戦姫絶唱シンフォギア コドクの神が求めるモノ   作:@sora@

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書いた作者としてはコメディなのですが、一応ホラーとグロ描写に注意です(意味不明w)



第145話

S.O.N.G.の指示によって深淵の竜宮があった場所の海面に作業船が用意され、大勢の人々の手によって愚者の石捜索が進められていた。

 

『愚者の石の回収は、まさに泥の中から一粒の砂金をさらう作業だ。長丁場になる…はずだったんだがな…』

 

『まあ、弦十郎君の言いたいことは分かるわ…』

 

本部から全体の指揮を取る弦十郎だったが、指示を出している途中で何故か苦笑と困惑が混ざったような顔で言葉を濁していた。そんな弦十郎の様子に周囲は疑問を抱かず、隣に立つ了子は同じような顔で額に手を当てて弦十郎と共感していた。

 

本部が微妙な空気に包まれる一方、海中では装者達と一緒にキャロルとエルフナイン、オートスコアラー達が複数の小型潜水艦に乗り込んで作業を行っていた。作業の観察と海上の警備のため、奏とクリス、調と切歌の四人が作業船に残ってモニターで海中の様子を窺っている。

 

「あちゃー…」

 

「こりゃひでぇ…」

 

「思っていた以上に…」

 

「ぺちゃんこデスよ…」

 

崩れて瓦礫の山と化した深淵の竜宮を見た奏と切歌、調が思わずその惨状に言葉を漏らす。クリスもその光景を見つめながら何かを考え込んでいる様子だった。

 

(あの時…今思えば、もう少し冴えたやり方があったのかもな…)

 

過去に自分の取った行動が今の状況を作り出していることに、クリスは複雑な想いを感じていた。

 

「だけど、まあ…」

 

「デスね…何というか…」

 

「うん…大丈夫そうだね?」

 

「……」

 

感じていたのだが…そんな葛藤さえ吹き飛んでしまいそうな光景に、四人共口元を引き攣らせながらモニターに見入っていた。

 

 

 

 

 

海中では、レイアが操作する潜水艦に翼とマリアが同乗して作業の様子を監視していた。

 

「フム…サブマスターに回収してもらえなければ、このような地味な場所で朽ち果てていたと思うと、私達はサブマスターに派手に感謝すべきだな」

 

「とても奇妙な感慨の耽り方だな…」

 

「どうせならその時にあの石も回収出来ていたらと考えてしまうのは高望みが過ぎるでしょうけど…目の前の光景を見ているとついそんな事を考えてしまうわ」

 

マリア達が視線を向けた先には、とてもここが深海であるとは思えない光景が広がっていた。

 

テクテクと散歩でもするように人影が動き回っている。それだけなら何気ない日常の光景かもしれないが、その人物が踏みしめているのは海底で周囲は海水で満たされた深海なのだ。そんな空間を防護服も無しに普段着でうろつき、人影が大きな瓦礫へと近づいて手を触れると、瓦礫は幻のようにフッと消え去ってその下に隠れていた様々な物の破片を露わにした。

 

すると今度は、その人影が小人であったと錯覚してしまいそうな巨大な手がその様々な破片を混在させる土をゴッソリと掬い出して、それを成した巨人にとっては風呂敷サイズに思える巨大なシートの上に土と瓦礫が山のように乗せられた。

 

(……)

 

(ありがとう、『レナ』)

 

土と瓦礫をそれこそ風呂敷のようにシートで包んで巨人が両手に乗せて差し出すと、声なき言葉でお礼を言った人影がシートに触れて巨人の手からシートが内容物ごと消え失せる。人影と巨人は巨人の手の中に何も残っていない事を注意深く観察すると、人影は凄まじい勢いで海面へと上昇していき、その勢いのまま海上へと飛び出して作業船の上にスチャッと着地した。

 

「追加置くぞー!」

 

「ご苦労様です!ナナシさん!!」

 

作業船へと飛び乗った人影…ナナシの近くにいた作業員が敬礼でナナシを労う。そんな作業員に手を上げて応えながらナナシが作業船に用意されたスペースに先程のシートを“収納”から取り出してシートを広げると、中からは土と海水が除かれた破片のみが姿を現した。

 

ナナシがシートだけを回収して再び海へ飛び込むと、作業員達がナナシの残した破片の仕分け作業を開始する。ナナシが再び海底へと辿り着くと、そこでは周囲の潜水艦を巻き込まないよう注意しながら山崩しのように慎重に瓦礫を動かす巨人…ナナシから『レナ』と呼ばれた、修復を終えて活動するレイアの妹の姿があった。

