こましゃくれり!!   作:屁負比丘尼

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私を忘れないで

 

(なんか、無駄に緊張してるな)

 

 窓から射す夕日から目を反らし、待合室のロビーで深く息を吐いた。

 

 デカい病院に入院していた経験があるにも関わらず、一戸建ての小さな個人院に強い圧迫感を感じている。

 

(煙草が吸いたい……)

 

 先ほど心療内科の向かいにあるコンビニでキメたヤニはとっくに効力を失くしているようだった。

 

 わざわざ竹行さんを頼ってまで取り付けた匿名患者の治療相談。それがいざ目前に迫っていると思うと、どうにも緊張してしまう。

 

 貧乏ゆすりが止まらないのがみっともなかった。

 

(……ん)

 

 その不作法な行いのせいか、ふと受付の人と目があった。

 

 まだ俺の体から煙草の匂いが漂っているのか、その人は自然に鼻を抑えて視線を逸らす。

 

 清潔な仕事着の受付係は『あぁーはいはい、そっち系の受診者ね。わざわざ閉院後にアポを取ってるっていうから、もっと珍しい心病の方かと……』といった顔をしていた。

 

(ち、違うんすよ。俺が心療内科に自分から足を運ぶわけないじゃないですか。ヤニカスなんかじゃないんですし)

 

 心の中で無意味な言い訳を並べながら、俺は緊張を誤魔化すために酒入りの水筒を呷った。

 

************************************************************

 

 約束の時間を少し過ぎた頃、受付の人から名を呼ばれた。

 

 案内されたのは診察室ではなく、来客用の応接室。

 

 なぜ診察室ではないのだろう、と一瞬考えたが正規の受診ではない事を思い出し自然と腑に落ちてソファに座る。

 

 受付の人が退出し、着席して10分後、ガチャリと応接室の扉が開いた。

 

「いやぁーどうもどうも。ごめんね遅くなって。最後の診察が長引いちゃってね」

 

 そう言って入ってきたのは、鳥の巣みたいな頭髪をした長身の男性。

 

「あ、いえ、こちらこそ無理なお願いして申し訳ありません」

 

 慌てて席を立ち、急いで挨拶を返す。

 

「あぁいいよいいよ、座って座って。あんまり仰々しい感じだと、私も緊張しちゃうから」

「そう、ですか。ではお言葉に甘えて」

「うん……じゃあまずは早速、挨拶から。山田こころクリニックの山田です」

「ご丁寧にどうも。斉賀竹行の紹介で来た陣内梅地です」

「はい、陣内さんね」

 

 形式的な挨拶が終わった後で、失礼にならない程度で目の前の山田先生を一瞥する。

 

 第一印象は『なるほど。これは確かに心療内科の先生ぽいな』だった。

 

 背の高さのせいか丈が短くて合っていない白衣。フレームがずれた眼鏡。清潔感はあるが整ってはいない天然パーマ。

 

 人によってはだらしがないと判断されそうな風貌だが、気取らないそのスタイルからは強い親しみやすさが醸し出されている。牧歌的という表現がこれほど似合う人間は稀だと思った。

 

「それでですね、今日わざわざお時間を取っていただいた理由なんですが」

「えぇ、えぇ、大まかな概要は斉賀先生から聞いているよ。匿名患者の治療相談だったね」

 

 山田先生はのんびりと自然に席に座り直す。俺も同調してもう一度ソファに座した。

 

「あ、これだけは先に言っておくけど本来なら第三者の相談は例え家族でも受け付けてない。だから、今回はどうか特例という事でよろしく頼むよ」

「はい、分かりました」

 

 暗黙に、今回の相談は他言無用でという事らしい。

 

 どうやら竹行さんは結構無理を通してくれたようだ。

 

 軽い面倒事を引き受けた報酬としては破格すぎる。……今年は竹行さんの子供たちに、従兄弟である陣内お兄さんが初めてのお年玉をプレゼントさせて貰おう。

 

「いやぁそれにしても青春だね。女の子の傷心を癒すために、少しでもできることをしようだなんて。私はどうにもこの手の話には弱くってね」

「へ? い、いえ、あの、そんな……」

「あぁごめんごめん。別に茶化したい訳じゃないんだ。立派だと思うよ、こういう職に就いた人間としては特にね」

「ど、どうも」

 

 改めて口に出されると、言いようのない恥ずかしさを感じてしまう。本職を前にして身の程知らずにもほどがあるよな、俺……。

 

「さて、世間話はここまでにして相談会を始めようか」

 

 山田さんは持っていた大きなタブレットを起動し、そちらに目を落とす。表示されているのは俺が事前に伝えておいた匿名患者(安瀬)の情報だろう。

 

「母親を亡くした際のショックで、思い出すと落涙が止まらなくなるか…………まぁ私から言わせてもらえば、この手のやつは慣れきった心身症(しんしんしょう)だね」

「心身症、ですか?」

「ん、あぁ、ストレスによって身体にまで何らかの疾患が発現する事を心身症と言うんだ。ごめんね、いきなり専門用語使っちゃって」

「え、あぁ、いえ」

 

 心身症(しんしんしょう)

 

 どこか聞き馴染みがある病名だった。

 

 たしか昔、佐藤先生が俺のヘンテコ体質をそう表現した事があった。それ以来、俺もこの体質は心身症と言われる物なんだと定義付けていたが……。

 

(……俺と安瀬が同じ症状?)

