金の笛を奏でて   作:frio

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ワンダショいいよね…ビビバス、いいよね…好きだ…。


夜のまどろみ
第四話「鉄は熱く、冷徹に」


「ねえねえ。今日も夜崎さん、眉間にしわがよってるよ?」

 

 今日も今日とて、周りのうわさ話に呆れながら、授業の合間の時間を無下に過ごす。

 さっき、私の眉間に皺が寄ってると言ったやつは、一体どうしてそうなっているのか考えたことはあるのだろうか。…ないのだろう。あれが、いわゆる一般的生徒の模範的な行動だ。

 

 気持ちが悪い、喉がイガイガしてきそうだ。音の一つ一つでさえ、気持ちを傾けることもないものがそばにいるだけで、私はこうもむかっ腹が立っていたのだろうか。

 

「それもこれも…!」

 

 思わず、当たり散らかしそうになった。

 

 周りが無思慮の馬鹿であるのであれば、私は思慮深過ぎる馬鹿なのだろう。どうせどちらも馬鹿なのなら、無思慮の馬鹿のほうになれたのなら、私はどれほど幸せだったのだろうか。

 

 避難場所である、屋上へと逃げ込む。ここは変人をよく見かけるが、それ以外は風がメロディーを奏でるオーケストラホールだ。

 

 春風が自由気ままに動き音を奏でる。ベートーヴェンは、この音と空気を元に、ヴァイオリンソナタ第一楽章「春」を作曲したのだろう。とてもとても、あの曲のように心地がいい。

 

「おや…先客かな?」

 

「…神代か。」

 

「…どうやらお邪魔してしまったみたいだね。」

 

「構わん。ちょうど気分もよくなったところだ。ここからは、威風堂々でも聴かせてくれるのだろう?」

 

「相変わらず独特な表現を使うんだね、まどかくんは。…構わないかい?」

 

「もちろん、そろそろ気分を変えたいと思っていたところだ。」

 

 すると、神代はどこからかドローンを取りだし、プロペラ音を飛ばし始めた。

 イギリスの作曲者、エドワード・エルガーが作曲した「威風堂々」。そもそも軍の行進曲として作られたそれは、物々しくも栄華を感じさせる素晴らしい曲だ。

 

 この【神代 類】という男、学校という場においてまったく遠慮せず、様々なものを作り上げ試走をする。その堂々とした姿はまさしく、「威風堂々」という曲にふさわしい。

 

 まあ、ここまでやかましくしていれば、ワルキューレが来るのは時間の問題だろうが。

 

「コラー!!」

 

「おや…白石くんじゃないか。こんなところにどうしたんだい?」

 

「どうしたもこうしたもないです!…風紀委員に苦情が来ました。いい加減このプロペラ音を何とかしてほしいって。」

 

「そうか…うーん、そろそろドローンに消音効果を付け足したほうがよさそうだ。」

 

「…とりあえず問題になるようなことはしないでくださいね。夜崎先輩からも、注意してください!」

 

「これは私にとって心地の良い音だ、なぜ注意しなければならない。」

 

 白石は大きくため息をついた。まったく、敬語はいらないと前に伝えたはずなのだが…。

 

「次もまた白石、君が注意してきてくれ。もし別のものが来たら、私は向こう一年不登校をする。」

 

「…その脅し、何回目だと思って…。」

 

「脅しだと思うか?」

 

 白石はげんなりとした表情で黙ってしまった。

 …まったく、毎度ながら柄にもないことをよくやっている。彼女はこんなことをするような器ではないだろうに。

 

「白石、今日もまた君の店に行く。ぜひ、また歌を聴かせてくれ。」

 

「え…あ、はい!喉温めて待ってますね!」

 

 さて、ずいぶんと気分はよくなった。今日もまた、残念なことに暁山の声は聴けなかったが、午後も十分乗り越えるほどの耳の保養になった。気は進まないが、午後も頑張るとしよう。

 




実はダブル主人公だったりします。メインが暁なだけで。
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