戦姫絶唱シンフォギア コドクの神が求めるモノ   作:@sora@

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読者の皆様、誤字報告ありがとうございます。
投稿前後に確認して気を付けているつもりですが、よりによってそこ!?みたいな間違いがあったので改めてお礼申し上げます。
なるべく自力で修正しますが、もし誤字を見かけたらご協力ください。


第120話

夜間に指令室へ呼び出された響、翼、クリスの三名に、新たな任務が下された。

 

「新たな軍事拠点が判明した。次の任務を通達するぞ。目標は、化学兵器を製造するプラント。川を遡上して、上流の軍事施設へ進攻する。周辺への被害拡大を抑えつつ、制圧を行うんだ!」

 

「「「了解!」」」

 

弦十郎に力強く返事をした三人は、緒川と共にボートに乗り込み目的地の軍事施設へと向かう。その途中で、クリスは過去の出来事を思い出していた。

 

 

 

 

 

『パパ!?ママ!!?離して!!ソーニャ!!!』

 

『ダメ!危ないわ!!』

 

爆発によって生じた炎と黒煙が半壊した建物を包み込み、その隙間から瓦礫の下敷きになって倒れ伏す男女…クリスの両親の姿が見える。既に事切れた二人の傍に幼いクリスが駆け寄ろうとするのを、クリスからソーニャと呼ばれた褐色肌の女性が必死に止めていた。

 

『ソーニャのせいだ!!』

 

『っ!?』

 

幼いクリスは涙を流しながらソーニャに怒りを籠めた言葉を放つ。それはソーニャが持ち込んだ支援物資の中に爆弾が仕込まれており、その爆発によってクリスの両親は命を落としたからだ。

 

最愛の両親を失ったクリスは、その悲しみと怒りをソーニャに言葉でぶつけた。爆弾を仕込んだのはクリスの両親の活動を邪魔に思う何者か…しかし、自分の行いによって二人が命を失った事実に、ソーニャはクリスに何も言葉を返すことが出来ず…ただ、後悔の涙を流すことしか出来なかった。

 

 

 

 

 

今のクリスは、両親の死はソーニャが悪い訳ではないと理解している。だが、あの時自分が感情のままに発した言葉によって、姉のように慕っていたソーニャの心を深く傷つけたことに、強い後悔を感じていた。

 

「…昔の事か?」

 

「ッ!!」

 

そんな想いが表情に出ていたようで、クリスは翼の声に一瞬目を見開く。だがすぐに笑みを浮かべて敢えて明るい調子で返事をした。

 

「ああ、昔の事だ!だから気にすんな」

 

「…詮索はしない。だが今は前だけを見ろ。でないと…」

 

バン!!

 

翼の言葉の途中で、突如翼達のボートがライトに照らされる。その直後にボートを狙って無数の弾丸がボートへと飛来してきた。

 

「状況、開始!」

 

「一番槍、突貫します!!」

 

緒川が弾丸を避けるようボートを操作しながら宣言するのを聞いて、響がギアペンダントを手にボートから飛び上がった。

 

Balwisyall Nescell gungnir tron

 

ガングニールを纏った響が、ブースターの推進力で弾丸を放つ装甲車へと一気に接近し拳の一撃を繰り出す。その一撃によって吹き飛び転がっていった装甲車だが、その音によって異変を察知した軍事施設の防衛システムが作動し、地面から飛び出した装置によって無数のアルカノイズが召喚された。

 

翼とクリスもギアを纏って響に合流し、三人の装者達は軍事施設の制圧を開始した。

 

 

 

 

 

響達が大立ち回りを繰り広げているその頃、月明かりのみが室内を照らすオペラハウスの中に、複数の人間が集まっていた。

 

「閣下、念のためエスカロン空港にダミーの特別機を手配しておきました」

 

「無用だ」

 

軍服を着た男の言葉を、オペラハウスの一席に座る人物…バルベルデ大統領は一蹴する。

 

「亡命将校の遺産『ディー・シュピネの結界』が機能している以上、この地こそが一番安全なのだ」

 

国のトップがわざわざオペラハウスに身を隠している理由は、どうやらその場に絶対の信頼を寄せる何らかの術が施されているかららしい。

 

それは即ち…

 

「つまり、本当に守るべき物はここに隠されている」

 