 

 それはない、と自分で自分を強く否定する。

 

 俺と安瀬では、そこに至る経緯への重みがまるで違う。そもそも俺の方には実害がないのだから病気なんて大仰な物ではない。

 

 これからは名称を前に戻して、ヘンテコ体質とかで通すようにしよう。

 

「それで、先生。その心身症を直すためにはどのような療法が効果的なのでしょうか?」

 

 自身のヘンテコ体質について結論を出した所でスパッと思考を打ち切り、俺は今回の相談内容の本質を問うた。

 

「そうだね……専門的な話をしても分かりづらくって回りくどくなるだけだろうし、まずは率直に結論から話そうか」

「はい、お願いします」

 

 俺がそう言うと、山田先生はタブレットをテーブルに置いて、真剣な顔つきでこちらを見つめた。

 

「何をしようが、完治は厳しい。方針を変える事を強く勧めるよ」

「……!!」

 

 予想だにしていなかった真正面からの否定に、動揺を隠せなかった。

 

「そ、それは……なぜですか? やっぱり俺がずぶの素人だからですか? それとも友人ぐらいの関係性じゃどうにもできない事案なんですか?」

 

 意思に反して口が勝手に回り、矢継ぎ早に質問を飛ばす。

 

「ん~、そうじゃないんだ。まずね、完治という前提が間違っている」

 

 自分でも分かる焦燥感を目の前にしても、山田先生は相変わらず緩やかに対応する。

 

「そうだな……友人でも知り合いでも良いから大怪我をして後遺症が残った人が周りに居ないかな?」

「……まぁ、1人だけ居ます」

 

 俺が真っ先に思いついたのは当然、猫屋の事だ。

 

「心というのは医学的に言えば脳という1つの臓器だ。傷ついて壊れてしまえば、完全に元通りにするのは難しい。物理的な怪我と一緒なんだよ」

「………………」

「陣内さん、人が親の死別を受け入れるのに掛かる時間を知っているかな?」

「3年、ですよね」

 

 不安感からか、自分でも分かった簡単な質問に飛びつくように答える。

 

「よく勉強しているね。個人差は大きいけど、大体はそれくらいだと言われている。それで、君のご友人が母親を亡くしたのは何年前だい?」

「3年は……既に超えていると思います」

「そうだろうね。きっと喪失のショックが大きすぎたんだ。そのせいで閉じこもり期を中々抜け出せず、長いストレスで心身症が定着した…………親子仲が近しい子が陥りやすい典型例だね」

 

 多くの患者を診てきたであろうお医者様の的確な症状診断。それは専門的な用語が混じっているとは言え、多少なりともグリーフケアの知識がある俺には分かりやすかった。

 

 半端に理解できるが故に、余計に救いがないように感じてしまうほど。

 

「それ、なら」

 

 治らないと言うのなら、俺はどうすればいい。

 

 安瀬が心の奥で抱えている大きな古傷。それをもう一度開いてしまわないようにと、腫物を避けるようにして振る舞うしか俺にはできないと言うのか。

 

「そんな顔をしないでくれ」

 

 暗く沈んだ心の深海に、優しい声色が差し込む。いつの間にか下を向いていた顔がその光に引っ張られた。

 

「私が言いたいのはね、完治を目指すのではなく()()()()()()()()()方向にシフトチェンジしようって事さ。心のリハビリってやつだね」

「こ、心のリハビリ? 心も物理的な怪我と一緒ってことですか?」

「その通り。最終目的地は少し涙ぐむくらいに定めた方が現実的だ。あ、ごめんね、最初に驚かせるような言い方しちゃって。認識を改めた方が話が速いと思って」

 

 そう言って先生は罰の悪そうな顔をしてふさふさしたクセ毛を掻く。所作から申し訳ないという気持ちが直に伝わってきた。

 

「いえ、実際に分かりやすかったので助かります」

 

 現在進行形で重症のリハビリをしている友人がいる俺に取って、山田先生の話は実際に飲み込みが速かった。

 

