戦姫絶唱シンフォギア コドクの神が求めるモノ   作:@sora@

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第136話

キャロルと対峙したカリオストロは、プレラーティを抱えながら必死にキャロルの錬金術を回避していた。

 

「くっ!プレラーティ!早く復活して!!」

 

「ヒュー…ヒュー…」

 

緊急事態に笑いは収まったが、プレラーティの呼吸が落ち着くのにはもう少し時間が掛かりそうだった。

 

そして、カリオストロ達の相手をキャロルに任せて、サンジェルマンと対峙したナナシは…再び両手の武装を“収納“に納めていた。

 

「…何のつもりだ?」

 

「俺がクソガ…キャロルを引っ張り出してまでこの状況を作った理由は、一つはさっきの質問をするため。もう一つは…お前と一対一で話をするためだよ」

 

「何…?」

 

「そうおかしな話でもないだろ?何事も交渉で平和的に終わるならそれが一番だ。お互いの妥協点を模索するために、お前達の目的を教えて…」

 

バァン! ガキィン!

 

…ナナシの言葉の途中でサンジェルマンの拳銃から弾丸が放たれ、ナナシの目の前に展開された“障壁”によって弾かれた。

 

「妥協など、出来るものか!!全ては人類の未来のため…その障害を排除するために、私は引き金を引くことを躊躇いはしない!!!」

 

サンジェルマンが覚悟を籠めて放った言葉を聞いたナナシは、“収納”から拳銃を取り出した。

 

「ふ~ん、人類の未来のため…だからお前の武器は『銃』なのか?」

 

「何…?」

 

「この世界に生命が生まれ、様々な生き物がその種を残すために工夫してきた。体を大きくする、爪や牙を生やす、足を速くする、空を飛ぶ、飢えや病気に強くなる、群れを作る、そして…道具を使う」

 

カチャカチャと拳銃を弄びながら、ナナシは黙って自分に銃口を向け続けるサンジェルマンに語り掛け続けた。

 

「道具を使う生き物は意外と多い。だが、道具から別の道具を作る、更にそこから別の道具を…『創造を繰り返す』と言う点が、人類を霊長たらしめる大きな要因となった」

 

「……」

 

「人類の歴史は創造の歴史と言っても過言ではない。俺はその中でも、この『銃』という発明が人類に最も恩恵を与えた道具だと認識している。それが何故か分かるか?」

 

「…効率良く生き物の命を奪う悪魔の兵器、それを生み出した人類の罪でも問いたいわけか?」

 

「あははははは!」

 

サンジェルマンの答えを聞いたナナシは、小馬鹿にするように笑い出した。

 

「人類の罪?そんなものはどうでもいい。効率良く生き物を殺す?そんなちっぽけなことじゃない。この道具が最も人類に与えた恩恵とは…『汚れなくて済むこと』だ」

 

「ッ!!?」

 

驚愕するサンジェルマンに、ナナシは般若面の下に笑みを浮かべながら楽しそうに話し続けた。

 

「必死に汗水を流して体を鍛え、重たい武器を手に野山を駆け回り、血飛沫に塗れながら命を奪っていた人類が、ただ指を一本軽く引くだけで済むようになった。人は手間と時間を掛けた物事に執着を覚える生き物だ。本来生き物を殺す過程はそれなりの手間を必要とするはずなのに、徹底的に手間を省略することに成功したことで心理的な負担からも解放され…人は身綺麗なままで命を奪うことを覚えたんだよ」

 

ナナシは弄んでいた拳銃を正しく持つと、サンジェルマンと同じように構えてみせた。

 

「その果てに、今の人類はボタン一つで数万の命を奪うことさえ可能になった…そんな人類の未来のためと豪語するお前が、引き金を引くことを躊躇わない、だと?」

 

バァン!!

 

ナナシが引き金を引いた拳銃から弾丸が飛び出し、サンジェルマンの髪を掠めて通り過ぎる。それでもナナシの言葉に聞き入り、得体の知れない寒気に襲われ微動だにしないサンジェルマンに、ナナシは淡々と言葉を紡いだ。

 

 

 

「おい、人間。人の未来を語るお前が、今更この程度の所作に躊躇いだ何だゴチャゴチャと…馬鹿みたいに強い覚悟を籠めながら、何眠たい事をほざいている?」

 

 

 

「ッ!!?」

 

「って、悪い悪い。すぐに話を逸らすのが俺の悪い癖だな…で?結局お前らの目的って何なんだ?」

 

「貴様に教えることなど何もない!」

 

「そっか」

 

バァン!! バァン!!

