戦姫絶唱シンフォギア コドクの神が求めるモノ 作:@sora@
まだまだ暑さが残る八月の後期、夕日に照らされた教室の中で響は机に突っ伏して項垂れていた。
「夏休みの登校日って、もっとこう…適当だったはずだよねぇ?なのにこの疲労感…お説教の満漢全席とは思わなかったよ…」
精魂尽き果てた様子でぼやく響の額に、水滴の滴る冷えた缶ジュースが押し当てられた。
「ほへぇ~、気持ち良い~」
「全く…今日が期限の課題が終わってないんだから、当たり前でしょ?」
コトリと缶ジュースを机に置きながら、未来が呆れたようにそう言った。
「何とか提出日を始業式まで伸ばしてもらったけど…お願い未来!手伝って!!でないと終わらない!間に合わない!!」
「…確かにこのままだと、始業式も通り越して響の誕生日まで縺れ込みそうだもんね…仕方ない、良いよ。手伝うよ」
「ホント!?やっぱ未来ってば心のアミーゴだよ~!!」
未来の言葉に響は嬉しそうにガバリと起き上がると、その勢いのまま未来を抱きしめた。未来が頬を赤らめて戸惑っていると、突然二人のいる教室の窓の外にヘリが急接近してきた。凄まじい風とプロペラ音に曝される響達の前でヘリの扉が開き、中からクリス、調、切歌が姿を現した。
『続きは家でやれ!』
『本部から緊急招集!』
「え!?何て言ってるの!!?“念話”使って!“念話”!!」
(デスデスデース!)
(切歌ちゃんゴメン!?それだと伝わっても全然分かんな…)
ゴーン!!
「うごっ!!?」
「響!!?」
業を煮やしたクリスが放った靴が響の顔面に命中して、訳が分からぬまま響は床に倒れ込んだ。
その後、素早く身支度を整えた響は、未来に見送られながら校庭に着陸したヘリに近づいていく。
「未来!ちょっと行ってくるけど、心配しないで!課題も任務も、どっちも頑張る!」
「うん、分かってる!」
響がヘリに乗り込むと、即座にヘリは離陸して本部へと向かって行った。
バルベルデ共和国…南米に位置する小国であり、常に政情不安定な軍事政権国家。長きに渡る独裁によって自国民に過酷な暮らしを強いており、反政府組織との小競り合いが繰り返されている。
そんな国のジャングルの中で、爆発が立て続けに発生した。
「高速で接近する車両を確認!!」
爆発が発生したジャングルのすぐ傍にある政府軍の駐屯地で、パソコンのモニターを確認していた軍人がそう報告した。それを軍人の背後で聞いていたサングラスをかけた上官のような男は、何者かに攻められているにも関わらず余裕の笑みを浮かべていた。
「対空砲を避けるために陸路を強行してきた?だが浅薄だ!通常兵装で我々に太刀打ち出来るものか!!」
車両の進行方向に位置するジャングルの地面から装置が伸びて、周囲に中央が赤く輝く水晶のような物を射出する。水晶が地面に当たって砕けると、そこに赤い陣が展開され、そして…陣から、無数のアルカノイズが姿を現した。
上官の男が余裕でいられる根拠は、このアルカノイズに他ならない。通常兵装では歯が立たず、解剖器官に触れればあらゆる物を分解するアルカノイズに敵う者などいない…極一部の『例外』を除いて。
「接近車両をモニターで捕捉!」
「っ!?こいつは!!?」
故に、モニターに映った車両…一台のバイクとそれに跨る人物が纏う蒼と白の輝きを目にしたことで、軍人達の余裕は崩れ落ちる。
「敵は…シンフォギアです!!」
この世界で数少ない対ノイズ兵装、その一つである天羽々斬を身に纏った風鳴翼がバイクの周囲に展開していた刃でアルカノイズを切り裂きながら突き進む。
「対空砲には近づけるな!」
上官が慌てて指示を出すが時すでに遅く、増援が駆けつける前に翼は対空砲へと迫り、バイクを巧みに操作してバイク前後に伸ばした刃で対空砲を全て切り裂いていった。
“騎刃ノ一閃・旋”
「緒川さん!!」
対空砲を破壊し、上空の安全を確保したところで翼が叫ぶ。すると、上空に巨大な凧を使って空を飛ぶ緒川と、一緒の凧に乗ってシンフォギアを纏った響、クリスも姿を現した。
それに気が付いた地上の軍人達は、一斉に上空の凧へ発砲する。しかし弾丸が届く前に三人は凧から飛び降りて、空中で緒川が地面に向かって煙玉を投げて煙幕を展開。響とクリスは煙に紛れてアルカノイズを攻撃、緒川は軍人達の首に手刀を入れて次々とその意識を刈り取っていった。翼もバイクを乗り捨てて、無数の弾丸や戦車の砲弾を切り捨てながら軍人達の武装を破壊して戦力を奪っていく。
