シィナの過去を知ったレイはただ、驚愕するばかりだった。全ては繋がっていた。氷河族も、エファン・ドゥーリアも。アドバンスドタイプの事に関しても。彼が体験した壮大な体験の果ての存在が、まさかシィナの行動の原点になっていたとは思わなかった。
「そうか……そういう事だったんだ……」
彼女の行動の矛盾。その理由。それらは全て、レイにとっての最大の敵と呼べた存在である、エファン・ドゥーリアが関係しているという、事実。
ミリナからの話を聞き、レイは彼女の一連の行動を解釈する。
「シィナはエファンさんの影響を受けていたんだ……だからあんな、矛盾に満ちた行動が出来る……自分の事を殻だって言ってたけど、エファンさんの影響を受けて殻を満たそうとして、色々な行動をしていて……彼女なりに満たそうとしていたんだ……だけど改めて人間を省みて、本能を知る事にした。それが僕との出会いであって、僕との関係を築いたのだとすれば……」
全ては統合した解釈の仮説に過ぎない。だが、レイをこれ程に独占的な愛で支配しようとし、彼との関係を求める背景があるのならば辻褄が合う箇所が多い。
レイとの共通点としてのアドバンスドタイプ。これはエファンもそうであった。その上での矛盾の行動もエファンの影響。人を愛しているという所もエファンの影響。
彼女の今の行動の、ほぼ全てにエファンの影響が関わっている。それは、恐らく……いや、ほぼ確実と言って良い程に間違いないと言えたのだ。
「本来なら力を持つ人間である筈のシィナを、力を持つ人間を殺そうとするエファンさんが特別扱いする理由の一つが、彼女が氷河族のボスの娘なら、十分な理由となり得る。何故なら、エファンさんと氷河族のボスが友人関係だから。そうか……だから、シィナを特別な扱いをしたんだ……友人の、娘だから……まさか、こんな事が……氷河族とエファンさんが、こんな所で繋がるなんて……!」
エファンとシィナの過去が分かった。これが彼女の行動の動機の起源ならば、レイは理解が出来る。故に矛盾に満ちた行動も、彼女は行うのだ。
だからこそ、レイは彼女に説得をしたいと考える。エファンを知っており、その本人をレイ自身が倒したのだ。その事実はシィナに伝えなければならないのだ。
「レイ様がシィナ様を理解しようとしているのなら、今の話を聞いて分かった筈です。人は矛盾して生きています。シィナ様はそれを正当化しています。それで良いのです。その上で貴方が側にいる。今のあの方にとって、それが一番の幸せなのです。貴方は余計な事をする必要はないのです。貴方はシィナ様の側にいて、彼女を満たす事が出来れば良いのです。その為ならお二人が夜な夜な愛し合う事さえ私は受け入れています。」
だが、それが本当に彼女の幸せなのか?矛盾故に人は愛おしいと思い込む事がシィナの幸せと、本当に言えるのか?
「あの人と対峙した僕だからこそ、言えます。あの人は人を思いやれる人間だと思います。ただ、その出生が特別で、自分の使命と人という存在と天秤を掛け続けて来た可哀想な人でした。」
「その言葉……やはり、貴方はエファン・ドゥーリアをご存じなのですね。直接体験したような感想。その肌で感じ取ったような感想を貴方は私に言っています。」
ミリナは関心を抱く。だが、それでも彼女の意見は揺るがない。樹齢が何千年も迎えている巨木の如き、固い意志だ。
「僕はあの人を悪人だとは思いたくありません。彼なりの哲学があったのも事実だと思います。ですが、シィナの考え方は明らかに悪い方に影響されてるだけです!いずれは多くの人を巻き込んで不幸にします!そして、自分にも振り返ってくる……」
偉人や成功者、メンターと呼べる人間の言葉は何も持っていない者に大きく聞こえるものだ。だが、その言葉には時に背景因子がある事がある。その言葉の背景が理解出来ないでその人間の思想を盲信した時、解釈の誤りが生まれる。それが暴走した時、人は判断を誤ってしまう。
それを止める人間がいれば良いのだが、ミリナはシィナを肯定する立場。だからこそ、この場での話し合いは平行線を辿る以外にないのだ。