戦姫絶唱シンフォギア コドクの神が求めるモノ 作:@sora@
可能な限り定期更新で頑張りますのでよろしくお願いします。
あの日、わたしを助けてくれたのは、ツヴァイウィングの二人に間違いはなかった。
だけど、退院してから聞いたニュースでは、多くの人が世界災厄であるノイズの犠牲になり、奏さんが瀕死の重傷を負ってツヴァイウィングの長期活動停止になったとだけ。戦っているツヴァイウィング、あれは幻だったのだろうか?
わたしがこのリディアン音楽院に入って、翼さんに会いたいのは、あの日何が起こっていたのか、分かるような気がしているから。
そして、もう一つ。
あの時、ツヴァイウィングの二人以外に、もう一人誰かいたような気がしている。
わたしは意識が朦朧としていたけど、わたしを抱えた奏さんと、わたし達の前を走る翼さん、そして、わたし達の後ろで、誰かが戦っていたはずなのだ。
顔も分からないわたしの恩人。あの人は誰だったのだろう…
ある日の夜
山の中に銃声と爆発音が響き渡る。迫りくるノイズの群れに対して、自衛隊が戦車やロケットランチャー、銃火器を用いて応戦するが、そのどれもがノイズに対して一切効果を発揮することはない。
「ぬうう!やはり、通常兵器では無理なのか!」
自衛隊員の一人が思わずそう叫んだ。その時…
「Imyuteus amenohabakiri tron」
戦場に女の歌が鳴り響くと同時に、ノイズの群れに向かって一機のヘリが接近していく。
ヘリから一人の女が飛び出したかと思うと、女の周囲が光り輝き、一瞬で女の体は鎧のようなものを纏っていた。
女の耳元に、男の声が届く。
『翼、後は一課と連携しつつ、相手の出方を見て…』
「いえ、私一人で問題ありません」
『翼!』
女は、通信機から聞こえる声を無視して、歌声を響かせながらノイズの群れに突撃する。
“逆羅刹”
手を地面に付き、体を回転させて足に取り付けた剣で周囲のノイズを切り刻みながら移動する。
“千ノ落涙”
上空から飛来する無数の剣が、ノイズの群れを殲滅する。
“蒼ノ一閃”
肥大化した剣から斬撃を飛ばし、大型ノイズを真っ二つに切り裂く。
瞬く間にノイズの群れが一掃される光景に、自衛隊員達が呆然とする…そこへ、いつの間にか接近していた大型ノイズが、その巨大な手を振り下ろそうとしていた。
「ッ!?うわあああ!!」
それに気が付いた自衛隊員から悲鳴が上がる。だが…
「全く、相変わらず女とは思えない戦い方をするな」
いつの間にか自衛隊員達の傍に現れた男が、そんなことを言いながら地面を跳躍し、猛スピードで大型ノイズに接近する。その腹部に男の拳が突き刺さると、そこを中心に大型ノイズが塵となって霧散した。
男は地面に着地した後、女の方にテクテク歩いていき、声をかける。
「年頃の女が大勢の前で大股開いてクルクルと…少しは恥じらいを持ったらどうだ?」
「…防人である私に、そのような感情は不要」
「ハイハイ、SAKIMORI、SAKIMORI。そうだな、この前自分の部屋にイニシャルがGの『アレ』が現れた時に、泣きながら俺やお前の相棒に助けを求めるようなSAKIMORIだものな?女の子らしい感情なんて全然無いよな?」
「なっ!?き、貴様!?」
「強いSAKIMORIは、今度『アレ』が出てきても一人で何とか出来るよな?」
「ひ、人には得手不得手があってだな…」
「そうだな。ポンコツなSAKIMORIには出来ないこといっぱいあるもんな?」
「っ!!貴様!!人をバカにするのもいい加減にしろ!!」
先程まで女が纏っていた、まるで抜き身の刃物のような鋭い雰囲気はどこへやら。顔を赤く染めて怒りを表すその姿は年相応の女の子に戻ったようである。
「ハイハイ、ほら、さっさと戻るぞ。明日はレコーディングの仕事が入っているんだから、しっかり休んどけ」
「言われなくても分かっている!」
