戦姫絶唱シンフォギア コドクの神が求めるモノ   作:@sora@

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第108話

少しだけ時を遡り、響達がキャロルと激闘を繰り広げている間に、マリア達三人はウェル博士の案内でチフォージュ・シャトーの制御装置がある広間に到着した。

 

「チフォージュ・シャトーの制御装置…つまり、これを破壊すれば…」

 

「オツムのプロセッサは何世代前なんだい?そんなことをすれば、制御不能になるだけさ!」

 

「じゃあ、どうすれば!?」

 

何をすれば良いか分からずマリア達が戸惑っていると、周囲の床が赤く輝き、地面からアルカノイズが次々と姿を現し始めた。

 

「君達がむずがる間にも、世界の分解が進んでいることを忘れるなよぉ!!」

 

ウェル博士はそう言うと、ボロボロの体に鞭を打ってシャトーの制御装置へと駆け込み、ネフィリムの左手を叩きつけた。その瞬間からシャトーは今までにない挙動を見せ始め、周囲から駆動音が響き渡る。しかし、シャトーを操作するウェル博士にアルカノイズ達が迫ってきた。

 

ザン!!

 

すると、アルカノイズの群れを、マリア達三人が次々撃退していった。

 

「私達が食い止めているうちに!!」

 

「ちゃっちゃと済ませるデス!!」

 

「アチコチ折れてるから踏ん張れないって言っただろう!?子供はいつも勝手を言う!!」

 

悪態をつきながらウェル博士が作業をしていると、突然ウェル博士の前にキャロルの姿が映し出された。

 

『生きていたのか、ドクターウェル!?…ッ!!?そうか!!貴様も!?貴様もあの男の差し金で!!?最初からシャトーに忍び込むためにオレに接触してきたのか!!?』

 

「あぁん?何の話……あっはははは!ようやく気が付きましたか!?壊れた道具より優秀な物が偶々同じ場所で手に入るなんてご都合展開、ある訳が無いじゃないですか!?頭の中身も小学生サイズなんですかぁ!!?」

 

最初は意味が分からないといった感じのウェル博士だったが、キャロルの背後に映り込んだ法被を着た応援団長風ナナシ人形がグッと親指を上に立てたのを見て、半年ほどナナシと交渉を続けていたウェル博士はある程度事情を察したため、話を合わせた方がキャロルへの嫌がらせになると判断した。碌でもない以心伝心である。

 

『クソッ!?やはりあの男の差し金か!!?ここまで周到に仕込んで、貴様らは一体何をしている!!?』

 

「シャトーのプログラムを書き換えているのさ!錬金術の工程は分解と解析、そして…!」

 

『ッ!!?機能を反転し、分解した世界を再構築するつもりなのか!!?馬鹿な!?そんな運用にシャトーの構造が耐えられるものか!お前達丸ごと飲み込んで…』

 

「そう!爆散する!!」

 

『「「「!!?」」」』

 

ウェル博士の答えに、キャロルだけでなくマリア達まで驚愕する。

 

「どっちにしても分解は阻止できる!ハン!ホント、嫌がらせってのは最高だ!!そうだろう!?“紛い物”ぉ!!」

 

「ドクターウェル…」

 

『元より自滅覚悟で…いや、あの男の守りか!!?そこまで見越して!!?一体何処まで読み切っていたと言うのだ!!?』

 

キャロルがナナシの知略に戦慄して叫ぶ。だが…当のナナシは、キャロルの比ではないレベルで焦っていた。

 

(ふざけんな菓子狂い!!?おい、三人共!そいつに“血晶”を渡して今すぐそこから離脱しろ!!聖遺物が暴走した爆発なんて“障壁”の判定がどうなるか分からないし、“血晶”で防ぎ切れる保証なんて何処にもない!!)

 

慌ててマリア達に“念話”を飛ばすナナシ。だが、マリア達は互いに顔を見合わせると、一度頷いてアルカノイズの掃討を続行した。

 

(おい!?お前達、何で…)

 

(ここはアタシ達が食い止めるデス!)

 

(先生の血液が無くなる前に、世界の分解を止めてみせます!)

