戦姫絶唱シンフォギア コドクの神が求めるモノ   作:@sora@

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第119話

時は、響達が緊急招集によってS.O.N.G.に集合した頃まで遡る。

 

「遅くなりました!」

 

「揃ったな、早速ブリーフィングを始めるぞ!」

 

響達が指令室に入ると、弦十郎達とナナシ、キャロル、エルフナインが既に室内に集まっていた。そして、弦十郎の合図と同時にモニターに緒川と翼、奏、マリアの四名が映った。

 

「先輩!」

 

「奏さん!」

 

「マリア、そっちで何かあったの?」

 

『翼のパパさんの特命でね。S.O.N.G.のエージェントとして、キャロルの供述を元に『魔法少女事変』のバッググラウンドを探っていたの』

 

『私達も知らされていなかったので、てっきり寂しくなったマリアが、勝手に英国までついて来たとばかり…』

 

『だから!そんな訳ないでしょ!?』

 

『ふ~ん?で、実際どうだと思う?ナナシ?』

 

「渡りに船って感じで内心ウキウキしてたんじゃないか?任務って大義名分のお陰で寂しかった本心も誤魔化せるから」

 

『ちょっとナナシ!!?妙な事言わないでよ!!』

 

「え~?俺は自分の“妄想”を語っただけだろ?」

 

『あなたが他人の心境を語るなんて、ほとんど答え合わせみたいなものでしょ!?』

 

「あははは!そんな事無いって!答え合わせってのは、今のお前の失言みたいなことを言うんだぞ?」

 

『あっ…』

 

『あはははは!』

 

『フフッ…』

 

『っ!?もう!両翼も“紛い物”も可愛くない!!』

 

「照れるマリアは可愛いな?」

 

『ああ、可愛らしいな』

 

『スゲー可愛い!』

 

『ッ!!?!?』

 

「ハイハイ、マリアちゃんを愛でるのは後にして、いい加減話を進めましょう?」

 

顔を真っ赤にして狼狽えるマリアを見て苦笑しながら了子が話を進めるよう促す。すると、同じように苦笑しながら緒川が話し始めた。

 

『キャロルさんの供述とマリアさんの捜査で、一つの組織の名が浮上してきました。それが、パヴァリア光明結社です』

 

「パヴァリア光明結社…なるほどね…」

 

「了子君、知っているのか?」

 

「四百年くらい前に私が潰した組織の名前よ。まだ残ってたのね?」

 

「四百年って…」

 

「話のスケールがとんでもないデス!!」

 

切歌達が驚きの表情を浮かべていると、キャロルが神妙な顔であることを語り始めた。

 

「…チフォージュ・シャトー建造にあたり、オレは奴らと取引して支援を得ていた。特にシャトーの設計には、結社の幹部が深く関わっている」

 

「裏歴史に暗躍し、一部に今の欧州を暗黒大陸と言わしめる要因とも囁かれています」

 

エルフナインがモニターに結社が関わったとされる事故や災害現場の画像を表示させ、そこに追加で蛇をモチーフにしたマークが表示されたのを見て、調と切歌が驚きの声を上げる。

 

「あのマーク!見たことあるデスよ!」

 

「確か、あれって…」

 

「そう…我々を支援することでF.I.S.を武装蜂起させたのも、この組織…私達にとっても、向き合い続けなければならない闇の奥底です」

 

ナスターシャ教授が神妙な顔で、パヴァリア光明結社と繋がりがあったことを明かした。

 

『フロンティア事変と魔法少女事変の双方に関わっていた組織、パヴァリア光明結社…』

 

「これを機会に、知られざる結社の実態へと至ることが出来るかもしれません!」

 

『存在を伺わせつつも、中々尻尾を掴ませてもらえなかったのですが、マリアさんからの情報を元に、調査部も動いてみたところ…』

 

そう言って、緒川が表示させた画像には…

 

「アルカノイズ!!?」

 

建造物を分解するアルカノイズが映し出されていた。

 

「…奴らとの取引で、オレはアルカノイズのレシピを提供していたからな…不思議な事ではない」

 

『撮影されたのは、政情不安な南米の軍事政権国家…』

 

緒川がそう言いながら表示させたもう一つの画像には、より詳細な街の様子と、その国の代表と思われる人物の肖像画が映し出されていた。

 

「バルベルデかよ!!?」

 

それを見た瞬間、クリスがこれまでになく反応して大声を上げていた。そんなクリスの様子に、響は心配そうな表情を浮かべ、ナナシも鋭い視線をクリスに向ける。

 

「装者達とナナシ君は現地合流後、作戦行動に移ってもらう。忙しくなるぞ!」

 

