光と殻   作:すからぁ

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第三話 奇妙なクリスマスパーティ その1

二人の時間は瞬く間に過ぎた。この間25分。レイにとって瞬く間の時間だった。彼は、珍しく充実感を持って過ごす事が出来た様子だった。

「楽しかった!ありがとう。レイに乗せてもらって私、嬉しいな。」

銀髪が風で靡く、シィナ。彼女の言葉からは明らかに嬉しさを込めているようだ。

「僕も、楽しかった。人を乗せて走らせた事はなかったから……」

「レイなら私、いつでも良いよ」

朱色の眼は青色の眼を見つめる。彼女は何故レイをこれ程に誉めているのだろうか。

「レイという可愛さと、バイクという男らしい乗り物のギャップが、また魅力なのかも。」

彼女の言葉はレイを誉めてばかり。この事に疑問を抱くレイだが、それ自体は悪い気はしないのだ。

「あの、約束の時間は……?」

「ああ、そうだった」

まるで友人とのパーティに関しては余り興味が無さそうな印象を持つシィナ。

「あのね、レイ。これを渡すから、着替えて欲しい。」

すると、今度は持参していたリュックから紙袋を取り出した。どこかの服屋で買ったのだろうか。リュックに入れられた為にやや、皺が目立つその紙袋。人に対して渡すにしては見栄え的には良くない印象は持つ。

 だがレイはそれを気にする事なく受け取った。

「あ、ありがとう。プレゼント……かな。」

「少しだけ早いけど、クリスマスプレゼントだよ。」

シィナは笑みを浮かべた。確かに今の時期は12月。オーストラリアの12月は北半球と違い、真夏だ。それでもクリスマスを祝う習慣があるのは変わりない。

 気になった様子のレイは紙袋の中身を見る。そこにあったのは――

「え、これは……」

「フフ、レイに似合う服。」

それは、白地のワンピースだった。明らかに女性が着用するようなものを、彼女はレイにプレゼントしたのである。

「麦わら帽子もついでに。あとはサンダル。」

「え……ええ!?」

それは、一夏の草原などで少女が着るようなファッション。麦わら帽子に白いワンピース、そしてサンダル。しかもワンピースのスカートは脚が丸見えである。

 レイは今まで何度か女装をさせられた経緯がある。いずれもおふざけの中で。今回、まさかシィナによってそのような服装をチョイスされるとは思わなかったのである。

「なんで、こんな格好を!?」

レイの声が高揚している。明らかに恥じらいを感じているのだ。

「うーん、だって私友達を呼ぶとは言ったけれどレイの事を男として呼ぶとは言ってなかったもの。」

「そんな!今すぐにでも訂正してよ!」

「ふふ、嫌。だって男の子が来るって知ったら良い顔をしないかも知れないから。」

意地悪だ。その中でシィナは微笑している。

「レイは女の子みたいに綺麗な顔立ちですもの。それも違和感なく着られると思う。夏服の少女、レイ・キレス。キミは女の子として友達とのパーティに参加してもらう事になるの。」

と言いながら、シィナはレイの額に示指を突き付けた。

「私ね、ちょっと試したい事があったの。レイのような綺麗な男の子が女の子の格好をしてパーティに参加したら、違和感なく溶け込めるのか……みたいな?」

彼女の意図が理解出来ない。何をしたいのかが、謎すぎる。

「どうして、僕はこんな役回りばっかり……」

とはいえもう、シィナがレイの事を女の子として友人に紹介をする気でいるのならば従うしかない。そこへ男の自分が来たら妙な事になりかねないからだ。

「フフ……」

と、揶揄うシィナ。やはりレイを弄んでいるのだろうか。

 

 

 3分後、物陰からレイはシィナが渡した服を着て彼女の前に現れた。ライダースーツを着ていたレイはどこへ行ったのか。

 麦わら帽子はレイの特徴的な金髪をより美しく際立たせている。白いワンピースも、レイの華奢な腕と、細いが色香のある脚が違和感なくシルエットを描いている。サンダルも、同じ。

 これだけ見ればレイは全く少女と言っても違和感がない。自分でも、何故これ程に女装が似合ってしまうのだろうと嫌になる程だ。

「素敵だよ、レイ。」

と言いながらシィナはEフォンでレイの姿を撮った。

「じゃあ、行こう」

と言って、シィナはレイの手を繋いだ。彼女のペースに乗せられるレイは、ただ、違和感を覚えながら彼女の友人のクリスマスパーティに向かうのだった。

 思えば、あの壮大な出来事の最中でもレイは何度かそのような経験をしている。戦いの合間の話ではあるが、どうしてもレイは女装をさせられやすい。

 彼はノーメイクだ。しかしその顔貌はメイクをした女性と何ら変わらない程に整っており、尚且つ美しい。自覚はないとはいえ、レイの容姿はよく誉められる事が多い。故に歪んだ方向に何度か襲われそうになったりもした。

 ある意味の楽しみではあるのだろうが、結局は彼自身のアイデンティティが失われているような気がしてならないのである。

(僕の役回りって、いつもこんな気がするなぁ……)

学校生活内ではどこか冷めていた印象を持つレイも、今はシィナの言葉に支配されているかのよう。レイにはそのような気質があるのかも知れない。誰かにリードされるという、気質が。

 

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