「タダクニ君、生徒手帳ありがとね」
「いや・・・そんな・・・」
互いの名前を教えあった後、タダクニと羽原は共に歩いていた。
「でも・・・ワザワザ届けなくても、生徒手帳を見れば連絡先が分かるのに、それで連絡してくれたら私から取りに行ったよ」
「いや・・・流石にプライベートに関わる事が書いてあるかもしれないからそれは・・・ね?」
「あっ・・・ありがとう・・・優しいんだねタダクニ君って」
「そんな・・・当然だよこれ位、女の子のプライベートを勝手に見たら怒られるし失礼なのは妹で体験済みだからな」
「妹さんが居るんだ」
「うん・・・仲は良くないけどね・・・」
妹との仲を話すタダクニの表情は、普段ヒデノリ達と話す時のそれとは違い、どこか寂しそうだった。
「えっ?どうして?」
「まあ年頃ってのもあると思うけど・・・嫌われる原因は殆ど俺にあるし・・・仕方ないさ」
「何か・・・あったの?」
「えっ?いやそれは・・・」
言える筈も無い、ヒデノリとヨシタケに謀られ、言葉巧みに乗せられ調子づいて、妹の衣服や下着を着て女装してしまった等と・・・。
(絶対に羽原さんには知られたくない!!)
「如何したのタダクニ君?顔色悪いし・・・汗凄いよ・・・」
「あっ!えっ!?いやっその・・・俺としても嫌な思い出だからちょっとね・・・」
「あっ・・・ゴメンね・・・私ったら殆ど初対面なのに失礼な事聞いて・・・」
「いやっ・・・羽原さんの所為じゃないよ・・・俺が勝手に顔色悪くしただけだし!」
「ううん・・・嫌な事を思い出すのって本当に辛い事だから・・・ゴメンね・・・タダクニ君」
「・・・羽原さん」
羽原にも思い出したくない思い出があるのだろうか?
その時の羽原の表情はとても落ち込んで見え、タダクニは彼女をこんな表情にさせてしまった事に、心が締め付けられる感じに陥った。
「羽原さん、そんな俺なんかの為に落ち込まないで・・・その・・・折角の可愛い顔が台無しだよ!」
「えっ!?」
「へっ?・・・あっ!!」
羽原の落ち込んだ顔が見たくなく、励まそうとしてタダクニはつい本心を口にしてしまった。
「いっ・・・いやいや!今のは冗談で!って・・・いや冗談と言っても決して羽原さんが可愛くないわけじゃ無くてって!
もう俺は何を言ってるんだ!!」
タダクニは顔を真っ赤にして誤魔化そうとしたが・・・テンパってまた本心を言ってしまう。
「ふふ・・・タダクニ君って面白い人だね」
「えっ?」
「私は可愛くないよ・・・決して可愛い女じゃない・・・」
「羽原さん?」
「でもね・・・冗談でも嬉しかったよ・・・ありがとうタダクニ君」
にこっ
ズギューーーーーーーーーーンッ!!
(ぐぼっ!!かっ・・・可愛すぎる・・・こんな可愛い女子がこの世界にいたなんて・・・)
羽原のはにかんだ笑顔に、タダクニは完全に心を鷲掴みされてしまった。
「タダクニ君?」
「はっ!!何?」
「私帰りこっちなんだけど・・・タダクニ君は?」
「あっ・・・俺もこっち、多分今朝ぶつかった所までは一緒だと思うよ」
「じゃあそこまで一緒に帰ろうか?」
「えっ!?」
羽原からまさかの一緒に下校のお誘い。
突然の事にタダクニは暫し呆然となった。
「如何したの?それともこの後何処か用事があるの?」
「いえ!暇です!!何も用事がありません!!一緒に帰らせていただきます!!」
「はは・・・変なタダクニ君、やっぱり面白い」
「そっ・・・そう?」
「うん・・・今日初めて会ったけど・・・一緒に居て楽しいよ」
「あっ・・・ありがとう・・・俺もその・・・羽原さんと居て・・・楽しいです」
「ありがとう・・・じゃあ行こ」
「うん・・・」
そしてタダクニと羽原は一緒に帰路についた。
人生初の女子との下校に、タダクニの心臓は激しく脈打つのだった。
次回はタダクニ人生初の女子との下校、そして新たな・・・。