光と殻   作:すからぁ

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第五話 秘密 その3

 あの戦争が終わった時、レイは故郷に戻る際にジャンヌに言われた言葉がある。それは、今後の彼の生活に於いて非常に重要な言葉であった。

 

『レイ、貴方はもう戦う必要はありません。この先は貴方の望む未来の為に生きて行けば良いのです。ただし、この戦いの事は誰かに決して誰かに伝えては行けません。世界は表向きは平和になったとは言え、その力を欲する人間がいる状況なのもまた、事実。人がいる限りは何らかの形でテロ行為等が横行する事でしょう。貴方がその事を口に出さなければ、貴方は平和な人生を送る事が出来ます。どのような人間がこの世界にいるかは分かりません。消して、それを打ち明ける事がないように……』

 

ジャンヌ・アステルが戦後に言った言葉。レイはこの言葉を忠実に守っている。実際、いくら平和になった世の中とは言えどのような人間が潜んでいるのかは分からない。彼自身が人型兵器のパイロットを二度としないようにする為には、己の秘密は隠さなければならないのだ。

 

『それは貴方がアドバンスドタイプである事を公表する事も同義です。力を持つ人間は何らかの形で争いの種になってしまう可能性があります。特に貴方はそれに該当する可能性が高いのです。貴方はもう、何も関係ない世界で生きていく身。貴方はその過去を隠し、生きていく必要があります。力の誇示は新たなる争いを生む事に繋がるのです。』

 

口約束ではあるが、彼はジャンヌと別れる時に聞いた、彼女からの教えを守りたいと思っていた。もう、あのような戦争は起きて欲しくない。自分が何かに利用されたり、戦うような事はしたくない。レイは心からそれを誓っている。だから誰かにこの事を言いたくない……いや、言えないのだ。

 

 

 

***

 

 

 

 人は何らかの秘密を抱えて生きている。それは人によっては墓場まで持って行きたいものでもあるだろう。レイも、秘密を抱えつつも日常を送る人間だ。この秘密が何らかの形で他者に広まった場合、自分だけでなく、他人を巻き込む危険も有り得る。世の中の人間と言うのは皆が利口な人間ではないからだ。

 シィナにも秘密がある。それは間違いない。だが、彼女は多くを語らない。レイに対して異様な関心を抱き、肉体接触を行う。今、レイとシィナは肉体関係が形成されている状態。それ自体も秘密の一つ。だがそれ以上の秘密がシィナにはあるのかも知れない。

「レイの秘密は何なのかな。私とセックスすれば、少しは明かされるのかな。」

彼女の誘惑が始まった。一度交わった関係とは言えそれを武器にしてくるのはレイとしては不快な感触に感じられたのだ。

「やめてよ……そう言うの、良くないよ……」

戸惑うレイ。

「私はレイの事が好きなんだよ。だけどレイが整理出来ていないから肉体関係でレイを留めているんだよ。」

迫る、シィナ。朱色の眼がレイを捉えていく。

「僕に魅力なんて、ないよ……」

「違う」

シィナは即、断言した。

「私はレイから“大きな魅力”を感じてる。レイだからこそ私は接触したいと思った。結果、セックスする関係になったもんね。」

「やめて……」

「だから私はまた、レイを求めたいな。ね、この後帰り道に……ね?」

シィナは更に迫る。コンピュータを触るレイの指に、シィナの白い指が絡む。

「やめてよ!」

バンと、レイはコンピュータを閉じた。彼女のスキンシップが過激だった為か。

「こんな、学校で破廉恥だよ!場所を考えてよ!」

息を荒げるレイ。シィナの誘惑がレイを翻弄しているのは間違いない。彼女の色香がレイを困惑させ、躊躇わせる。

「……じゃあ、プラトニックな環境でレイと色々と話がしたいな。学校でレイとばっかり話していると変な噂立てられちゃうから。」

シィナは読んでいた本を閉じた。そして、着けていたイヤホンを外す。

「レイ。今度の休みの日、予定はあるかな?」

予定はない。バイクでどこかへ移動しようと考えていた為だ。

「いや、無いけど……」

「ホント?じゃあ、お願いがあるの」

シィナは両手を叩き、微笑してレイに近付いた。

「今度ね、ボランティアスタッフとして児童施設に行くんだ。だけどそこはスタッフが不足してるんだ。だからレイも来て欲しい。」

「ボランティア?」

彼女の言葉から、“ボランティア”という言葉が出た。予想外の言葉にレイは戸惑っている。今までのどこか妖艶な色香が漂っているシィナの台詞とは思えない、“ボランティア”。それは何を示すというのだろうか。

「レイは、子供は嫌い?」

「そんな事は無いよ……寧ろ、好きだよ。」

「そっか、それは良い事を聞いたよ。」

何故かこの時、シィナはどこか嬉しそうな表情を浮かべていたのだった。

「じゃあ、今度の休みに一緒に行こう?楽しみにしてるよ。じゃあね。」

シィナは銀色の髪を掻き揚げ、レイに視線を送った後にこの場から去って行った。彼女はどこか、生き生きとしている印象をレイは受けた。

 シィナの言うボランティアとはどのようなものか。児童施設と言っていたが、彼女はそれ程に子供を大切にしているのだろうか。ある意味、彼女の秘密の一部を理解するチャンスなのかも知れないと、レイは思っていたのだった。

 

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