戦姫絶唱シンフォギア コドクの神が求めるモノ   作:@sora@

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第14話

「わたし、どうなっちゃってるの!?」

 

ガングニールのシンフォギアを纏った少女…立花響は困惑していた。

ノイズに襲われていた少女と一緒に逃げ回り、その果てにノイズに追い詰められた響は、その胸の奥から浮かんできた歌を口にした。その後に自身に起こった変化に、響は理解が追い付いていなかった。

 

いきなり体に鎧のようなものが装着されたこと、自分の口から自然と歌が紡がれること、何より子供とはいえ人間一人抱えた状態で10メートル以上跳躍できるほど向上した身体能力に、響は体を上手く動かせないでいた。

 

そんな響にノイズの一体が飛び掛かった。それに気づいた響は、がむしゃらに腕を振り回し、その腕に当たったノイズが塵と化して消滅した。

 

「あ…わたしが、やっつけたの?」

 

自分がやったことに響が困惑していると…

 

「ふむ…初々しくも真っ直ぐな感情が籠った良い歌だ」

 

「!?」

 

突然自分の隣から声が聞こえた。振り向くと、そこにはいつの間にか男が立っていた。

 

「是非ともこのまま素直に育って欲しいところだ。ウチのSAKIMORIは色々考えすぎてあまり素直な感情を見せないし」

 

「あ、あの、あなたは?」

 

「ああ、安心しろ。ただの通りすがりの不審者だ」

 

「ええっ!?」

 

男の言葉に響が驚いていると、今度は響達の前をバイクが走り去っていった。

 

「っ!?今度はバイクが!?」

 

「安心しろ。ただの通りすがりの不審なSAKIMORIだ」

 

「いや全然安心出来ません!?何ですか不審な、サキモリ?って!?」

 

そんな会話をしている間に、バイクに乗っていた人物はバイクを乗り捨て跳躍し、バイクが大型ノイズの足に当たって爆発する。そして…

 

Imyteus amenohabakiri tron

 

バイクから飛び降りた人物の口から、歌声が鳴り響く。地面に着地した人物は、後ろにいる響達に声をかける。

 

「この状況でいつまでふざけている!あなたも惚けない!死ぬわよ!」

 

「っ!?」

 

「あなた達はここでその子を守ってなさい!」

 

「あ、あの…」

 

「りょーかい、良い歌聴かせてくれ」

 

響達に声をかけた女は、ノイズの群れに駆けていく。その途中で女の体には響と同じような鎧が装着され、女は歌いながらノイズの群れを蹂躙していく。

 

「…すごい」

 

「う~ん、やっぱり所々声が乱れているな。まあこんな状況じゃしょうがないか…」

 

「…うぅん…あれ?ここどこ?…っ!?お兄ちゃん!後ろ!!」

 

響の腕の中で、気を失っていた少女が目を覚ますと、男の後ろに迫るノイズに気が付き声をあげる。だが、男は振り向くことなく自分の背後に裏拳を叩き込み、ノイズを消滅させた。

 

「「ふぇぇ!!?」」

 

「お、良い反応だ。最近は俺が何しても誰も驚いてくれないから新鮮だな。その辺も変わらないでくれると嬉しい」

 

「い、一体何を…!?」

 

男の言葉に響が困惑していると、今度は大型ノイズが響達に覆いかぶさるように姿を現す。少女は怯え、響は少女を守るためにノイズを警戒するが、男は笑みを浮かべて微動だにしない。次の瞬間、大型ノイズの背中に巨大な剣が突き刺さり、ノイズは塵となって消滅した。剣の上には先程の女が立っており、気が付けば周囲のノイズは掃討されていた。

剣を収納して響達に女が近づく。その女に男が声をかける。

 

「お疲れさん。途中歌声が乱れていたぞ?」

 

「…お前がふざけているからだ」

 

「ここでそんな言い訳するのか。SAKIMORIは泣き虫、弱虫だけじゃなくて嘘つきまで追加する気か?」

 

「私は嘘などついていない!それに泣き虫でも弱虫でもない!!」

 

「週一くらいのペースで俺に泣かされているヤツが何を言っている…」

 

口論を始める二人に、響が恐る恐る声をかける。

 

「あ、あの、あなたはひょっとして…ツヴァイウィングの天羽奏さんですか?それとも風鳴翼さんですか?」

 

「「ッ!!?」」

 

「あ、あれ!!?」

 

響の言葉にバッと顔を向ける二人、そして困惑の声をあげる響。

 

「お、おかしいな?さっきまで何だかモヤが掛かってるみたいによく分からなかったのに、急に翼さんのことがハッキリ見えるようになった気が…」

 

響が困惑する様子に取り合うことなく、女…風鳴翼は男に視線を向ける。男…ナナシは翼の意図を察して翼に“念話”を繋げる。

 

(ナナシ、どういうこと?あなたの“認識阻害”が彼女には通用してないみたいだけど?それに奏の名まで…)

 

(…奏のことは分からないが、“認識阻害”はお前を『風鳴翼』だと明確に意識したのが原因だな。俺はこの子にお前のことは『通りすがりの不審なSAKIMORI』としか伝えてない…まさかそれで連想されるくらい外で無様を晒してないよなSAKIMORI?)

 

(そんな訳ないでしょ!あと誰が不審な防人だ!?)