「ッ!?何者だ!!?」

 

大統領と側近達が突如聞こえてきた女の声に警戒する。声が聞こえてきた方向に視線を向けると、オペラハウス内に光を取り込むために空いている壁面の穴に、三つの人影があった。

 

「主だった軍事施設を探っても見つけられなかったけど…」

 

「S.O.N.G.を誘導して、秘密の花園を暴く作戦は上手くいったワケダ」

 

「慌てふためいて、自分達で案内してくれるなんて、可愛い大統領♡」

 

三人は全員女性、中央にいるのが昔の貴族のような服装をした男装の麗人、その左右にカエルのぬいぐるみを抱えて眼鏡をかけた小柄な少女と、長身で豊満な体の煽情的な女性という何とも纏まりのない三人組を目にした大統領が慌てた様子で席を立ち上がった。

 

「サンジェルマン!プレラーティ!カリオストロ!」

 

大統領の口から三人の名前が紡がれる。大統領と困惑する側近達に取り合うことなく、女性三人は目的のため動き出す。

 

「せっかくだから、最後にもう一仕事してもらうワケダね」

 

小柄な少女…プレラーティがそう言った直後、三人はその口から美しい歌を奏で始めた。

 

「…あの者達は?」

 

「パヴァリア光明結社が遣わせた錬金術師」

 

「あれが異端技術の提供者達!?」

 

「同盟の証がある者には、手を貸す約定となっている!」

 

大統領がそう言って、自身の襟に付けられた蛇の描かれるバッチを指さし、三人の錬金術師に声をかける。

 

「国連軍がすぐそこにまで迫っているのだ!奴らを撃退してくれ!」

 

大統領が必死に叫ぶも、煽情的な女性…カリオストロだけが大統領に投げキッスを返すだけで三人は歌を奏で続ける。それが了承なのか拒絶なのか分からず、大統領が笑みを引き攣らせていると…三人が歌を歌い終えた。

 

その直後…大統領達が身に着けている蛇のバッチが淡く輝き出した。

 

「う、うわああああああああ!!?」

 

すると、大統領の傍に居た側近の一人が全身を掻きむしり、その直後に光の粒子となって消滅してしまった。遅れて他の側近達も同様に暴れながら次々と光の粒子へと変わっていき、光の粒子は空中で収束し始める。そして最後に、大統領の体も淡く輝き出した。

 

「ッ!?痒い!?痒い!!?…でも、ちょっと気持ちぃいいいい!!!」

 

そんな最期の言葉を残して、大統領の体も光の粒子へと変わる。光の粒子は男装の麗人…サンジェルマンの手元に集まり、輝く球体へと変わった。

 

「七万三千七百八十八…」

 

その球体をジッと見つめながら、サンジェルマンは何かの数字を呟いた。

 

そんな異常な光景を、座席の陰に隠れながら観察する…全員がオペラマスクを被った怪しい集団がいた。

 

(…なあ、もうちょっと何とかならなかったのか?)

 

(言うな…キレたナナシに目出し帽と動物覆面の二択から譲歩を引き出すのに凄く苦労したんだから)

 

(そんな集団が銃を構えていたら、完全に強盗にしか見えねえ…)

 

(あんまりお互いの顔を凝視するなよ?一人でも笑ったら堪え切れる自信ないぞ、俺…)

 

“念話”でそう愚痴を伝え合うS.O.N.G.のエージェント達。それをスルーしながら、同じようにオペラマスクを被ったナナシと友里が先頭で三人の錬金術師を監視しつつ、これまた同じようにオペラマスクを被った藤尭がノートパソコンを操作して先程入手した映像をスキャニング処理していく。

 

(調査部からの報告通り、このオペラハウスを中心に衛星からの補足が不可能だ…この結界のようなものは、指向性の信号波形を妨害しているのか?プラント制圧を陽動に乗り込んでみたら、とんだ拠点のようだ)

 

(……)

 

(調査部、画像や映像に映り込んだ異物を見つけ出すの上手くなったわよね?ナナシ君がよく“認識阻害”使って本部のカメラに妙な映り方するから…)

 

(アレ心臓に悪いって不評だぞナナシ?深夜帯に“浮遊”使って真顔で徐々にカメラ前に移動するのはやめてやれ)

 

(……)

 

(…?ナナシ君?どうかしたの?)

