戦姫絶唱シンフォギア コドクの神が求めるモノ   作:@sora@

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すみません、投稿予定時間ギリギリまで執筆していたので、碌に添削出来ていないです。
大筋は問題ないと思いますが、時間が出来たら大きめの修正を入れるかも…

これで完全にストックが尽きてしまったため、来週お休みをいただくかもしれません。その場合は来週の土曜日の夕方頃に活動報告で連絡します。
報告が無ければ予定通り投稿するということでよろしくお願いします。


第139話

ナナシと“念話”が繋がらないことに響が疑問を感じていると、その間に翼達も浮遊戦艦の消滅場所に集まってきた。

 

「立花、暁、月読!無事か!?」

 

「ド派手な花火が上がったみてえだが、ラスボスの全裸野郎のご登場か!!?」

 

「う、ううん、違うみたい。ここにいるのは…」

 

そう言って響が視線を向けた先には、ボロボロの状態で響達を警戒するサンジェルマン達がいた。

 

「どうやら、ナナシの作戦が上手く進んだようね?あそこまで疲弊しているなら、あとは捕縛するだけ…ところで、当のナナシとキャロルは一体何処なの?」

 

「見当たらないデス」

 

「気が付いたら、あの三人が後ろにいて…」

 

「それに、何故か兄弟子と“念話”が繋がらなくて…」

 

サンジェルマン達を警戒しながら響達が情報共有をしていると…

 

「ナナシなら、ここだ…」

 

…装者達の傍に、空から降りてきたキャロルが声を掛けた。その手の中には、ナナシが横たわっている。

 

「キャロルちゃん!!」

 

「ご都合主義!?何で抱えられてんだ?」

 

ナナシの状態に、クリスが疑問を口にする。しかしナナシがその声に反応する様子は無く、キャロルも無言のままナナシの体をそっと地面に降ろして…頭部に風穴を開けたナナシの姿を装者達へと見せた。

 

『ッ!!?!?』

 

装者達全員がナナシの悲惨な姿に言葉を失い…しかしすぐに落ち着きを取り戻した。

 

「このバカ野郎、油断しやがったな?」

 

「大方、相手をからかうのに夢中で攻撃を避けそこなったんでしょう?」

 

「全く…仕方がない、この男が目を覚ます前に後の事は片付けてやろう」

 

事情を知らない者が見れば、異常としか思えないやり取りだろう。だがナナシの不死性を知っている翼達には、今のナナシの状態は気絶と同じだ。すぐに目を覚ます、必ず目を覚ます…誰もがそう信じて疑わなかった。

 

「あれ?キャロルちゃん…?」

 

だからこそ、頭部から血を流すナナシよりも…瞳から涙を流すキャロルの方が響の目を引いた。

 

「涙…?」

 

「だ、大丈夫デス!ナナシさんは不死身デス!きっとすぐに目を覚ますデス!!」

 

調達もキャロルの涙に気が付き、切歌がお気楽な様子で…僅かに声を震わせながら…キャロルに慰めの言葉を掛けた。それでもキャロルは涙を流したまま横たわるナナシを見つめて…零すように言葉を紡いだ。

 

 

 

「この男の頭を貫いたのは、ラピスによる攻撃だ。こいつの力の根源が仮説通り呪いであったのならば…恐らく、もう目覚めることは無い」

 

 

 

誰もが理解出来なかった。いや、理解したくなかった。キャロルが紡いだ、その言葉の意味を…

 

「は…ははは…そんな馬鹿な…そんなこと…あるはずが…」

 

全員が呆然とする中で、翼がナナシへと近づいていく。

 

「どうせ…いつもの悪戯なのだろう?質の悪い真似はよせ…歌の催促か?安心しろ、帰ったら満足するまで聴かせてやる…だから、早く目を覚まして…嘘だと、言って……」

 

地に膝をついて、引き攣った笑みを浮かべながら翼が震える声でナナシに呼び掛け続ける。必死に体を揺すって、遂には血塗れのナナシの体に縋りついて…

 

「嘘だ…嘘、だ……嘘だぁああああああああああああああ!!!!!」

 

…目の前の現実を拒絶するように、泣きながら絶叫した。

 

「そんな…兄弟子…」

 

「ふざけんじゃねえ!!信じねえぞ!!てめえが…くたばるわけが……」

 

響が泣きながらへたり込む。クリスは怒声を上げてナナシの死を否定するが、それも続かず…涙を流して俯いてしまった。

 

「嘘よ…やっと私達は、あなたと肩を並べて…守られるだけじゃなく、守れるように…なったのに…あなたが…そうしてくれたのに……」

 

「嫌…嫌だよ…こんな…こんなの……」

 

「サヨナラなんて…嫌デスよ…うわあああああああ!!!」

 

マリアが地面に手をついて自身の無力を嘆く。調と切歌はお互いに体を預けながら大声で泣き叫んだ。

 

全員がナナシの死を受け入れられず、失意の底に沈んでいると…自分達から意識が外れた隙に、カリオストロ達が逃走を企てていた。

 

だが…

 

「逃がすと思うか?」

 

バチンッ! バチンッ!

