戦姫絶唱シンフォギア コドクの神が求めるモノ   作:@sora@

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第129話

マリア達の前に姿を現したカリオストロは、警戒するマリア達を見て露骨に肩を落とした。

 

「あらら、じゃない方。色々と残念な三色団子ちゃん達かぁ…」

 

「三!?」

 

「色!?」

 

「団子とはどういうことデスか!?」

 

「見た感じよ?怒った?でもガッカリ団子三姉妹の相手をしてもねぇ~…それとも、ギアを纏えるのかしら?」

 

あからさまにテンションを下げた様子でマリア達を挑発するカリオストロに、調と切歌が前に出てギアペンダントに手を掛けた。

 

「そんなに言うのなら!」

 

「目に物見せてやるデスよ!」

 

ギアペンダントを手にLiNKERを投与しようとする二人を見て、カリオストロは薄っすらと笑みを浮かべた。

 

「挑発に乗らない!!」

 

「「っ!!?」」

 

しかし、そこでマリアが声を上げて調達を諫めた。

 

「私達は、私達に出来ることを全力でやるのよ!!」

 

マリアは背後で不安そうな表情をする老婆を庇いながらカリオストロを警戒する。不完全なLiNKERを使う自分達が考えなしに行動すれば、老婆を危険に晒すことになる。それを理解した切歌達は、一度頭を冷やして投与しようとしたLiNKERを下した。

 

「やっぱりお薬を使えなきゃ戦えないのね~?それならそれで信号機が点滅して仮面のナンパ男が飛び出して来る前に…片付けてあげちゃうー!!」

 

カリオストロが笑顔で宣言して周囲に水晶をばら撒く。水晶が砕けた地面から無数のアルカノイズが姿を現して、一斉にマリア達へと迫る…その時、マリア達の傍のトマト畑から何かが飛び出した。

 

「悪い子は居ねがぁあああああああああああ!!!」

 

ズバァアアアン!!!

 

トマト畑から飛び出した何者かが、マリア達に一番近づいていたアルカノイズに対して何かを横薙ぎに振るう。するとアルカノイズの胴体が真っ二つに裂けて赤い粒子へと変わった。

 

それは藁で作られた衣服と靴を身に纏い、何かの骨を柄とする大きな出刃包丁を両手に持ち、鬣を持つ鬼のような面を被った…所謂、ガチ仕様のなまはげであった。

 

「ヒィッ!?何よそのモンスター!!?」

 

突然乱入してきたよく分からない存在にカリオストロが短い悲鳴を上げた。

 

「そ、そんな!?ノイズを倒すなんて…まさか、本物のなまはげ様なのかい!!?」

 

(気づかれてしまったか)

 

「っ!!?」

 

アルカノイズが包丁によって討伐されたことに困惑していた老婆の脳裏に、突然声が響いた。状況的になまはげの声であることを察した老婆が目を見開いてなまはげの背を見つめる。

 

(来る大晦日の厄払いに備えて、人の世に紛れて日本全国を練り歩き徳を積む修行を行っていたのだ。日ノ本の童よ、この厄は我が神通力で払ってみせよう……ってことで、そこのお嬢さんの避難は任せたぞ!良い子の三色団子姉妹!!)

 

最後の一言はマリア達にのみ“念話”で伝えられた。色々ツッコミを入れたい気持ちはあるが、とりあえずマリア達は老婆の安全のために避難することにした。

 

「お母さん、ここはナナ…なまはげ様に任せて、私達は避難しましょう」

 

「あ、ああ、そうだねぇ。なまはげ様、頑張ってください。ありがたや、ありがたや」

 

なまはげナナシに手を合わせる老婆を背負って、マリア達は避難場所まで急いで駆け出した。

 

 

 

 

 

「アルカノイズの反応を検知!」

 

アルカノイズの出現は、S.O.N.G.の方でも確認されていた。即座に響達にも情報が共有される。

 

『出現ポイント、S16!数およそ、50!』

 

「了解です!すぐに…」

 

『あたしに任せな!』

 

響の返事を遮るようにクリスがそう言って全力で走る。

 

「こっちの方が、近いからな!」

 

走った勢いそのままにクリスは丘の上からジャンプすると、ギアペンダントを手に聖詠を奏でた。

 

Killiter Ichaival tron

 

ギアを纏ったクリスは大型ミサイルを展開してその上に乗ることで、アルカノイズの出現地点に一直線で向かって行った。

 

 

 

 

 

「あーた、ナンパ男でしょ!?妙な格好だからってもう怖がったりしないんだから!!」

 

「悪い子は居ねがぁあああああああああああ!!!」

 

ズバン! ズバン!

 

「ちょっと!?無視するんじゃないわよ!!どれだけ怖がらせようとしても無駄…」

 

「泣ぐ子は居ねがぁあああああああああああ!!!」

 

ズババババババン!!!

