美竹家の長男(弟)   作:みっちゃんちゃん

1 / 2
一話

防音部屋に籠り、ひたすらにギターを弾いている男が居る。

男の周りにはギターの他に、使い込まれた形跡のある、ベース ドラム キーボード等が置いてある。

そのどれもが、一級品とも言える楽器であり、これら全てが、この男が様々な場所を巡って手に入れたものだ。

男はただひたすらにギターを弾く。

その演奏はプロと遜色ない程の技術と圧倒的な才能を感じさせるものだ。

曲が終盤に差し掛かるその瞬間......

「あっ」

      ブチン!!!!!!

男の弾いていたギターの弦が限界を迎え、その役割を終えた。

男は思わず声が漏れたが、演奏を中断せずに最後までその演奏をし切った。

 

「弦が切れたか......そういえば弦を変えたのは先月始め頃だったし、寿命が来たのか。新しい弦も無いし、今日はこの辺にしておくか」

 

そう言うと、男はギターを軽く拭いてからスタンドに置いた。

 

「他の楽器もギターの前に弾いたから、今日はこの辺にしておくか。本当は後1時間くらい弾きたかったんだけどなぁ〜明日は弦を買って張り替えてから練習するか...」

 

男がぼやいていると突然部屋のドアが開き、一人の女性が部屋に入ってきた。

 

「やっと練習終わらせる気になったの??」

 

彼女は疑問に思い、男に問いかけた。

 

「ギターの弦が切れたから今日はもう終わりだよ。残念なことに替えの弦も買うの忘れてたし。てか終わらせる気ってどういう事だよ?」

 

男は問いかけられた疑問に答えて、逆に問い返した。

すると彼女は呆れたような表情をしながら男に問いかける。

 

「何かって、あんた時間見てないの?もう8時すぎてるんだけど」

 

彼女に言われ男はスマホの電源をつけて時間を確認する。

すると起動画面には8:10の表示がされていた。

 

「あぁ。もうこんな時間か、てかアラームセットしたんだけどな」

 

そう男はしっかり7:50にアラームを掛けていた。それに気づいてなかったということはつまり......

 

「どうせギターに熱中し過ぎて周りの音が聞こえてなかったんでしょ。あんたのそういうところほんと昔から変わらないね。良いと言えばいいのか悪いと言えばいいのか皆困ってたんだから」

 

彼女は懐かしむように話す。

 

「てか、早く片付けてくれない?あたしまで遅刻するんだけど」

 

「はいはい、分かったよ『姉さん』。玄関の前で待ってて」

 

「早くしてよね、『椿』」

 

彼女の名は美竹蘭。男の姉にして、名家の長女であり、幼馴染同士で結成したガールズバンドAfter glowのギターボーカルを務める者。

 

そして男の名は美竹椿。彼女の弟にして少し、いや......かなり珍しい才能を持つ名家の長男だ。

 

 

 


 

 

結局、片付けに時間が掛かったために全力疾走で学校に向かい、着いた時にはお互い息は切れ、肩を上下に激しく揺らし、体からは汗と熱気が溢れんばかりになっていた。

今は蝉が鳴き出すにはまだ早い時期ではあるが、それでも充分な暑さであった。

 

校舎に着いたが、遅刻寸前の為会話は交わさず、急いで各々のクラスへと向かう。

彼、「美竹椿」は自分のクラスである1年A組へ向かった。

 

「あっ!つーくんやっときた!」

 

教室に着くと彼の幼馴染の一人、宇田川あこが椿のもとに向かってきた。

 

「おはようあこ。相変わらず元気だな」

 

「おはようつーくん!そっちこそまた遅刻ギリギリじゃん!」

 

「別に良いんだよ、HRに間に合ってはいるんだし」

 

お互いに軽く話し合っていると、予鈴のチャイムが鳴り響く。

 

「やべっ、もう時間か......話はHR終わってからな」

 

椿はそう言い、急いで席に座る。

あこもそれに続くように席に向かっていった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「おはよう椿」「椿くんおはよう」

 

HRが終わり、俺とあこが話をしているとそこに二人のクラスメイトが混ざってきた。

 

「おはよう明日香、六花」

 

彼女達の名は戸山明日香と朝日六花。

二人とも幼馴染であるあこの次に仲が良い友人だ。

 

「また遅刻ギリギリで登校してきて、いつか本当に遅刻しても知らないよ?」

 

「明日香まであこと同じこというなよ......まぁ確かに俺に非があるのは分かってるけどさ...」

 

実際、俺が朝ギリギリなのはただ単純に時間を忘れて楽器を弾いてしまうからだ。少なくとも誰かに声をかけられないと、弾くことを辞められない程......まぁ言ってしまえば俺は一つのことに集中しすぎてしまうという事だ。

これは幼い頃からそうだったらしく、父曰く、砂遊びに集中しすぎて朝から夕方まで一切言葉を発さず砂の城を作ってたらしい。(その時父は俺のあまりの集中に声がかけられなかったらしい)

 

「でも少し意外だな〜。椿くんって基本的に何でもそつなくこなせる人だから朝とかも早く来るイメージがあったよ」

 

「そんなことはないと思うけど......まぁ欠点のない人間なんか存在しないってことだろ」

 

「まぁ、椿はテストとかの成績は高いからね。授業中寝てばっかな癖してなんで私より成績が上なのよ」

 

