自分の書いたゲーム転生小説の主人公に成り代わってしまった主人公の話   作:ぱgood(パグ最かわ)

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こんにちは ぱgoodです。

17話の後書きにおまけを追加しました。



久しぶり‼今日も出番が少ないけど主人公です。

☆☆☆

 

昨日は凄い疲れた。

何故か信濃さんが俺の部屋にいて、勝手に部屋に泊まろうとしたのだ。

それを何とか説得して…………。

いや、全然説得になってはいなかったか。

 

俺がどれだけ男女同じ屋根の下で過ごすことが危険か説いても全然聞き入れてくれないから最終的に力づくで追い出す形になってしまった。

 

勿論、信濃さんが本気で抵抗していたら、俺の方が成すすべもなく倒されていただろう。

 

だからまあ、俺の本気度が伝わったから、自主的に出て行ってくれたと言った方が正しいのかもしれない。

 

うん、……少し、悪いことをしたな。

 

次あった時、もう少し優しくしよう。

 

 

 

 

 

ところで、話は変わるんだが俺は今寝ている筈だ。

 

うん、今も意識がふわふわしており、瞼も閉じている。

ただ、この通り、考え事が出来るくらいには浅い眠りだ。

 

というか、何か俺のベット、固くないか?

あと、冷たくない?

 

布団はどこだ?

 

何か、おかしいな、この感じ。

 

俺は重い瞼を開け、体を起こす。

 

そして、ベットに触れる。

 

うん…………床だ。

紛れもなく床だ。

 

俺は何で、床で寝てるんだ?

そう思い、自分のベットに目を向ける。

 

………………………………何でいるんだ?

 

俺の視線の先には大の字で気持ちよさそうに寝ている信濃さんがいた。

 

目を擦る。

 

だが、やっぱりいる。

 

夢じゃないみたいだ。

 

どうしようか?

 

俺は時計を見る。時刻は現在朝の四時。

この時間に起こすのは流石に可哀そうだよな。

 

俺は仕方なく、自室にあるソファへと移動し、横になる。

一応、男子の友達が部屋に遊びに来た時のことを考えて買っていたソファだったのだが、まさかこんな使い方をすることになるとは………………。

 

俺は、予備の毛布を取り出し、自分にかけると再度、夢の中に落ちていった。

 

床よりはやっぱましだな。

 

 

 

 

 

 

 

「……い、~い、起きろ~、朝だぞ~。」

 

誰にかに肩を強く揺すられる。

初め、地震かと勘違いしたほどだ。

 

しかし、人の声を聞き、どうやらそういうことではないと理解する。

 

俺は重い、非常に重い瞼を開ける。

 

そこにはやはりと言うか、何と言うか、信濃さんがおり、俺を見下ろしていた。

 

「おは、ようございます。」

 

何とか重い体を起こす。

やばい、全然休めた感じがしない。

 

床で寝てたのと、夜に一度起きているのが効いている。

片手で頭を押さえながら、現状を分析する。

 

俺のその様子に信濃さんは呆れたように息を吐く。

 

「も~う。ちゃんと休んで昨日の疲れを癒さなきゃ駄目だよ?

常在戦場の心構えだよ‼」

 

信濃さんは堂に入ったファイティングポーズを取りながら、俺に忠告をする。

 

…確かに、寝る場所が床だろうが、ソファだろうが、疲れを癒さなきゃ駄目だよな。

現在はかなり恵まれた環境にいるし、プロの防人も野営をすることは滅多にないが、親父の故郷である戦人界では野宿することも珍しくなかったそうだ。

 

というのも、戦人は人間と違い容易に魔法が使えるため、文明レベルはそこまで進んでいないのだとか。

そのため、街と街を移動する際には野宿することも珍しくないと言っていた。

 

流石に戦人界にいく事はないと思うが、それでも、常在戦場の心構えは確かに必要ではあるだろう。

 

……………正直、少しだけ、俺のベットを勝手に使った信濃さんに言われるのは釈然と

しないと思ってしまう自分もいるが……。

 

いや、そう思ってしまうのは俺が未熟であるが故か。

 

おそらく、信濃さんは俺に常在戦場の心構えと共に心を常に冷静に保つ修練を付けてくれているのだ。

 

だから、この程度で心を揺さぶられては駄目だ。

 

ま、まあ…………それはそれとして、

 

「そ、その、昨日も言いましたが、男女が同じ屋根の下、それも同じ部屋で一夜を過ごすなんて良くないと思います。」

「もう、ま~た、そんなこと言って、才君は先輩の息子さんなんだからそんなこと気にしなくて良いの!」

 

いや、俺が親父の息子であることとこの件は一切関係がないと思うのだが………。

もしかして、これも、修行の一環なのか?