 

「「ぐわっ!!?」」

 

…キャロルの弦によってカリオストロとプレラーティは左右に吹き飛ばされ、更に弦が体に巻き付いて拘束されてしまった。

 

「プレラーティ!カリオストロ!…ぐうっ!!」

 

サンジェルマンが二人に駆け寄ろうとするが、ダメージが大きく起き上がることすらままならなかった。

 

「分かった!降参!降参よ!!これ以上暴れないから、捕虜としての扱いを…」

 

バチンッ!

 

「がっ!!?」

 

降伏を宣言しようとするカリオストロだったが、キャロルが弦でカリオストロの顔を叩いてその言葉を途切れさせた。

 

「黙れ。貴様らを生かしておくつもりなど無い」

 

「ぐっ…あーた仮にも表の組織に加わったんでしょう!?気分で捕虜の扱いを決めてんじゃないわよ!!大体、あの男との約束ガン無視して良いわけ!!?」

 

「フン、形振り構わず命乞いか。無様な…言ったはずだ。あの男の想いに寄り添ってやる義理など無いと…」

 

そこまで言ったキャロルは唐突に言葉を途切れさせ…ニヤリと笑みを浮かべた。

 

「いや、そうだな…対価を受け取った以上、最低限の義理は果たしてやるべきか」

 

「ッ!?それなら!!?」

 

「ああ、オレはお前らを殺さない…『オレは』な?」

 

そう言ってキャロルは…未だ泣き崩れる装者達に聞こえるように声を上げた。

 

「このままこいつらを捕縛すれば、その身柄はS.O.N.G.に預けられた後に国連によって沙汰が下されるだろう…まあ、高確率で死罪だろうがな?その決定を覆すだけの力と理屈を並べ立てる変わり者が居たならば、他の結末もあり得たかもしれないが…」

 

キャロルは一瞬だけ視線をナナシの亡骸に向けた後、更に言葉を続けた。

 

「だが、S.O.N.G.に異端技術の力が集中している現状、多少のリスクを承知でこいつらを手中に収めようとする国が現れるだろうな?その声に抗えずこいつらが我々の監視から離れれば…どれだけその国が万全を期そうが、現代の技術力程度では容易くこいつらは逃げ出せるだろうな?」

 

「チッ!」

 

キャロルの言葉に、カリオストロが舌打ちする。そういった打算もあったために、カリオストロは降伏を申し出たのだ。

 

「いずれにせよ、このままこいつらを引き渡せば、その処遇を決めるのは何処の誰とも知らない有象無象共だ。貴様らがこいつらの生殺与奪に関わりを持てるのは…戦場で相対している今以外に無いだろう」

 

「キャロル、ちゃん…?何を、言って…?」

 

「はっきり言わねば理解出来ないか?仇を討つなら今しかないと言っている」

 

『ッ!!?』

 

キャロルの言葉に、全員がビクリと身を震わせた。

 

「このまま第三者にこいつらの処遇を委ねるか、今ここで確実に禍根を断ち切るか…流れに身を任せている間に選ぶ機会を失う前に、オレは貴様らに教えてやっただけだ」

 

「そんな…そんなこと、出来る訳…」

 

「…許さない」

 

キャロルの言葉に響が動揺していると…ナナシに縋りついていた翼がゆっくりと立ち上がって、静かにそう宣言した。

 

「翼、さん…?」

 

翼の言葉に、響が嫌な予感を感じて手を伸ばそうとする。だが翼から放たれる、まるで抜身の刃のような鋭い威圧感が、近づくことを許さない。翼はその手に剣を展開して、涙に濡れた顔を憤怒に歪めながら、その視線を拘束されたカリオストロに向けると…

 

「はあああああああああ!!!」

 

蒼ノ一閃

 

…叫び声と共に、明確な殺意を籠めて剣から斬撃を放った。

 

「ッ!!?」

 

身動きが取れないカリオストロに、地を裂きながら強大な力が籠められた斬撃が迫り…

 

ズガガガガガガッ!!