 

(…ん?悪い、聞いてなかった)

 

(さっきの歌に聴き惚れでもしたのか?)

 

(それは当然だけどさ…)

 

(認めるのかよ…)

 

平常運転のナナシに全員が呆れた顔をするが、それにしてはナナシのテンションが低く、微妙な表情を浮かべていた。

 

(何か気になることでもあるの?)

 

(あのリーダーっぽい奴の歌に籠められていた感情がこう…翼の固さとクリスの暗さとマリアの重さをブレンドさせて長い間熟成させたみたいな、何とも言えない辛気臭い感じが…)

 

(お、おう…歌大好きのお前が他人の歌に酷評なんて珍しい…)

 

(いや、歌自体は素晴らしかったぞ?三日くらいかけて感想を伝えてやろうか?)

 

((((((いや、遠慮しとく!!))))))

 

全員から拒否されたナナシは一瞬クスリと笑った後、地下へと続く隠し通路を見つけ出した錬金術師達を観察しながら自分が先程の歌を聴いて気づいたことを全員に伝えた。

 

(あいつらの歌、それぞれ籠めた想いにかなりの落差があったんだ。リーダーっぽい奴と、他二人の足並みが揃っていないというか…見据えている先が違う?)

 

(…どういうことだ?実は仲間じゃないとか、裏切ろうとしているってことか?)

 

(それはない。あいつらが互いに向けている感情は絶対の信頼だ。同盟を組んでいたらしいバルベルデ大統領達に向けていた感情とは天と地ほど差がある)

 

(…考えるのは後にしましょう。目標が移動を開始したわ。私達も後を追うわよ!)

 

(((((了解(ラジャー)!!)))))

 

(ちょ、ちょっと!?)

 

友里の号令で一斉に駆け出したナナシとエージェント達の後を、スキャニング処理中のノートパソコンを持った藤尭が慌てて追いかけた。

 

 

 

 

 

一方その頃、味方である筈のバルベルデ軍人達さえ巻き添えにしながら暴れるアルカノイズを殲滅させプラント施設を制圧した装者達であったが、指揮官がいるはずの部屋はもぬけの殻となっていた。

 

「どうやら指揮官には逐電されてしまったようだな」

 

「翼さん!この子が…」

 

翼が響の方に視線を向けると、そこには見知らぬ少年がいた。少年は装者達がアルカノイズとの戦闘中に倒壊した建物の下敷きにされそうになったところを響に助けられ、何か役に立てないか付いて来たそうだ。

 

「俺、見たんだ!工場長が車で逃げていくのを!もしかしたら、この先の村に身を潜めたのかも!」

 

「君は…?」

 

「俺はステファン!俺達は無理やり、村からこのプラントに連れてこられたんだ!」

 

自分よりずっと幼い少年まで強制労働させられていた事に、クリスが苛立ちからパシンと掌に拳を打ち付ける。

 

「七面倒なことになる前に、とっ捕まえなきゃな!」

 

クリス達はステファンの案内によって、指揮官が潜伏すると思われる村までむかうことになった。

 

 

 

…その道中

 

「ステファン君!ちょっと待って!!」

 

「お姉ちゃん、どうしたの!?早く工場長を追いかけないと!!」

 

「分かってる!でもその前に、ステファン君はこれを持ってて!」

 

「これは…?」

 

 

 

 

 

オペラハウスの地下、そこは倉庫となっており、高価そうな美術品や何やら怪しげな雰囲気を漂わせる物品など様々な物が保管されていた。錬金術師三人は道中にある物には一切目を向けることなく、倉庫の奥にある布に包まれた何かの前に立つと、その布を引き剝がした。布に包まれていたのは、身の丈ほどもある琥珀色の水晶のような物だった。

 

物陰に隠れながら水晶を観察するナナシ達が、その水晶の中に奇妙な被り物をした人間…いや、人形が埋め込まれているのを確認した、その時…

 

ビー!!ビー!!

 

「あっ!?」

 

「「「ッ!!?」」」

 

(藤尭のアホ―!!?)

 

…スキャニングを終えた藤尭のノートパソコンからアラーム音が鳴り響き、錬金術師達にナナシ達の存在がバレてしまった。

 

(全員即時撤退!銃撃待て!俺は残って会話による情報収集、可能なら捕縛を試みる!!)