 

俺が少しでも、彼女に、その……………邪な思いを抱いたら、首を掻っ切る、的な?

 

この先、女性型の魔物が現れても、動揺しないための修行?

 

いや、もしかしたら、魔力持ちの犯罪組織を相手にした際の対処法か?

 

確かに、犯罪組織の中にはマイクロビキニを着た魔剣士もいると聞いたことがある。

そういうことか?

 

ずっと先を見て、指導してくれているのか?

彼女は。

 

いや、いや、でも、やっぱり、良くないだろ。

 

そこまで早急にやるべきことでもないし。

 

「んんん、信濃さんの言いたいことは何となく分かりました。

ただ、やはり、男女で部屋は別れた方が良いと思います。」

「……なるほど、そう言う年頃か」

 

年頃?

いや、成程、信濃さんもまだ、そう言った修行を行う時ではないと悟ったのだろう。

そういう女性への免疫っていうのは徐々に時間をかけて自然と身に着けることだからな。

 

こんな風に強引に進める必要はない。

一歩一歩、その……女性との経験も積んでいけばいい。

 

まぁ、まだ、彼女もいない身ではあるが……。

 

そう言えば、他のパーティーメンバーはどうなんだろう。

今日、麗に聞いて見るか。

 

因みにこの後、信濃さんが俺の部屋で着替えを始めたので、俺は急いで部屋から出て行った。

 

しかも、着替えが終わった後、食堂にも、付いてきた。

 

そのせいで、俺は男子寮に学園外の女性を連れ込む、変体野郎と呼ばれるようになった。

 

何でこんなことに……………………。

 

☆☆☆

 

ぐぐぐっと伸びをする。

今日も良い朝だ。

 

もう少し寝ようか?

 

まあ、そうしたくても、出来ないんだけど、もう六時半だし。

俺は仕方なく、誠に遺憾ながら、支度を開始する。

 

まずは、部屋にある洗面所に行き、顔を洗い、髪を整え、歯磨きをする。何故かうちの寮ではトイレと風呂は共同なのだが、洗面所だけは設置されている。噂では朝の時間に共同の洗面所がごった返すため、洗面所だけ後付けで作ったと言われているが、正直真相は闇の中だ。

 

歯磨きを終えた俺は空のクローゼットの扉を閉め、クローゼットの横についている制服模様がついたボタンを押す。

すると、ガチャンという音が鳴る。

 

中を開くと、クリーニングしたての制服が入っている。

基本的に一日来た制服はこのクローゼットの中に入れボタンを押すことでクリーニングを行うことが出来る。そして、次の日の朝に再度ボタンを押し、制服を取り出す。

仮にクリーニングが途中だったとしても、予備の制服も入っているため安心だそうだ。

 

俺はそうして、取り出した制服に袖を通していく。因みに、私服に関しても私服用のクローゼットに入れれば同じように対応してもらえる。

 

大変良き。

 

ただそれはそれとして正直、休みたい。

もっと、休みたい、だらだらしたい。

でも、仕方ない。

 

このままだとご飯をくいっぱぐれることになるし…………。

 

それは嫌だ。

 

一生休みでいい。

マジで。

 

ただ、そうすると何も口に出来ずに死ぬ。

 

布団も、雨風を防げる住処もなくなる。

 

ほんと、世の中って不自由に出来てるよね。

 

俺はそんな風にどうでもいいことを考えながら、着替えを終える。

 

何時もの制服姿だ。

 

そして、制服に着替えた俺は毒ノ森君の部屋をノックする。

 

「おはよ~、毒ノ森君」

 

俺がそう呼びかけると、扉がガチャリと開き、毒ノ森君が出てくる。

 

毒ノ森君の姿は既に着替えを終え、寝ぐせなども整えられていた。

流石、準備が早い。

 

因みに、今日、俺が毒ノ森君を呼びに来たが、これはお互いに交互で行っている習慣だ。

まあ、相手が起こしてくれるから自堕落でいいかっていう考えに陥らないようにしている感じだな。

 

俺は毒ノ森君と共に、食堂に向かう。

 

しかし、そこで俺は違和感に気づく。

 

いつもはもっと静かな筈の朝の食堂がやけに騒々しいのだ。

 

ただ、悪いアクシデントが起きているって感じではないような気がする。

もっと、こう、お祭り騒ぎに近いというか、転校生が来た教室のような、そんな物珍しいものを見つけたときのような騒々しさだ。

 

俺は何が何だか分からず、首を傾げるが、食堂の中に入ったことでその正体に気づいた。

 

うん、真道君が男子寮に小毬さんを連れ込んでいたのだ。

 

成程、これは騒ぎになるわけだ。

 

「あれ、どう見ても女性だよね?しかも、昨日教室に乱入した」

「うん、そうだよ。真道君のプライベートに関わることだから、詳しくは言えないけど……」

 

にしても、真道君こんな大胆なことをする子だったとは………、俺の小説では十八禁ゲームという設定ではないから、こんな大胆なことをしたりはしないのだが、本来の真道才という人間は割と肉食系だったりするのだろうか?