 

…翼の斬撃にエネルギーで生成された無数のボウガンが命中して、カリオストロの目前で斬撃はかき消された。

 

「何やってんだよ!?先輩!!」

 

カリオストロの背後には、翼が視線を向けた瞬間に急いで先回りしたクリスがボウガンを構えながら翼に訴えかけていた。

 

「…それはこちらのセリフだ、雪音」

 

クリスの言葉を受けて尚、翼は殺意を漂わせながら剣を構えていた。

 

「翼!?あなた、自分が何をしているか…ッ!!?」

 

マリアが翼を諌めようとしていると…傍にいたはずの調と切歌の姿が見当たらないことに気がついた。

 

「やああああ!!!」

 

α式 百輪廻

 

その直後、無数の丸鋸が動けないプレラーティに対して放たれた。

 

「ッ!!」

 

INFINITE†CRIME

 

マリアは咄嗟に無数の短剣を放って丸鋸を撃ち落とした。

その隙に…

 

「マスト…ダァァァァイ!!!」

 

プレラーティの首目掛けて、大鎌の刃が振り下ろされた。

しかし…

 

「させ、ないわ!!」

 

EMPRESS†REBELLION

 

マリアが短剣を伸ばして大鎌へと巻き付け、強引に引き寄せる。大鎌はその持ち主と共にマリアの頭上を飛び越えて、丸鋸が飛来してきた場所…調が立つ位置へと向かい、調の隣に大鎌を持った切歌が着地した。

 

「調!切歌!!」

 

非難するようにマリアが二人の名を呼ぶが、二人は険しい表情で武器を構え続けていた。

 

少しの間、膠着状態が続いた後…翼が剣を構えたまま、自分にボウガンを向けるクリスに声を掛けた。

 

「何故、そ奴らなどを庇うために弓を引く?雪音…」

 

「生憎と、こいつらを庇ってるつもりなんてこれっぽっちもねえ。正直、あたしも今すぐこいつらのドタマをブチ抜いてやりたいさ」

 

「ならば猶の事、何故私の前に立ちはだかる!?」

 

「何故!?言わなきゃ分からねえか!!?あんたにそんな真似させたくねえからに決まってんだろうが!!」

 

殺意と怒気が混じった翼の言葉に、クリスは怯むことなく言い返した。

 

「頭に上がった血ぃ下げろよバカ先輩!!あんたの剣は!あんたの歌は!!そんなことに使って良い物じゃねえはずだろ!!?」

 

「……」

 

「ご都合主義の野郎は、ずっとあたしらの…あんたの歌を守るために戦ってきた!!あいつを理由に、先輩が歌で人を傷つけることをあのバカが望んでる訳がねえ!!」

 

「知ったことか!!!」

 

「っ!!?」

 

クリスが必死に翼の行動はナナシの想いに反していると伝えるが、翼はそんなクリスの言葉を切り捨ててしまった。

 

「ナナシが復讐を望んでいないことなど、言われなくても理解している!!ああそうだとも!!私がやろうとしていることは、ナナシの想いに反することだろうさ!!だが…だが…ナナシの想いに添うことに、一体何の意味がある!!?ナナシはもう!!私の歌を聴いてくれないのに!!!」

 

「……」

 

ボロボロと涙も零しながら、震える手で剣を握りしめて叫ぶ翼の言葉を、クリスは静かに聞いていた。

 

「ナナシはずっと…私達の歌のためと…そのために全てを、捧げてくれていた…私の歌を、求め続けてくれる…心からそう信じさせてくれるナナシの存在に…どれだけ支えられたか…遠く離れても…きっと聴いてくれているって信じていたから、私はここまで飛んで来れたのに…間違ってるなら、ちゃんと叱ってよ…いつもみたいに、私をからかって…笑いかけてよ…ナナシ……」

 

嗚咽を漏らしながら語られる翼の言葉は、途中からクリスには向けられていなかった。それでも、翼のままならぬ想いの強さは痛いほどクリスに伝わってきた。

 

「そうか…理屈じゃ止まれねえんだな…だけど、尚更あたしは先輩にその道を進ませる訳にはいかねえ」

 

翼の想いに理解を示して尚、クリスは翼の前に立ちはだかる選択をした。

 

「先輩の歌は、人を幸せにするための歌だ。自分の歌う意味を間違えて、迷い続けたあたしを救ってくれた優しい歌だ…今度はあたしが、血迷った先輩を連れ帰ってやる。ただ、先輩と違ってこちとら育ちの知れねえ元野良だ。引っかき傷付けられるくらいは覚悟しろよな!!」

 

「迷いなどあるものか!例え修羅道を歩むことになろうと…今ここで、そ奴らの首を取らせてもらう!!」

 

クリスと翼が武器を構えて交戦を開始する一方で、マリアと調達も刃と言葉を交わしていた。

 

「正気に戻りなさい!!」

 

「自分を見失ってなんかいない!!」

 

「自分達かやろうとしていることの意味を、分かっているの!?」

 

「分かっているデス!!」

 

プレラーティに向かう攻撃を防ぎながら、マリアが必死に調と切歌へ呼びかけるが、二人の攻撃が収まることはない。

 

「先生を殺したそいつらを殺す!」

 

「アタシ達で、ナナシさんの仇討ちデス!!」

 

「思い上がるな!!」

 

「「ッ!!?」」

 

ナナシの仇を討つと息巻く二人だったが、マリアの怒号に気圧されて動きを止めてしまった。

 

