戦姫絶唱シンフォギア コドクの神が求めるモノ   作:@sora@

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第125話

ヨナルデパズトーリが響の一撃で消滅。そのすぐ後に、遅れて翼とクリスも合流してきた。

 

「そこまでだ!パヴァリア光明結社!」

 

「こちとら虫の居所が悪くてなぁ!抵抗するなら容赦は出来ないからな!!」

 

翼が剣の切っ先を突きつけ、何故か不機嫌そうなクリスもボウガンをカリオストロ達へと向ける。

 

「生意気に~!踏んづけてやるわ!」

 

完全に形成が逆転したにも関わらず、カリオストロが応戦の構えを見せていると、突如カリオストロ達の前に陣が展開されてサンジェルマンが姿を現した。

 

「フィーネの残滓、シンフォギア!だけどその力では、人類を未来に解き放つことは出来ない!」

 

「フィーネを知っている!?それに、人類を解き放つって…」

 

「まるで、了子さんと同じ…バラルの呪詛から解放するって事!?」

 

「まさか、それがお前達の目的なのか!?」

 

装者達の疑問には答えることなく、サンジェルマンは装者達を警戒しながらカリオストロ達へと指示を出し始めた。

 

「カリオストロ、プレラーティ、ここは引くわよ」

 

「ヨナルデパズトーリがやられたものねぇ」

 

「態勢を立て直すワケダ」

 

「未来を、人の手に取り戻すため、私達は時間も命も費やしてきた。この歩みは誰にも止めさせやしない」

 

そう言って、サンジェルマンはテレポートジェムを取り出して地面へと叩きつけ、地面に転移の陣が出現する。

 

「未来を人の手にって…待って!」

 

響がサンジェルマン達を呼び止めるが、既に転移陣は展開されて三人は姿を消す寸前で止めることなど不可能。だが、サンジェルマン達が姿を消す直前に、サンジェルマンが姿を現してからずっと黙っていたナナシが口を開いた。

 

 

 

「人殺し!!」

 

『ッ!!?』

 

 

 

この上なくシンプルなその一言に全員が驚き、サンジェルマンが目を見開いて…そのまま姿を消していった。

 

このエスカロン空港での邂逅を最後に、パヴァリア光明結社の錬金術師達はバルベルデ共和国から姿を消したため、S.O.N.G.は日本に帰還することになった。

 

 

 

 

 

「大変だったのね?急に飛び出して行ったと思ったら、地球の反対側でそんなことが…」

 

「うん…そこでまた、錬金術師に出会ったんだ…」

 

日本に帰国して、始業式で校歌を歌ったり、夏休みの宿題を終わらせられずに先生に怒られたり、水泳の授業で全力を出したりと何気ない日常を送っていた響は、更衣室で濡れて乱れた髪を未来に梳かしてもらいながらバルベルデであった出来事を話していた。

 

「目的が了子さんと同じだとしたら…」

 

「そうしなければならない理由があるのかも知れない。だけど、そのためにたくさんの人を傷つけて良いことにはならないよ……ハァ…」

 

一通り話し終えた響が、最後に深い溜息を吐いた。

 

「響、他にも何か心配事があるんじゃない?」

 

「え!?あ、あぁ!うん!翼さんとマリアさん、それと兄弟子が現地に残って調査を続けることになったんだ~!リディアンの始業式には戻るとも言ってたから、もう帰ってくるはずなんだけど…」

 

響が慌てながら何かを誤魔化すように早口で話すが、真っ直ぐに響の顔を見つめる未来の瞳を見て、次第に言葉を途切れさせると…顔を俯かせて、ポツリと呟くように未来に話しかけた。

 

「ねぇ、未来…ちょっと聞いてくれるかな?」

 

 

 

 

 

バルベルデに残って調査を続けていた翼、マリア、ナナシの三人は、無事調査を終えてプライベートジェットで日本に向かっていた。マリアは雑誌を開き、翼は窓から外の光景を眺めていた。その翼の傍らに、バルベルデ政府が保有していた資料の入った丈夫そうなアタッシュケースが置いてある。

 