 

もっと、奥手な人間だと思っていたのだが、……………………既に剣凪さんたちにも手を出しているのだろうか?

 

彼がガツガツいく肉食男子ならパーティーは全員女性だし、成り行きとかでそうなっていても可笑しくないのか?

 

いや、流石にないか?ないよな?

一応主人公だし、とはいえ、パーティー内の誰かと恋仲になっていてもおかしくはないか。仮に、癒希さんとかが真道君の手籠めにされていたら、棚加君は草葉の陰でハンカチ嚙みながら号泣してるんだろうな…………。

 

まぁ、だからといって俺が何か出来るわけでも無いんだけど………。

 

うん、他人の人間関係に口出しは出来ないからね!

すまん、棚加君、成仏してくれ。

 

俺は心の中で棚加くんに合掌する。

 

「あれ?君、確か、審判を買って出てくれた子だよね?」

 

心の中で合掌している俺に対し、小毬さんが話しかけてくる。

後、別に買って出た訳じゃないです。

 

「いえ、別に「奇遇だねぇ!ここで何してるの?」

「……えっと、ここ男子寮の食堂なので普通に朝食を取りに来ました。」

「ふ~ん、そっか~。私たちと一緒に食べる?」

「信濃さん!あまり、音長たちを困らせないでやってくれ!」

 

小毬さんは俺達を自分たちのいる席まで案内しようとするが、そこで毒ノ森がストップをかける。

 

正直凄い、ありがたい。

元々、真道君と仲が良い男子は基本的に陽の人たちだから、何と言うか、話も合わないし、何より、今は小毬さんの存在もあり、凄い注目を浴びている。

 

辛い、陰の者にとって注目を浴びるのは吸血鬼が日光を浴びることぐらい辛いんだ。

 

というか、人が寄り付くような明るい(色んな意味で)場所とか苦手だし、俺ら実質吸血鬼では?

 

流石に暴論か……………。

 

「え~、別に音長君だって困って無いよ~。それに、私だって、他の人から才君の話聞きたいんだよ?」

「分かった。だったら、後で剣凪たち合わせるから、それまで待っててくれ」

「やった~。」

「すまん、迷惑かけたな。音長、毒ノ森」

 

そう言うと、真道君と小毬さんは嵐のように去っていく。

 

「なんか………凄かったね?」

「うん、凄かった。」

 

俺と毒ノ森君はお互い顔を見合わせ、そう言うと強く、強く頷いた。

 

過去一、毒ノ森君と気持ちが一致した気がする。

 

☆☆

 

信濃さんが押しかけてきてから、俺と彼女は常に一緒にいるようになった。

というか、信濃さんが俺にくっついて離れないのだ。

 

流石にトイレやお風呂は離れてくれるけど、それ以外の食事、寝るとき、授業中いつも、彼女がついて来る。

そのため、今では信濃さんも大分、有名になった。

 

『真道が女を連れて来た』というありもしない噂と共に。

 

パーティーメンバーに弁明するのも大変だった。

麗や千弦、挙句の果てには愛華にまで問い詰められた。

 

唯一、カルミアだけが、俺を受け入れてくれたが、それでも、俺と信濃さんの関係に関しては誤解していた。

 

 

まあ、もう終わったことだし、言っても仕方がないか……………。

それじゃあ、弁明が終わった今、信濃さんが何をしてるかと言うと。

 

「頑張れー。…右から魔物来るよ‼」

 

信濃さんの声援と共に、俺達は鬼人型の魔物を倒す。しかし、T字路の右側から、新たにもう一体鬼人型の魔物が姿を現した。

信濃さんの指示通りだ。

 

「麗フォローを頼む」

「あ、ああ」

 

俺は自分が前に出ると、敵の右拳を受け止める。

だが、鬼人は直ぐに左の拳を俺に向ける。それを麗が割り込み受け止めた。

そう、信濃さんが何をしているかと言うと一緒に鬼人タイプの足軽組頭級ダンジョンまでついてきて、何故か遠くで応援と指示出しをしてくれている。

 

