「なあ・・・お前等急にどうしたんだよ?」
今朝の「タダクニ・女子同伴の乱」にて、モトハルを筆頭に集まった「タダクニ彼女獲得阻止団」。
最初はタダクニをフルボッコにしてでも彼女を作る事を阻止しようとしていた面々だったが、その同伴していた女子の正体を知ってから様子が一変した。
そしてその原因を唯一知らないヒデノリは、事の詳細を同じく参加していたヨシタケに問いただそうとしていた。
「・・・今はタダクニが居ないから良いか・・・」
「何?タダクニが居ちゃまずいの?」
「いや・・・何と言うか・・・タダクニにとっちゃ、結構シビアな話と言うか因縁があると言うか・・・」
「えっ?」
「あの女子・・・羽原優衣は俺とタダクニと同じ、谷田東小の同級生だったんだ」
「へえ~~~いわゆる幼馴染と言うやつですか・・・羨ましいですね~~~このやろ~~~」
「そんな良い物じゃない・・・」
「へっ?」
「アイツには・・・俺達の間ではこう呼ばれていたんだ・・・“谷田東小のアークデーモン”と・・・」
「何ですかそのド〇クエのモンスターの様な物騒なあだ名は?」
「アダ名じゃねえよ・・・当時は俺達にとって悪魔みたいなものだったんだって・・・」
ヨシタケは静かに語り出す・・・当時の幼き頃の悪夢を・・・。
弱い者イジメは当たり前の暴虐ぶりと、勝負を挑まれれば真っ向から挑み打ちのめす武人ぶりの暴虐武人。
イジメも数や陰湿なものではなく、純粋な力によるもの。
それ故に当時の男子達は力で女子に負けた等と、ましてやイジメられた等と、口が裂けても言えなかったので、
保護者や教師達はその事は一切知らなかった。
「お前もイジメられたのか?」
「俺は勝負を挑んで負けた・・・完膚なきまでに・・・」
当時の事を思い出してか、何時になく凹むヨシタケ。
「お前も物騒な事してんな・・・」
「それからだよ・・・俺に地獄が回って来たのは・・・」
「はっ?」
「アイツは真祖のSだ・・・一度イジメた相手、負かした相手はかまわず万遍なく暴力を振るって来る・・・それも泣こうが喚こうが・・・」
「うへ~~~じゃあ・・・タダクニもイジメられてたわけ?何か因縁があるんでしょ?」
「・・・・・・・・・」
「どうしたの?」
「いや・・・アイツはイジメられていたと言うよりは・・・止めようとしてたんだよ」
「へっ?」
「前話したけど、タダクニは喧嘩が強くてツッコミポジション、最終的に騒ぎを止めるのは何時もタダクニだって」
「あぁ・・・」
「その所為かよく喧嘩の仲裁とかにはよく呼ばれた、何だかんだで責任感も強くて困ってる人をほおっておけないって奴だ」
「あぁ・・・そう言えばそうだな・・・」
「そんな奴だから・・・羽原を止める為に挑んだんだよ」
「・・・結果は?」
「惨敗・・・それでもタダクニは羽原を止めようと、幾度となく挑んだ」
陰からその様子を見ていたヨシタケ。
何時もボロボロにされても立ち向かうタダクニは痛々しく、それでいて勇ましく見えた。
「でもさ、そんな娘ならタダクニは何で覚えてないんだ?同じ小学校に通っていたと知ってもお互い知らないって様子だったぞ」
「多分だけど・・・タダクニは一度も羽原と同じクラスにはならなかったんだ、でもアークデーモンの事は知っていた」
「それって・・・あだ名で呼びすぎていて、本当の名前を忘れた、もしくは知らないってパターンか?」
「多分半々だと思う・・・俺だって“アークデーモン”としか呼んでいなかったし、顔と名前が一致しないのもそうだろうな、
雰囲気も髪型もあの時と全然違うし」
「じゃあ・・・あの娘の方は?」
「あぁ・・・それは・・・普通に知らないんだと思う」
「えっ?何で?」
(喧嘩挑む時は何時もの仮面をかぶっていたからな・・・名前も名乗ってなかったし、俺も最初は仮面被って挑んだしな)
当時タダクニとヨシタケを始めとする数人の男子でやっていた、仮面を被っていじめっ子等をぶちのめす遊び。
タダクニはアークデーモンに挑む時もその仮面を被って挑んだ、勿論ヨシタケや他の男子も。
その為アークデーモンはその時の仮面の男子の正体は知らない。
「おいヨシタケ」
「まっ・・・ちょっとな・・・それよりさ、問題はタダクニが羽原を如何思っているかって事だな・・・」
「いや・・・あれは明らかに意識しれるでしょ?」
「だよな・・・俺達からしたらありえないよ」
「でもよ・・・結構可愛かったよな」
「うん・・・可愛いのは認める、当時も悪魔でなければ普通に美少女だったからな」
「何か・・・タダクニに教えたら教えたで面白いんだけど・・・」
「ちょっとな・・・」
「ちょっと様子を見て見るか」
「そうだな(それにタダクニにとっても、羽原との喧嘩は・・・)」
「ヨシタケ?」
「そう言えば・・・羽原関係でミツオ君の面白い話があるんだけど」
「えっ?何何?」
(これは同じ男として、俺の胸の内にしまっておくか)