 

レイアと共にナナシによって回収されたレイアの妹は、他のオートスコアラー達と同様に修復されていた。流石にその巨体では気軽に地上で活動させる訳にはいかず、現在はS.O.N.G.本部の護衛を任されている。本部が寄港した際などは“認識阻害”を施して日本の海域を割と自由に探索したりもしていた。

 

因みに『レナ』と言うのはナナシがレイアの妹に与えた名前である。修復の折にレイアの妹には名前が無いと知ったナナシがキャロルとレイアと妹本人の許可を得てサクッと名付けたのだ。

 

『レイアの妹だからレイアの名前から取ってレイ?レア?う~ん…あ!発案者ってことでナナシ()からも一文字取って、『レナ』で!』

 

…その名付け方法に一部の者が非常に微妙な表情をしていたが、妹本人は名前が貰えることが嬉しいらしくすぐに了承したのと、レイアが「そこは私ではなく創造主であるマスターと我々を回収したサブマスターから取るべきでは?」と提案してナナシが真面目に考え始めたところでキャロルがナナシを殴り飛ばして強引に『レナ』を正式採用させた。

 

「ナナシの“収納”で大きな瓦礫を回収、残った細かい残骸の混じった土をレナが一纏めに集めてそれもナナシが“収納”に納める。ガングニールから生まれたあの石が“収納”出来るか不明なため“収納”した後に残っている物が無いかを確認しつつナナシが作業船の作業員達に土と海水を取り除いた残骸を託して再び瓦礫とレナが集めた土を“収納”…愚者の石捜索どころかこのまま深淵の竜宮の撤去作業が終わってしまいそうだな?」

 

「寧ろ一緒に作業している私達が邪魔になっていないかしら?あまり気が進まないけど、いっそ全て任せてしまった方があなたの妹が自由に動けると思うのだけれど…」

 

「いや、妹の…レナのことを想ってくれるなら、是非このまま共に作業をしてくれるとありがたい」

 

そう言ったレイアは、何処か優しさを感じる笑みを浮かべてレナとナナシ、そしてその周囲で自分達と同じように作業する二つの潜水艦の方を見つめた。

 

『おい!必要以上にくっつくんじゃない立花響!!』

 

『え~?狭いんだからこの方が良いって絶対!』

 

『ちょっとちょっと!ガリィちゃんだけ働かせといて後ろでマスターといちゃついてんじゃないわよ脳内お花畑女!』

 

『サブマスターとレナには負けないんだゾ!オリャアアア!!』

 

『ミ、ミカ!もうちょっと丁寧に操縦してくれませんか!?』

 

『エルフナイン様、お体を支えますので私のお膝へどうぞ。ミカ、あんまり乱暴な運転でエルフナイン様に何かあればマスターに叱られますよ?』

 

響、キャロル、ガリィが乗る潜水艦とエルフナイン、ミカ、ファラが乗る潜水艦から賑やかな会話が通信機を通して聞こえてくる。ふらふらと周りを動く二つの潜水艦にぶつからないように気を配るレナは動きにくそうではあったが、そこに煩わし気な雰囲気は無く何処か楽しんでいるような印象があった。

 

「レナが大勢と活動する機会は限られる。ゆっくりしている場合ではない事は理解しているが、そこはレナの働きに免じて大目に見てやってくれ」

 

「な、なるほど…」

 

「…妹想いなのね?」

 

「我々オートスコアラーは創造主であるマスターの命令を遂行することを存在意義としている。そしてマスターが『世界を識る』ためには、マスターの思考パターンから人格を構築した我々の想いを蔑ろにするべきではないとサブマスターからアドバイス(命令)を頂いた。故に我々はその言葉に従い行動している…『理由(命令)があれば自分で考えて動けるなんて、以前の俺よりよっぽど人間らしいな?』と、サブマスターは地味に苦笑しておられた」

 

そう言ってレイアは、遂には自らレナの体にゴンゴンぶつかり始めた二つの潜水艦をナナシが雑に蹴り飛ばして距離を離す光景を見てフッと笑みを零した。

 

「相変わらず、見境なく親交を結ぶものだな?」

 

「言語が違うどころか、言葉を話せない相手とすらああも仲良くなれるのね?」

 

身振り手振りでレナとコミュニケーションを取るナナシに、翼とマリアも思わず苦笑を浮かべて…

 

「何を言っているのだ?レナは派手にお喋り好きだぞ?今もサブマスターから貰った特製の“血晶”を使って私やサブマスターにずっとはしゃいだ声を伝えてきている」

 

「「えっ?」」

 

レイアの言葉に思わず困惑の声を出して二人はレナに注目した。その手には確かにレナの巨体に合わせた“血晶”が嵌められている。しかし自分達にはレナの“念話”が聞こえないため、無言で作業するレナにナナシが時折パントマイムを披露しているようにしか見えない。すると、二人の視線に気づいたのかナナシが翼達の乗る潜水艦に近づいてきた。

 

(どうした?こっちに注目して困惑しているみたいだけど?)