「RED ZONE ガン振りして捻じ込むコブシ!」
響が歌を奏でながら、戦車の砲撃を掌底で弾き飛ばして徐々に迫り、戦車のキャタピラや砲台を破壊していった。
「一片の曇りなく防人れる剣! ゼロ距離でも恐れなく踏み込めるのは!」
”無想三刃”
翼は剣を構えながら両足に刃の付いたブースターを展開、ブースターの推進力によって手と両足の刃を高速回転しながら戦車をバラバラに切り裂いていった。
「背中を託して 番える! 君を感じるから!!」
クリスは両腕にボウガンを展開してアルカノイズ達を殲滅していく。そんなクリスに、大勢の軍人が一列に並んで銃を向けた。
「一斉射撃!!」
指揮官の合図と同時に、軍人達が銃の引き金を引こうとして…その指が空を切る。気が付くと、軍人達が手に持っていた銃は全て消滅していた。
「折角の素晴らしい歌を、無粋な銃声で汚すんじゃねえよ!!」
困惑する軍人達が声の方向に視線を向けると、そこには顔に日本の特撮に出てくるライダーな仮面を被ったナナ…謎の人物がいた。謎の人物が両手を左右に大きく広げると、右手から先程まで軍人達が所持していた銃が出てきてガチャガチャと地面に積み重なり、左手からはボトボトと、何やら革製の帯のような物が落ちていた。
「毒蛇やら毒虫やら、何が潜んでいるか分からないジャングルを全裸で歩き回る覚悟があるなら相手するぜ?あはははは!」
謎の人物がそう言って笑うのと同時に、ベルトを盗られた軍人達のズボンが次々とずれ落ちていった。
「て、撤退―!!」
「あっははははは!!」
両手でズボンを持ち上げながら逃げていく軍人達の様子を謎の人物が嘲笑っていると、少し離れた戦車がそれを隙と見て砲門の照準を謎の人物に合わせ始めた。そして砲弾が放たれようとしたその時、突如として照準を定めていた軍人の視界が傾いた。
「ハァアアアアアアア!!」
掛け声と共に戦車が横倒しとなり、中から混乱した軍人達が飛び出してきた。軍人達が倒れた戦車の方を見ると、そこには大柄で顔に日本の特撮に出てくる戦隊ヒーローの仮面を被った弦十…謎の人物がいた。
「国のため、その身一つでも挑むと言うのなら相手になるぞ!!」
「「「ヒィイイイイイ!!!」」」
素手で戦車をひっくり返した超人相手に軍人達は悲鳴を上げながら逃げ出していった。だが、逃げ出す軍人達とすれ違うように武装した軍人と戦車の集団が仮面のヒーロー達に向かってくるのが遠目に見えた。
「おーい、弦…ゲフン、ヒーローマスク!ちょっと提案があるんだけど!!」
「どうした、ナナ…ゴホン、ライダーマスク!」
「この状況にうってつけの漫画に出てきた技があるんだけど、試してみる気はあるか?」
「何?俺は君みたいに能力が宿ることは無いぞ?」
「原理的にはお前でも出来るはずだ!まず両手を開いた状態で手首を合わせて腰だめに構える!」
「っ!!?何かするつもりだぞ!全員奴らを止めろおおお!!」
何らかの技の予備動作をするライダーマスクに対して、先行してきた軍人達が飛び掛かった。
「そして空気を押し出すように両手を一気に前へ突き出すと同時に気合で相手を威圧する!波!!」
ボッ!(ライダーマスクの手から衝撃波が発生)
「「「ぎゃあああああ!?」」」(吹き飛ぶ数人の軍人達)
「…!なるほど、風圧で吹き飛ばしつつ威圧することで相手の戦意を削ぐ技…こうか!?」
ボンッ!!(ヒーローマスクの手から衝撃波が発生)
「「「「「ぎゃあああああああああ!!?」」」」」(吹き飛ぶ十数人の軍人達)
「おお!こいつは便利だ!!」
「うっわ、マジで使いやがったよこいつ…」
「何故教えた君が引いているんだ!!?」
「いやいや、これは何の設定も無い只の人間が使えたら駄目な技だろ?しかも俺が習得に半日かかったのに見ただけで一発かよ…よーし、ヒーローマスク!その勢いで掌からビーム出してみよう!!」
「出来る訳ないだろう!!?」
「出来るって!お前ならいつか全身からビームも出せるようになるから!!ちょっと本気で試してみようって!!!」
「仲間割れか!?今だ!!突撃ぃいいいい!!!」
「「喧しい!波!!」」
ボボンッ!!!(特撮ヒーロー達の手から衝撃波が発生)
「「「「「「「ぎゃあああああああああああああ!!?!?」」」」」」」(吹き飛ぶ数十人の軍人達と傾く戦車)
装者達と緒川、そして特撮ヒーロー達の戦闘をモニターしていたS.O.N.G.本部では…
「キャロル!キャロル!!