 

「ね、ねえ?言葉通じてる?トークしましょうよ、トーク!!ほ、ほら、お互い情報戦の方が得意でしょう?一回手を止めてお話でも…」

 

「悪い子は居ねがぁあああああああああああ!!!」

 

ガキンガキンガキンガキン!!

 

「ヒィィィィ!!?もうイヤよ!!このジャパニーズホラー!!!」

 

「泣ぐ子はそごがぁあああああああああああ!!!」

 

なまはげの正体にはすぐに思い当たったカリオストロだったが、ナナシはそんなものお構いなしに出刃包丁でアルカノイズの群れを切り裂き、カリオストロの錬金術による防壁に狂ったように包丁を叩きつけたため、その鬼気迫る表情(文字通り)にカリオストロはあっさり半泣きになっていた。

 

カリオストロが懸命にアルカノイズを召喚してなまはげに対抗していると、突如上空から降り注いだ赤いエネルギーの矢によってアルカノイズが一掃される。カリオストロが上を向くと、ミサイルの上でボウガンを構えるクリスの姿があった。

 

「あ、会いたかったわぁ!切実に!!巡る女性ホルモンが煮えたぎりそうよぉ!早速だけどコレあーたらの仲間よねそうだと言って!!」

 

「あぁ?出会い頭に何訳の分からないことを…」

 

クリスの姿を見て何故かホッとした様子のカリオストロに、クリスは怪訝な表情でカリオストロの視線の先を追うと…

 

「悪い子は居ねがぁあああああああああああ!!!」

 

…左右の手と両肩から生えた赤い腕に計四本の出刃包丁を持った鬼のような怪異を目撃した。

 

「わあああああ!?何だあれえええええ!!?」

 

「ぎゃああああ!?何か増えてるううう!!?」

 

本来の在り方からも外れつつあるなまはげの姿に、クリスとカリオストロは揃って悲鳴を上げた。

 

「って!?何であーたまで悲鳴上げてるの!!?あーたの仲間でしょう!!?」

 

「そんな化け物と連んだ覚えはねえ!!寧ろてめえらが錬金術で作った何かとかじゃねえのか!!?」

 

「絶賛襲われてるんですけど!!?包丁なんて生々しい凶器を手に追いかけ回されてるんですけど!!?あーもう!こうなったらヤケクソよ!!どっちも蜂の巣にしてあげる!!」

 

そう言ってカリオストロがなまはげとクリス相手に錬金術で無数の光弾を射出する。なまはげは四本の包丁で光弾を全て弾き、クリスもボウガンで光弾を撃ち落としていく。だが一部の光弾がクリスのミサイルに被弾したため、ミサイルが爆発してクリスは地上に降り立った。

 

「やっと近くに来てくれたぁ!」

 

その隙を突いて、カリオストロが一斉に光弾をクリスに放つ。クリスが咄嗟に後退して光弾を回避すると、その姿が土煙に隠れて見えなくなった。土煙が薄れると、クリスは大弓を展開してカリオストロに狙いを定めていた。

 

「焦って大技…その隙が!」

 

カリオストロは一気に駆け出して、未だ残る土煙に紛れてクリスの懐に潜り込んだ。

 

「命取り、なのよね!」

 

「ああ、誘い水に乗って隙だらけだ」

 

「っ!?」

 

大弓を構えながら自分をしっかり認識していたクリスにカリオストロが驚愕する。そしてその直後、背後に気配がして振り返ると、そこにはカリオストロ同様土煙に紛れて接近していたギアを纏う響の姿があった。

 

「せやあっ!!」

 

ダン!!

 

力強い掛け声と踏み込みと共に繰り出された響の肘打ちはカリオストロの腹部に完璧に決まって、カリオストロの体は大きく吹き飛ばされた。

 

「内なる三合、外三合より勁を発す。これなる拳は六合大槍!映画は何でも教えてくれる!!」

 

「くっ…」

 

弦十郎仕込みの響の攻撃をモロに喰らったカリオストロは、よろよろと傍にある物に寄りかかりながら立ち上がると、無意識に触れた硬い物の手触りに驚き振り返る。そこには鏡面のようにカリオストロの姿を映す金属の光沢があった。

 

「壁…?」

 

「壁呼ばわりとは不躾な!剣だ!」

 

声に反応してカリオストロが上を見上げると、地面に突き立てた巨大な剣の上に佇む翼の姿が見えた。

 

「信号機共がチカチカと…」

 

響達三人が集まった状況でも尚戦おうとするカリオストロ。だが、そんなカリオストロの脳裏に突然声が響いた。

 

(私の指示を無視して遊ぶのはここまでよ)

 

「チッ」

 

サンジェルマンの念話(テレパス)を受けて、カリオストロは舌打ちしながらテレポートジェムを懐から取り出した。

 

「次の舞踏会は、新調したおべべで参加するわ。楽しみに…え?」

 

その場から撤退すべく、捨て台詞を言いながらカリオストロが周囲を見回して…

 

 

 

