戦姫絶唱シンフォギア コドクの神が求めるモノ   作:@sora@

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何か突然キャラ増えた?と思われたらいけないので一応注釈。
アニメでは藤尭、友里の二人しか機器を操作していませんが、映ってないだけで実際にはたくさんの大人が潜水艦を動かしているという風にこの作品は書いています。
もし何か原作の設定と矛盾があったとしてもその場合はオリジナル要素ということでお願いします。


第101話

S.O.N.G.が総力を挙げて錬金術師キャロルの野望を阻止すべく行動している夜…響は病院のベッドで、未来に電話をかけていた。

 

「ごめんね、こんな夜中に…色々考えてたら、眠れなくなっちゃって」

 

『ううん、気にしないで』

 

「ありがとう。未来が聞いてくれたお陰で、もう一度だけお父さんと話をしてみる決心がついた」

 

『うん』

 

「だけどね…ほんとはまだ少し怖い。どうなるのか不安でしょうがないよ」

 

そう言って、響が暗い顔で俯いていると、携帯から未来の優しい声音が聴こえてきた。

 

『響、『へいき、へっちゃら』』

 

「え?」

 

『響の口癖だよ?』

 

「あっはは…いつから口癖になったのかは忘れたけど、どんな辛いことがあっても何とかなりそうになる魔法の言葉なんだ」

 

『ホント単純なんだから』

 

「前向きだと言ってくれたまえよ」

 

響が茶化すようにそう言い終わると、二人はしばらく声を出して笑い合った。

 

「おっかしいの!」

 

『元気出たね!魔法の言葉に感謝しないと』

 

「…うん、そうだね!」

 

未来の言葉に勇気を貰い、響はその顔に力強い笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

その頃、風鳴邸ではファラがマリアの問い掛けに対して答えていた。

 

「知らず毒は仕込まれて、知る頃には手の施しようがないまま、確実な死をもたらしますわ」

 

体の大半が破壊された影響か、不規則に動く右の眼球が、一瞬ナナシを見つめた気がした。

 

「あなたの言う毒とは、一体何を意味しているのですか!?」

 

「マスターが世界を分解するために、どうしても必要なものがいくつかありましたの。その一つが、魔剣の欠片が奏でる呪われた旋律…それを装者に歌わせ、体に刻んで収集することが、私達オートスコアラーの使命!」

 

「では、イグナイトモジュールが!!?」

 

「バカな!!?エルフナインを疑えるものか!!」

 

「アハハハハ!それは当然ですわ!」

 

マリアの言葉に笑いながらそう返すファラは、意味ありげにナナシを見つめる。そんなファラを、ナナシは無表情に見下ろしていた。

 

 

 

 

 

同時刻、S.O.N.G.本部でもキャロルが仕込んだ毒の正体を探っていた。

 

「俺達の追跡を的確に躱すこの現状…聖遺物の管理区域の特定したのも、まさかこちらの情報を出歯亀にして…?」

 

「…っ!!?司令!!大変です!!」

 

弦十郎が推測を呟いていると、突然藤尭が慌てたように弦十郎に声を掛けた。

 

「どうした!?」

 

「深淵の竜宮のシステムを、何者かが改竄した痕跡を見つけました!」

 

「何だと!!?」

 

藤尭の言葉に弦十郎が驚いていると、今度は友里が口を開く。

 

「これは…!?システムへの介入は昨日今日の話じゃない…少なくとも数ヵ月に渡って何度も行われていたみたいです!!」

 

その情報に本部の大人達が驚愕している中で、了子が部屋の隅でエルフナインが目耳を塞いで蹲っているのを発見してしまった。

 

「エルフナインちゃん…?一体どうしたの?」

 

「っ!?」

 

了子がエルフナインの肩に触れながら声を掛けるが、エルフナインは一瞬ビクリと震えるだけで顔を上げようとしない。自分の行動がどれだけ怪しく思われても、エルフナインはそこから動くつもりは無かった。

 

(命題の答えは、まだ出ていない…今は、キャロルに情報を与える訳には…)

 

エルフナインはそう考えて、更に瞼をきつく閉ざして…

 

 

 

『何を無駄な努力をしているのだ?エルフナイン?』

 

 

 