「勢いで誤魔化そうとするんじゃないの!考えなさい!!その人達の命を奪うことと引き換えに、あなた達が失ってしまうモノのことを!!」

 

「失うモノ!?そんなの、あるはずない!!」

 

「マリアこそ分かっているんデスか!?今しか無いんデスよ!!?今ナナシさんの仇を討てなかったら、規則だとか、決まりだとか、ルールみたいなよく分からない大人の都合で何にも出来なくなるんデスよ!!?施設にいた時と同じように…マリアは、それでも良いんデスか!!?」

 

「…なら、あなた達は復讐を遂げた後…その血に汚れた体で、今の居場所に帰って来られるの?」

 

「「ッ!!?」」

 

「今あなた達が生活している寮の部屋に、血塗れの足で踏み入ることが出来るの?学校で出来た友達の手を、自分の血に濡れた手で繋ぐことが出来るの?手を広げて私達の帰りを迎えてくれるマムの体を、あなた達は血に汚れた体で抱きしめることが出来るの?」

 

「ぁ…ぅ…」

 

マリアの言葉に、切歌がその身を震わせる。かつてナナシが身を挺して切歌を止めた際のことを…人を傷つける意味を、思い出してしまったからだ。

 

「私だってあなた達に偉そうに言える程、冷静って訳じゃないの。今にも、この左腕をそこの連中に振り下したい衝動に飲み込まれそうよ…でもね、思い出して?今、私達が使っているLiNKERに一体どんな想いが籠められていたのかを…目を背けないで?その想いを『無かったこと』にして、大切なモノを失う理由をナナシの『せい』にすることが、どれだけ残酷なことなのかを…」

 

震える声で、涙を流しながらも、マリアが諭すように調達に呼び掛け続ける。その言葉に二人は俯き、身を震わせて…それでも、武器を降ろすことが出来なかった。

 

「でも…それなら私達は、どうすれば良いの?…先生を奪われたこの怒りを、悲しみを、胸の想いを抱えたまま、先生が連れてきてくれた世界を生きていかなければならないの?…私達は先生に貰ってばかりで…何にも、お返し出来ないまま…」

 

「アリガトウも、ゴメンナサイも…全然、言い足りないデス…これからも、ずっとずっと一緒にって…信じてたのに…こんなの…嫌デスよぉ…」

 

二人も本当は理解している。自分達の行いは、ナナシのためではなく自分達の憤りを無くすためだと言うことを…それでも、止められないのだ。自分達に出来ることが他に見つけられず、胸の内に宿った復讐心に従うことしか二人には出来なかった。

 

「嫌だよ…こんな…こんなこと…兄弟子は、望んでいない…」

 

仲間達が争う光景を前に、響はナナシの亡骸の傍で座り込んだままそう呟くことしか出来なかった。

 

「当然だ。復讐と言うものは…残された者のための行いだからな」

 

そんな響の呟きに、キャロルは冷ややかな視線を向けながらそう返した。

 

「キャロルちゃん…何で、こんなことを…」

 

「オレなりの復讐だ。オレの研究対象を奪ったあいつらと…むざむざ殺されたその男に対してのな」

 

「そんな…そんなの、間違ってる…間違ってるよ!キャロルちゃん!!」

 

響が泣きながら叫ぶ声を聞いたキャロルは…響の言葉を否定することなく、俯いてナナシの亡骸へと視線を向けた。

 

「そうかもしれん…だが、オレには貴様らに復讐の選択肢を隠すことなど出来なかった…力を持たぬが故に、パパの死を前に泣き叫ぶことしか出来なかったオレにはな…」

 

「キャロルちゃん…」

 

「…貴様がそいつの想いに寄り添うと言うのならば好きにしろ。それはきっと、正しい選択なのだろう…だがな、立花響。正しさだけではまかり通らない想いがあることも覚えておけ」

 

そう言って、キャロルは響を残したままサンジェルマンの前まで歩みを進めた。

 

「どうだ?自らが奪った命を起点に巻き起こった争いを見る気分は?」

 

「ッ!!」

 

「敵対者が勝手に同士討ちを始めて喜ばしいか?ああ、特に何も感じないか?貴様にとって大切なのは奪った命の数であって、今あいつらを突き動かす想いは無価値なのだからな?」

 

「あ…う…」

 

キャロルの言葉に、サンジェルマンは呻きながら身を震わせることしか出来ない。そんなサンジェルマンに対して、キャロルは手を翳して錬金術を放つ姿勢を取った。

 

「どうやら貴様らを討とうとする歌女の数が足りないらしい。貴様は私の手で葬ってやる」

 

「なっ!?話が違うじゃない!!?あーたはあーしらを殺さないって!!?」

 

「ああ、『貴様ら三人を殺さない事』があの男との取引だ。だが、あの男はこの女のことを『過去に囚われ、未来に陶酔し、現在を生きる気概も持てない屍風情』と称していた。屍を葬ることを、殺すとは言わないであろう?」

 