「それで、具体的なリハビリ方法ってのはどんな感じなんですか?」

「ん~、本来なら投薬と心理療法のセットが最も効果的なんだけど……」

「お、俺に投薬はちょっと……医師免許なんてないですし」

「あははっ、だよね。なら環境改善による自然治療になるかな。まぁ事前の情報を見る限りそっちには何も言う事はないけどね」

「え?」

「笑顔が絶えない友人関係と秘密の共有者。そして何より暗い夜を1人で過ごさない環境……君が心がけているアプローチは既に満点に近いよ」

「……!!」

 

 思わず頬が緩みそうになったのを、咄嗟に抑え込んだ。

 

 正解が分からない中でずっと闇雲に模索し続けるのは、正直言ってずっと不安だった。

 

 また俺のせいで安瀬を傷つけやしないか。俺のやっている事は本当に正しいのかと。

 

「よく考えてるね。事前の資料から本気さが伝わってきたよ」

 

 それが本職の大先生に太鼓判を押されてしまった。

 

「減点対象はやや不規則な生活リズムと嗜好品の消費量かな。こっちは早めに何とかしようね」

「あ、あはは……そうですよね、はい」

 

 喜びもつかの間、改善するのが最も難しい点を指摘されて苦笑いで返す。

 

 俺1人が規則正しい生活をしようと言っても、そんな意見は3女に握り潰されるだけだ。何より、俺も夜更かしが好きな方なのも困る。嗜好品に関しては不可能なのでそもそもどうしようもない。

 

「あの、お話をまとめるとこのままで良いってことですか? 余計な事をせず、現状を維持するのが最善だと」

「現段階ではね。何事もなければ次のステップに移るのは半年後くらいかな。生前の母親について尋ねてみるといい。『俺もどんな人だったか知りたい』なんて台詞と一緒に言えば悪い顔はされないと思うよ」

 

 故人の思い出を語って過去を発散させるのはグリーフケアの代表的な治療法だ。

 

 教本から学んでいつ切り出すべきかと悩んでいた療法だったが、先生の方から時期の目安を教えていただけるのはありがたかった。

 

「分かりました。本当にご助言助かります」

 

 懇切丁寧な助言に納得し、お辞儀するように頷く。

 

 顔を上げきる少し手前で、生暖かい安堵の息が漏れ出た。

 

「よかった……」

 

 胸から胃の底まで不安が落ちたような心境だった。ようやく確かな道しるべが見つかった。

 

(…………もし先生が許してくれるなら、これからも相談に乗って欲しいな。でもやっぱり迷惑かな)

 

 もちろん謝礼金は払う。通常診察の…………まぁ10倍くらいまでなら払うつもりだ。バイト漬けになっちゃうけど、こんなにしっかりとした先生が相談役になってくれれば心強いなんてもんじゃない。

 

「山田先生、今日は改めてありがとうございます。正直に言って、1人では闇雲に模索するしかなくって……あの、不躾なお願いだとはわかっているのですが、もしよろしければ────」

「うん、安瀬(あぜ)(さくら)さんについては今言った内容で問題ないと思う」

「え?」

 

 出てくるはずの無い名前を聞き、意識が呆然となる。

 

「あ、あれ? 俺、安瀬の名前って言いましたっけ?」

「いいや? 君は義理堅く何も言ってないけど」

「…………」

 

 何故か、ふと、部屋の温度が下がったような気がした。

 

「陣内さん、実は私と君は初対面じゃないんだよ」

「……す、すいません、記憶にないです」

「だろうね。まぁ初対面じゃないって言っても、飲み会帰りの嫁さんの送迎時に私が一方的に見ただけだからね。君は知らなくて当然さ」

「嫁さん?」

「山田と言うのは偽名なんだよ。カウンセラーをやってると、ほら、患者に執着されちゃう事が稀にあるからさ。その対策ってわけなんだ」

 

 はぁ、とも、へぇ、とも、相槌を打てなかった。俺の頭は、なぜ安瀬の事を知っているのかでいっぱいだった。

 

「どうも改めまして」

 

 そう言って、山田と名乗った目の前の優男はフレームの合っていない眼鏡を取り外す。

 

佐藤(さとう)甘利(あまり)の夫、佐藤(さとう)一馬(かずま)です」

 

 さとう、あまり…………佐藤甘利ぃ!?

 

「佐藤先生の旦那さん!?」

 

 知っての通り、佐藤先生は俺たち4人の担当教授である。俺たち以上に酒に強く、俺たちの奇行をフォローしてくれるありがたーい菩薩のようなお方。

 

「ははは!! いやぁ、世間は狭いね!! 私も竹行さんから依頼を持ち掛けられた時は驚いちゃったよ!!」

 

 カラカラと山田せんせ……一馬(かずま)先生は悪戯が成功した子供のように無邪気に笑った。

 

「君たちの事はよく甘利から聞かされている。超問題児たちの世話役をしているって」

「お、奥様にはいつもご迷惑をお掛けして大変申し訳ありません……!!」

「いいや、何だかんだ言って甘利も楽しんでいるようだし、謝る必要はないよ」

「そう言っていただけると非常に助かります……」

 