突然脳内に響くように聞こえてきたその言葉に、エルフナインが驚きから目を見開いて振り返ると、そこには青白く輝くキャロルの幻影が邪悪な笑みを浮かべていた。

 

「キャロ、ル…?」

 

「これは!?エルフナインちゃんを起点とした幻影術式!!?」

 

『いかにも。そして、そこのエルフナインはオレが貴様らを監視するために仕込んだ毒に違いない』

 

キャロルの言葉にS.O.N.G.の面々は驚愕し、エルフナインは怯える様に震えていた。

 

「…私が調べた限りでは、エルフナインちゃんの体にそんな仕組みが施された痕跡は無かったし、エルフナインちゃんが私達の仲間になったフリをしていたのなら、ナナシちゃんが見破れないとは思えないけれど?」

 

『エルフナイン自身、自分が仕込まれた毒であるとは知る由も無かった。オレが此奴の目を、耳を、感覚器官の全てを一方的にジャックしてきたのだからな。同じ素体から作られたホムンクルス躯体だからこそできることだ』

 

「なるほど…これはそのことに気づけなかった私の失態ね」

 

『クククク…』

 

敵の策に気づかず悔しさに顔を歪ませる了子を前に、キャロルが堪え切れないといった風に口から笑い声を漏らしていた。

 

『いや、お前達が気づけないのも無理はない…オレが毒を仕込む前から、病魔に蝕まれていたお前達には!!』

 

「病魔、だと…?」

 

困惑する弦十郎に、キャロルは楽しくて仕方がない様子でニヤリと笑い、自身の言葉の意味を語りだす。

 

『そこの廃棄躯体が毒といち早く気づきながら、あろうことか貴様らに気づかれないように擁護するだけでなく、積極的にオレに情報を流すよう仕向け毒の巡りを促進させる病魔…あの“紛い物”のことだ!!』

 

「「「「っ!!?」」」」

 

キャロルの言葉に、S.O.N.G.本部にいる全員が絶句する。エルフナインは俯いたまま、自身の服を握りしめて何かに耐えるように口を閉ざしていた。

 

 

 

 

 

「最初にマスターが呪われた旋律を身に受ける事で、譜面が作成されますの。後はあなた達にイグナイトモジュールを使わせればいいだけの、簡単なお仕事」

 

「全てが最初から仕組まれていたのか!!?」

 

「アハハハハハハハ!」

 

ファラの言葉を聞いた翼が思わずそう問い返すと、何故かファラは狂ったように笑い出す。

 

「いいえ!いいえ!!それは違いますわ!!!マスターが毒を仕込む以前から、あなた方は既に病魔に侵されていた!マスターの毒さえ飲み込み、秘匿して、あなた方の命を蝕む病魔…そうでしょう?裏切りの騎士様?」

 

「えっ…?」

 

ナナシのことを真っ直ぐに見つめながら紡がれたその言葉に、奏達は呆然とナナシを見つめる。そんな奏達を見て、ファラの瞳の奥が怪しく輝いた。

 

 

 

 

 

俯くエルフナインに了子が近づき、問い掛けた。

 

「…今の話は、本当なの?エルフナインちゃん?」

 

「……はい」

 

了子の問いに、消え入りそうな声でエルフナインが肯定の言葉を口にする。エルフナインはゆっくりと顔を上げて、その瞳に涙と共に…覚悟を宿して、言葉を紡ぐ。

 

 

 

「…ボクは、ナナシさんのことを騙して(・・・)、キャロルを救うために協力して欲しいと言って、ボクがキャロルに情報を伝えていることを、隠してもらいました」

 

「「「「!!?」」」」

 

 

 

エルフナインはずっと悩んでいた。ナナシが、いざという時は自分に責任を被せろと言っていたが、自分達のために協力してくれたナナシを悪者にしてしまうなど、許されることではないと…故にエルフナインは決めていた。もしその時が訪れたならば、咎は自分一人で受けようと…

 

 

 

「偶然、ボクとキャロルに繋がりがあることを知ったナナシさんに、ボクは懇願しました。キャロルを止めるために、敢えてボクを見逃して欲しいと…ボクの想い出を送ることで、キャロルを止められるかもしれないと…でも、本当は怖かったんです。もし皆さんにこのことがバレたらと思うと、怖かった…でも、もう良いんです!ナナシさんは、ボクのお願いを聞いてくれただけなんです!!だから…」