 

(あなたが作ったチャンスは、決して無駄にはさせない!だから…)

 

(ふざけるな!!お前らがそこに残るなら、俺は今すぐにそっちへ向かう!世界なんか知ったことか!!首根っこ引き摺ってでもそこからお前らを連れ出して…)

 

(((信じて!!)))

 

(っ!?)

 

世界の分解を押し留める血液の壁を放棄して、ナナシがシャトーに向かおうと考えていると、マリア達から並々ならぬ意思が“念話”で伝えられてきた。

 

(アタシ達を、仲間だと思ってくれるなら!!)

 

(どうか、信じて!私達のことを!!)

 

(そして、それと同じくらい、あなた自身のことを信じなさい!!)

 

(俺、自身を…?)

 

(ナナシさん達が作ってくれたLiNKERは、きっとアタシ達に力をくれるデス!)

 

(先生の“血晶”は、きっと私達を守ってくれる!)

 

(あなたが作った『可能性』を、私達は掴み取ってみせる!!だから信じて!!私達が信じるあなたのことを!!)

 

(っ!!?)

 

マリア達が伝えてくる意思の強さと、並々ならぬ信頼…それを無視することが出来ず、ナナシは悩みながらも世界の分解の阻止を継続させた。

 

「「うわっ!!?」」

 

突如、調と切歌の二人が何者かに吹き飛ばされる。マリアがそれを為した存在に目を向けると、そこには先程まで言葉を交わしていたナナシの姿があった。

 

「お前がナナシであるものか!!」

 

マリアがナナシの偽物にそう叫ぶと、ナナシの偽物は黒い何かに身を包み込まれて、次に姿を現した時には、その姿は黒いガングニールを身に纏ったマリアに変わっていた。

 

驚くマリアに、マリアの偽物はその手にした槍からエネルギーを放ってマリアを攻撃する。マリアは咄嗟に短剣を前に出してエネルギーを受け止めるが、その威力に体が吹き飛ばされた。

 

「ぐああ!!」

 

マリアの偽物は地面に槍を突き立て、空虚な瞳でマリアを見ながら言葉を口にする。

 

「私はフィーネ…そう、終焉(オワリ)の名を持つ者」

 

それを聞いたマリアは、地面に拳を打ち付けながら立ち上がり、目の前の偽物の正体を察する。

 

「そうか…お前は私…過ちのまま行き着いた、私達の成れの果て…!」

 

「だけど…黒歴史は塗り替えてなんぼデス!」

 

「シャトーが爆発する前に、この罪を乗り越えて脱出しよう!」

 

三人は決意を胸に、過去の過ちと対峙する。三人は歌を奏でながら、マリアの偽物へと攻撃を仕掛けた。偽物がガングニールの槍とマントを操り、三人の攻撃を弾きながら反撃してくるのを対処していると、マリアの通信機からエルフナインの声が聞こえてきた。

 

『マリアさん、通信機をウェル博士の預けてもらえますか!』

 

「何…?」

 

『自分らしく戦います!』

 

「…ドクター!」

 

マリアはエルフナインの言う通り、通信機をウェル博士に向かって投げ渡す。ウェル博士は制御装置を操作しながら右手でそれを受け取った。

 

『この端末を、シャトーに繋いでください!サポートします!』

 

「胸が躍る!だけど出来るのかぁい!?」

 

ニヤリと笑ったウェル博士が通信機を制御装置に設置すると、本部でエルフナインが行動を開始した。

 

 

 

 

 

エルフナインが本部の端末を操作すると、モニターにフォトスフィアが映し出される。それを見た了子とナスターシャ教授がエルフナインの意図を察して、急いで空いている端末へと近づいた。

 

「そうか!フォトスフィアで!」

 

「レイラインのモデルデータを元に処理すれば、ここからでも!」

 

「私達の研究、他人に使われてばかりでは立つ瀬がありません!」

 

「ここは一つ、派手にやり返してあげましょう!」

 

「演算をこちらで肩代わりして、負荷を抑えます!掌握しているシャトーの機能を再構築に全て当ててください!」

 

本部からのサポートによって作業進度が急激に早まり、シャトー全体から放電に似た現象が生じ始めた。

 

 

 

 

 

バチンッ!

 

「ッ!?」

 

マリアのギアから、不意に弾けるような音がして体に痛みが走る。LiNKERの効果切れ…しかし、引く訳にはいかない。

 

(私が重ねた罪は…私一人で!)