アルカノイズの出現により、S.O.N.G.はバルベルデに介入することが決定、本部は急ぎバルベルデ共和国へと進路を進める。

 

「ああそうだ。弦十郎、状況次第だけどやれそうなら以前提案したことを実行してしまおう!」

 

「ああ、アレか…」

 

『アレ…?』

 

装者達が疑問を持つ中で、ナナシはニッコリ笑顔で弦十郎に縁日で見かけるような仮面を手渡すのだった。

 

 

 

 

 

そして、装者達と謎の特撮ヒーロー達が暴れ回り、国連軍が民間人の救護活動を開始した現在へと至る。

 

「いや~、久々に現場で動くことが出来たな!」

 

「お疲れ様。ちょっと派手にやり過ぎじゃない?」

 

一時本部へと帰還した装者達と特撮ヒーロー…弦十郎とナナシは、シャワー室で体を洗浄していた。そして、女性陣が色々騒ぎながら時間をかけて身を清めているのに対して、男性陣はサッサと済ませて一足早く指令室に辿り着いていた。そんな二人に、了子が冷たい飲み物を手渡していく。

 

「はっはっは!今回は出来るだけ派手にとナナシ君が要望を出していたからな!これでも加減は充分にしたつもりだぞ?」

 

「触れることなく人や戦車を吹き飛ばす加減って一体何なのかしら…それより、今回の大暴れは本当に意味があるの?ナナシちゃん?」

 

「ありがと。ん~、そんなに大層な理由ではないけど、いくつかあるな」

 

了子に礼を言いながら飲み物を受け取りつつ、ナナシが弦十郎を現場で暴れさせた思惑を語り始めた。

 

「一つは現在開発中の『ノイズ・キャンセラー』、つまり“血晶”の価値を上げること。あんまり価値を上げると暴走する国が出てきそうだけど、そこはクソガキの名前を使って上手く黙らせるつもりだ。ただ、人間は良くも悪くも忘れる生き物だ。まだ記憶が鮮明でクソガキの悪名が力を持っている今の内に、後々の取引材料として価値を上げておきたい」

 

「フン、精々毟り取ってやれ」

 

自分の悪名をフル活用するナナシに、キャロルは悪い笑顔で楽しそうにそう言った。

 

「S.O.N.G.所属の装者の数と特徴は既に国連に知られている。つまり特撮ヒーローの一人は俺だと思われても、もう一人は装者ではないことはすぐに分かる。弦十郎は基本人間や兵器を相手にしていたからな。ノイズがいる環境で装者以外が活動出来るって広告塔として弦十郎は丁度良かったんだ…まあ、ノリで教えた技のせいでちょっと派手になり過ぎたかもしれないが…」

 

「派手なのは良い事ですよ!サブマスター!!」

 

「ありがとな、レイア」

 

決めポーズをしながらナナシをフォローするレイアにお礼を言いながら、ナナシは他の思惑についても話し始める。

 

「もう一つは、以前発覚した“認識阻害”の特性を利用した情報撹乱の下準備だな。敢えて特徴的な物を身に着けることで『全く詳細が分からない人物』を『変な格好をした奴』に印象付けて、要所要所で俺や弦十郎、慎次や現場で動く大人達に変装させて敵を混乱させる」

 

「…それで、今後は縁日の仮面を付けて実動部隊は行動することになるの?」

 

「そこは『顔を隠した人物』で印象付けようと思っているから、使う物は各々考えてもらう。俺も色々用意したぞ。レスラーのマスクに目出し帽、鼻メガネに鳥や馬の被り物とか」

 

様々な変装道具を取り出すナナシに、周囲の大人達が曖昧な笑みを返す。真面目半分、仲間に奇抜な格好をさせて遊びたいという悪戯心が半分だろうと察したからだ。

 

「あとは、弦十郎が不在になった場合の訓練だな。“血晶”をある程度自由に使えるようになったから、場合によっては弦十郎が現場に出る機会が増えるかもしれない。そんな時に誰の指示で動けば良いか全員が混乱しないように事前に試しておこうかと思ってな。幸い、適切な指示を出せる人間が了子にナスターシャ教授、クソガキにエルフナインと豊富にいるから困らない。ああ、責任は全部弦十郎が取るけどな?」

 

「はっはっは!責任者だから当然だな!」

 

「…指示を出す半数以上が裏切り者と元敵対者だけど、そんな事言っていいの?」

 

「何一つ問題ないな!」

 

「ちょっと愛情が世界規模だっただけで動機は想い人と子供と父親のためだろ?弦十郎の代役には適任だろ?」

 

「全く、このお人好し師弟は…」

 

「フフフ…」

 

「ご期待に沿えるように、頑張ります!」

 