 

(いや、その…)

 

(レイアからレナがお喋りだって聞いて、私達には“念話”が聞こえないからちょっと戸惑って…)

 

(あはははは!何だそんなことか!そりゃレナは人見知りで恥ずかしがり屋だから仕方ないさ!レイア以外のオートスコアラー達やキャロルにさえまだ気軽に声を掛けられないからお前らはレナが慣れるまでもうちょっと我慢してくれ!俺もレナの深海散歩に付き合ったり“投影”でキャロルやレイア達の近況報告を続けて最近ようやくちゃんと話が出来るようになってな!キャロルに貰った大きな体は自慢だけど周りの迷惑になるからって普段は大人しく海の中にいる良い子だが、本当はお話大好きな寂しがり屋なんだばらっ!!?)

 

ドゴォオオオオオン!!!

 

突如翼達の視界からナナシが消え失せたかと思うと、少し離れた海底から土煙が舞い上がった。先程までナナシが居た場所の近くでは、腕を振り抜いたような姿勢で固まるレナの姿があった。そして…

 

(…よけいなこと、いわないで。さぶますたー)

 

…何処か幼い印象を感じる“念話”が翼達に伝わった後、レナは作業を再開して砂に混じった破片を回収し始めた。

 

「「……」」

 

「フフッ、レナは照れ隠しが派手に下手だな?」

 

「えーっと…あの男には一応サブマスターとしての権限があるはずだけれど、攻撃して大丈夫なの?」

 

「我々は許可されない限り自衛と人命が関わる緊急事態以外では人への暴力行為が禁止されているが、サブマスター・ナナシには逆にその制限が一切存在しない。曰く、『どつき合いも出来ないなんてつまらない』とのことだ」

 

「あぁ…ならこの結果は紛うことなくナナシが望んだことなのだな…」

 

翼達が土煙の中に消えたナナシに呆れた視線を向けていると…突如、潜水艦内に緊急事態を伝える警報が鳴り響いた。

 

 

 

 

 

「うわあああああああ!!?」

 

作業船の上に、作業員達の悲鳴が響き渡る。そこには無数のアルカノイズが現れて作業員達を襲おうとしていた。

 

ガキィイイイン!!

 

「全員今すぐ避難しろ!!」

 

悲鳴を聞いて駆けつけた奏が“血晶”を使って作業員達とアルカノイズの間に“障壁”を展開しながら避難誘導を行い、冷静になった作業員達が迅速に避難を開始した。

 

Zeios igalima raizen tron

 

その隙に、作業船に残っていたクリス、切歌、調の三名もシンフォギアを纏ってアルカノイズへの対処を開始していた。

 

「大丈夫デス!落ち着いて避難を…」

 

アルカノイズを減らして道を切り開いた切歌が作業員達にそう呼び掛けていると…

 

「大丈夫なんて気軽に言ってくれるじゃない?このお気楽系女子!」

 

…ファウストローブを纏ったカリオストロがアルカノイズの群れの中から飛び出してきた。

 

「誰がお気楽デスと!?」

 

「決まってるでしょ!!」

 

カリオストロが切歌に複数の光線を放つ。切歌は咄嗟に身を屈めて回避するが、光線は避難中だった作業員達の背後へと迫って…

 

ガキィイイイン!!

 

…奏の展開した“障壁”に阻まれた。

 

「奏さん!」

 

「ああん、もう!何なのよ、その壁!!」

 

「こっちは気にせず敵に集中しな!切歌!!」

 

「はいデス!!」

 

追加で放たれた光線を切歌が自分の“血晶”で防ぎながらカリオストロに肉薄する。そこにクリスも駆けつけてきた。

 

「切ちゃん!クリスさ…」

 

ガキィイイイン!!