 

体に走る痛みに耐え、偽物の攻撃を防ぎながらマリアは調と切歌に声を掛ける。

 

「二人共!ここは私に任せて、二人はLiNKERが切れる前に脱出を!」

 

マリアが二人に声を掛けたその隙に、偽物が槍をマリアに投擲してきた。マリアが気づいた時には既に槍は目前へと迫り…

 

ガキン!!

 

…槍の攻撃は、マリアと同じくギアの負荷に耐える調と切歌によって防がれた。

 

「この罪を乗り越えるのは…!」

 

「三人一緒じゃなきゃダメなのデス!」

 

「ッ!…ありがとう…二人共…」

 

二人の覚悟を聞いて、マリアは決意を新たにウェル博士へと呼びかける。

 

「ドクター!私達が命に代えても守ってみせる!だから、ドクターは世界を!」

 

ウェル博士はマリアの言葉にニヤリとした笑みで応え、シャトーのプログラムを書き換えてその在り方を歪めさせていった。

 

 

 

 

 

至る所から放電現象が発生し、シャトー全体が白く輝く光景を前に、キャロルは目を見開き狼狽える。

 

「やめろ…オレの邪魔をするのはやめろ!やめろおおおおおお!!」

 

キャロルがシャトーに向かって飛び立つ。置き去りにされた響達の耳に、通信機からマリア達の声が聞こえてきた。

 

『ツヴァイウィングと立つステージは楽しかった…次があるならその時は、朝まであなた達と歌い明かしてみたいわね』

 

「マリア、何を…!?」

 

『命懸けで戦った相手とも絆を深めて、仲良く出来るクリス先輩は凄いなって、憧れてたデスよ!』

 

「お前だって出来る!出来てる!!」

 

『ごめんなさい…あの日、何も知らずに偽善と言ったこと…本当は直接謝らなきゃいけないのに…』

 

「そんなの気にしてない!だから…!!」

 

マリア達の言葉…そこに籠められた想いに、響達は嫌な予感がして必死に呼び掛ける。それでもマリア達が止まることはなく…響達の言葉を聞きながら、マリア達はその腕に輝く“血晶”を使って、もう一人の仲間にも想いを伝えていた。

 

(沢山、本当に沢山優しくしてもらったのに…『命を大事に』の約束、守れなくてゴメンナサイデス…)

 

(……やめろ)

 

(言葉が厳しくても、大切な事に気付かせてくれるあなたは…私にとって、世界を教えてくれる、本当に先生みたいな人でした)

 

(……やめろよ)

 

(少しは、自分を労われるようになりなさい。どれだけあなたが丈夫で、死から遠い存在だとしても、あなたが傷つくことに心を痛める人間は、あなたの周りに沢山いるのよ?だから…)

 

(やめろって、言ってるだろ!!そんな、そんな想いを託すような言葉なんか聞きたくない!!)

 

ナナシが沸騰しかけた頭で“血流操作”を維持しながら、必死にマリア達へ想いを伝える。涙知らぬ“紛い物”だが、その瞳から流れ出る赤い雫は、まるで悲しみから出た本物の涙のようで…

 

(俺はまだ、全然理解出来てないんだよ!!分からないんだよ!!!これからもずっと、いつか理解出来るまで…なのに…お前らまで、俺の前から勝手にいなくなるなぁあああああ!!!!)

 

脳にかかる負荷からか、上手く言葉に出来ないのか…癇癪を起すようにナナシは、ただただ形に出来ない想いをマリア達にぶつけた。

 

それぞれが想いを紡ぐ中で、シャトーの暴走は進んでいき、至る所から光が溢れ始める。

 

「お願い、やめて!!これ以上私とパパの邪魔をしないで!!!」

 

その光景を前に、キャロルは幼子のように叫んでいた。

 

 

 

 

 

調と切歌が、マリアの偽物に迫って攻撃を仕掛ける。二人のアームドギアがマリアの偽物の槍を宙へと弾き飛ばし、それと同時に二人が限界を迎えてギアが解除される。二人が作り出した最後のチャンスを活かすべく、マリアが短剣を左手の籠手に接続して一気に偽物へと迫る。マリアが刃を振るう寸前、マリアの偽物の姿がマントに隠れた一瞬で切り替わり、マリアの妹…セレナが、マリアに微笑んだ。