 

サンジェルマンが返答を拒絶した瞬間、ナナシが何の躊躇いもなく拳銃の引き金を引き…二発の弾丸が、カリオストロへと飛来した。

 

「なっ!!?」

 

「へっ!!?」

 

ファウストローブを纏ったカリオストロに、拳銃程度では傷一つ付けられない。だが正確に顔を狙って飛来してきた弾丸は、カリオストロの意表を突くには充分であり…

 

「隙が出来たな?」

 

ドゴォオオオン!!

 

「きゃあああああ!!?」

 

…ずっと避け続けていたキャロルの錬金術が、カリオストロに直撃した。

 

「カリオストロ!!」

 

「任せるワケダ!!」

 

ようやく復帰したプレラーティが、派手に吹き飛ぶカリオストロのフォローに回った。

 

「貴様!!」

 

「で?お前らの目的は?」

 

サンジェルマンの怒気を歯牙にもかけず、ナナシは淡々と質問を繰り返す。

 

「諄い!!」

 

バァン!! バァン!!

 

再び響き渡る銃声。しかしその一つはサンジェルマンが放ったものだ。サンジェルマンの弾丸はナナシとプレラーティ達の間にある甲板に当たり、そこを起点に錬金術による鉱石の壁が現れて、ナナシの弾丸を遮った。その結果に、サンジェルマンが安堵の笑みを浮かべて…

 

ドゴン!! ドゴン!!

 

「ぐあっ!!?」

 

「なっ!!?」

 

…その直後、鉱石の壁が粉砕されてプレラーティが吹き飛ばされた。サンジェルマンがナナシに視線を向けると、その手の拳銃がいつの間にか消えて…入れ替わるように対物ライフルが握られていた。本来片手で扱えるような代物ではないが、ナナシは一切銃口をブレさせることなく正確な射撃を繰り出していた。

 

「で?お前らの目的は?」

 

「どこまで貴様は!!……ッ!!?」

 

ゾクリッ!!

 

叫ぼうとしたサンジェルマンだったが、突如その身に降りかかった威圧感に思わず口を閉ざしてしまった。

 

「あのさぁ…いい加減状況を理解しろよ?錬金術師ってのはどいつもこいつも都合悪いことは認識出来なくなるのか?俺とキャロルが明らかに手を抜いているのが分からないのか?」

 

気怠そうな態度でライフルを肩に担ぎながら、般若面から覗く瞳がサンジェルマンを睨みつける。

 

「『穏便な対応』はこれで最後だ。その残念な頭を精一杯働かせて、自分達の最悪な未来を“妄想”してから口を開けよ?…お前らの、目的を言え」

 

ライフルを“収納”して、代わりにミサイルランチャーを構えながらナナシがサンジェルマンに命令を下した。態度が一変したナナシに、サンジェルマンは口を開くことが出来ず必死に思考を巡らせる。

 

(私以外の二人を執拗に狙って甚振っている現状が、穏便な対応…そして逃走を考えた瞬間に一人を集中して狙うと発言したことから…ここで断れば、見せしめに二人を…)

 

脳裏に過った『最悪』の可能性に、サンジェルマンは身動きが取れなくなってしまった。すると…

 

(サンジェルマン!!)

 

(そんな奴に従う必要はないワケダ!!)

 

…サンジェルマンの頭に、カリオストロとプレラーティの念話(テレパス)が届いた。

 

(あーしらなら大丈夫よ!こんなバカップルにやられるほど柔じゃないわ!!)

 

(私達を信じて、サンジェルマンは自分の信じた道を突き進めば良いワケダ!!)

 

(カリオストロ…プレラーティ…二人共、ありがとう…)

 

二人の想いを受け取ったサンジェルマンは、ナナシのプレッシャーに打ち勝って銃を構えながらハッキリと言葉を口にした。

 

「断る!!」

 

「あっそ」

 

ボシュッ!!

 

サンジェルマンの返答を聞いたナナシは、非常に素っ気ない返事を口にしながらミサイルランチャーを市街地に向けて(・・・・・・・)引き金を引いた。

 

「………え?」

 

何が起こったか理解出来ず、サンジェルマンが呆然とした表情をして放たれたミサイルの行方を目で追った。ミサイルは蛇行しながら空中を突き進み、遠目に見える建物の密集する地点に消えていき…

 

ドゴオオオオン!!