 いや、マジで迷惑ばかり掛けている。特に1回生の後半など酷かった。あの人が居なかったら、5回は停学になっていた事だろう。

 

「実は甘利は私の元患者でね。馴れ初めはそれさ」

「え?」

「甘利は大学教授の前は会社勤めでその時にまぁ……いろいろ苦労があってここに流れ着いたんだ。こう聞くと色々と合点がいく事があるんじゃないかな?」

 

 ……そう言われると、点と点が繋がっていく気がした。

 

 偶に出る社会人時代の苦労エピソードや、そもそも情報学科の先生が心身症とか言う専門用語を知っていた事だったりとか、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だとか。

 

 大学の教授ってのは、生徒に対して基本的にドライだ。中高の先生のように生徒の問題にはあまり取り合わない。

 

 だが佐藤先生は違う。先生は誰に対してもとにかく面倒見が良い。社会の荒波に揉まれないように、俺たち学生を慎重に導いてくれている。

 

 普段の先生は『退学されると面倒くさい処理がある』なんて言っているが……本音の所はもっと優しい物なのかもしれない。

 

「あぁそれと、君が私の職場に来ることは甘利には言ってないから秘密にしてね。甘利は私が関わることを絶対に良しとはしないだろうし」

「……?」

「いや、何でもない。こっちの話だよ」

 

 言葉を濁したと言うのに、一馬先生は何故かひどく楽し気な笑みを浮かべていた。

 

「それよりも、正体をばらした事だし今日の本題に移ろうか」

「はい? 今日の本題?」

「もちろん、()()()()だよ。陣内(じんない)梅治(うめじ)さん」

「お、俺??」

 

 この場に似つかわしくない自分の名前を聞いて、大きく首を傾げる。

 

 俺はお医者様に名指しで指名されるほどイカレてるつもりはなかった。

 

「そうだよ。アルコールを摂取すると性的欲求が霧散する、だっけ? はははっ、さっきのつまらない方とは違って、こっちは笑っちゃうほど珍しい症例だね」

 

 先生の声色に、急に嘲笑的な物が混じった。

 

 その雑な言い回しと声音がささくれのように胸に引っかかる。

 

「……つまらない?」

 

 聞き捨てならない発言だった。

 

 俺のヘンテコ体質は確かに笑える。だが、安瀬の方は雑に扱っていい物では決してないはず。

 

「あぁ。病死だろうと事故死だろうと、親なんて誰しもいつか亡くすんだからね。多いんだよ、その手の患者。初診の単価が良いから受け入れてるけど、正直言って飽きたよ」

「!!」

 

 打って変わって、一馬先生は態度は最悪だった。

 

 おおよそ医者とは思えない暴言。目の前の男は人を救う職業の人間が言ってはならないラインを平気で超えた。

 

「随分と……雰囲気が変わりましたね」

「裏表が激しいって甘利によく言われるよ」

 

 俺の非難の視線を、彼は飄々とした様子で受け流す。むしろ、彼は俺の怒りを楽しそうに受け入れていた。

 

「ふふっ、大事な彼女を貶されて怒らせちゃったかな?」

「……いえ。お願いを聞いてもらっているのはこちらですので」

 

 俺には同気相求(どうきそうきゅう)の毛がある。だが、珍しくも彼を好きになれそうにはなかった。クズの波長が合わない。

 

「不快になったのなら一応謝っておこう。でも、私は竹行さんとは顔見知り程度の仲だし、君と安瀬さんは私の教え子でも正規の患者でもない。元よりそこまで親身に接する義理はないよね」

「…………」

「あぁ、誤解しないでくれよ。安瀬さんの診察については真面目にやった。サービス残業でもしてる気分になったけどね」

 

 彼の話は個人的に苛立ちを誘うが、合理としては間違っていない。何より文句が言える立場ではないので、俺は特に何も言い返さなかった。

 

 ただ、疑問だけは早めに払拭しておこうと思う。

 

「ならそもそも、なんで今回の相談を受けてくださったのですか」

「それはもちろん、この道に携わる人間として君に興味があったから」

「俺のヘンテコ体質に……?」

「それだけじゃない。私が興味があるのは君の人間性だよ」

 

 一馬先生の瞳がすっと細くなる。今日の主題はここからだとでも言うように、彼は両の手を前で組んだ。

 

「甘利から聞いた話から私が勝手に推測したんだけどね。君って、女の子を転がすのかなり上手でしょ」

「はぁ?」

 

 いきなり話が思いがけない話題に変化した。

 

 それも、かなり不愉快な方向へと。

 

「…………女性関係は結構悲惨な経験をしてきた方だと思ってますけど」

EQ(感情知能指数)が高いって君みたいなタイプをいうんだろうね。感情への共感と調整能力がずば抜けているんだと、私は睨んでいるよ」

 

 俺の返答を無視するように、山田先生は持論をぺらぺらと語っていく。こちらが不機嫌になる事を分かったうえでの無視と饒舌としか思えなかった。

 

(EQってなに?)