そして、二人と同じ空間の隅っこで…とてつもなく不機嫌そうなナナシが、ブスッとした表情で漫画を読んでいた。

 

この数日、二人の護衛兼調査の手伝いでバルベルデに残っていたナナシは何故か今のようにずっと不機嫌な様子をしており、マリアは気になっていたが、黙々と調査を進めるナナシと特に何も言わない翼に何となく聞きづらい雰囲気を感じて今まで確認出来なかった。しかし日本に帰るまで同じ空間で過ごさなければいけないため、流石に居心地が悪くなったマリアは、雑誌から顔を上げて意を決してナナシに問いかけた。

 

「…ねえ、ナナシ。何をそんなに怒っているの?翼と喧嘩でもしたの?」

 

マリアの問いに翼がビクリと反応する。ナナシはそんな翼にチラッと視線を向け、漫画を捲る手を止めて一拍の間を置いた後…仏頂面で不満を零すように、ポツリと呟いた。

 

「………翼と奏に、男を辞めたらマネージャーをクビにするって宣言された」

 

「ああ、なるほど…」

 

「何故そこで納得なんだ!!?」

 

マリアが思わず零してしまった納得の言葉に、ナナシは声を荒げて反応した。

 

「俺が男であることなんて百害あって一利なしだろ!?しかも了子のヤツ、「女になることだけを禁止すると無性とか、オートスコアラー化とかに方向転換するかもしれないわよ?」って余計なことを言いやがったせいで妥協案すら拒否された!!一体何の嫌がらせだ!!?普段の俺の悪戯に対する報復か!!?」

 

「…自分で考えなさい。少なくとも嫌がらせや報復ではないと思うわよ」

 

「分っかんねえよ!?特にそこのSAKIMORIにとっては途轍もない朗報のはずだろ!!?俺が女になれるなら、もう無理に欠点を克服する必要はない!封建社会の貴族と侍女の如く生涯世話をさせてもらう!衣服の用意どころか着せ替えるところも俺がやろう!スキンケアも手順を指示するだけじゃなくて直接俺が処置出来るし、風呂やトイレなんかの無防備な場所でも何の問題もなく警護出来る!元男ってイメージがあるせいでしばらくは抵抗があるだろうが、大丈夫だって!!人間は慣れる生き物だ!利便性が分かればその内全く気にならなくなるって!!」

 

「…本来下心を疑うところだけど、そんなもの一切感じさせないのは最早アッパレね?」

 

「え?寧ろ下心しかないぞ?俺がお前らの身の回りの世話を全て出来れば、レッスンやシンフォギアでの鍛錬の時間が増えて歌を聴ける機会が増えるだろ?そうでなくても家族や友人達と過ごす時間が増えれば、それだけ幸せな感情が歌に籠る!!」

 

「…とりあえず、私もあなたが男を辞めたら当面まともに歌えなくなると思うから下手な行動は慎んでね?」

 

「な!?何故だぁあああああああああ!!?!?」

 

頭を抱えて蹲るナナシを横目に、翼はナナシとの交渉で疲労困憊になり弦十郎達と一緒に帰還した奏のことを思いながら、遠い目をして窓の外に広がる青空を眺め続けた。

 

 

 

 

 

とある海辺に建てられた屋敷の一室…カーテンを閉め切り、蠟燭の炎だけが淡く室内を照らす薄暗い空間の中で、サンジェルマンはベッドの上に横たわる一体の人形…ティキに対して、何やら錬金術を行使していた。

 

(ティキは、惑星の運航を星図と記録するために作られたオートスコアラー…機密保護のために休眠状態となっていても、アンティキティラの歯車により再起動し、ここに目覚める…!)