「屁理屈なワケダ!!」

 

「全くだ。だが、どれだけ脆く拙い理屈であったとしても、理由があれば命を奪っても良いと言うのが貴様らのスタンスなのだろう?」

 

動けないカリオストロとプレラーティが必死に叫ぶが、その言葉にキャロルを止めるだけの力は無い。キャロルの錬金術によって、サンジェルマンの前に高熱の火球が形成される。

 

「冥土の土産に良い事を教えてやろう。あの男が持つ埒外の力の中には、他者の感情を感覚的に捉える力があったそうだ。その力によると、バラルの呪詛は何らかの形で人類を守護する目的で施された『祝福』だったのではないかとあの男は“妄想”していた」

 

「なっ!?う、嘘だ!!バラルの呪詛が!不和の根源が『祝福』などであるはずが!!!」

 

「あらすじを聞いただけで喚くな。バラルの呪詛の真意など、どうでも良い」

 

「ッ!!?!?」

 

バラルの呪詛に、自分達にとって諸悪の根源に別の意味があると言う、サンジェルマン達にとって絶対に受け入れられない話をどうでも良いと切り捨て、本題は別にあると主張するキャロルに、サンジェルマンは目を見開いた。

 

「フィーネからバラルの呪詛の役割を聞いたその男は、自らの感じ取った違和感の正体を暴くべく行動を開始して、二年にも満たない時間の中で…既にその男は、バラルの呪詛の真相へ至るための手段に手を掛けていた。遅くても数年以内、早ければ後一年にも満たない間に、その計画を実行出来る段階までその男は事を進めていた」

 

「…………えっ…?」

 

キャロルの言葉の意味を、サンジェルマンはしばらく理解出来なかった。つまり、自分達が四百年以上を費やして、多大な犠牲を礎に至ろうとした道筋を、ナナシはたったの数年で…

 

「何ともご都合主義としか表現出来ない方法ではあったが…不可能と断ずるほど、荒唐無稽という訳でも無かった。不確定要素が多いことを差し引いても、五分五分の勝負は出来るとオレは思った…その男の存在を、大前提としてな?」

 

呆然とするサンジェルマンに、キャロルは冷ややかな視線を向けたまま…その心にトドメとなる言葉を口にする。

 

 

 

「貴様が数多の命を奪いながら積み上げた生涯は…この男が作り出した、誰一人犠牲を出さずにバラルの呪詛へと至る道筋を断ち切ったのだ」

 

 

 

「嘘、だ…」

 

「貴様の見解など興味は無い。虚飾の栄光か、無価値な空虚か、数多の大罪か…貴様自身の命に納得出来る価値を勝手に抱いて…消え失せろ」

 

その言葉を最後に、キャロルがサンジェルマンに火球を放った。そこに籠められた業火は、触れれば骨すら残さずサンジェルマンを焼き尽くすだろう。

 

「嘘…だ……」

 

それでも、サンジェルマンは動くことが出来なかった。目の前に迫る死も、仲間達の必死の呼び掛けも、現実を拒絶するサンジェルマンを突き動かすことは出来ずに、火球はそのままサンジェルマンの体を包み込もうとして…

 

ガキィィィン!!

 

…サンジェルマンと火球の間に飛び込んだ響が、“血晶”を使って火球を受け止めた。響の手から、“血晶”が塵と化して消滅する。それを見たキャロルは、酷く苛立たし気な表情で響を睨みつけた。

 

「どういうつもりだ?立花響」

 

「…兄弟子は、こんなこと望んでない」

 

「この期に及んで…!あの男は!その女を殺そうとしていた!!その女の在り方を嫌悪し、憎悪して、その果てに自らの手でその命を刈り取ろうしていたのだぞ!?それでもまだ、貴様はそんな都合の良い“妄想”を抱き続けられると言うのか!!?」

 

「だとしても!!」

 

「ッ!!?」

 

ナナシがサンジェルマンの命を奪おうとしていたと聞いて尚、響はキャロルに負けない気迫で言葉を返した。

 

「どれだけ相手を言葉で追い詰めていても、暴力で痛みを与えることがあっても、兄弟子の行いは全てお互いを知るため、そしてわたし達自身が気づいてなかったこと、目を逸らしていることに気づかせてくれるために必要なことだった!!傷ついて、傷つけられて、沢山泣いて、怒って、悲しんで…それでもお互いに歩み寄っていったから、わたし達は同じ場所で笑顔になれる未来を掴み取ることが出来た!!キャロルちゃんとも、手を繋ぐことが出来た!!!」

 

響の言葉に、キャロルだけでなく争っていた仲間達も手を止めて聞き入っていた。

 