 

 IQが高いとかなら嬉しい誉め言葉だが、そんな得体の知れないパチモンで褒められてもまるで嬉しくはない。

 

「人の感傷に敏感でその時にその人が一番欲している言葉を即座に導き出せる。きっと上辺だけ取り繕った私なんかより向いてると思うよ、この仕事に」

「…………」

 

 的外れにもほどがある賞賛だった。

 

 共感能力なんてのは、それこそ俺という人間の中でも最も低い能力だろう。

 

 俺の両親は健在であり、俺には怪我が原因で挫折した夢なんてない。そんな俺の共感性に欠ける薄っぺらい言動で、あの2人がどれほど傷ついたか。

 

「失礼ですがまるで当たってませんよ、その推測。俺がそんなに口達者だったなら、これまでの人生全てが上手くいってます」

「一部分だけ異常に突出してるんだろうね、君は。でないと、未だに誰の想いにも気が付いていない現状に説明が付かない」

 

 またも会話の歯車はかみ合わない。

 

 先生には俺個人の意見など、どうでもいいらしい。独りよがりに自分の見解を示せればそれで満足なようだ。

 

「そう言った訳だから、陣内さん。バイトとしてここで働く気はないかな?」

「はい?」

「個人的に、君の顛末(てんまつ)には興味がある」

 

 好奇心だけが伺える瞳が俺を舐めるように観察する。

 

「もちろんお給料は色を付けさせも貰うよ」

「……なるほど」

 

 やるわけねぇだろボケ、テメェさっき安瀬のトラウマになんて言ったと思ってやがる、ぶっ殺すぞ腹黒クソ眼鏡。

 

 ……と、返すのは簡単だ。

 

 だがメリットもある。金が欲しいのは大前提として、安瀬のような患者を何人も診ているこの人の経験は俺の悲願に大いに役に立つ。

 

 その場合抱えるデメリットは、俺たちの問題に面白半分で首を突っ込んできて引っ掻き回される事だけど……。

 

「悪い話じゃないだろう? もちろん君の心身症を軽減する手伝いもさせて貰うよ。放っておくと大変だろうしね、それ」

「帰ります。今日はありがとうございました」

 

 ダメだ、この人とはとことん噛み合わない。

 

 これ以上迂闊に彼との関係を深めるべきじゃない。想定したデメリットがきっと現実になる。

 

 そう見切りを付け、形ばかりのお礼を言った後で俺は荷物を持って席を立った。

 

「だろうね。あぁ、気にしなくていいよ。恐らく、二度と会う事はないさ。君らの結末は甘利にそれとなく聞くとするよ」

 

 元から断られる事を見越した提案だったのか、彼は俺を引き留めるそぶりを見せずに別れを告げる。

 

 終始からかわれていただけと分かり、退室する足が速くなった。

 

「あ、最後に1つだけ」

 

 ドアノブに手を掛けた所で、一馬先生が再び口を開く。

 

「陣内さん、ひどく暴力的になったり強い脅迫観念に陥った経験はないかな。なにしろトリガーがアルコールだからねぇ、はははっ。暴行沙汰とか起こさないよう心掛けた方が良いと思うよ」

「…………ご忠告どうもありがとうございます」

 

 先生の言葉の意味を深く考察するより前に、俺は不快感に従い部屋を去った。

 

************************************************************

 

 ──カシュッ

 

「あ゛ぁ゛、疲れた」

 

 コンビニで買ったビール缶を道端で空けて、心労を洗い流すために一気に呷った。奮発して買った第三のビールではない本物の麦とホップが物の数秒でなくなっていく。

 

「ぶふぅ……美味かった」

 

 飲み終えた缶を乱雑に握り潰し、自動販売機の缶捨てに突っ込む。お酒様を雑に飲み下すのは信条に反するが、俺にだって偶にはそうしたい時だってあった。

 

(確かに収穫は多かったけどよ。多かったけど……だけど、だけどなぁ)

 

 あれはない。

 

 お願いする立場であるために敬語だけは崩さなかったが、どうにも好きになれなかった。

 

(仕事はできるんだろうし色んな人の助けになってるんだろうけど、なんか…………なんかなぁ……!!)

