ヒデノリとヨシタケが帰った後、部屋にはタダクニとメイが2人だけ残っていた。
まあここはタダクニの部屋なので居て当然なのだが・・・。
「・・・・・・・・・」
「メイ、如何かしたのか?」
沈黙に耐えきれなくなったか・・・それとも、普段と様子が違う事を心配してか、メイに話しかけるタダクニ。
おそらくは後者であろう、タダクニの声に一切の躊躇やそういったものは無かった。
「・・・呼び方」
「えっ?」
「今は戻ってるけど・・・アイツ等居た時は“妹”って言ってた・・・」
「あぁ・・・いや、別によかったんだけどな、急に呼び方変わったら何があったかって、またあいつ等うるさいし?
お前もとやかく聞かれるのは嫌だろ?」
「気を使ってくれたんだ・・・ありがとう・・・」
そう言うとまた黙り込んでしまったメイ。
(呼び方を戻した事に機嫌を損ねたのかと思ったけど・・・違うようだな、そもそもその前から機嫌悪そうだったし)
「ねえ・・・兄貴・・・」
「如何した?」
今度は黙り込んでいたメイの方から話しかけてきた。
その声には先程のタダクニとは違い、躊躇しているかの様な声だった。
「あのさ・・・あのバカ達と同じ質問するのも癪なんだけど・・・」
「・・・ヒデノリ達と同じ?あぁ・・・彼女が欲しいとかか?」
「ううん・・・その後・・・」
「えっ?・・・ひょっとして彼女が出来るかもしれないってくだりか?」
「・・・うん」
この時タダクニは、恋バナ好きな女の子らしい一面を見せたと思った。
それが少し愛おしく感じ、タダクニは・・・。
「本当の事言うと・・・俺の一方的な片思い中だ」
躊躇も恥ずかしげもなく素直に答えた。
「・・・それってつまり・・・好きな人ができた・・・って事?」
「あぁ・・・」
「・・・その人って・・・この間一緒に歩いてた人?」
「えっ!?」
「カレー作ってくれた日・・・」
「あ・・・見られてた?」
タダクニはしまったと思った。
別に悪い事をしたわけでも、後ろめたい事をしたわけでもない。
好きな人ができたと告げたが、誰だか分からないからと思い、恥ずかしさは無かったが、その人物を特定させられると一気に恥ずかしさが込み上げてきたのだ。
しかし、一度告げてしまったからにはもう引き戻せない、タダクニは腹を括って答える。
「そうだよ・・・西高の羽原さんって言うんだ・・・」
「届けたっていう生徒手帳の持ち主?」
「あぁ・・・その日の登校時、遅刻しそうで走っていた時にぶつかってな・・・」
「えっ!?」
「如何した?」
「そ・・・その羽原さん・・・その時食パン口にくわえてた?」
「いや・・・さすがにそこまでは・・・」
まさか少女漫画でありきたりな恋愛イベントを、自分の兄が体感してるとは思いもよらなかったメイは心底驚いた。
「そんなベタな展開にあうなんて・・・あんたは漫画の主人公か!?」
「俺も驚いたよ・・・それとメタな発言になるけど・・・一応日常ギャグ漫画の主人公です!!」
言え・・・好きなだけ叫べタダクニよ・・・君はここでも原作でも主人公だよ!
「はあ・・・それにしても兄貴が恋ねえ・・・」
「おかしいか?」
「おかしい・・・わけないか・・・兄貴も何だかんだで高2だものね・・・」
「おいおい・・・バカは多々やるけど、だからって子供じゃないぞ」
「分かってるよ・・・稔るといいね・・・兄貴の恋・・・」
「!?おっ・・・おぉ・・・」
てっきりからかわれるかと思ったが、自分の恋を応援してくれるメイに、ハトが豆鉄砲を喰らった様な顔になるタダクニ。
「じゃあ私部屋に戻るね・・・兄貴、何か進展あったら教えてね」
メイはそう言い残して部屋を出て行った。
「・・・まさか応援してくれるとは思わなかった・・・あれ?いつの間にかメイの奴機嫌がなおってた様な・・・結局なんだったんだろう?」
プルルル・・・プルルル・・・
「んっ?この番号は・・・」
携帯にかかって来た番号を見て、思わず表情が緩んだ。
その頃、部屋を出たメイは・・・。
「・・・何で?何でこんなにイラつくの?」
拳を強く握りしめて、何故か湧き出る苛立ちに戸惑い、弱弱しく呟いていた。
「別に・・・兄貴に好きな人ができたからって私には関係ないし・・・あぁ・・・でも、もし関係が進んだら私の義姉になるかも・・・」
呟けば呟く程苛立ちはつのり、疑問は増えていく。
「・・・おもしろくない・・・くやしい・・・何でこんな気持ちになるの?これじゃあまるで・・・ブラコンじゃない・・・」
果たして本当にそうなのか?
メイの苛立ちの原因はタダクニに好きな人ができたからには違いない・・・しかし、それはブラコンを拗らせた事によるものなのか?
もっと単純な・・・それでいて信じがたく認められない感情によるものなのではないか・・・それは本人にも分からない・・・。
次回は原作の話を基にします。
これでやっとあいつを出せる・・・。