因みに、攻撃魔法士、防御魔法士、回復魔法士、魔剣士が揃った俺達、特別防人部隊は現在、足軽組頭級まで自由に出入りできるため、信濃さんは特に監督役という訳ではない。

 

だから完全に善意で監督役を引き受けてくれているということだ。

ただ、信濃さんは何故か両手にハンバーガーやジュースの入った紙袋を持っており、なんというか、完全にスポーツの観戦に来たファンみたいな恰好をしている。

 

「…くっ、済まない。押し負ける」

 

どうやら、鬼人の膂力は麗の身体強化を超えているらしい。

麗はそう言うと愛華たちがいる所まで吹き飛ばされてしまう。

 

「いや、いい。助かった麗。」

「麗ちゃんそこは受け流しだよ。後、愛華ちゃんも今の所で防御魔法を使って」

 

うん、現在の護懐として活躍している人から直々に指導してもらえるのは凄いありがたい。

俺達の動きは確実に以前よりも良くなっている。

 

ただ…………。

 

「よ~し、私も出るよ。」

 

そう言うと、信濃さんは魔力波を放ち、〈土球〉を放つ。

 

そして、敵はミンチにされた。

魔物は俺達に意識が言っており、防御姿勢も取れてなかったので、一瞬で勝負が決まる。

俺達だけではこうはいかなかっただろう。

紛れもなく、彼女の力が決め手となった勝負だった。

…そう、俺達の力、ではなく……………………。

 

「…え、えっと。信濃さんは見ていてくれて、良いですよ?ピンチという訳でもないですし」

「駄目だよ‼ピンチになってからじゃ、遅いんだから!」

 

正論だ。

確かにダンジョンは危険の伴う場所であり、怪我をしてからでは遅いかもしれない。

ただ、このまま、信濃さんにおんぶに抱っこで今後やっていけるのか不安があるのだ。

 

最近はやけに事件に巻き込まれることも多い。

今もネットが急に使えなくなるという事態に陥っている。

 

今のように、信濃さんに手伝って貰ったままの状態で、信濃さんが居ない時に、緊急事態への対処が果たしてできるのか、その考えが頭を過る。

 

焦っていると言ってしまえば、それまでだが……………。

 

「大丈夫、私を頼って!」

「…………え、えっと、ありがとうございます。ただ…………」

「あっ。」

 

俺が言い淀んでいると信濃さんが目を大きく開き、何かを察する。

そして、目を瞑る。

 

 

…………悲しませてしまっただろうか。

 

慌てて、言葉を探す。

 

「い、いや、凄く助かってて、ここまでスムーズに抵抗力上昇(レベルアップ)出来たのは信濃さんのお陰だと思ってます。ありがとうございます。それに、護懐の人にこうして指導してもらえる機会なんて全然ないですし、「大丈夫、分かってるから」」

 

そう言うと、信濃さんは悲し気に目を開け、俺を見る。

その表情に俺の思考が一瞬止まる。

 

「…良いんだよ。だって才君は……………………」

 

不味い不味い、何かフォローしなくては、俺の思考は混乱から空回りする。

どうすれば傷つけずに済む?

 

どうすれば笑顔にさせられる?

 

俺は必死に頭を回す。

 

だが、俺が言葉を紡ぐよりも先に、信濃さんが口を開いた。

 

 

 

 

 

 

「…………………………思春期、だもんね」

「はっ?」

「分かった。私はいなくなるよ。後は頑張れ‼」

 

信濃さんはそれだけ告げると、謎の移動手段でもってその場から煙のように消えた。

 




プチおまけ

棚加「真道お前、癒希さんに手を出してみろ。こっち来た時にぶっ〇すからな?」

☆☆☆

こんにちはぱgoodです。
これからはおまけは後で差し込む形式にしていこうと思います。
取り敢えず、差し込み次第、活動報告で報告します。
また、次話を投稿するタイミングでもお知らせします。
すいません。よろしくお願いします。

☆☆☆
おまけ

信濃は勇利と手を繋ぎ、防人本部の近くにある映画館へと来ていた。

「勇利、私映画館は初めてだぞ」

信濃は目をキラキラさせながら、勇利を見上げる。
勇利にも防人としての仕事や家庭があるため、何時もどこかへ連れて行ってくれるわけでは無いが、時折、勇利と一緒に外出できることが信濃にとって何よりの楽しみだった。