 

サンジェルマンが錬金術の陣を展開すると、ティキの傍らに配置されていた岩塊のような物が宙へ浮かび上がり、岩塊の表面が弾けて中から歯車のような部品が姿を現す。同時にティキの胸部カバーがスライドして開き、カバーの下にあった窪みに歯車がピタリと嵌ってカバーが再び閉められた。すると、ティキの顔に填められたバイザーのような物の一部が分離、発光して周囲にプラネタリウムのように天体を映し出した。映し出された天体は時を加速させたように高速で動くと、突然ピタリと止まってバイザーが元の形状に戻り天体も消えてしまった。

 

少しして、ティキの体がぎこちなく動き始めて上半身を起き上がらせると、最後にガクンと大きく身を震わせる。その直後、先程のぎこちなさが嘘のように自然な動作でバイザーを外してその顔を露わにした。

 

「ふぅ…」

 

「久し振りね?ティキ」

 

「…サンジェルマン?あ~、四百年近く経過しても、サンジェルマンはサンジェルマンのままなのね?」

 

「そうよ。時は移ろうとも、何も変わってないわ」

 

「つまり、今もまだ人類を支配の軛から解き放つためとかナントカ、辛気臭い事を繰り返しているのね!良かった!元気そうで!!」

 

「お前も変わらないのね、ティキ……」

 

開口一番、無邪気な笑顔で辛辣な言葉を口にするティキに、サンジェルマンは動じることなく言葉を返した。恐らく、四百年前からこのようなやり取りを繰り返していたのだろう。

 

「ん?んんん!?ところでアダムは!?大好きなアダムがいないと、あたしはあたしでいられないぃ~!!」

 

ジリリリリ!ジリリリリ!

 

ティキがアダムという何者かの姿が見えないことに悶えていると、閉め切っていた窓とカーテンが突如開き、テラスの柵にポツンと置いてある何処にも電話線が繋がっていないダイヤル式の固定電話が着信を知らせるベルを鳴り響かせているという奇妙な光景が展開された。

 

四百年間眠っていたティキがテラスに現れた道具が何か分からずキョトンとしている間に、サンジェルマンが無言で電話に近づいて受話器を取って耳に当てた。

 

「局長…」

 

「え!?それ何!!?もしかしてアダムと繋がってるの!!?」

 

サンジェルマンの言葉を聞いた瞬間、ティキがサンジェルマンから受話器を奪い取る。見様見真似で使おうとして上下が逆さまの状態のまま、ティキは受話器へと声をかけた。

 

「アダム!いるの!?」

 

『久し振りに聞いたよ、その声を』

 

受話器から聞こえてきた男の声に、ティキは嬉しそうにしながらようやく正しい形で耳に受話器を押し当てて話し始めた。

 

「やっぱりアダムだ!あたしだよ!アダムのためなら何でも出来るティキだよ!!」

 

『姦しいなぁ、相変わらず。だけど後にしようか。積もる話は』

 

「アダムのいけずぅ!つれないんだからぁ!そんな所も好きだけどね!」

 

そう言ってティキは素っ気ない態度で受話器をサンジェルマンへと差し出す。サンジェルマンは受話器を受け取って男性…アダムと会話を始めた。

 

「申し訳ありません、局長。神の力の構成実験には成功しましたが、維持にかなわず喪失してしまいました」

 

『やはり忌々しいものだな。フィーネの忘れ形見、シンフォギア…そしてそれを守護するイレギュラー、キャロルの言っていたアンノウンは…』

 

 

 

『人殺し!!』

 

 

 

アダムが話題に出したことで、サンジェルマンの脳裏にナナシの言葉が蘇る。これ以上無い程端的に告げられた侮蔑の言葉だったが、今更その程度の言葉でサンジェルマンの心は揺らぐことはなく、冷静にアダムへ状況を報告し続けた。

 

「疑似神とも言わしめる、不可逆の無敵性を覆す一撃。そのメカニズムの解明に時間を割く必要がありますが…」

 

『無用だよ、理由の解明は。シンプルに壊せば解決だ。シンフォギアをね』

 

サンジェルマンの提案を、アダムはバッサリと切り捨てる。不確定要素を放置して力技で問題を解決しようとするアダムの方針に、サンジェルマンは些か不満そうな様子だった。

 

『聞かせてもらえるかい?そんなことよりも。イレギュラーについての情報を』

 

「あの男の情報…?」

 

『不死身なのだろう?その存在は。似通っていたかい?その在り方は。ヨナルデパズトーリと…神の力と』

 