「フン…」

 

それぞれが異なる反応を返したのを確認して、ナナシが笑顔で話を締め括る。

 

「まあ、大まかな理由がこんなところだ。使えるものは何でも使わせてもらう。特にクソガキの悪名はトコトン活用させてもらうから覚悟しておけ!あはははははは!!」

 

そう笑ってナナシが飲み物に口を付けた。その時…

 

「あ!分かったんだゾ!サブマスターは、マスターのために色々やっているんだぞ!!」

 

「ゴフッ!!?」

 

…唐突なミカの言葉に、ナナシは飲み物を噴き出しそうになった。

 

「ゲホゲホ…と、突然何を言ってんだミカ!?」

 

「エルフナイン様が言ってたんだゾ!サブマスターが誰かの気にしていることを茶化すのは、大体相手のためを想ってのことだって!さっき最後にマスターを茶化したから、きっとマスターのためなんだゾ!」

 

「オレは気にしてなどいない!!」

 

無邪気に笑いながら自分の考えを口にするミカに、キャロルが怒鳴る。ナナシも引き攣った笑みでミカに反論し始めた。

 

「そ、それはちょっと根拠としては弱くないか?いや、クソガキはもう俺達と同じ組織の一員だから、広義では間違っていないと思うけど…」

 

「明確に否定しないと言うことは、正解ですわね?」

 

「いちいち悪ぶるなんて、サブマスターもメンドクサイ方ですねぇ?」

 

「失礼だぞ、ガリィ?サブマスターは派手に奥ゆかしいだけだ」

 

「何好き勝手言ってんだ人形共!!?」

 

追撃を仕掛けてくるオートスコアラー達の言葉にナナシが動揺するのを見て、了子達も何かを察し始めた。

 

「…ああ、なるほど。キャロルちゃんが生み出したアルカノイズが広まっちゃった責任を各国に追及させないためね?」

 

「っ!?」

 

「“血晶”の価値を引き上げることでキャロルの功績を際立たせ、装者達やあなた、そして風鳴司令の派手な活躍でアルカノイズの脅威を霞ませることで各国の目を背けさせる…色々と考えるものですね?」

 

「ぐ、偶然って凄いな!?今回の作戦にそんな都合の良い効果があったなんて!!」

 

「よく言うものだな?ご都合展開を手繰り寄せるのは君の十八番だろう?俺が派手に目立つような技を使わせたのも実はそのためだったのだろう?」

 

「いやそれは完全にノリだったし一発習得は普通に引いた」

 

「ぬう!!?」

 

「『それは』ってことは、他はやっぱりキャロルのためを想ってのことだったんですね!ありがとうございます!!」

 

「っ!!?だぁあああああ!!もういい!!!好きな“妄想”を勝手に信じてろ!!!このお人好し共が!!!」

 

「……フン…」

 

ナナシは一方的に話を終わらせると“収納”から漫画を取り出して読み始め、キャロルはどうでも良いといった風に端末を操作して情報整理の仕事に取り掛かってしまった。だがナナシが持つ漫画は上下逆さまであるし、キャロルが入力する文章は多数の言語が入り混じった複雑怪奇な物となっており、二人が冷静でないのは一目瞭然だった。周囲の人間はそんな二人を微笑ましそうに眺めていた。

 

 

 

 

 

一方、歌姫達はシャワールームで未だ身を清めつつ現状を確認し合っていた。

 

「S.O.N.G.が国連直轄の組織だとしても、本来であれば、武力での干渉は許されない」

 

「だが、異端技術を行使する相手であれば、見過ごすわけにはいかないからな」

 

「アルカノイズの軍事利用…」

 

「LiNKERの効果時間が充分にあれば、私達だってもっと…!」

 

「戦闘中に効果が切れたら、足手纏いになってしまうデス。使いどころは慎重にってナナシさんに言われているデスけど…」

 

「大丈夫だよ!!」

 

ぼやきながらシャワーを浴び終えて出てきた切歌に響が全裸のまま駆け寄ってその手を取り、真剣な表情で切歌を元気づけ始めた。

 

「何かをするのに、LiNKERやギアが不可欠なわけじゃないんだよ!さっきだって“血晶”でヘリを守ってくれた!ありがとう!」

 

「な、何だか照れくさいデスよ~」

 

お互い裸の状態で褒められ、様々な要因の照れと恥ずかしさに切歌が顔を赤くして慌てていると…

 

「ジー……」

 

…調がジトッとした目で切歌を見ていた。

 

「め、目のやり場に困るくらいデース!」

 

そんな騒ぎを聞いてマリアが苦笑しながら、自身の手に付いた“血晶”を見つめる。

 