そう言って二人は自衛隊員達の前から姿を消した。その少し後に、助けられた自衛隊員の一人が奇妙なことに気づく。
自分を助けてくれた二人の姿が思い出せないのだ。
数日後
「全く!貴様は人をからかわずにはいられないのか!?」
「Exactly!!」
「全力で肯定するな!!」
「まあまあ、いい加減落ち着きなよ翼」
「奏はナナシに甘すぎる!どうしてこの男は私にばかりこのような態度なのだ!?」
「失敬な。お前が卵焼きを完成させた時なんて盛大にお祝いしてやっただろうが。カレーパーティーで」
「あんなのはただの当て擦りではないか!!」
「いやいやメインは間違いなくお前の卵焼きだったって。俺の作ったカレーなんてそっちのけで二課の皆はお前の卵焼きに夢中だったろ?「信じられない!」、「奇跡だ!」って大絶賛だったじゃないか。なあ奏?」
「ああ、翼も得意げにしていたじゃないか。その後ナナシの作ったカレーを食べて膝を抱えて落ち込んでいたけど」
「っ!?…奏もナナシも私に意地悪だ!!!」
特異災害対策機動部二課本部、その指令室に移動中の奏、翼、ナナシの三人は道中そんな会話を繰り広げていた。
「全く、この調子で学校では大丈夫なのか?このSAKIMORI」
「学校…リディアンか。あたしは半分以上通えなかったから、ちょっと勿体なかったかもね」
「いっそ留年すれば良かったのに。そうすれば去年は翼と通えただろ?」
「まあいいさ。あたしは人前で歌ってる方が性に合ってる」
「そんなの学校で翼と一緒に生徒の前で歌えば良かったじゃないか。きっと全校生徒が集まってライブに負けない熱狂に包まれるぞ?」
「大問題だろう、それは…」
「三年の最後の方にちょっと顔出して翼と話してただけでとんでもなかったからね…」
「卒業式の日は危うく二課のお世話になるところであったな…」
「それだけお前達に魅力があるってことだ。だからそんな魅力を失わないように、くれぐれも教室を部屋みたいに汚すなよ、SAKIMORI」
「私も公私の区別くらいつけられる!それに、今日だって恐らく新入生の子が顔にご飯粒を付けていたことを指摘してやった!私だって立派な先輩として後輩の面倒を見ているのだ!お前が心配することは何一つない!」
「…いや、そこはスルーしてやるべきだったのでは?」
「だよな」
「っ!?そ、そうなのか?」
「これだからSAKIMORIは…」
「全く翼は…」
「…うぅ~」
そんなやり取りをしている途中、施設のスピーカーから警報が鳴り響く。それを聞いた三人は表情を引き締め指令室まで一気に走り抜ける。
「状況を教えてください!」
指令室の扉を開けた直後に翼が叫ぶ。
「現在、反応を絞り込み、位置の特定を最優先としています」
「俺、先行して索敵しようか?」
「いや、ナナシ君も待機していてくれ。すぐに位置を特定する」
「了解」
そして待つこと数分
「反応絞り込みました! 位置、特定!」
「それじゃさっさと…」
だが、場所を聞こうとするナナシの言葉が言い終わる前に…
「…ッ!?ノイズとは異なる、高質量エネルギーを検知!」
「波形の照合、急いで!」
「まさかこれって!アウフヴァッヘン波形!?」
了子の言葉に周囲が驚愕する。そして直後にモニターに表示されたのは…
code:GUNGNIR
「ガングニールだと!?」
弦十郎が驚愕の声をあげる。当然だ。それはあり得るはずがないことだから。
翼とナナシが視線を奏に向ける。奏は自分の胸元にあるもの…罅割れたガングニールのギアペンダントを握りしめていた。
失われたはずの撃槍が、時を超えてかつての所有者の前に現れた。
奏はリディアンに通っていた設定です。翼の二歳年上で、二年前のライブの日付が明記されていないので、奏が退院してから割とすぐに卒業、ってことにしているんですが…間違ってないですよね?まあ、本作においてあまり重要な点ではないので間違っていてもスルーでお願いします。