光と殻   作:すからぁ

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第九話 シィナのナゾ その3

講義の後、レイはノレッドに呼び出されてピロティー広場に来た。この時間になると学生の数は少ない。少数、男女のグループが会話をしていたりカップルが座って雑談を交わしたりしている。その中でレイは1人、この場所に来た。

「おー、来てくれたかー」

ノレッドが来た。だが、その服装にレイは少し違和感を覚える。

「随分と小綺麗だね。」

率直な感想を述べた。レイの言うように、ノレッドの服はまるでパーティ等出来るような正装を纏っている。これから何かのパーティでもあるのかと思ったレイだったが……

「あのさ……そのさ……お前に言いたかった事があるんだよな。」

「?」

何故、ノレッドは改まった様子なのか。それが理解出来ない。

 

「俺さ、お前の事が……好きだったんだよな……!」

 

顔を赤める、ノレッド。

 

 レイの二重眼が猫の如く大きく開かれた。衝撃を受けたような感覚に陥った。

 今、何と言った?”好き”と言った?しかも、この場合の”好き”というのは明らかに好意を持っていると言う意味だ。彼は何度も瞬きをし、顔をそっと近付ける

「……え?」

確認するように、レイは言った。

「だから!好きなんだよ!ラブってやつ!だから付き合ってくれっての!」

確定した。ノレッドはレイに恋をしていた事がここで明らかになった。衝撃の、事実である。

「いや……その……付き合ってくれをゴリ押しするのは良くないのは、分かる!価値観を押し付けるは良くないからな!だけど、俺はお前と一緒にいて、その……可愛いって思ってたんだよ!お前の女の子みたいな顔なのに、性別が男な所とか、部活でも水着は男のやつを履いているのに顔は女の子なところとか、とにかく可愛くて堪んなかったんだよ!なぁ!!!」

聞いてもいないのにノレッドはレイの好きになったポイントまで言ってきた。これは間違いなく、本気の告白だとレイは感じた。

 だがこれに対してレイはどう答えれば良いか分からない。分かる筈がない。

 ノレッドはLGBTなのかと、ここで分かった。別にそれ自体は否定する事ではない。だが問題は自分にそれが向けられたと言う事だ。

 レイは異性との交際を望んでいる人間。現実問題、彼はシィナと交際している。今は連絡が取れないが。そうした背景もあり、レイはどう解釈し、理解すれば良いか混乱していたのだった。

「え……ええと……僕、男なんだけど……」

「だから、男だから良いんだよ!俺は好きって伝えたかった!それだけだよ!!どう答えるかは、お前次第だけどさ……!」

何だ、この状況は。もう理解が追い付かない。訳が分からない。

 シィナの事ですら悩んでいると言うのに、まさか同級生、しかも性別が男の人間に告白をされると言う状況。レイはもう、目眩がしそうな気持ちにさえなっていた――

 

 

「“私の”レイに告白なんて、しないでよ」

 

 

聞き覚えのある事のある声が聞こえた。

「え?」

レイとノレッドはその方向を見る。すると、そこにいたのは銀髪の美少女、シィナだったのだ。

「シィナ・ソンブル!?な、なんでここに……?」

驚嘆するノレッド。それとは対照的に冷静な様子のシィナ。

 学校に来ておらず、連絡も取らなかった彼女が今になって現れた。それも、ノレッドがレイに告白していると言う奇妙な状況で。一体、何だこれは?

「男の子が男の子を告白したり性交渉をする関係になるの、私は別に自由だと思うけど、生憎レイは私とお付き合いしているの。もう身体だって知ってる関係なんだよフフ……」

「な……んだと……!?」

ノレッドに傷を付けんとするばかりに、シィナは事実を述べていく。

「キレス……マジなのか!?マジなのかよ!?シィナ・ソンブルと……そうなのか!?」

事実である為、レイは視線を泳がせながら、静かに頷いた。正直、恥ずかしい。

「だ、だとしても!俺は諦めないからな……!これだけ勇気を出したのに、諦められるかよ……!」

と、言うノレッドではあるが彼の表情は、どこか弱気だ。シィナとレイの関係を知り、やはり動揺しているのだろう。

 

「交際している関係に立ち入るんだ。不愉快だよ。消えて欲しいぐらいに」

 

シィナは朱色の眼をノレッドに向けた。その表情は、まるで虫を見るかの如くの表情をしている。冷徹で、残忍。そのような印象を持っていた。

「な……んだよ……こんな……の……嘘……だ……!!」

ノレッドはショックと同時に、シィナに対して恐怖の感情を抱いている。そして、本能的に彼はこの場にいてはいけないと判断したのか、彼は猛スピードで去っていった。好きだと思っていた同級生。それも同姓への告白は、銀髪の美少女によって打ち砕かれたと言う事である。