「…いいえ。あの男の不死身は、不可逆の無敵性ではなく驚異的な再生能力によるものと思われます。その根源は恐らく、魔剣の呪いを流用したものかと…」

 

何故アダムが…パヴァリア光明結社の統制局長が、疑似神を打ち破ったシンフォギアよりもイレギュラーの男の事を気にかけたか不思議だったが、相手も神の力を所持する可能性を危惧したのかとサンジェルマンは勝手に解釈して自分達が得た情報を伝えた。

 

『…ならば対策は同じだね?シンフォギアと。『ラピス』を使っても良し…消しても良し、跡形もなくね』

 

「…了解です。カリオストロとプレラーティが先行して討伐作戦を進めています。私も急ぎ、合流します」

 

疑問は残るものの、サンジェルマンはそう言ってアダムとの連絡を終わらせ、カリオストロ達と合流する準備を開始した。

 

 

 

 

 

翼達の乗ったプライベートジェットが日本に到着して、ようやく不機嫌そうなオーラを漂わせるナナシから解放されると翼とマリアがほっとしていると…プライベートジェットが着陸態勢に入ろうとしたタイミングで、ナナシがバッと外に視線を向けた。

 

「何か来る!!」

 

「「ッ!!?」」

 

三人が警戒した直後、機体が衝撃で揺れ動く。三人が窓の外を確認すると、周囲にアルカノイズが飛行しており、機体の一部が分解されていた。

 

「アルカノイズ!!?」

 

機体が襲われる様子を、プレラーティとカリオストロが管制塔の上から眺めていた。

 

「うふふ、命中命中♡さて、攻撃の二段三段と行きましょうか」

 

「出迎えの花火は派手で大きいほど喜ばれるワケダねぇ」

 

揺れる機体の中で、マリアは咄嗟にナナシへと“念話”を飛ばした。

 

(ナナシ!パイロット達を!!)

 

(分かった!)

 

ナナシがすぐさま操縦席へと駆け込む。その直後、一際大きな衝撃が機体を襲い、続けて機体の側面がアルカノイズによって分解されてしまう。衝撃によって床を滑っていた翼達のケースが、亀裂から外に落ちそうになっていた。

 

「ケースが!?」

 

「はあああああ!!」

 

咄嗟にマリアがケースに飛びつき取っ手を掴むが、勢いそのままにマリアは亀裂から機体の外へ放り出されてしまった

 

Imyuteus amenohabakiri tron

 

翼が聖詠を口にした直後、アルカノイズが機体に一斉攻撃を仕掛けたため、機体は空中で爆散してしまった。

 

「翼!ナナシ!」

 

空中でマリアが仲間の名を叫ぶ。すると、爆炎の中からシンフォギアを纏った翼が飛び出した。

 

虎も恐るる如き 唸る…

 

蒼ノ一閃

 

歌を奏でながら振るわれた翼の剣から斬撃が放たれマリアに迫るアルカノイズを切り伏せる。

 

地獄へと通りゃんせ 一つ二つ罪を 数えて候ふ

 

アルカノイズを次々と切り捨てながら、翼がマリアの元へ接近していく。その様子を、S.O.N.G.本部が観測していた。

 

『特別機206便、反応途絶!』

 

『翼さん、マリアさんの脱出を確認!ですが…』

 

『このままでは海面に叩きつけられてしまいます!』

 

『ケースを守りながら落下するマリアちゃんは、LiNKERを取り出す余裕が無いわ!!』

 

『翼!マリア君をキャッチし、着水時の衝撃に備えるんだ!!』

 

本部の通信を聞いてマリアの元へと急ぐ翼。だが…

 

「そうはさせないワケダ」

 

「たたみかけちゃうんだからー!」

 

カリオストロ達がアルカノイズに指示を出し、翼の背後から奇襲を仕掛けさせる。それに気が付き冷静にアルカノイズを切り捨てる翼だったが、一部のアルカノイズが翼の横を素通りしてマリアに迫っていった。咄嗟に翼が斬撃を放つが、数体のアルカノイズを討ち漏らしてしまった。

 

『マリアさん!』

 