 

涙を流しながら、全ての責任は自分にあると主張するエルフナイン。だが…

 

『クククク…アッハハハハ!やはりそう主張するか!読めていたぞ、廃棄躯体!!』

 

涙を流すエルフナインを、キャロルが心底楽しそうに嘲笑った。

 

『存外、あの“紛い物”が貴様を庇ったのは貴様にそう言わせるのが目的であったのかもな?いざという時、貴様に全ての罪を被せるために!!』

 

「キャロル!?一体何を!!?ナナシさんのことを悪く言わないでください!!ナナシさんは、ボク達のせいで!!!」

 

自分達のために、仲間を裏切るような真似をしてしまったナナシを悪く言うキャロルに、エルフナインが驚きと怒りを感じてキャロルに言い返す。だが、キャロルはそんなエルフナインに、嘲笑と共にある真実を語り出す。

 

『全く愚かなものだな、廃棄躯体。貴様は騙されていたんだよ。あの男は貴様に協力する以前からそいつらを裏切り、自身の利益のために組織の情報を外部に売り渡していたのさ!』

 

「えっ…?」

 

キャロルの言葉の意味を理解出来ずに、エルフナインが呆然と疑問の言葉を口にする。

 

『信じられないか?ならば貴様に、そしてそこにいる全員に、あの男の裏切りを証明する明確な根拠を示してやろう!』

 

『はぁい!明確な根拠でぇぇす!!』

 

「「「「「!!?」」」」」

 

キャロルの言葉と共に、新たな幻影が姿を現す。そこに映し出されたのは、現在キャロルと共に逃走しているウェル博士だった。

 

「ウェル博士!?貴様がナナシ君の裏切りの根拠とは、どういうことだ!!?」

 

『フハハハハハ!あなた達も愚かですねえ!!あのような“紛い物”を信用するなんて!!あの男は、僕の天才的な頭脳から導き出される知識に魅了されて、貴様らの情報をせっせと貢いでいたんですよぉ!!』

 

「何だと!!?」

 

『信じられませんか?ではそこのレディが目と耳を塞いで部屋の隅で震えていたのに、あの小娘共が僕達に追いつけないのは何故だと思います?それはねぇ…僕はあの男に聞いていたんですよ!!この施設の内部構造!防壁の位置!!捕捉された際に逃げ切るためのルート!!!ご丁寧に檻から一時的に出してもらってガイドもしてくれましたよ!!』

 

「そ、そんな…で、出鱈目です!!きっと、キャロルがどうやってかボクを利用したに違いありません!!皆さん騙されないで!!」

 

ウェル博士の主張をそう否定して、エルフナインが全員にナナシの無実を主張する。だが、そんなエルフナインにウェル博士が追い打ちをかける。

 

『フフフフ、麗しいですねぇ?そんなにあの男を守りたいですか?でも残念!皆さぁ~ん、僕にご注目…コレな~んだ!!?』

 

「「「「「!!?!?」」」」」

 

言葉と共にウェル博士が右腕を突き出し、それを見た全員が驚愕する。

 

ウェル博士の右腕、その手首にあるのは、弦十郎と了子、そしてエルフナインが持っているのと同じ…ナナシが作り出した“血晶”の輝き。ナナシの裏切りを確定させる、これ以上無いほどの物証だった。

 

「あ、あぁ…」

 

『どうだ、廃棄躯体?これが明確な根拠というものだ!』

 

「ち、違う!あれは、ボクがナナシさんから貰ってキャロルに渡していたんです!!」

 

『アハハハハハ!健気だねえ!?この状況で、まだあの男を庇うのかい!?』

 

「お願いします!信じてください!!あの人は、あなた達を裏切ってなんかいません!!」

 

優しくしてくれた…

大丈夫だと言ってくれ…

一緒に笑って過ごした…

自分に、世界を教えてくれた…

 

エルフナインは、ナナシは決してS.O.N.G.の人達を、そして自分を裏切ることなど無いと信じている。だからこそ、ナナシが自分のせいで居場所を失ってしまうことを恐れて、必死になって弦十郎に縋りつく。