 

「レイはとてもモテるね。誇らしいよ。とても素敵。だからこそ、付き合っているって自覚出来て私は嬉しい。」

先程の冷徹な表情はどこへ行っただろうか。相変わらずミステリアスな印象を持つシィナ。今はそれ以前の問題だ。

 あの事件以来姿を見せなかったのに、何故今になって現れたのか。それも、この奇妙なタイミングで。

 レイは何を聞けば良いか分からないでいる。聞く事が多過ぎるが故に、整理が出来ていないのだ。

「レイは混乱してるんだね。連絡取れなかったのに突然私がこの場に姿を現したから。」

図星だ。しかし敢えて言語化される事でどこか整理出来ているような感覚さえ陥る。

「どうしていたの……今まで。あれから学校にも来なくなって、どうして今になって現れたの?」

「レイに会いたくなったから、来た。」

それだけ?それだけで連絡もなく来たのか?やはり彼女の心理が理解出来ない。

「理解出来ないよ!あれから塞ぎ込んだんじゃないかなって思ったんだから!」

「それは、私の事を大切に想ってくれているから出た言葉なんだよね?」

そうだ。そうでなければ言葉を荒げる筈がない。

「普通はそう思うよ!あんな事があって、学校にも来なくなって、突然連絡が取れなくなって!心配するのが当然だよ!ショックを受けたんじゃないかって!」

今まで連絡を取り合ったりしていた人間とコンタクトが取れなくなれば、当然心配すると考えるだろう。それも、一日二日の問題ではない。暫く時間が経ったのだ。無理もないのだ。

「レイが心配してくれてるのを知れて、私は嬉しいな。」

だが彼女はそれを喜ぶのだ。それが、異質に感じられてしまう。彼女の本質が見えない。何を考えているのかも、分からない。

「まさか、心配を掛けたかったとでも言うの!?」

それが理由なのなら、彼女の思考は稚拙だ。親に対して気を引き、構って欲しい子供と変わらない。

「そう言う訳じゃない。でも、レイから私に関心を持ってくれたのはとても嬉しいんだ。」

思えばシィナと知り合ってから殆ど一方的なアプローチを受けてきた。その結果レイは流れるままに彼女と肉体関係を築き、交際に至った。

 今、彼は初めてシィナを心配している。その事を彼女は喜ぶのだ。

「そう言えば……」

レイは彼女との出会いを、一旦振り返り、考えた。

「じゃあ、どうして連絡が取れなくなったの!?僕はそれを知る権利がある筈だよ!」

確かにそうだ。何故ならば……

「僕達は交際してるんだ!だからシィナの事情を聞いたっておかしくない筈なんだ!」

思い切って、言った。それを聞いた時、シィナは白い歯を見せ、笑顔を作ったのだ。

「うん、100点満点の言葉が出たね」

その、一つ一つの言葉は艶やかであり、意味深長である。そして、彼女はレイの言葉に対して喜びを感じている。

「レイからその言葉が出るって言うのは、完全に私達はカップルだって認めてくれているってコトだよね。素敵な事だよ。とっても。フフ……」

交際しているのだから、当然ではある。

 だがこれまではシィナの事が分からないのもあり、レイの口から直接彼女との交際の話はしなかった。

 何故、そうなったのだろう。あの時の事件が契機なのは間違いない。彼女がアドバンスドタイプと知ったから?それとも、あの事件後に連絡を取れなくなったから?レイ自身も何がきっかけなのかは分からない。いつしかシィナに関心を抱くようになっているのは事実だ。

 

「じゃあ、レイ。今度の休みの日に私の家に来て」

 

突如、シィナが口を開き、言った。確かにレイはシィナの家に行った事はない。どのような場所なのかも分からない。

 彼女は彼を招いている。自分の家に。そこはどのような場所なのか、何があるのか。見当もつかない。一つ言えるのは、シィナ・ソンブルに関係する“何か”が明らかになるのではないかと言う事だ。

 彼女には謎が多過ぎる。その中でレイはシィナと交際に至ってしまった。いつしか、レイは彼女の事を知らなければならないとさえ思うようになっていた。彼女の家に行けば、秘密が明らかになるかも知れない。

 シィナの秘密の一つ、彼女が力を持つ人種、アドバンスドタイプと言う事は分かった。だがそれを抜きにしても謎が多い美少女、シィナ。不思議な魅力を持っている美少女はいつしかレイに関心を抱かせるようになっていたのだった。

「……うん。良いよ。」

レイの甲高い声が僅かに聞こえた。

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