 

(((((了解(ラジャー)!!)))))

 

(済まないナナシ!!)

 

“念話”による素早い意思疎通で即座に動き出すS.O.N.G.エージェント達。一人残ったナナシは呆然と佇む錬金術師達と対峙した。

 

「…何?今の怪しいマスク集団?」

 

「状況的にS.O.N.G.のはず…なワケダが…?」

 

「二人共、油断しないで。まだ一人残っている」

 

突如現れて撤退していったオペラマスクの集団に困惑するプレラーティとカリオストロにサンジェルマンが警戒を促す。その間にナナシはサンジェルマン達に対して優雅に一礼して声を掛けた。

 

「初めまして、麗しいお嬢様方。美しい月夜にこのような薄暗い地下に籠るなど勿体ない。よろしければ私と一緒に外で月を眺めながらお茶でも致しませんか?」

 

「…突然現れたオペラマスクの男からナンパされた場合、一体どう反応すれば良いワケダ?」

 

「幾らあーしらが魅力的だからって、顔も見せずに声を掛けるなんて失礼じゃないかしら?」

 

「あはははは!ご勘弁ください!あなた方の美貌の前では私の顔の粗さが際立ってしまうため、仮面無しでは声を掛けることもままならないのです!」

 

「あら、お上手♡」

 

「あんなおべんちゃらに乗せられるのは流石にチョロすぎるワケダ」

 

「や~ね~本当の事でも美人って褒められたら嬉しくなるのが女ってものでしょ?」

 

「自分に自信を持てるのは素晴らしい事ですよ?髪や肌はもちろん指先のネイルまで拘ったあなたの日々の努力が垣間見える在り方は非常に好ましい。話の導入だとしても、こういう時言葉を偽らなくて良いと自然と言葉が口から出せて非常にありがたい」

 

「…あらら、本当にお上手だこと?」

 

カリオストロが嬉しそうな仕草で親しみを感じさせる笑みを浮かべて…内心で警戒心を引き上げる。その感情を感知したナナシは、脳内で獲得した情報を纏めていく。

 

(俺の弁が立つと理解した瞬間三人の中で一際警戒心を強めた。仕草を操ることにも慣れている。この女が腹芸担当。小さいのが警戒心とは別にやや強めの好奇心、了子やエルフナインに近い研究者気質、こいつが情報分析担当。最後の男装女は女を褒め慣れている様子の俺にやや嫌悪感強め、根は真っ直ぐなタイプ。他二人が自然と信頼を向けていることから、仲間に自主的に協力したいと思わせることが出来るリーダーってところか?)

 

相手の一挙手一投足から個々の役割を分析するナナシ。それと同時に、カリオストロの感情から僅かに感じ取った違和感についても考察する。

 

(自分の美貌に自信があるのも、褒められて嬉しいのも本心っぽいが…別枠で何かを楽しんでいる気がする。この感情、心当たりがある気がするんだが…一体何だ?)

 

「貴様はS.O.N.G.の人間か?」

 

サンジェルマンの問いに、ナナシは一度思考を中断して返答する。

 

「難しい質問ですね…確かに私の所属はS.O.N.G.ですが…」

 

「…何が難しいワケダ?」

 

「普通に答えているじゃない?」

 

「あははははは!では質問に質問で返してしまうことになりますが…あなた方はコレを見て私が人間だと思いますか?」

 

そう言葉にするのと同時に、ナナシは“収納”から血液を放出して“血流操作”で周囲に蠢かせる。

 

「ッ!?…お前がキャロルの警戒していた『アンノウン』なワケダ」

 

「S.O.N.G.に潜む正体不明のイレギュラー…なるほど、貴様が一人残ったのは、仲間を逃がすためだけでなく…」

 

「Exactly!!あなた方とこの場限りで別れるには余りに惜しいため…少々強引にでもお茶会にご招待しようかと!」

 

ナナシの周囲で不規則に蠢いていた血液が、槍のように尖っていくつもサンジェルマン達に向けられる。

 

「会って直ぐとはせっかちねぇ…え?」

 

応戦するため錬金術の陣を掌に展開したカリオストロだが、サンジェルマンが手を翳してカリオストロを制止した。

 

「おや?自らお誘いに乗って頂けるのですか?」

 