 

「全部、ボクが悪いんです!!ナナシさんは悪くない!!全部!全部!!ナナシさんは、ボクのせいで!!!」

 

キャロルとウェル博士の嘲笑う声を聞きながら、エルフナインは涙を流して大声で叫ぶ。それを聞いていたS.O.N.G.の人間は、全員が同時に口を開いて…

 

 

「「「「「はぁ~~~…」」」」」

 

 

…深い、とても深い溜息を吐いた。

 

「え…?」

 

『何…?』

 

『あぁん…?』

 

想定とは異なる弦十郎達の反応に、エルフナインとキャロル達は戸惑っていた。

 

「はぁ~…全く、ナナシ君は…」

 

「え、えっと…弦十郎さん…?」

 

「どうせ、ナナシ君が君に黙っているようにお願いしたんだろう?キャロルを救いたければ協力しろ、とでも言って…」

 

「えっ!?な、何で…い、いえ、違います!ボクがナナシさんを!!」

 

「プッ、フフフフフ…」

 

エルフナインの言葉の途中で、何故か了子が我慢できないといった風に笑い声を漏らした。

 

「了子君、どうかしたのか?」

 

「だって…エルフナインちゃんがナナシちゃんを騙したなんて、突拍子もないことを言うんですもの。もう可笑しくって…フフフフ…」

 

「「「「「ブファッ!!?」」」」」

 

了子の言葉を切っ掛けに、S.O.N.G.の全員が思わず噴き出してしまった。

 

「あはははは!確かに!!申し訳ないけど、エルフナインちゃんにナナシ君が騙されるなんて想像できない!!」

 

「ふひひひ…お、俺、息子が真剣な顔で「僕、実は変身ヒーローだったんだ!」って言ってきたのを思い出した!」

 

「あっはははは!そ、それだ!!エルフナインちゃんがあんまり必死だったから、ナナシが騙されたフリをしてあげたんだって絶対!あははははは!!」

 

そんな風に、至る所で笑い声を上げる大人達。その様子は、とても仲間に裏切りを受けたものとは思えない。

 

『くっ!?貴様ら、この期に及んでオレの言葉を疑うのか!?そんなにあの男の裏切りを信じられないか!!?』

 

「そうじゃないわよ。寧ろ深淵の竜宮にデータ改竄の痕跡があったことや、何度かLiNKERの研究に行き詰まった時にナナシちゃんが突破の切っ掛けを見つけたことに納得したわ。ただ単純に、ナナシちゃんの裏切りなんて日常茶飯事ってだけよ」

 

「えっ!!?」

 

『な、何!!?』

 

『はあ!!?』

 

信じられない了子の言葉に、エルフナイン達は心底驚いて言葉を失っていた。

 

「本部のデータベースへの無断アクセスなんて当たり前、セキュリティを強化しても三日もしない内に突破して痕跡まで隠すようになるし…」

 

「挙句に脆弱性を見つけ出すまでにかかった時間と手応えについての感想をダメ出し付きで送ってくるし…力作だったんだぞチクショー!!!」

 

「俺達の使っている制御端末でナナシにバックドア仕掛けられてないヤツなんてあるのかな?」

 

「そもそも、組織に壊滅的な被害を出した挙句に月の破壊と人類の支配を企てていた私が普通に居座っているのに、今更情報漏洩程度で騒がれても…」

 

『はあ!!?あ、あなた方、仮にも国連に所属する組織の人間でしょう!?そんな横暴を笑って許していて良いんですか!!?』

 

ウェル博士の言葉に、大人達は顔を見合わせた後、神妙な顔で話し合いを始めた。

 

「そうだな、流石に今回の件はなあなあにするのは良くないな?」

 

「そうね。エルフナインちゃんをこんなに泣かせちゃってるし、何か罰を考えましょう!」

 

「っ!!?ま、待ってください!」

 

「落ち着きたまえ、エルフナイン君」

 

大人達の意見に、慌ててエルフナインが異議を唱えようとするが、そんなエルフナインを苦笑した弦十郎が宥める。

 

「そうだなぁ…一ヵ月、歌を聴くの禁止とか?」

 

「それだと装者達と共闘できないだろ?」

 