 

 ぐぐぐと、知らず知らずのうちに眉間に皺が寄っていた。

 

 安瀬の事に関しては本当に助かっただけに、余計モヤモヤする。

 

 ていうか佐藤先生もよくあんな人と結婚したな。今度酒の席でそれとなくあの男のどこを好きになったのか聞いてみようか。

 

「はぁ……なんかマジで疲れたな、今日は」

「どうしたんすか、パイセン。ため息なんか付いて」

 

 眼帯と、毛先が跳ねたウルフカットに、雑な敬語口調。俺の独り言は、ごく当たり前のようにソイツに返された。

 

「それになんか荒んでるっすけど? 嫌な事でもありました?」

「──────おい」

 

 ひょいっと真後ろから現れた眼帯の後輩のせいで、俺の体は硬直した。

 

「な、なにシレッとした顔で居るんだよ、大場……!! テメェ帰ったんじゃなかったのか!?」

「実は別れた後、暇だったんでコッソリつけてきたんっすよ。えへへ……」

 

 大場はモノクル(片眼鏡)と簡易望遠鏡をポケットから取り出してこちらに見せてくる。猫屋が初めてバイト先に来た時にも使ってた物だ。

 

「えへへ、じゃねぇ!!」

 

 いきなり現れた後輩にわりと本気の雷を落とす。

 

「途中で遊びから抜けちまったのは悪かったけど、そんな物まで使ってストーキングなんてするな!! びっくりするだろうが!!」

 

 俺にだって当然知られたくないプライベートがある。それにわざわざ出待ちまでしているのがたちが悪かった。

 

「いやぁ、やっぱ悪いなぁと思って途中で引き返そうとはしたんっすけど、心療内科に入っていった所でちょっと目が離せなくなって。パイセンってお酒飲みすぎですし」

「んぐっ」

 

 こ、この場合は大場のストーカー行為が悪いのか、俺の常識知らずが悪いのか、どっちだろう。

 

 いいや、流石に6:4くらいで大場が悪いはず……。

 

「……本当にそんなんじゃねぇからな。ちょっとした野暮用があったんだよ」

「野暮用っすか?」

「これ以上の詮索はやめろ。いいな?」

 

 拒絶を声音に含んで、叱るように大場を牽制する。

 

「は、はいっす。調子に乗ってすいませんした、パイセン。ま、マジに反省します」

 

 大場はちゃんと聞き分けよく素直に謝ってくれた。

 

「そう……ならいいよ、もう。怒鳴って悪かった」

 

 俺も軽く頭を下げ、釣り合いを取る。……本当に詮索されたくない事だったとはいえ、少し怒りすぎてしまったかもな。

 

(あぁそれにしても、今日は驚きすぎてやたらと疲れるな…………あ、そうだ)

 

 よくよく考えれば、大場が俺が付けていたのは不幸中の幸いだったかもしれない。さっきまで変人の相手をしたせいで胸中に不満が溜まっていた所だ。

 

 帰路で雑談でもして、気分転換しながら帰るか。

 

「大場、帰りはバスか、電車か?」

「へ? 電車っすけど」

「なら俺と一緒か。駅まで一緒に帰ろうぜ。自販機でジュースも奢るから」

「え、せっかく待ってたのに直帰? それはちょっと……」

 

 帰宅を提案したとたん、大場は俯いてぼそぼそと小声で何かを呟き始める。

 

「そ、そうだ!! パイセン、ちょっと一服していきませんか? まだ夜ご飯まで時間あるっすよね……!!」

「んぇ?」

「実は私、この前初めて自分で煙草買ってみたんっすよ!! ほら、これこれ!!」

 

 そう言って、大場は箱型パッケージの煙草を取り出して見せた。

 

「と言う訳なんで、ちょっと付き合ってくださいっす!!」

 

************************************************************

 

「すぅぅ、ふぅ………」

 

 帰り道にあった小さな公園。

 

 そこには今時にしては珍しく公衆喫煙所が設置してあり、俺はそこで甘い煙を体に取り込む。

 

 隣では俺と同じように喫煙しようと大場が100円ライターで火を灯していた。

 

「すぅ…………んぐっ!? えほっ、ごほ!!」

「お、おい。大丈夫か?」

「は、はいっす。肺に入れようとして咽ちゃいました。1人で吸ってみた時はできたんっすけどね」

 

 そう言って大場はもう一度ピンク色の煙草を咥えて煙を吸い込む。今度は上手くいったようで、彼女は咽ることなく肺喫煙特有の薄くて長い煙を吐き出してみせた。

 

「……しっかしお前、初めて自分で買ったタバコがソブラニーって珍しいな」

 

 大場が吸っているのはSOBRANIE(ソブラニー)COCKTAIL(カクテル)。その昔は、ヨーロッパの王族や上流階級にのみ作られていた煙草である。

 

 タールは控えめで味はシンプル。特徴は色鉛筆を思わせる多彩な配色と、口紅が薄れにくいリップリリース加工の2点だ。

 

 要するに高貴で女性向けの煙草。庶民で化粧なんてしない俺には縁遠い代物だ。

 