「兄弟子はずっとそうやって、皆が手を繋ぐための切っ掛けを作ってくれていた…譲れない想いも、ままならない現実も、全部茶化して、からかって、誤魔化して…そうやって少しずつ、変えられないはずの皆の在り方を変えて、皆にとって都合の良い未来の可能性を、見つけ出してくれていた…きっと兄弟子は今回も、サンジェルマンさん達と笑って過ごせる未来を掴み取るために、サンジェルマンさんを追い詰める必要があった…わたしは、わたしの中に生きている兄弟子のことを、そう信じている…だから…」

 

そう言って響はサンジェルマンの方へ振り返ると…呆然とするサンジェルマンに、その手を伸ばした。

 

「ッ!!?」

 

「今は辛くて、苦しくて…笑顔を向けることは出来ないけれど…それでも…だとしても…これが正しい選択だと、信じてる」

 

…サンジェルマンには、響の行動が信じられなかった。今、目の前の少女は自分が兄弟子と呼んで敬愛する存在を理不尽に奪われたばかりなのだ。それでも涙を流して、伸ばしていない手を握りしめて、自分の中の感情に耐えながら…それでも大切な存在を奪ったサンジェルマンに対して、歩み寄ろうとしている。

 

サンジェルマンには、響の手を弾くことなど出来なかった。響の想いを、痛みを知らぬ者の傲慢などと言えるはずもなかった。しかし、その手を取ることなど出来ない。先程手に掛けた男の血で汚れた自分の手を、目の前に差し出された震える手と重ねることなど、出来ようはずもない。

 

響がナナシに正しく歩み寄ろうとした行動の成り行きを、全員が見守っていると…突如として、硬直した状況は予想外の方向から動かされることになった。

 

「ハン!どいつもこいつも同じ男に随分ご執心なワケダ!!」

 

『っ!!?』

 

突然声が響いてきた方向に全員が視線を向けると、そこにはいつの間にか弦の拘束から逃れたプレラーティがナナシの亡骸近くに立っていた。

 

「これだけの数の女に手を出しておきながら我々にまで言い寄ろうとするなど、とんだスケコマシなワケダ!いつ刺されてもおかしくなかったワケダから、手間を省いてやった我々に貴様らは精々感謝すれば良いワケダ!!」

 

そう言ってプレラーティは…響達の目の前で、ナナシの亡骸に蹴りを叩き込んだ。

 

拘束から逃れたプレラーティが、わざわざ全員の注目を集めたのは…実は同じように拘束を外した後、未だ拘束されたフリを続けているカリオストロと示し合わせた結果である。

 

(私が歌女共を挑発して引き付けている内に、死んでもサンジェルマンを連れ帰るワケダ!!)

 

(分かってる…頼んだわよ、プレラーティ)

 

サンジェルマンをこの場から連れ出すための捨て身の行動。それを成すために、確実に全員の憎悪を自分に集めるためにプレラーティはナナシの死体蹴りを遂行したのだ。

 

その行いは狙い通り、装者達の憎悪を集めると同時に…一部の者達に、最後の決断をさせてしまった。

 

「てめえ…!!」

 

「よくも…!!」

 

先程まで諌める側だったクリスとマリアが怒りに顔を歪めて武器を向ける。作戦の成功を悟って、プレラーティは内心でほくそ笑む。

 

しかし…

 

「雪音、下がっていろ」

 

「マリアも、後のことをお願い」

 

「アタシ達は、もう決めたデス」

 

クリス達を押さえて翼、調、切歌の三人が前へと進み出て…胸のギアペンダントへと手をかけた。

 

「先輩!?それは!!?」

 

「調、切歌!?待ちなさい!!今そんなことをしたら…ッ!!?」

 

“影縫い”

 

三人を止めるため動こうとしたクリス達だったが、その足元にはいつの間にか翼の剣が突き刺さっており、その体はピクリとも動かなくなっていた。

 

「翼さん…調ちゃん…切歌ちゃん…」

 

「立花…ありがとう、ナナシの想いに寄り添ってくれて」

 

翼が響に振り返り、フッと優しく笑いかけた。その笑みは儚げで、その笑みを見た響は強い焦燥感を覚えた。

 

「私達はもう、この胸の歌を抑えられそうにない。全てを終わらせた後でも止まらないようだったら…お前達で、止めてくれ。それが私達の心からの想いだ」

 

「待って…待って!」

 

響が懸命に駆け寄って手を伸ばすが、その手が届くよりも前に…

 

「「「イグナイトモジュール、抜剣!!」」」

 

翼達は、呪いの剣を抜いてしまった。

 

ダインスレイフの呪いによって増幅した心の闇は、翼達の心をいとも容易く蝕み、飲み込んで…

 

「「「ガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」」」

 

…翼達は暴走状態となった。

 

呪いに自我を飲み込まれた三人だが、ほとんど自ら呪いを受け入れた影響か…一斉にプレラーティ目掛けて飛び掛かっていった。

 

「「「ガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」」」

 

「何と愚かな!!ラピスの輝きを前に、イグナイトの呪いを身に纏うなどと!!」

 