『“血晶”でやり過ごすんだ!』

 

弦十郎の指示を聞き、マリアが“血晶”を使って周囲に“障壁”を展開する。アルカノイズの攻撃は“障壁”を突破することが出来ず、時間を稼いでいる内に翼がマリアの元までたどり着いた。

 

千ノ落涙

 

マリアを抱えた翼が剣の切っ先を天に掲げる。すると、エネルギーで構成された無数の剣が降り注いで周囲のアルカノイズを一掃した。そして翼は足のギアの形状を変えながら海面に着水、ホバークラフトのように海面を移動して陸地を目指した。

 

「手厚い歓迎を受けてしまったわね…」

 

「果たして、連中の狙いは私達装者か…それとも…」

 

翼は途中で言葉を途切れさせると、マリアが持つケースをジッと見つめた。

 

「流石にしぶといワケダ」

 

「癪だけど、続きはサンジェルマンが合流してからねぇ」

 

翼達が離れていく光景を見て、カリオストロ達は作戦の失敗に肩を落としつつ帰還するためテレポートジェムを取り出した。

 

「…あら?そういえば、あのナンパ男は?」

 

「姿が見えない…?ひょっとして殺ったワケダ?」

 

ジェムを使う直前、二人はナナシの姿が見当たらないことに気が付いて周囲を見回し、頭上を見上げて…

 

 

 

意識を失ったパイロット二人の襟首を片手で掴み、高速で二人目掛けて落下してくる“化詐誣詑”状態のナナシを目撃した。

 

 

 

「ガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」

 

「「ぎゃああああああああああああ!!?!?」」

 

鬼気迫る形相で接近してくるナナシを見た二人は悲鳴を上げながら即座にジェムを叩き割り、転移して姿を消した。

 

(あー!クソ!直前で気づかれた!!俺の存在に意識が行かないよう翼達に頑張ってもらったのに!!)

 

ナナシはパイロット達を確保して空中に放り出された後、遠くで自分達を観察するカリオストロ達に気が付き“認識阻害”を使用してコッソリ接近しようとしていたのだ。

 

(悪い、翼、マリア…二人に協力してもらったのに、失敗した…)

 

(何を言う?人命とバルベルデの機密情報を守れたのだ。気を咎めることなど無い)

 

(私達もこの通りピンシャンしているわ。すぐに上陸するからナナシもパイロット達を安全なところに運んで合流しましょう)

 

(了解)

 

そう返事をして“念話”を切ったものの、ナナシはパイロット達を抱えて移動しながら頭の中で考え事をしていた。

 

(もったいなかったなぁ…あとちょっと気づかれず二人を確保出来れば色々聞き出せたかもしれないのに。パヴァリア光明結社の目的とか…あの蛇野郎の力…『神の力』ってやつについて…)

 

 

 

 

 

バルベルデで錬金術師達が撤退した後、ナナシは装者達と共に了子から敵の行使した力について話を聞いていた。

 

「あの怪物…ヨナルデパズトーリが行使した、不可逆であるはずの摂理を覆す、埒外の現象は恐らく…『神の力』。この世界を作り出した神々の御業を模倣したものと考えられるわ。ナナシちゃんの体に宿っているのも、恐らくは…」

 

 

 

 

 

(神の力、ねぇ…)

 

ナナシは移動しながら、自身の内に意識を集中する。すると、頭の中に言葉が浮かんできた。

 

“全てを殺せ、全てを喰らえ、命を一つに、世界を一つに、そして大いなる一つの神に…”

 

ナナシの中に最初からある言葉…ダインスレイフに触れた際は一時的に脳裏に溢れ出たが、普段は意識しなければ聞こえてこない…それでも、決して無くなるわけではないソレを聞きながら、ナナシは何とも言えない表情を浮かべた。

 

(これが神様の力って言われても、いまいちピンと来ないなぁ…やっぱりご都合主義パワーとか“紛い物”の方がしっくりくる)

 

そんな風に考えながら、頭の中の声を追い払いつつナナシは先程取り逃がした錬金術師達について考えていた。

 

 

 

(神の力を模倣………利用かぁ……)

 

 

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