「どこで買ったんだよ、それ。結構珍しい銘柄なんだぜ?」

「そうなんすか? 前に先輩に勧めてもらったタバコがコンビニに無くって、見た目が気に入ったのを代わりに買っただけっすけど」

「え? ソブラニーってコンビニで売ってんの?」

「はい、普通に置いてあったっす。この前一緒に行ったバーの隣のコンビニに」

「ほへー」

 

 面白いことを知った。帰ったら猫屋に教えてやろう。タールが低いので猫屋は吸わないだろうが、この手の情報を仕入れてやるとヤニカス気質のアイツは喜ぶ。

 

「ふぅ……ねぇパイセン。私たちって結構長い付き合いっすよね?」

「あん? なんだよ改まって」

「いえ、よくバイトの休憩中に煙草吸ってるパイセンを見てたんで、なんかふと思い返しちゃっただけっす」

「あぁ、なるほど」

 

 大場が隣で煙草を燻らせる姿には、確かに物珍しさを感じる。

 

 いつも休憩中は店の裏手で俺だけが煙草を吸い、彼女はその傍で副流煙も気にせずに適当に駄弁る。それが俺たちの日常風景だった。

 

「これからは煙突がもう一本増えることになるか?」

「ははっ、なると思うっすよ。割と気に入っちゃいましたし」

「ふぅー……そっか」

 

 煙草を覚えさせてしまった事に罪悪感がない訳ではなかった。ヤニなんて覚えない方が良い娯楽の筆頭。一緒に一服できる知り合いが増えるのは嬉しいが、彼女の肺には少々申し訳ない。

 

「意外と気にしてるんっすね、そういうの」

「え? 何が?」

「顔に出てましたよ。いいんっすよ、別に。暗黒堕天使ヒカリちゃんは世間の風潮なんてぶっ壊すフリーダムガールなんっすから」

「ん? お、おう??」

 

 徹頭徹尾、意味不明だった。やっぱ俺の共感能力が高いとか嘘っぱちだろ。大場が何言ってんのか分かんねぇ。

 

「すぱぁぁ……」

 

 適当に返事したことがばれないように煙草を吸って会話を中断する。

 

 大場も俺に釣られたのか、同じようにソブラニーを咥える。

 

「すぅ、ふぅー…………ぁ」

 

 自身から出て中空を漂う紫煙を俯瞰していた大場の瞳が、小さな声と共に一点を見つめ出す。

 

「狂い咲き」

 

 ぽつりと、聞きなれない単語が漏れ出る。

 

「?」

 

 相変わらず大場が何を言っているのか分からなかったので、俺は答えを求めて彼女の視線の先に目をやる。

 

 彼女が見つめていたのは、公園を彩る花壇の一角。

 

「……なぁ、なんだそれ。またいつもの中二ワードか?」

「違うっすよ。狂い咲きは、季節外れの花が咲く事っす。ほら、見てください」

 

 大場が指で示した先をさらに凝視する。

 

 たまに母さんが生花を買ってくるので、その花の名前は偶然知っていた。

 

 花弁が5枚で喉が黄色。チューリップのように様々な色で咲く一年草。

 

 勿忘草(わすれなぐさ)だ。

 

「なぁ大場。もしかして、花とか好きなのか?」

 

 花の名前は知っていたが、開花時期までは俺は知らなかった。花に詳しくないと、季節外れかどうか分からないはずだ。

 

「まぁ少しだけ。どちらかと言うと花言葉の方が好きなんっすよ。さらっと言えるとなんかカッコいいでしょ?」

「まぁ粋だとは思うな」

「そっすよね!! 特に白い勿忘草はお気に入りなんっすよ……!! なんせ花言葉がですねー…………」

 

 得意げに知識を披露する大場の声が、ある地点でピタリと止まる。

 

「……? 大場、花言葉は?」

「………………………………………………………………………………」

 

 沈黙を変に思い、催促をしたが大場は閉口したままだ。

 

 まるでその先を口にするのを彼女は躊躇っているみたいだった。

 

「青が真実の愛、ピンクが真実の友情」

 

 暫くした後、勿体ぶるようにして大場は別の色の花言葉を口にする。

 

 おぉ、中々良い花言葉だ。特に青い方はプロポーズの花束なんかにも使われてそう。本命の白はもっと素敵に違いない。

 

「白が、()()()()()()()

 

 その瞬間、何故か彼女の片目が照準を絞るように収縮した。

 

「…………なんか白だけ普通だな」

 

 他2つに比べて、随分と実直な内容だと思った。なにせ花の名前そのまんまだ。お気に入りと言うわりにはインパクトに欠ける。

 

「陣内先輩、好きっす。私と付き合ってください」

「あぁはいはい、そこが好きなのね。まぁ分かりやすいのは俺も嫌いじゃな──…………」

 

 一瞬で五体の全機能が仕事を放棄した。

 

「……す……すっ」

 

 手から力が抜け、吸いかけの煙草が指から滑り落ちる。

 