(確かにこの“血晶”のお陰で貢献は出来たけど…それは別に、私達である必要はない。もしLiNKERのデータ解析が進まなければ、私達は前線から離れることになるのでは…)

 

マリアがそんな不安を感じて俯いていると…

 

「おりゃ!」

 

ガシッ!モミモミモミモミ…

 

「ひゃああああああああ!!?!?」

 

…背後から“認識阻害”で気配を消して接近してきた奏が、マリアの胸を揉んできた。

 

「な、ななな、何をするのよ突然!!?」

 

「いや~、寂しがり屋のマリアの顔を覗いてみたら、何か暗い表情で悩んでいたからナナシに倣ってマリアを柔らかくしてみようかと。でも必要なかったな?スッゲー柔らかい…」

 

モミモミ…

 

「何時まで揉んでいるのよ!!?」

 

奏を振りほどいて真っ赤な顔で胸元を隠すマリアに、奏は明るく笑いながら話しかけた。

 

「あはははは!悪い悪い、今回ギア無しで現場に出たあんたらがちょっと心配になったから、ちょっとあたしの“妄想”を聞かせてやろうと思って」

 

「あなたの“妄想”…?」

 

「“血晶(コレ)”があれば自分達は必要なくなるんじゃないかって悩んでたんだろ?」

 

「ッ!!?」

 

図星を指されて驚くマリアに、奏が優しく微笑んだ。

 

「あたしはさ、寧ろ逆になる効果を狙ってナナシは“血晶”を本格的に実戦投入したんじゃないかって思ったんだ」

 

「逆…?」

 

「…コレがあれば、ギアを使えなくなったあたしやあんた達でも翼達を助けられる可能性が生まれるだろ?」

 

「!!?」

 

「あいつ、“血晶”を使い慣れてるからって理由で今回あたし達がヘリに乗る許可取ってくれてたみたいなんだけど…本当はそういう実績を作っておいて、いざという時のあたし達の拠り所にしたかったんじゃないかな?根拠は無いし、聞いても絶対素直に答えてくれないだろうけど」

 

「…フフッ、確かにね?そうだとしても絶対にはぐらかしそう」

 

「だろ?まあ、それならあたし達が勝手に“妄想”したことを押し付けて、精々嫌がるあいつの顔を見て笑ってやろう?あんまり暗い顔で頭悩ませていると、あいつに身も心もフニャフニャに柔らかくされちまうかもよ?」

 

「言い方!!?何か意味が違って聞こえるわよ!!?」

 

「あはははは!まあ一番長くあいつに世話になっている翼に比べればずっと柔らかいから大丈夫か?」

 

「ちょっ!!?だから、体を触ろうとするんじゃない!!」

 

そんな風に、奏がマリアをからかっていると…

 

ミシミシ!

 

…笑顔で額に青筋を立てながら、凄まじい力で扉を掴んで軋ませる翼が二人の背後にいた。

 

「随分と楽しそうな会話をしているではないか、奏?マリア?誰の体が固い柔らかいなど…」

 

「つ、翼!?」

 

「ま、待て!?私は言ってない!!?」

 

「あはははは、何を慌てている?体の柔軟性は戦士として重要なことであろう?私も是非混ぜてくれ。二人共肩が凝っていそうだな?私が揉み解してやろう」

 

「ちょっ!?目がヤバいって!!?わ、悪かった!!悪かったから落ち着け、翼!!」

 

「ちょっと手に籠めている力を抜きなさい!!?柔らかくなる前に肩が潰れるわ!!!」

 

「…何やってんだか」

 

騒ぎ始めるアイドル三人に呆れつつ、クリスは一人シャワーを浴びながら俯いていた。

 

『パパ!?ママ!!?離して!!ソーニャ!!!』

 

『ダメ!危ないわ!!』

 

クリスの脳裏に、過去の出来事が過る。クリスは瞳を閉じて、辛そうに表情を歪ませる。

 

「くそったれな想い出ばかりが、領空侵犯してきやがる…!」

 

そう呟いて、何かに耐えるようにクリスが体を震わせていると…

 

『あんまり暗い顔で頭悩ませていると、あいつに身も心もフニャフニャに柔らかくされちまうかもよ?』

 

…不意に、先程奏が口にした言葉が脳裏に過った。

 

(…あのご都合主義と、あいつに唆されたこいつらは、きっとあたしに何かしてきやがる)

 

これまでの経験から、クリスは今悩んでいることに自分の周囲の人間が関わってくることを察した。そしてそれを主導するのが、お人好しの“紛い物”であることも…

 

 

 

(でも、駄目なんだ…この問題はあたしが…あたし、だけで…!!)

 

 

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