「悪戯禁止…禁止したくらいでやめてくれるならこんなに苦労しないか…」

 

「給料カットは…駄目だ、逆効果だ」

 

「罰なんだから仕方ないよな!って言って嬉々として24時間ぶっ通しで働くのが目に見えるな」

 

大人達が話し合う光景は、まるで子供の悪戯に対する罰を相談する親兄弟といった雰囲気であり、決して懲罰を考えているようには見えなかった。

 

『な、何故…』

 

「別に大した理由じゃないさ。大人として、子供がやった悪戯くらい笑って許してやれるぐらいの度量を示さないとな?」

 

『機密情報の漏洩を、ただの悪戯と軽く流すのか!?』

 

信じられないものを見る目で弦十郎達を見るキャロルを、弦十郎は真っ直ぐに見つめて答える。

 

「軽く流している訳ではない。ナナシ君の行いが、何の考えもない悪意からの行動だったなら、大人としてしっかり拳骨を落として叱りつけている。だが、ナナシ君はいつも誰かのためを考え、悩み、様々なことに挑戦し続けている。子供が全力で挑み続けるなら、後始末くらい笑って引き受けてやるのが、かっこいい大人の在り方だろう?」

 

そう言って、弦十郎が優しく微笑みながらその大きな手でエルフナインの頭を撫でる。

 

「だから今回俺達がナナシ君に下すのは、『エルフナイン君を泣かせた』罰だ。それ以上でも以下でもない」

 

「そしてこれが、エルフナインちゃんへの罰ね♪」

 

ビシッ!!

 

「あうっ!!?」

 

了子のデコピンがエルフナインの額に炸裂し、エルフナインが情けない悲鳴を上げて額を押さえる。

 

「エルフナインちゃん、一体何の罰か分かるかしら?」

 

「そ、それは…ボクが、皆さんを裏切って…」

 

「ブッブー!不正解!!」

 

困惑するエルフナインを、了子が優しく抱きしめながら、その耳元で囁く。

 

「ナナシちゃんの行動は、エルフナインちゃんの『せい』じゃなくて、エルフナインちゃんの『ため』よ?間違えないであげてね?」

 

「っ!!?…フ、フフフ…間違えて、しまいました…ナナシさんにちゃんと、テストに出るって、言われたのに」

 

安堵と喜びから再びポロポロと涙を流しながら、エルフナインはクスリと笑みを浮かべた。

 

「君の目的は、キャロルの企みを止める事。そいつを最後まで見届ける事」

 

「弦十郎さん…」

 

「だからここにいろ。誰に覗き見されようとも、構うものか」

 

弦十郎がエルフナインを安心させるように微笑みかけた後、キャロルとウェル博士の幻影を睨んでそう言い切る。その瞳には、確固たる決意が宿っているようだった。

 

「は…はい!」

 

『チッ…』

 

『つまらないですねぇ…』

 

エルフナインが笑って返事をしたのを見て、キャロルが舌打ちし、ウェル博士が悪態をつきながら、二人の幻影は姿を消した。

 

 

 

 

 

キャロルが錬金術を解除すると、ウェル博士がお手上げだと言うように両手を上げた。

 

「ヤレヤレ、奴らの甘さがここまでとは…嫌がらせのやりがいがありませんね?」

 

「使われるだけの分際で…ッ!?」

 

ドクンッ!

 

悪態をついた直後に、キャロルが頭痛と眩暈に襲われる。額を押さえてよろめくキャロルの脳裏に、いくつかの光景が過った。

 

 

 

『何故お前はその廃棄躯体風情に、お前の大切な父親の想い出まで転写したんだ?』

 

『お前、止めて欲しかったんだろう?同じ父親の記憶を持つ、もう一人の自分(エルフナイン)に』

 

『あのクソガキに…キャロルに、世界を見せてやろう?』

 

 

 

(拒絶反応…!!クソ、あの男に関わってから、心底不愉快な事ばかりだ!!あの廃棄躯体が調子づいているのも全部あいつが…オレにこんな想いをさせたこと、必ず後悔させてやる!!)

 

ふらつく体を何とか両足で支えながら、その瞳に憎悪を宿すキャロル。そんなキャロルの視界に、遠くから駆け寄ってくる人影が映るのだった。

 

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