「おい、埒外存在の別個体がいるならちゃんと報告しろ。比較検証出来るではないか」
エルフナインが興奮した様子でモニターを指さし、キャロルが真顔で錯乱した意見を出している様子を、周囲の大人達が苦笑しながら見ていた。
「敵戦力の損耗率、五十四パーセント!」
「昨晩対戦車用に視聴した映画の効果覿面です!」
「あとは、仮面のヒーロー師弟が大暴れしているのが敵の動揺を誘っているわね…日本の特撮がフィクションじゃなくて本物じゃないか疑われないと良いけど…」
「…国連軍の到着は十五分後です。それまでに迎撃施設を無力化してください!」
引き攣った笑みを浮かべる了子とナスターシャ教授が全体の指揮を取っていると、無邪気に瞳を輝かせたエルフナインが機器を操作しつつはしゃいだような声を出した。
「ナナシさんが以前弦十郎さんはいつか全身からビームを出せるようになるって言ってましたけど、アレは本当のことだったんですね!!」
「おい、貴様らあまりこいつがあの男に惑わされているのを放置するな。完全に信じ切っているだろう?適度に指摘して正気に戻してやれ」
『……』
「何故そこで黙り込む!?まさか出るのか!!?本当にその内ビームを放つようになるのか!!?!?」
流石に大人達もそれは無いと思っているが…戦車をちゃぶ台のようにひっくり返す
「クソ!こうも歯が立たないのか!!?」
サングラスをかけた軍の上官が、異端技術によって呼び出した巨大な浮遊戦艦のコックピットで頭を抱える。ヘリで追従してきた装者達に対して爆撃を行っても、無数のミサイルを叩き込んでも、その悉くがガラスのような防壁に防がれてしまい、あろうことか敵二人は自分が放ったミサイルを足場に接近しつつある。そんな非常識な光景に上官は狼狽えていた。
「あの防壁が、奴らが開発中と噂される『ノイズ・キャンセラー』なのか!?ノイズの攻撃を防ぐだけでなくあそこまでの強度とは…非常識にも程がある!!」
目の前の現実を受け入れられずにぼやく上官だが、ぼやいたところで何も解決しない。何も出来ないまま、遂に戦艦の前に敵の一人…風鳴翼がたどり着いた。その身と比較することすらバカバカしい巨大な戦艦を前に、翼は臆することなく行動を開始する。
「初手より奥義にて仕る!!」
翼の宣言と共に上に掲げた剣が凄まじい勢いで巨大化、渾身の力で翼が剣を振り下ろすと、戦艦の装甲は僅かにも耐えることは敵わず、たった一撃で中央付近まで切り裂かれてしまった。
「がっ…あっ…!!?!?」
翼の剣の先端が顔先を通過し、サングラスが真っ二つに割れて地面に落ちた上官はあまりの展開に言葉を失う。そんな上官の目の前に、翼と共に戦艦へと上がってきたもう一人の人物が裂け目から侵入してきた。
「この度は、貴重な異端技術の産物を提供して頂き誠にありがとうございます!!」
ライダーマスクは上官の前に立つと、突然丁寧に感謝の言葉を口にして頭を下げる。
「て、提供!!?感謝!!?な、何を訳の分からないことを!!!」
混乱しながらも上官は懐から拳銃を取り出してライダーマスクに銃口を向ける。しかしそんなことは気にも留めないで、ライダーマスクはコックピットの壁際まで移動し始めた。上官はそんなライダーマスクを警戒していると、切り裂かれた床の隙間から無数のミサイルがこちらに迫ってくるのに気が付いた。
“MEGA DETH INFINITY”
「う、うわああああああああ!!?!?」
クリスによって放たれたミサイルを前に、上官は悲鳴を上げながら頭を抱える。しかし、ミサイルは戦艦に直撃する寸前、先程ヘリを守っていたのと同じ防壁に阻まれ、戦艦に一切の衝撃を与えることなく爆炎と黒煙を撒き散らすだけに終わった。
「た、助かった…?」
目まぐるしく切り替わる状況に、上官が呆然としながら床に座り込む。そんな上官に、ライダーマスクは楽しそうに声をかけた。
「感謝の印として、これから素敵な空の旅へご案内いたしましょう!!」
ライダーマスクがそう言って、周囲が爆炎に包まれた戦艦の壁に触れた。その瞬間…
ライダーマスクと上官は、遥か上空に生身で放り出された。
「へ…?う、うわあああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?!?」
「あっははははははははははははははは!!!」
空の青と炎の赤、煙の黒に雲の白、そして木々の緑が高速で視界を過りながら、上官の男は自分の悲鳴とライダーマスクの笑い声を聞きながらパラシュート無しのスカイダイビングを体験することになり、恐怖で意識を失うことになるのであった。
初手からOTONA無双&分かる人には分かる他作品ネタw
弦十郎さんはあの世界の達人達と良い勝負が出来そう。そして主人公は勝てるイメージが出てこないw