プレラーティは翼達目掛けてけん玉の球体を放り投げ、球体を起点に広範囲に浄化の光を放つ。浄化の光が翼達に迫っていき…接触する直前、三人の身に着けた“血晶”が三人を守るように“障壁”を展開した。

 

「なっ!!?」

 

ラピスの浄化があることなど、翼達は承知の上だ。ナナシの死後も“血晶”が機能していることも、ラピスの攻撃を防げるようになっていることも確認されている。“血晶”の力が尽きるまで…翼達は激情のまま、暴れることが出来ると判断したがために、イグナイトモジュールを起動したのだ。

 

そして狙い通り、三人が自我を失っても尚、持ち主を守るべく“障壁”はラピスの浄化の前に展開されて…

 

 

 

スルリと、浄化の光を透過させて翼達への接触を許してしまった。

 

 

 

「「「ガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!?!?」」」

 

その身を蝕む呪いが悉く焼き尽くされて、翼達は暴走状態が解除されて地面へと落下していった。

 

「先輩!!」

 

「調!切歌!!」

 

ラピスの強い発光のお陰で一時的に影が消滅した隙に“影縫い”から解放されたクリスとマリアが、慌てて翼達の元へと駆け寄っていった。

 

「ハ、ハハハ…焦らせるワケダ…どうやら、貴様らの目論見からは外れてしまったワケダな!!」

 

想定外はあったものの、一気に三人の装者を戦闘不能にしたためプレラーティは思わず笑みを零してしまった。だが、そんなプレラーティの態度など歯牙にもかけず、キャロルは先程の現象について驚愕しながら考察していた。

 

(“血晶”が機能していながら“障壁”がラピスの浄化を防げなかった…ナナシの耐性さえ獲得出来ていれば、“付与”を仕直さなくても“障壁”は機能することが確認されている…であるならば…まさか…まさか!!)

 

動かないキャロルを隙と見て、プレラーティとカリオストロが視線を合わせて頷き合い、カリオストロも行動を開始する。

 

(これならサンジェルマンを逃がすだけでなく、何人か道連れに出来る可能性があるワケダ!!)

 

プレラーティがそう考えて、注目を集めつつ気絶した装者に襲撃をかけようと動き出そうとした、その時…

 

ガシッ!!

 

…不意に、その足が何者かに捕まれた。

 

(えっ…?)

 

あり得ない事態に、プレラーティの思考が一瞬停止する。確実にサンジェルマンを逃がすために、プレラーティは全員の位置関係を正確に把握するように気を付けていた。今も敵味方問わず全員を視界に納めている。自分の足を掴んで止めることなど、誰にも…

 

「金塊がある…アダムが来た?…いや、この感情はキャロルの…キャロルが、歌ったのか?…ってことは…」

 

…足元から聞こえる声を、プレラーティは信じたくなかった。極度の緊張状態から生じた幻聴、足はただ瓦礫にでも引っかかっただけ…そう思いたくて、プレラーティがゆっくりと自分の足元を確認すると…

 

 

 

「貴重なキャロルの歌声を聴き逃したじゃねえか!?何してくれてんだてめえ!!」

 

 

 

…血塗れの顔で憤怒の表情を浮かべてプレラーティを睨みつける男の顔を直視した。

 

「ぎゃああああああああああああああ!!?!?」

 

ゴンゴンゴンゴンッ!!!

 

ガキンガキンガキンガキンッ!!!

 

プレラーティが我武者羅に巨大けん玉を足元に振り下ろすが、その全てが“障壁”に防がれてしまい…プレラーティの足を掴んだまま何事も無かったかのように立ち上がったナナシによって、プレラーティは逆さ吊りにされてしまった。

 

「離せ!離せ!!離すワケダァアアアアア!!!」

 

「んあ~…やっぱりこの突然時間が飛んでる感覚はまだ慣れないな…これに近い感覚を毎日感じているなんて、人間も大変だな」

 

寝ぼけたように頭を振るいながら、ナナシはプレラーティの叫びを聞き流して周囲の状況を確認した。

 

「まだ戦闘中か…場所は地上で響達も合流してる…って、何でどいつもこいつもこっち見て固まってんだ?あれ?SAKIMORIとザババコンビが見当たらないな?一体何処に…」

 

響達も、キャロルも、サンジェルマンも、カリオストロも凍り付いたようにピタリと動きを止めている戦場を、ナナシがキョロキョロ見回して…地面に倒れて意識を失った翼達に気が付いた。

 

「………」

 

「こんの化け物め!今すぐ私を離すワケ…」

 

「ああ、良いよ。離してやる」

 

「ダ…?」

 

ミシミシミシッ!!

 

「ああああああああ!!?!?」

 

アッサリと自分を離すと言ったナナシにプレラーティが呆けていると、ナナシがプレラーティの足を掴む力を緩めるどころかより強く握り込んだ。そして黙ったままその視線を、サンジェルマンの元へ駆け寄ろうとしたまま固まるカリオストロへと向ける。

 

「ッ!?まさか、貴様!!?やめろ!!今すぐはなぁあああああああああ!!?!?」

 

ブォンッ!!

