まあ待ちなって、ボクたちに最終兵器がまだ出てないからさ。もうちょっと待ってよ。」

 

「「「…さいしゅうへいき?」」」

 

「おー!暁山さんかっこいい…それでそれで、最終兵器ってどんなの?教えて教えて!!」

 

「ふむ…なかなかいい言葉尻じゃないか、最終兵器!…だが、それは今すぐ出せるものなのか?」

 

「あー…まだかなぁ。今頑張ってくれてるみたいだけど、今大変だから…ほら、燈と一緒に暮らしてるのもあって、内心穏やかじゃないだろうからね。」

 

「暁先輩と…あ、奏さんですか?」

 

「そうそう!…だからさ、望月さん。明日奏の家に行くと思うけど、次いでに様子も見てきてほしいなって。一応こっちでも確認は取れるけど、家わかるの望月さんぐらいしかいないから…。」

 

「…わかりました!」

 

 ここまでの情報伝達により、細かった輝く糸が、太くどこまでも伸びていく。その糸を編み、出来上がるまで、あともう少し。

 

 

 

 次の日。

 穂波は宵崎家の前で深呼吸をする。今日がそのタイムリミットの日…どうなるのか、穂波自身わからないが、ただただいい方向へ転がることを祈り、開けてあると言われたドアを手に取り、ゆっくりと開ける。

 

「ん…来た。」

 

 そこには、奏に膝枕をする、燈の姿がいた。どうやら疲れて眠っているところを、介護していたようだ。

 

「…奏さんは…?」

 

「大丈夫。昨日まで寝ていなかったから、反動で寝ているだけ。…じゃ、私はもう行く。」

 

「え…そ、そんな。最後にお話しぐらい…。」

 

「この一週間、もう十分した。…久しぶりに、奏のわがままを聞けて嬉しかった。…穂波さんから、よかったら伝えてあげて。」

 

「…本当に、暁先輩は勝手です。…絶対、戻ってきてくださいね。」

 

 燈は、あいまいに笑う。その姿は、なんだか痛ましかった。

 

 ぎぃ、とドアが開く音が響き、バタン、と閉じる。きっとこれは、暁先輩なりの別れの言葉だったのだろう、と穂波は感じた。

 

 だからこそ…最後の頼みの綱になっている、奏に祈るしか、今の穂波に取れる手段はなかった。

 

 今までのクッションとは違うことに気づいたのか、奏がゆっくり目を覚ます。どこかぼんやりとしていた瞳は、穂波をとらえた瞬間はっと意識を戻した。

 

「望月さん、燈は…!」

 

「…もう、向かわれてしまいました。」

 

 奏は悔し気に、しかしあきらめてはいなかった。

 

「望月さん…少し、お願いしたいことがあるんだけど…。」

 

「…!はい、できることがあれば、何でも…!」

 

 穂波は奏から頼まれたことに少し目を丸くしながら、携帯を取り出し然るべきところへと連絡をした。

 




楽曲追加
「quiet room」vo.暁燈、宵崎奏、初音ミク
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