ぱっと見で五、六人点在する鬼面の怪異が出刃包丁を振り上げているのを目撃してしまった。

 

 

 

「「「「「悪い子は居ねがぁあああああああああああ!!!」」」」」

 

「ぎゃあああああ分裂したああああああ!!?!?」

 

反射的にジェムを地面に叩きつけてカリオストロが姿を消す。その様子を見て、なまはげの一体は笑い声を上げていた。

 

「あっははははは!へばな(またね)ー!!」

 

「ナナシ…色々と言いたいことはあるが…アレは何だ?」

 

「アレとは失礼だぞSAKIMORI!あの方々は二十四時間三百六十五日一秒も休むことなく作物を守る畑の防人だぞ?敬意を払え敬意を!俺も敬意を払って衣服を進呈させてもらったぞ!あははははは!」

 

そう言ってナナシは楽しそうに笑いながら、自分と同じ格好になった案山子(畑の防人)と肩を組んだ。そんなナナシに翼は呆れたように苦笑した。

 

 

 

 

 

後日、今回のアルカノイズ襲撃の情報と畑周辺の戦闘の痕跡、そして案山子のなまはげ化(ナナシが一部回収し損ねた)と鬼面を被った人物の目撃情報から、なまはげ様が畑を守ってくれたと言う噂話が広がり、一部で案山子になまはげの格好をさせる謎の風習が生まれることとなった。

 

 

 

 

 

空が赤く染まる夕暮れ時、マリア達は無事老婆を連れて避難施設へとたどり着いていた。マリアが背負っていた老婆をゆっくりと地面に降ろすと、四人はようやく緊張を解いてほっと息を吐いた。

 

「ありがとね」

 

「いえ…」

 

「お水もらってくるデスよ!」

 

「待って切ちゃん!私も一緒に!」

 

切歌と調はアルカノイズに襲撃された老婆と、老婆を背負って長距離を移動したマリアを慮って駆け足で飲み水を確保に行った。二人の気遣いに老婆は優しい笑みを浮かべた。

 

「ふふっ、元気じゃのう」

 

「お母さん、お怪我はありませんか?」

 

「大丈夫じゃよ。寧ろあんたらの方が疲れたじゃろうに…儂がぐずぐずしていたせいで、あんたらにもなまはげ様にも迷惑をかけてしまったねぇ…なまはげ様は大丈夫じゃろうか?」

 

「えっと…あの方なら大丈夫です。先程神通力で連絡がありました…私達に力があれば、お母さんをこんな目に遭わせることも、彼を一人残すことも無かったのに…」

 

シンフォギアという力を持っているはずなのに、その力を満足に使い切れない。そのせいで守りたいモノを守れず、仲間を戦場に残して離脱する…これまで幾度も経験してきた苦い記憶に、マリアは暗い表情で俯いてしまった。そんなマリアに、老婆は明るい声で話しかけた。

 

「そうじゃ!折角だからこのトマト、あんたも食べておくれ」

 

「わ、私、トマトはあんまり…」

 

トマトが苦手なマリアは、最初は遠慮しようと思ったが…老婆の気遣いを感じる優しい笑みに断りの言葉を最後まで言えず、トマトを受け取ってしまった。

 

「では…ちょっとだけ頂きます」

 

トマトを受け取ったマリアは少しの間逡巡した後、意を決してトマトに齧りついた。子供が苦手な物を我慢して口にしたような険しい表情でマリアがトマトを咀嚼して…その直後、マリアは驚きで目を見開いた。

 

「甘い!?フルーツみたい!!」

 

その味は、マリアがこれまで食べたトマトとは全く違っていた。

 

「トマトを美味しくするコツは、厳しい環境においてあげること。ギリギリまで水を与えずにおくと、自然と甘みを蓄えてくるもんじゃよ」

 

「…厳しさに、枯れたりしないのですか?」

 

マリアは無意識に、トマトと自分達の境遇を重ねた。厳しい状況が続いた末に、全てが手遅れになってしまうのではないかと。

 

「寧ろ甘やかし過ぎると駄目になってしまう。大いなる実りは、厳しさを耐えた先にこそじゃよ」

 

「厳しさを耐えた先にこそ…」

 

その言葉に、マリアはナスターシャ教授と…ナナシの事を思い浮かべた。どちらも厳しい言葉をマリア達に投げかけることはあったが、そこにはちゃんと意味があった。ならば、今の厳しい状況も諦めずに堪えた先には、きっと…

 

悩みながらも何かを見出しかけたマリアの様子に、老婆は優しく微笑みながら寄り添うようにマリアの膝に手を添えた。

 

「トマトも人間も、きっと同じじゃ」

 

老婆の言葉に力を貰い、マリアはフッと肩の力を抜いて微笑んだ。

 




最初はナナシとカリオストロに今後のフラグになりそうな会話でもさせようかな~って悩んでたんです。途中でとりあえずナナシに被せる仮面を先に決めたら、何故かプロットがなまはげに侵食されましたw
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