この一週間、暁燈に対して、各々報告しあいながら、自分なりのアプローチを行った。
お昼休み
「…はい、ともちゃん先輩、あーん!」
「咲希、のっとどぅーいっと咲希、タンマ、タイム、一人で食べれる、審判ヘルプ。」
「…むぅ、志歩審判員!判定は…?」
「…はぁ、なんで私が…しょうがないか。セーフで。」
「横暴だ、身内びいきだ…!」
「アップルパイ、いくらでもありますからねぇ?」
「咲希、次はこれとかいいんじゃないかな。食い合わせばっちりだよ。」
「一歌までも…どうして…。でも心当たりしかない…悔しい、けどおいしい…もぐもぐ。」
…放課後。
「健全な精神は健全な肉体から!運動すれば、陰鬱な気持ちなんて…。」
「うぃ、市内十週終わり。」
「うぇええ、燈先輩、愛莉ちゃんや遥ちゃんに軽くついてってるぅ?!なんでぇ!?」
「吹奏楽部は文化部きっての体育会系、覚えて損なし。」
「…根性も中々ですね、暁先輩。…負けてられないかも。」
「うふふ、こうして一緒にトレーニングしてると、なんだかあのやり取りが嘘みたいになってきちゃうくらい、楽しいわねぇ!…ねえ、やっぱり、撤回ってできないかしら…。」
「…ごめん、雫。」
「…もう!筋トレ3セット十回、そのあとは燈、今回はあんたもダンスもしてもらうからね!」
「や、やけくそ感…。」
………帰り道。
「…以上、ビビッドバッドスクワッドでした。路上ライブを聴いていただき、ありがとうございました…!」
「ヒュー、よかったぞこはねちゃん!」
「杏ちゃんもキレッキレだったぜぇ!」
「さらに磨きを挙げたなぁ、冬弥、彰人!」
「えへへ…どうでしたか?暁先輩。」
「…ん、とっても良かった。サイコー。」
「…うーん、あんまり響いていない?」
「…いや…あの、暁さん。…もしかして、アレンジとか考えていたりしていませんでしたか?」
「……………。」
「こいつは図星みたいだな。」
「…よかったらバックで演奏しませんか?」
「…冬弥くん、嫌じゃないの?噂でクラシック苦手だって…。」
「確かに苦手です。でも前に聴いた、燈さんのソロ、とても心に迫る良い演奏でした。…きっとこの人と一緒に歌ったら、気持ちいと思えるほどに。」
「冬弥がここまで押すとは…暁さん、俺は逃がしませんからね。」
「うぐぐ…さわやかイケメンどもめ…。」
「あともう少しって感じだね、こはね!」
「うん、がんばろ、杏ちゃん!」
果てには家でも。
「…奏、居間で作曲することはないんじゃないかなぁって、燈は思ったりしてるけど…。」
「…。」ッジ
「…っう…わかった、わかったから、ジトっとした目で見ないで…。」
「…。」カリカリ
「…そうだ、ご飯作らないと…。」
「一週間だけ、望月さんにお願いしているから、燈は何もしないでもいいよ。」
「…えぇ…?か、奏に私の手料理、味わってほしいな…とか…。」
「…なら前言撤回して、そうすればいつだってできる。」
「…うっ、そ、それは…。」
「…燈は強情だね。」
「…奏に言われたくない。」
暁燈は、こうして一週間、いろんな人たちと遊んだりしていた。
しかし、揺らいでいることはわかっても、最後の一線を越えることができず、次第に全員焦りが見えてきてしまう。
だんだんと目に見えてくる焦りは、むしろ燈に悲しませてしまう。もはや、手詰まりになっていた。
「…作戦会議、これで6回目ね。」
「うぅ無理ぃ…ともちゃん先輩強情だよぉ…。」
「…どうする、一歌。」
「…ごめん、私もあとどうすればいいか…穂波のほうは、何か変わった…?」
「…ううん、だめみたい…。奏さんも、何か行動しているけど、まだ動けそうにないから…。」
「ど、どうしようどうしようどうしよう!?あ、あと取れる手段って…ゆ、誘拐とか?!!?」
「…みのり、落ち着いて。それじゃ本末転倒だし、誰も幸せになれないから。」
「…弱ったわねぇ…ほら、まふゆちゃん。大丈夫だから、ね?」
「…何のこと?」
「最近まふゆちゃんがどんな気持ちになっているのか、わかるようになったのよ!寒かったら、私で暖を取ってもいいから、ね?」
「…。」
「…えむちゃん、今朝比奈先輩どんな気持ちかわかったりする、かな…?」
「うん、すこし柔らかい感じがするよ、こはねちゃん!」
「えむちゃん、すごい…!」