「そりゃ、連れてきてよかった。」

「うむ、くるしゅうない。」

信濃はそう頷くと勇利を見上げて、問いを投げかける。

「それで、今日は何を見るんだ?」

「…………何にするか……見たいのはあるか?」

「だったら、少女防人マジカル・マリンが良い!」

「ああ、日曜の朝にやってるアニメか」

魔法少女マジカル・マリンとは日曜の朝八時半からやっている少女向けアニメだ。

ストーリーに関してはいつの間にか家に置いてあった魔力が得られるマジカルキャンディーという不思議なアイテムをのど飴と間違えて食べてしまった少女マリンがマジカルキャンディーによって得た絶大な魔力を活かし、防人として活躍する話となっている。

略称はマジマリであり、少女から大人の男性に至るまで非常に人気な作品となっている。何と現在、毎週地上波で放送されているもので6作目となる長寿番組だ。

ここまで長く続けられた理由としては子供と大人の男性からの人気の他にも国が出資をしているということが要因の一つとして挙げられる。

因みに余談ではあるが、他に国が出資している子供向け番組としては防人ドライバーや防人部隊というものも存在しており、こちらは少年からの根強い人気がある作品だ。

勇利は信濃のそんな子供らしい一面にほっこりとした気持ちになった。

「そうか、ノブはこのアニメが好きなんだな」

「ああ!このアニメが好きだ!孤児院でもこのアニメは朝になるとよくかかっていたんだ。」

「へ~、孤児院じゃあ、他には何か見たりするのか?」

「後は防人ドライバーとか防人部隊とかがかかってたりもしたぞ!でも私はこのアニメが一番好きだ。」

「そっか、ノブはどの子が好きなんだ。」

「レクイエム‼」

信濃は青髪の少女を指さし、答える。
信濃の指さした少女は垂れ目が特徴的なロングの髪のお淑やかそうな女の子だった。

「どんな子なんだ?」

「レクイエムは凄い頭が良くて、敵の能力とかを直ぐに言い当てるんだ!」

「そりゃ、頼もしいな。」

「ああ、私もいつかそんな知的な女になるんだ!」

「ははは、でっかくなったらな」

勇利は信濃の頭を撫でながら、そう言い聞かせる。
何となくだが、興奮しながら、レクイエムについて語る信濃に危うさのようなものを感じたのだ。

「ノブ、ポップコーンはいるか?」

「いる!」

「飲み物は何が良い?」

「オレンジジュース!」

勇利は信濃の分のオレンジジュースとポップコーンと自分の分のウーロン茶を買い、劇場のなかへと入っていった。


おおよそ、80分にわたる上映が終わり、信濃と勇利は劇場から出てくる。
信濃はその道中、いかにレクイエムが格好良かったかを語っていた。

「敵がガキ―ンって攻撃を防いでどうやるんだって時に何で敵がガキ―ンってしてるか当てたの凄かっただろ!」

「ああ、まさか敵が強い衝撃を加えられると硬くなる体の持ち主だったとはな。全然気付かなかった。何と言うか頼れる参謀って感じだなレクイエムは」

「だろ⁉レクイエムはカッコイイんだ!」

勇利は信濃の言葉に同意する。

二人は昼ご飯を食べるため、劇場の近くにあるレストランで昼を食べながら更に映画についての感想を言い合う。

しかし、そんな折、勇利の携帯に電話がかかってくる。

「わり、ちょっと電話に出てくる」

「わかった!」

信濃が大きく頷くのを確認した勇利は外に出て、電話に出る。どうやら、防人本部からのようだ。

「もしもし、勇利だ。どうかしたか?」

『おお、無二、お前に話したいことがある。至急、防人本部に戻って来てくれ。信濃を連れてな』

「なに?信濃に何か用か?」

『ああ、心海(ここみ)にあるとされていたダンジョンの位置が特定された。そのため、心海市の奪還の為の大規模作戦が開始されることになった」

「なに⁉それでなんで信濃が関係してくる。」

『なに、あの子にも今回の作戦に参加してもらうことが決定した。ただそれだけだ。』

「何故、そうなる。あの子が防人魔法学園を卒業するまでは戦いには出さない約束だろう?」

『我々はそれだけ、今回の作戦に重きを置いているんだよ。』

「……子供だぞ?」

『だが、そこらの防人よりも強い。いや、既に君たち護懐を除けば勝てる者の方が少ないだろう」

「……………。それでも俺は反対だ」

『先も行ったが、これは既に決定事項だ。そんなにもあの子が大事なら、お前が体を張って守ればいいだけの話だ」

それだけ言うと勇利との通話は切られ、ツーツーという音だけが勇利の耳に届く。

「……クソっ」

勇利のその声は誰に聞かれることもなく、ただ、嫌味な程良く晴れた青い空へと消えていった。

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