 

(傍から見ると急に黙り込んだと思ったら突然怒りの表情を浮かべているようにしか見えないお前のことだよSAKIMORI)

 

ナナシの“認識阻害”には弱点がある。

それは、“認識阻害”を施された対象の正体を明確に意識されると、その人間には途中で効果が切れてしまうのだ。

 

過去に能力の検証を行っている際、別室で“認識阻害”を施した弦十郎をツヴァイウィングの二人の前に連れてきた際、当てずっぽうで奏が「弦十郎のダンナ!」と断言した瞬間、奏は弦十郎を認識できるようになり、翼も奏に続いて弦十郎を認識できるようになったことでこの弱点は発覚した。

 

本来この弱点は問題にはならない。詳細がよく分からない相手に対して、「あれは風鳴翼だ!」と思い込むようなことはまず無いからだ。

 

(ってかこの子、どっかで見た気がするな?)

 

(あなたも?私も最近見た覚えが…)

 

「…あ、あの…」

 

突然黙り込んで時々表情を変える二人…というか翼に、響が恐る恐る声をかける。しかしそのタイミングで、遠くの方からたくさんの車が接近してくる音が聞こえてきた。

 

「…まあ、色々気になることはあるが、とりあえず話は後始末をした後だな」

 

「…ええ、そうね」

 

「え?え?」

 

「何か人がいっぱい来た!?」

 

困惑する響と少女を置いてけぼりに、事後処理のために集まった大勢の人間が響達の周囲を取り囲んだのであった。

 

 

 

 

 

「あったかいもの、どうぞ」

 

響に近づいてきた女性が温かい飲み物が入ったコップを響に手渡す。

 

「あ、あったかいもの、どうも」

 

それを受け取った響が、コップに口を付けて中身を口に含む。その温かさに思わず声を漏らして緊張を緩めると、それが切っ掛けだったのか響が纏っていたギアが解除される。

 

「え?うわわ、ああああ!?」

 

そのことに驚いた響がバランスを崩して転倒しそうになり、コップから手を放してしまう。

 

ガシッ

 

だが、転倒しそうになる響を翼が受け止め

 

「よっと」

 

パシッ

 

響が手放したコップをナナシが空中でキャッチした。

 

「あ、ありがとうございます!」

 

翼に感謝を伝える響。だが、翼は険しい顔のまま身を翻す。

 

「ほら、あったかいもの。今度は気を付けなよ」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

ナナシからコップを受け取った響がナナシに感謝を伝え、再度翼の方に声をかけた。

 

「あの、実は、翼さんに助けられたのは、これで二回目なんです!」

 

「…二回目?」

 

(…ああ!そういうことか!)

 

響の言葉に翼が疑問符を浮かべ、ナナシは何かに思い当る。その時…

 

「ママ!」

 

「良かった!無事だったのね!」

 

響が助けた少女と、その母親らしき人物の声が聞こえてきた。再開を喜び抱き合う二人に、女性が一人近づき今回の件に関する情報制限についての説明をし始めた。その様子を見ていた響は、何かを察したのか…

 

「じゃあ、わたしもそろそろ…」

 

そう言って、響はコップの中身を飲み干した後、その場を離れようとする。だが…

 

「あー、悪い。それはちょっと無理そうだな」

 

ナナシがそう言って響のコップを受け取った後、響の背後を指さす。そこには翼を中心にズラッと黒服を着てサングラスをかけた男達が並んでいた。それを見て固まる響に翼が話しかける。

 

「あなたをこのまま帰すわけにはいきません」

 

「なんでですか!?」

 

「特異災害対策機動部二課まで、同行していただきます」

 

翼がそう言い切るのと同時に、響の背後から近づいてきた緒川が響の手にゴツイ手錠を取り付け拘束した。

 

「えっ!?」

 

「すみませんね。あなたの身柄を拘束させていただきます」

 

そう告げる緒川と困惑する響を見ていたナナシが、笑いながら話し出した。

 

「うわー!懐かしいな!俺もこんな感じにやられたっけ。普通はそういう反応になるのか!」

 

「っ!?あなたもこんなことされたんですか!!?」

 

「そうそう。まあ安心しなよ。悪いようには…そういえば連れて行かれた先で全裸にひん剥かれたっけ?」

 

「ええええええええ!!?!?」

 

「ナナシさん!あんまり怖がらせるようなこと言わないでください!」

 

「ならこの子の目を見て俺の言葉は嘘っぱちだと断言してやれよ慎次」

 

ナナシがそう言うと緒川は明後日の方向に目を逸らして黙り込んだ。

 

「わ、わた、わたし、どうなっちゃうんですか!?」

 

「悪い悪い、ちょっと脅かし過ぎたか。こっち側の立場の人間に言われても信用出来ないと思うが、絶対に危害を加えるような真似はしないし、万が一そんなことになりそうなら経験者のよしみで庇ってやるから大人しく一緒に来てくれ」

 

ナナシはそう言って響に手を差し出す。

 

「俺はナナシ。お前の名前も教えてくれないか?」

 

「えっと、響です。立花響」

 

響はそう言って手錠で繋がれた手で恐る恐るナナシの手を握る。

 

「響か。いい名前だ。それじゃ響、早速向かうとするか!」

 

ナナシはそう言ってそのまま響の手を引いて車に誘導する。

 

「ふぇ!?あの、ちょっと!?」

 

「大丈夫大丈夫!面倒なことはさっさと済ませるとしよう!ほら、SAKIMORIも慎次も早く車に乗れよ!」

 

そう言ってナナシは響を強引に車に乗せる。翼達も遅れて車に乗り込み、程なくして車が動き出す。

 

「だから、何でぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」

 

そんな響の叫び声をその場に残して、車は目的地…特異災害対策機動部二課へ向かって走り出した。

 

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