 

だが、それでも…マリアはもう、立ち止まらない。

 

「セレナァアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 

SERE†NADE

 

最愛の妹の名を叫びながら、マリアはセレナの偽物を、託された銀の輝きで切り裂いた。

 

 

 

 

 

遂にシャトーの臨界が近づき、シャトー全体から眩い光が放たれ始めて…

 

「やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」

 

キャロルが絶叫と共に、四つの陣から構築された錬金術を放って…キャロルの錬金術が、シャトーのど真ん中を撃ち抜いた。

 

発光が消えて、一拍の間を置いた後、中央に巨大な風穴の空いたチフォージュ・シャトーは…

 

ドカァァァァァァァァァァァァン!!!

 

…爆炎と煙を舞い上げ、完全に機能を停止して真下の建物の上に落下していった。

 

 

 

 

 

S.O.N.G.本部は世界の分解現象が収まり、ナナシが血液の壁を出現させる前に分解された建造物などが再構成される様子を観測していた。

 

「分解領域の修復を観測!」

 

「ですが、マリアさん達が…」

 

マリア達はシャトーが爆発する直前まで内部に残り、しかもLiNKERの効き目は既に切れていた。最早、生存の確率は絶望的と言っていい。

 

「ぐぅっ…!俺達は、代価なしでは明日を繋ぎ留められないのか…!」

 

「ナスターシャ…」

 

了子がナスターシャ教授に近づき声を掛ける。ナスターシャ教授は顔を伏せて、その身を震わせていた。

 

「分かって、います…あの子達は、世界のために、正しい選択をしたと…それでも…私は…どうして、私は…あの子達に、逃げてと…生きて欲しいと…言えなかった…」

 

両手で顔を覆い、後悔の涙を流すナスターシャ教授に、誰も声を掛けることが出来ずにいると…

 

『諦めるな!!』

 

…通信機から、ナナシの声が響いてきた。

 

 

 

 

 

パリィィィィン!!!

 

…ガラスを突き破り、ナナシが血塗れの顔で飛び出して“障壁”を足場にシャトーの残骸へと駆けていく。

 

「ナナシ!!?」

 

「ずっと集中して探っていたから分かる!!あいつらの(・・・・・)血晶(・・)は無事だ(・・・・)!!!諦めるな!!!」

 

「「「!!?」」」

 

言葉短く、か細いけれど希望が残っていることを伝えたナナシは、驚愕する響達にも、操作を止めた血液と再構成された血液が辺りに広がった地獄のような光景にも…呆然とシャトーを見つめるキャロルにさえ意識を向けることなく、キャロルの横を素通りしてシャトーの…マリア達の元まで全力で向かって行った。

 

 

 

 

 

「あぁ…シャトーが…託された命題が…」

 

キャロルが、父親の命題に答えるために積み上げてきた全てが、目の前で崩れ落ちていく。

 

(パパの想いに、答えるための唯一の手段が…ッ!!?)

 

ドクンッ!!

 

「があああああ!!?」

 

最早、数えることも出来ない程繰り返された痛みに、キャロルは堪えられず声を上げる。拒絶反応と共に頭に響くのは、何処までも忌々しいキャロルの心を蝕む言葉。

 

『お前は父親の命題を都合の良いように解釈して、父親の命題を解き明かすためと言い訳して自分の願望を叶えようとしている』

 

「黙れええええええええええええ!!!」

 

頭に響くその言葉に、キャロルは頭を抱えながら絶叫する。

 

(私が、パパの命題を歪めているなどと!…パパの命題を、自分の願望を叶える言い訳に使っているなどと!…そんな…そんな、こと…!)