「「確かに」」

 

明日香が呆れたような目線を向けて呟くと、あこと六花もその意見に同意した。

 

「そんなこと言われてもな......」

 

流石に俺は困ったように呟く。

まぁ、最近はこういう事を言われてばっかなので正直慣れてはいるが。

そんなこんな話していると予鈴のチャイムが鳴り始めた。

 

「もう時間か。やっぱり話してるとすぐ時間が過ぎるな」

 

「本当に......授業中は時間が全然経たないのにね」

 

「うぅ、また地獄のような時間が始まる〜」

 

「まぁまぁあこちゃん、今日が終わったら明日は休みなんだから頑張ろう!」

 

六花がそう言うとあこが元気を取り戻す。

 

「そっか!今日金曜日だった!家帰ったらNFOやり放題だ!」

 

やった〜!とあこが喜んでいる姿を見て思わず笑みが溢れる。あこの明るさでこっちまで元気が出てきたような気がする。

 

「さぁ残りの授業も頑張るか」

 

「「「うん!」」」

 

 

 

 

 

「つーくん!この後暇?」

 

授業が終わりHRも過ぎたので皆、帰る準備をしている。もちろん俺も例外ではなく最低限の荷物を持って帰路に着こうとしていた時に、あこに話しかけられた。

 

「?どうした急に」

 

突然のあこからの問いかけについ質問に質問を返してしまった。

 

「この後りんりんと一緒にNFOのイベント進めるんだけど、つーくんも一緒にやらないかな〜って!」

 

NFO.......正式な名はNeoFantasyOnlineという、今かなりの人気を誇るオンラインゲームである。MMORPGという種類のゲームであり、あこの影響で俺も一緒にやったりしている。

 

また、RinRinさんはあこから紹介されたNFOのプレイヤーだ。

かなりのゲームの腕を持っており、NFOを始めたばかりの俺を何度も助けてくれたり、アドバイスをしてくれたりと、いわばNFOにおける恩人みたいな人物だ。

 

「RinRinさんとか......やりたいのは山々なんだが今日はこの後用事があってな、今回はパスさせてもらうよ」

 

「えぇ〜残念......じゃあ明日は?」

 

「明日か......別に平気だな」

 

「ほんと!?じゃあ明日やろうね!」

 

「あぁ、って悪い。もう時間だから先帰るわ」

 

「そっか〜、じゃあまた明日ね〜!」

 

そんなこんな話していたら用事の時間が迫っていたので一足先に帰る事にし、学校を出て目的地へ向かった。

 

 

 

 

数十分程経ち。少し急いだおかげか指定された時間の5分前に目的地であった建物の前に着くことが出来た。

 

(時間ギリギリだったな。後少し出るのが遅れたら遅刻するところだったし。)

そう考えながら建物の中に向かう。

 

(にしても......このビル、デカすぎるよなぁ〜)

目的地であったビルは今まで見てきた高層ビルの中で群を抜いて高く、広いビルだった。初めて来た時はそのあまりの大きさに思わず声が漏れる程だった。

 

ビルに入り目的の階層までエレベーターに乗り、向かう。数秒もすれば目的の部屋の前についたので中に入ると、俺が"所属"することになったバンドのキーボード担当であるパレオが待っていた。

 

「お待ちしておりました椿さん!もう皆さん集まっていますので、少し急ぎ目の準備をお願いします!」

 

「時間ギリギリで悪かったなパレオ。すぐ準備するよ」

 

「いえいえ!時間には間に合っていますし問題無いと思いますよ〜。取り敢えず皆さんのところに向かいましょう!」

 

パレオと話しながらスタジオへ向かう。

 

「ようやくきたのね......予定の時間が過ぎるところだったじゃない。今日は合わせの予定なのよ?今回は間に合っているから良いけど、これからは気をつけなさいよね」

 

スタジオに入ると俺の入ったバンドのプロデューサーとDJ担当を務めるチュチュに軽く怒られた。まぁこれに関しては完全に俺の落ち度なので言い訳をせずに素直に受け止める。

 

「すまないチュチュ、すぐ準備する」

 

「まぁ今回は良いわ。ただし!次からはもっと時間に余裕を持って来なさいよね」

 

勿論だと返答しパレオと一緒にスタジオ入りをする。

 

「あっ!やっと来た」「おっ!来たか!」

 

スタジオに入るとメンバーの2人、レイヤとマスキングがこちらに声を掛けてきた。この4人と俺を含めた5人で結成されたバンド......それが RAISE A SUIRENだ。

 

「時間ギリギリになってすまなかった......直ぐにチューニング終わらせる」

「了解。こっちも軽く鳴らしておくね」

 

「私も叩いとくか!」

 

そう言い俺は直ぐにチューニングに取り掛かったが、幸いな事にチューニングは数分も掛からずに終わった。

 

「皆準備は良いわね?それじゃあ始めるわよ!」

 

「「「「おう!(うん!)(ああ!)(はい!)」」」」

 

これが俺の日常だ。

 

 

 

 

 

 




ご既読ありがとうございます。今後も不定期ではありますが更新していこうと思いますので宜しくお願いします。また読みにくい、誤字脱字等の指摘がございましたら是非お願いします。
感想お気に入りなどをして下さると作者のモチベが上がりますので、どうか宜しくお願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。