「………すす?」

 

 脳みそまでもが動きを止めていた。

 

「はぁぁ……いつ告ろうか色々と悩んでたんっすけど、ついに言っちゃったっすね」

「ぇ、ぅ、こ、ぁく? え、え? …………え??」

「あははは……そこまで動揺されると、告った側としてはなんか嬉しいっすね」

 

 ほんのりと朱を差した頬が困ったような笑顔を作る。その顔のせいで、冗談や揶揄いという逃走経路は早々に行き詰る。

 

「い、いや、おまっ、俺が、女、3人と、一緒にすん、でるの、知って、おま」

「やめればいいだけの話じゃないっすか。陣内パイセンばっかり苦労してそうな共同生活なんて」

 

 未だに滑舌が戻らない俺とは真逆で、大場はすらすらと思いの丈を語っていく。

 

「あ、でも私こう見えて束縛するタイプじゃないっすから。あの方たちとたまに飲みに行くくらいだったら全然大丈夫っすよ。だから……どうっすか?」

 

 カンカンカンッ!! と大警鐘が遅れて緊急事態を告げ始めた。

 

 ようやく血が通いだした脳みそ。そこに、好き、や、付き合ってが、なだれ込んで今度は馬鹿みたいにエンストを繰り返す。

 

「ど、ど、どうって、お前……」

「……ねぇ、パイセン。付き合いの長さなら、私だって負けてないじゃないっすか」

 

 悲しげで、儚げな声。大場はポスンと頭を俺の肩に預け、生暖かい声音でいじらしい事を言う。

 

 余裕が無い心に、追撃を受けたような気分だった。

 

「ぇ、え。ま、まじで、ほ、本気で、俺みたい、なのを?」

 

 息を付く暇のない衝撃の連続。生まれて初めて、告白を受ける側になってしまった。嬉しい嬉しくない以前に、その事実が俺を動揺させる。

 

 逆の状況には慣れてないせいで思考の歯車がかみ合わず、意識が白くぼやけていく。

 

(えっと、えっと、お、俺は……俺にはっ…………俺にはっ!!)

 

 俺には、恋愛よりも何か大切な物があったはずだ。

 

『卒業するまで、恋人なんか作らない』

 

 次の瞬間、錯乱状態に陥ってる俺を黒い獣が(さら)った。

 

『君のそういうところ、僕、大好きだよ』

 

 迷子になった子供の手を引く蒼黒(そうこく)の狼。

 

 それは頬まで裂けた大口で薄笑いを浮かべ『こっちだよ、こっちだよ』と俺を正しい方向へ導く。

 

「お、俺、には……に、にししろ…………俺には、約束、が……あって…………だ、だ、だから──!!」

「あぁっと!! やっぱ返事はまだいいっす!!」

 

 俺が正常に戻ろうとする寸前、大場は慌てた様子で言葉を遮った。

 

「じ、実はこっちも急な展開で心の整理が追い付いてないんっすよ!! まだ心臓バクバクなんで!! 冷静なふりしてたんっすけど、もう限界っす!!」

 

 大場はまだ火の灯った煙草をフィルターギリギリまで吸い込んで、肺に入れることなく素早く吐き出す。

 

 彼女は小さな手でパタパタとほんのりと赤い顔を扇ぎ、火照りと紫煙を薄めていく。

 

「ふぅー……そ、そうっすね。パイセン、明日から旅行に行くんでしょ? 帰ってきた後にでも…………真剣に考えた返事を聞かせて欲しいっす」

「え、ちょ」

「そ、それじゃあ私はこれで!! また旅行終わりに会いましょうっす!! お返事ご期待していまぁぁぁぁぁっす!!」

 

 吸い終わった煙草を手早く灰皿に放り投げ、大場は大声を上げながら勢いよく走りだした。

 

「ぁぁぁああああああああっ!! 勢いでやっちまったっすぅううううう!!」

「あ、待て!! 待ってくれよ大場!!」

 

 奇声を上げて走り去っていく大場を急いで引き留める。

 

 だが俺の声は届かず、彼女は脱兎のごとく公園から逃げて行った。

 

「…………そりゃねぇだろ、大場」

 

 1人残された俺は、返事の保留に対して情けなさすぎる独り言をぼやく事しかできなかった。

 

************************************************************

 

 こうして、慌ただしくって予想外まみれで…………なんでそうなるって感じの1日が終わった。 

 

 安瀬の心身症への方針転換。佐藤一馬の最後の言葉。大場光の告白。

 

 今日1日で考える事は山積み。特に最後の案件は、由々しき事態だ。

 

 

 大場を傷つけないような断り文句を慎重に考える必要がある。

 

 

 だって、例えどれだけ気持ちが込められていようとも。

 

 本気で俺みたいなクズに想いを寄せていてくれたとしても。

 

 俺は絶対に受け入れない。

 

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