 

…着弾を告げる爆音と黒煙が発生した。

 

「なっ…なに、を…」

 

「ああ、何てことだ!お前らテロリストのせいで被害が出てしまった!もしも避難の遅れた人間があそこにいれば、今頃は…」

 

「なっ!?何を言っている!!?あれは、貴様が…」

 

芝居がかった動きで頭を押さえながら嘆くフリをして罪を擦り付けてくるナナシに、サンジェルマンは頭を混乱させながら叫んだ。だが…

 

「ん?自分達は悪くないって言いたいのか?好きにすれば良いんじゃないか?何せお前らは自称人類の未来を背負う革命家だ。俺達S.O.N.G.が何を言おうが、人々はきっとお前達の言葉を信じてくれるさ!!あははははは!!」

 

笑いながら告げられたナナシの言葉に、サンジェルマンは絶句していた。悪寒を覚えて冷や汗が流れ、目の前の仮面の男に対する恐怖が膨れ上がっていく。ナナシの言葉の意味が分からない訳では無い。寧ろ分かるからこそ頭の中で困惑がどんどん大きくなっていく。

 

 

 

目の前の男は、アルカノイズで街を襲っている自分達に対して…民間人を人質にしようとしているのだ。

 

 

 

「貴、様は…狂っているのか…?」

 

「はぁ~…人間は他人の考えが分からないとすぐにそう言うよな?自分が正しいと思いたいから相手を貶めようとする。少しは理解する努力をしようぜ?少し視点を変えてみれば、俺の行動が合理的と分かるヒントは幾らでも見つかるだろ?」

 

思わずサンジェルマンが呆然と零した呟きに、ナナシはヤレヤレといった風に溜息を吐いてカリオストロ達を足止めするキャロルに視線を向けた。

 

「例えば、俺と一緒に来たキャロル。お前らはあいつがここに来たことに頭が一杯みたいだけど…逆に考えてみろよ?『何故キャロルは今まで戦場に現れなかったと思う?』」

 

「ッ!?そ、それは…キャロルの錬金術が…」

 

「そう、あいつの錬金術は『想い出』を消費する。だからそう簡単に戦場に出てこない。じゃあどうやって今回俺達がキャロルの協力を得たか…簡単だ、こっちで消費する想い出を用意したからだ」

 

「ッ!!?」

 

ナナシの言葉に、サンジェルマンが驚愕と共に納得も覚える。自分達の知るキャロルが、そう易々と自分の想い出を消費してまで他人に協力するとは思えない。他所から想い出の供給を受けたと考えるのが自然だ。では…

 

「『どうやって俺達がキャロルの納得するだけの想い出を用意したのか?』って顔だな?」

 

「……」

 

「それも視点を変えてみれば簡単に分かるかもしれないぞ?」

 

そう言ってナナシがサンジェルマンに思考することを促す。戦闘中、仲間が必死に自分の元へ駆けつけようとする状況でそんなことをしている場合ではない事は分かっているが、どうしても生じた疑問について考えを巡らせてしまう。

 

(S.O.N.G.全体から少しずつ集めたか?…いや、非効率過ぎる。千の人間から数日の想い出を集めても、成人一人分にも満たない…まさか死刑囚でも集めて想い出を全て吸い出したのか!?)

 

およそまともな方法ではないだろうとサンジェルマンが考え始めたところで…ナナシが再び口を開く。

 

「バルベルデ共和国の軍事拠点、プラント施設、その近隣の村にエスカロン空港」

 

「…?」

 

「日本では亜空間を生成する新型アルカノイズ襲撃、松代襲撃、風鳴機関本部襲撃、そして今回…アルカノイズが関わると、俺達S.O.N.G.はとても忙しくなる。戦闘後は特にな?」

 

「…戦闘後の方が、忙しい?」

 

 

 

「アルカノイズは何もかも分解するから、人目が無い場所で襲われた人間がいると痕跡が残らない…必ずと言って良いほど生死が判別出来ない行方不明者が出る(・・・・・・・・・・・・・・・・・)から裏付けが大変なんだよ」

 

 

 

「あ…」

 