 

プレラーティの言葉が終わる前に、ナナシはプレラーティの体を頭上で振り回した。“浮遊”を使用して重さを感じなくなったプレラーティを、まるで子供が人形を振り回すように何度も何度も回転させ、その勢いで周囲に旋風が発生し始めたところで、“浮遊”を解除してナナシが踏み込み…

 

「飛・ん・で・け!おらぁああああああああああ!!」

 

「ああああああぁぁぁぁあああああああぁぁぁ!!!!!!」

 

…プレラーティをカリオストロ目掛けて放り投げた。

 

「えっ!?ちょっ!!?待っ…オゲェ!!?」

 

ドゴォォォォン!!

 

プレラーティの体がカリオストロの腹部に命中し、二人は派手に吹き飛んで地面を転がりながら折り重なるように停止した。

 

「イタタタ…んもう!泥だらけになったじゃない!!サイアク~…って、そんな場合じゃない!!プレラーティ!?大丈夫!!?」

 

「……」

 

「プレラーティ?」

 

上半身を起こしたカリオストロの膝にうつ伏せで倒れ込むように体を重ねていたプレラーティは、起き上がると青い顔で口元を押さえて…

 

「オロロロロロロロロ…」

 

「ぎゃああああああああ!!!!」

 

…堪え切れずにカリオストロに引っかけるように嘔吐してしまった。

 

そんな隙だらけの敵二人を放置したまま、ナナシは翼達の元まで駆け寄るとその体を簡単に調べて、ただ気絶しているだけだということを確認するとホッと息を吐いた。

 

「はぁ~、良かった。大きな怪我は無いんだな。お前らは大丈夫か?てか、何でさっきから一言も喋らない…」

 

ドンッ!

 

「うおっ!?」

 

話している途中で腹部に衝撃を感じてナナシが尻もちを付くと、ナナシの腹部にはいつの間にか響がしがみ付いていて…

 

「うわああああああああああああ!!!わあああああぁぁぁあああああああ!!!!」

 

…そのまま大号泣し始めた。

 

「え?え?ひ、響!?どうした!?何処か痛いのか!!?」

 

「うわああああああああぁぁぁああああぁぁぁぁ!!!!!!」

 

「お、おち、落ち着けって!!おい、クリス!アイドル大統領!これは一体どういう…」

 

ガスッ!! ゴンッ!!

 

「がふっ!!?」

 

慌てふためくナナシにクリスが背中に蹴りを入れ、マリアが銀の籠手を脳天に落した。

 

「このバカ!マヌケ!!オタンコナス!!!スットコドッコイ!!!!ケロッと起き上がりやがって!!!あたしらがどれだけ心配したと思ってんだ!!?」

 

「無事なら無事だと早く知らせなさいよこの愚か者!!もう、本当に目が覚めないかと…どれだけ私達が怖かったと、思って…」

 

「「うわああああああああああああああ!!!!」」

 

しばらくボコスカとナナシを殴り続けたクリスとマリアも、最後には堰を切ったように涙を流してナナシに抱き着いた。

 

「え?え?何をそんなに…お、おい、キャロル?一体何があったんだ?お前なら何か知って…」

 

バチィィィン!!

 

ただただ困惑した様子で質問するナナシの横っ面に、キャロルの平手打ちが炸裂した。

 

「よくもいけしゃあしゃあと、目を覚ましたものだな!!このオレを謀りおって…覚悟は出来ているのであろうな!!?二度とふざけた真似が出来ないように、研究室で延々と解剖してやる!!!」

 

「ちょっ!!?マジで何があったんだ!!?本部!?本部!!?弦十郎!?誰か状況を教えてくれ!!?何で誰も通信に出ないんだ!!?」

 

響達に泣きつかれ、涙を流すキャロルに説教されて困惑するナナシ…その様子を、サンジェルマンは呆然と眺めていた。

 

「生きて、いた…?」

 

ナナシが生きていた…その事実を確認したサンジェルマンは、体からフッと力が抜けてしまい、後ろに倒れ込んで…その体を、カリオストロに支えられた。

 

「カリ、オストロ…?」

 

「マジサイアク!もう付き合ってらんない!!サンジェルマン、今の内にトンズラするわよ!!!」

 

パリンッ!!

 

有無を言わせず、カリオストロがテレポートジェムを地面に落す。カリオストロの小脇にはグロッキーのプレラーティが抱えられており、三人は今までの苦労が嘘であったかのように、誰にも気づかれることなくその場を離脱することに成功したのだった。

 

 

 

こうして様々な思惑が絡み合った今回のパヴァリア光明結社とS.O.N.G.との衝突は…両陣営共に敗北という形で幕を閉じたのだった。

 

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