 

頭を抱え、脳内に響く声を追い出すように体を震わせるキャロルの耳に、別の声が聞こえてきた。

 

「投降の勧告だ!貴様が描いた未来は、もう瓦礫と果てて崩れ落ちた!!」

 

それは、ナナシの言葉で落ち着きを取り戻した翼の言葉。計画の要を失ったキャロルに、敗北を受け入れるよう促す言葉。

 

「未来…?」

 

涙を流し、呆然とシャトーを見つめるキャロルが、ポツリと呟く。

 

(未来、など…私は最初から見ていない…私が見ているのは、パパとの想い出だけ…)

 

『どうする?エルフナイン?成功すれば、あいつと一緒に笑える世界が手に入るかもしれないぞ?』

 

『ボクは…キャロルに世界を識ってほしい!!笑ってほしい!!生きてほしいです!!!…だから…どうか、力を貸してください!!ボクがパパの命題に、答えを出してみせます!!』

 

再び、キャロルの脳裏に声が響く。忌々しい男と、出来損ないの廃棄躯体、二人の言葉が、キャロルの感情を逆撫でする。すると…

 

『もう、やめよう…?』

 

…現実のキャロルの耳に、忌々しい存在の片割れの声が聞こえてきた。

 

『お願い、キャロル…こんなこと、ボク達のパパはきっと望んでいない…火炙りにされながら、世界を識れと言ったのは、ボク達にこんなことをさせるためじゃない!』

 

エルフナインが、キャロルに必死に呼び掛ける。キャロルの行いは、自分達の父親が望んでいたことではないと。だが…

 

「そんなの分かっている!!」

 

…エルフナインの言葉に、キャロルは涙を流しながらそう叫んで答えた。

 

「分かっていたさ!!あの男が言ったように、万象黙示録を完成させる過程に、オレの願望が組み込まれていたこと!!パパの命題を、言い訳に使っていたことなど…本当は分かっていた!!」

 

痛む頭を押さえながら、キャロルが血を吐くような想いでかつてのナナシの言葉を認めた。

 

「だけど、殺されたパパの無念はどう晴らせばいい!?パパを殺された私達の悲しみは、どう晴らせばいいんだ!!?」

 

(教えてよ…私は…どうすれば良かったの?)

 

「パパは命題を出しただけで、その答えは教えてくれなかったじゃないか!!?」

 

(分からないよ…答えてよ…パパ…)

 

感情のままに、胸の想いを吐き出しながら、キャロルは心の中でも幼子のように涙を流していた。

 

『それは…』

 

『…君達のお父さんは、何か大事なことを伝えたかったんじゃないか?』

 

エルフナインが言葉を詰まらせていると、傍にいた洸がそう言って話に入ってきた。

 

 

 

 

 

「命懸けの瞬間に出るのは、一番伝えたい言葉だと思うんだが…」

 

洸がS.O.N.G.のモニターに映る響を見ながらそう言葉を口にする。一人の娘を持つ父親として、先程命懸けで動いた自分の想いをエルフナイン達に語って聞かせた。

 

「錬金術師であるパパが、一番伝えたかった事…」

 

『ならば真理以外にあり得ない』

 

キャロルが幻影術式を起動して、エルフナインを見ながらそう答えを口にする。それに対してエルフナインは、キャロルの目を真っすぐ見ながら別の答えを返した。

 

「…錬金術の到達点は、万象を識ることで通じ、世界と調和すること」

 

『調和だと!?パパを拒絶した世界を受け入れろというのか!?言ってない!パパがそんなこと言うものか!!』

 

キャロルがエルフナインの言葉を受け入れられず、顔を背けて吐き捨てるようにそう言った。

 

(あり得ない!自分を理不尽な理由で殺した世界を受け入れろなどと!!きっとパパにも、この世界を恨む気持ちがあったはず…やはり、私がやるべきことは、世界への復讐…!)

 

自分に言い聞かせるように心の中でそう呟き、チフォージュ・シャトー無き今、キャロルは自らの手で世界へ復讐することを心に決めて…

 

「キャロル・マールス・ディーンハイム」

 

…静かに、しかしハッキリと力の籠った声で、自身の名を呼ぶその言葉に、キャロルが驚きながら背けていた顔を声のした方へと向ける。

 

その瞳に映ったのは、自分と同じ顔をした存在。だが、チフォージュ・シャトーという拠り所を失い、拒絶反応で苦しむ自分とは違い、その瞳に確固たる決意を宿らせたもう一人の自分(エルフナイン)は、その決意を言葉にも籠めるように…宣言する。

 

 

「これからボクは、もう一人のあなたとして…あなたの代わりに、パパの命題に答えます」

 

 




シリアスとギャグの温度差で風邪引きそうw
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