「本当に困るよな?それでも人という国にとって貴重な『財産』が失われたかはきちんと調べないとな?間違いがあったら(・・・・・・・・)大変だ!」

 

「あ…ああぁ……」

 

サンジェルマンの胸の内に様々な感情が渦巻くと共に、頭の中で情報のピースが繋がっていく。

 

『何故キャロルは今まで戦場に現れなかったと思う?』

 

それはキャロルに捧げる想い出の量が足りなかったから…裏を返せば、今回出てきたのはその想い出を集めることに成功したから…

 

『どうやって俺達がキャロルの納得するだけの想い出を用意したのか?』

 

キャロルが自分達と戦闘を行うなら、一人二人の人間の想い出では足りない。数十人もの想い出を、仮にも秩序を守る組織であるS.O.N.G.が不自然に思われないよう秘密裏に集めるには…

 

『アルカノイズが関わると、俺達S.O.N.G.はとても忙しくなる。戦闘後は特にな?』

 

『必ずと言って良いほど生死が判別出来ない行方不明者が出る(・・・・・・・・・・・・・・・・・)から裏付けが大変なんだよ』

 

『人という国にとって貴重な『財産』が失われたかはきちんと調べないとな?間違いがあったら(・・・・・・・・)大変だ!』

 

人が消えても不自然ではない状況下で…集めれば…

 

『ああ、何てことだ!お前らテロリストのせいで被害が出てしまった!もしも避難の遅れた人間があそこにいれば、今頃は…』

 

『お前らは自称人類の未来を背負う革命家だ。俺達S.O.N.G.が何を言おうが、人々はきっとお前達の言葉を信じてくれるさ!!』

 

全ての罪を…他所に押し付けて…

 

 

 

『人は身綺麗なままで命を奪うことを覚えたんだよ』

 

 

 

頭の中で答えに辿り着いたサンジェルマンは、急速に落ち着きを取り戻すと同時に銃を持つ手に力を籠める。

 

「お前にもその苦労は分かるんじゃないか?だってお前、初めて会った時に言っていただろ?『あなた達で七万三千七百九十五…その命、世界革命の礎と使わせていただきます』って。自分が消費した命の数をきちんと管理しているなんて几帳面だな!」

 

もうサンジェルマンの心に恐怖は無い。ナナシの力がどれだけ強大だろうと、臆する理由にはならない。

 

「だけど一つその点で納得出来ない事がある。お前、オペラハウスで大統領とその取り巻きを殺した時に『七万三千七百八十八』って呟いたよな?つまり、単純に一人殺す度にカウントを一つ増やしている訳だ…国のトップも、その取り巻きも、俺の仲間達も、何より俺自身も平等に一つの命として…それはちょっと杜撰過ぎないか?」

 

何故ならサンジェルマンの中で、ナナシと言う存在の立ち位置が明確に定まったからだ。

 

 

 

「まるで命の価値が全て同じみたいじゃないか?俺の命が他の人間と同価値だなんて…そんな事、あるはずがないだろう?」

 

目の前の男は、自分が必ず排除しなければならない世界の『敵』であると。

 

 

 

その瞳に強い意志を宿して、サンジェルマンは仮面から覗くナナシの瞳を真っ向から睨みつける。そんなサンジェルマンの感情を感じ取り、ナナシは仮面の下にとても楽し気な笑みを浮かべた。

 

サンジェルマンがその手にある銃をナナシに突き付ける。その銃口はブレることなくナナシの眉間に狙いを定めていた。そんなサンジェルマンを前に、ナナシは何も持たない両手を広げてサンジェルマンを待ち構える姿勢を見せつけた。

 

 

 

 

 

「人類の未来のために…私は必ず貴様を排除する!!」

 

「“妄想”は充分出来たか、人間?これからその身に待ち受ける『最悪』が、“妄想”から外れていないことを精々祈れ!!」

 




あれ?私はいつから魔王が主人公の物語を書いていたのでしょうかw

話の進みが悪くて申し訳ない。前の話と纏めようかとも考えたのですが、ストックに余裕が無いのでそのままにしましたw
そのお陰もあって…ようやく次回投稿予定のOHANASHI回を書き終えることが出来ました。結局ひと月くらいかかってしまった…

OHANASHI回を投稿する前に、これだけは言わせてください…
どうか第117話(AXZ編1話)を信じてください!よろしくお願いします!!
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