「…実験には丁度良い。ついでに、大統領閣下の願いも叶えましょう」

 

サンジェルマンはナナシを無視して傍にある竜の彫刻の前に立つと、先程生成した光の球体を彫刻に近づける。

 

「生贄より抽出されたエネルギーに、荒魂の概念を付与させる」

 

すると、球体から彫刻に酷似した竜が出現して、徐々にその体を巨大化させていく。その光景に、オペラマスクに隠れていないナナシの口は引き攣った笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

 

S.O.N.G.のエージェント達は三台の車に乗ってオペラハウスから離れていく。車の一つを運転する友里は、急ぎ離脱しながらもミラーで背後のオペラハウスに視線を送っていた。

 

「ナナシ君、大丈夫かしら?」

 

「きっと大丈夫だ。ナナシなら案外、上手くあの三人のことも捕縛出来るかも…」

 

(全員死ぬ気で逃げろおおおおお!!!)

 

((((((!!?))))))

 

藤尭の言葉の途中で、エージェント全員にナナシから“念話”が届いた直後…

 

ズガァアアアアアン!!!

 

…地面を突き破って蛇のような体型の巨大な竜と、竜に吹き飛ばされて宙を舞うナナシが姿を現した。

 

「何なのアレ!!?」

 

「ナナシ!?ヤバい逃げろ!!」

 

空中に打ち上げられたナナシの真下で竜が口を開いて待ち構える。だが、ナナシは“障壁”を足場に跳躍して友里達の車の上に素早く移動したため、竜は虚空を噛み締めガキンと牙を打ち鳴らした。

 

(ナナシ無事か!?アレは一体何なんだよ!!?)

 

(ごめーん!ナンパ失敗したら猛獣嗾けられた!!)

 

(((((マジで何やってんだ!!?)))))

 

(おふざけは後!今は逃げ切るわよ!!)

 

「本部!応答してください!!本部!!」

 

藤尭が救援要請を出すため本部に通信を繋ぐ。

 

『友里さん!藤尭さん!』

 

『装者は作戦行動中だ!死んでも振り切れ!!』

 

「死んだら振り切れません!!」

 

藤尭が泣き言を言っている間に、竜が最後尾の車に追いつき喰らいつこうとその口を大きく開いた。

 

「させるかぁあああああ!!!」

 

ナナシが即座に反応して車から跳躍、竜の横っ面に拳を放つ。それによって竜の頭が僅かに逸れて車への命中は免れたが、ナナシの攻撃を受けたはずの竜は全く堪えた様子が無い。竜はナナシと車二台を乗り越えて、先頭を走る友里達の車へと迫り始めた。

 

(藤尭!友里!そっちに行ったぞ!!)

 

「うわあああああ!!?軌道計算!!?暗算でぇえええええ!!?」

 

自分達に迫る竜を見た藤尭は慌てながらも竜の軌道を予測して咄嗟にサイドブレーキを引く。車の減速でまたもや狙いが外れた竜は前方の谷へと落下していった。

 

「やり過ごせた…」

 

(まだだ!!)

 

安堵する藤尭達にナナシの“念話”が届くも、警戒するよりも先に地面を掘って舞い戻ってきた竜によって藤尭達の車が派手に飛ばされ、ひっくり返ってしまう。倒れた車によって後続の車も進め無くなり、車から飛び出したエージェント達は転倒した車から這い出る藤尭達を守るように銃を構え、ナナシが全員を守るように竜へと対峙する。その様子を、崖の上からサンジェルマン達が眺めていた。

 

「あなた達で七万三千七百九十五…その命、世界革命の礎と使わせていただきます」

 

「革命…?」

 

追い詰められたS.O.N.G.の面々。ナナシが仲間を守るべく、対峙した竜へと攻撃を仕掛けようとした、その時…

 

Seilien coffin airget-lamh tron

 

…突如聴こえてきた美しい歌声に、思わず動きを止めてしまった。

 

「ッ!」

 

「歌…?」

 

「何処から…」

 

サンジェルマン達も動揺していると、一台の車が竜へと突っ込み爆発した。爆発に竜が怯んだ隙に、衝突寸前の車から飛び降りたマリア、切歌、調の三人がギアを纏ってナナシと共に竜へと対峙した。

 

 

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