光と殻   作:すからぁ

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第八話 カップルの危機 その2

夏場の市街地は皆が暑さを少しでも避ける為に露出の多い格好をする者が多い。街には様々な人間が歩いている。友人同士、家族連れ、カップル、同性カップル等。

 あの戦争があったとは思えない程の復興は見る人によっては驚愕する程だ。レイもその内の1人。過去にこの地であった大規模な戦闘に参加し、勝利に貢献したのは紛れもなく、レイの力が大きいのだ。

 今、レイは隣にシィナという恋人を連れて歩いている。背丈もレイよりもやや高く、スレンダーな印象を持つシィナと、女顔の少年、レイ。一見すれば不釣り合いな印象を持つ彼等だが、シィナからのアプローチが彼等を恋人同士にした。

 人間の縁とは不思議なもので、ほんの数日前までは全くの赤の他人だった人間でも何らかの形で交際に至る事もあり得る話なのだ。シィナとは同じ学校の一つ歳上のクラスメイトというだけの存在だった筈なのに、レイの新たな恋人となっている。それが不思議でならない。

「服見たい!レイの為に服見るの!」

今のシィナは年相応の少女に見える。余りこうしたデートの経験がないレイは、彼女にただ翻弄されるばかり。

 

「どうかしら?」

と、シィナがレイに見せるのは青地のドレス。胸元が開けており、側腹部が大きく露出している。脚元の形は美麗と呼べ、町を通る男性陣を魅了している。

 ある意味誰もが羨むルックスをしているシィナを恋人にしているのはどこか、自慢出来るような感覚に陥る。とは言え彼女の事はまだまだ分かっていない事も多いが。

「似合ってる……と思う。」

実際、彼女は綺麗だ。しかし、レイはどう褒めたら良いか分からない。

「反応が薄いよ!もっと褒めて欲しいな」

頬を膨らませ、シィナは迫る。しかしレイは困惑した様子でふと、自らの姿を鏡で見るのだ。

「あのね……デートって言うのなら、僕にこんな格好をさせないでよ!!」

何故、レイの表情が固く、シィナへの反応が薄いのか。その答えは、彼がシィナによって白いワンピース姿で歩かされている為だ。余りに似合いすぎているその姿を見てシィナは笑っているのだ。

 以前クリスマスパーティの際にレイに着せた衣装を、彼女は異様に気に入っている。思い描くデートとはかけ離れた状況に、彼は困惑していたのである。

「だって、そっちの方が可愛いもの。レイの事は大好きだけど、ちょっと変わった形のカップル像を見せつけてみるのもありかなーって思って。」

「シィナの趣味に付き合う気はないよ!」

「と言いながらも着替えてくれるんだからレイは本当に可愛いな。フフッ……」

一見すれば仲の良い少女同士が戯れているようにしか見えない光景。だが実際は男女のカップルである。この、妙な構図を作り出しているのは紛れもなくシィナの思惑だ。

「ただのカップルじゃつまらないもの。側から見たら友達同士か、或いはレズカップル。ケド実際はきちんと性器が付いている異性のカップル。フフッ……着替え、一緒に手伝ってくれる?レイは見た目は女の子だから大丈夫だよ」

挑発しているように見えるシィナに翻弄される、レイ。

「やめてよ!こんな公衆の場で!」

「クローゼットの中はプライベートルームだよ。側から見たら同性同士が衣装の確認をしているに過ぎないもの」

人の外見というのは重要だ。それだけで印象が決まる事が多い。よく人の印象の9割が見た目で決まると言われているが、まさに今の状況がそれに該当しているのかも知れない。

 レイの容姿はそれ程に少女に見える。店員も怪しむ様子を見せず、違和感なく対応している。胸の無さは発達の過程と見做されるので誰も注目しない。一方のシィナはスタイルの良さが際立つ為、男性陣の注目の的となってはいるが。

 

「なぁ、あの2人滅茶苦茶可愛くね?」

「銀髪の方はスレンダー過ぎるけど、俺はどっちかと言えば銀髪の方が好みかな。」

「お前はあれか?貧乳好きか?」

「別にどっちでもいいだろ!」

 

ペアの男性がレイとシィナを見て噂をしている。互いに麗しい容姿の持ち主であり、やはり少女に見えるのだろう。実際は異性同士である事など誰も気付かないのだ。

 

 2人のデートは続く。だが、実際にイニチアティブを握っているのは彼女の方だ。白いワンピース姿のレイはシィナに翻弄されるばかり。彼女の爛漫で読めない性格は何なのだろうとさえ思う。

それは、レイの過去を認めた上で行動しているようにも見える。戦争を生き延びた経験をしているレイ。シィナは彼の事を認めた上で付き合っているのだ。

 あるショッピングモールを、2人は歩く。女性物の下着を見に行ったり、カフェでの時間を堪能したりと、ごく普通の日常を送る。レイにとっては女装しながらという、特殊な例になるのだが。

「じゃあ、次はシアターでも行こうか?話題作、見たいし」

「う、うん」

行き先などもシィナが決めている。ある意味プランを考えなくて良いというのは楽ではあるが、彼女のペースに飲まれている感覚に、完全に陥っている。

 よくデート等では男性が女性をリードする為にプランを立てたり気を遣うという事があるが、今回はシィナが全て行きたい場所へ行っている。全てはレイに好意を抱いているが故の行動。

 モテているという感触というのはこういう感覚なのかと思う、レイ。自分がかつて好きだった幼馴染のリルムは“その先”の関係にはなれなかった。それは、幼馴染という関係が長過ぎた事が大きく影響していた。互いを知り過ぎたが故に肉体関係に至れなかった。

 シィナとは知り合って間もない。だが交際に至っている。何故なのかは分からない。そして、彼女が自分にとっての将来のパートナーとかになり得たりするのかなど、思う事は何度かあるが今は深く考えないようにしている。

 それからシアター内の券売機に並び、2人がチケットを購入しようとした時――

 

 

「動くな!!!」

 

 

突然怒号が響いた。

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