「…私たちの関係が良くなってるだけ、マシかしら…神高のほうはどう?」
「こっちは全然だめー。会おうとしても、なんかすぐ気づかれて逃げられちゃうんだぁ。」
「…。」
「言っておくが類、あのやり取りは必然だった、と俺は思う。…類はその中でも貧乏くじを引いてくれただけだ。だから気落ちするこはないし、責任は全部俺がもつ!団長としての役割だからな。」
「…大丈夫だよ、司君。次の手はどうするべきか、考えているだけだから。」
嘘つきなんだから…寧々はそう思いながら、類を尊重して呟くことは控えた。
「…はぁ、彰人。あんたがもう夜崎さんを捕まえたらいいんじゃない?この中で一番力強そうだし…。」
「あぁ?…んなわけあるかよ。一番体力バカなのは司センパイだ。」
「…そうね、その通りだわ。」
「この状況下で司先輩がいるのは、心の支柱になってくれてとてもありがたいです。」
「フゥーン、ありがたく思えよ、冬弥!」
「…あんたも大変ね。」
「そいつぁどうも。」
今も元気に腹から声をだす司に、思わずげんなりする絵名であった。
「…にしても絵名、意外と慌ててない?」
「何よ、瑞希。私が薄情って言いたいの?」
なんでそんな曲解するのさぁ…とぶー垂れる瑞希に、絵名は優し気に微笑んで
「こういう時、なんとなくわかるのよ。…きっとあの子がなんとかしちゃうんじゃないかって。だから、今はその子が自由に動けるように、舗装するのが大事なんじゃないかしら。」
あの子…ああ、あの子か。
瑞希は意地が悪そうな顔をした。多分言ったら怒られるであろう、ベタ惚れなんだからという言葉を、噛み殺しながら。
「…引っ越しは明日、ね。…もう、手がないのかしら。」
「まあ待ちなって、ボクたちに最終兵器がまだ出てないからさ。もうちょっと待ってよ。」
「「「…さいしゅうへいき?」」」
「おー!暁山さんかっこいい…それでそれで、最終兵器ってどんなの?教えて教えて!!」
「ふむ…なかなかいい言葉尻じゃないか、最終兵器!…だが、それは今すぐ出せるものなのか?」
「あー…まだかなぁ。今頑張ってくれてるみたいだけど、今大変だから…ほら、燈と一緒に暮らしてるのもあって、内心穏やかじゃないだろうからね。」
「暁先輩と…あ、奏さんですか?」
「そうそう!…だからさ、望月さん。明日奏の家に行くと思うけど、次いでに様子も見てきてほしいなって。一応こっちでも確認は取れるけど、家わかるの望月さんぐらいしかいないから…。」
「…わかりました!」
ここまでの情報伝達により、細かった輝く糸が、太くどこまでも伸びていく。その糸を編み、出来上がるまで、あともう少し。
次の日。
穂波は宵崎家の前で深呼吸をする。今日がそのタイムリミットの日…どうなるのか、穂波自身わからないが、ただただいい方向へ転がることを祈り、開けてあると言われたドアを手に取り、ゆっくりと開ける。
「ん…来た。」
そこには、奏に膝枕をする、燈の姿がいた。どうやら疲れて眠っているところを、介護していたようだ。
「…奏さんは…?」
「大丈夫。昨日まで寝ていなかったから、反動で寝ているだけ。…じゃ、私はもう行く。」
「え…そ、そんな。最後にお話しぐらい…。」
「この一週間、もう十分した。…久しぶりに、奏のわがままを聞けて嬉しかった。…穂波さんから、よかったら伝えてあげて。」
「…本当に、暁先輩は勝手です。…絶対、戻ってきてくださいね。」
燈は、あいまいに笑う。その姿は、なんだか痛ましかった。
ぎぃ、とドアが開く音が響き、バタン、と閉じる。きっとこれは、暁先輩なりの別れの言葉だったのだろう、と穂波は感じた。
だからこそ…最後の頼みの綱になっている、奏に祈るしか、今の穂波に取れる手段はなかった。
今までのクッションとは違うことに気づいたのか、奏がゆっくり目を覚ます。どこかぼんやりとしていた瞳は、穂波をとらえた瞬間はっと意識を戻した。
「望月さん、燈は…!」
「…もう、向かわれてしまいました。」
奏は悔し気に、しかしあきらめてはいなかった。
「望月さん…少し、お願いしたいことがあるんだけど…。」
「…!はい、できることがあれば、何でも…!」
穂波は奏から頼まれたことに少し目を丸くしながら、携帯を取り出し然るべきところへと連絡をした。
楽曲追加
「quiet room」vo.暁燈、宵崎奏、初音ミク