 

「っ!?」

 

アルカノイズを減らした調も二人に合流しようとしたところで、プレラーティによる不意打ちが調の“血晶”によって防がれた。巨大けん玉が手元に戻ると、プレラーティが忌々し気に舌打ちする。

 

「チッ!ダインスレイフを抜剣出来ないシンフォギアなんてチョロいと思っていたワケダが、妙に固くて面倒なワケダ!」

 

「大人しくここでぶち壊されちゃいなさい!」

 

「っ!?連中の狙いは、シンフォギアの破壊?」

 

「愚者の石ではないのデスか!?」

 

てっきり愚者の石の存在がバレたのだと思っていたが、それは杞憂だったようだ。

 

「だったら派手に行くぜぇ!!」

 

愚者の石の存在がバレないよう、クリスがミサイルをばら撒く大技でカリオストロ達の注意を引き付けた。

 

 

 

 

 

クリス達が敵を引き付けている間に、海中で作業している翼達にも本部から情報が伝わっていた。

 

「水上施設が攻撃を受けている!?」

 

「何だと!?」

 

『すぐ浮上します!』

 

『そのまま作業を続けてください!』

 

クリス達の加勢に向かおうとする響達を、友里が引き止めた。

 

『奴らは愚者の石の事は知らないようだ。回収作業のことが知られれば、邪魔されかねない』

 

「でも…賢者の石の力が相手では…!」

 

『ユニゾンです。切歌さんと調さんの歌を重ねれば…』

 

『抜剣せずとも対抗出来る!』

 

『それに、援軍なら既に充分な戦力が向かっているぞ』

 

通信機で全体にそう伝えるキャロルの視線は、先程まで土煙に覆われていた窪んだ海底へと向けられていた。

 

 

 

 

 

“血晶”の守りを突破出来ないカリオストロは、クリス達に大技を繰り出そうとしていた。

 

「無理やりにでもひん剥いてあげちゃううううう!!!」

 

カリオストロの頭上で無数の光線が球体を形成するように渦巻きながら肥大化していく。高威力の連続攻撃は“血晶”に対して最適解と言っても良い。クリス達がカリオストロの攻撃を迎え撃とうとアームドギアを構えていると…

 

ガシッ!!

 

…不意に、カリオストロの足が何者かに捕まれた。

 

「へっ?」

 

思わず振り返るカリオストロ。しかしカリオストロが立っていたのは作業船の端に近く、背後には海が広がるばかりだ。自然とカリオストロは視線を足元の海面へと下げていき…

 

 

 

赤黒く染まった海面から、血塗れの腕を伸ばして自分の足を掴む長い髪の怪異を目撃した。

 

 

 

「ぎゃあああああああああああ出たぁあああああああああああ!!?!?!!?」

 

ズガガガガガガガガガガッ!!

 

ガキキキキキキキキィンッ!!

 

反射的に準備していた大技を足元の怪異に叩き込んだカリオストロだったが、その全てが怪異の周囲に展開された半透明の壁に阻まれて無駄に終わってしまった。

 

半狂乱のカリオストロを見た怪異…レナの一撃で傷を負って頭に海藻が絡まったナナシは、何故こうもカリオストロが取り乱しているのか分からず少し考えて…すぐに客観的に見た自分達の状況に思い当たると、ニヤリと笑みを浮かべてカリオストロに“念話”を繋げた。

 

(寒いよぉ…苦しいよぉ…お姉さん、一緒に来て?暗く、冷たい、海の底…)

 

「いぃぃぃやぁぁぁぁぁ!!?成仏してぇえええええええ!!?!?ちょっ!?力強っ!!?た、助けて!助けてプレラーティ!!助けてサンジェルマン!!プレラーティ!!!サンジェ…」

 

ドボンッ!!

 

必死に仲間へ助けを求めるカリオストロだったが、抵抗も出来ず一瞬で海の中に引き摺りこまれてしまった。

 

「カリオストロ!!?」

 

その光景に驚くプレラーティが慌ててカリオストロの元に駆けつけようとしたが…

 

ドォオオオオオン

 

「くっ!!?」

 

プレラーティのすぐ傍にクリスが放ったミサイルが着弾した。プレラーティが怯んでいる隙に、煙の中からクリスのミサイルに鎌を引っかけて急接近した切歌が調に手を伸ばしてニヤリと笑みを浮かべた。

 

「さーて!いっちょやらかすデスよ!」

 

「切ちゃん!」

 

調が切歌の手を取ると、二人は苛立たし気に顔を歪めて立ち上がるプレラーティへと駆け出した。

 

 

 

 

 

プレラーティが切歌達を相手にする一方、海の中に引き摺りこまれたカリオストロは錬金術で自身の周囲に球体状のバリアを展開しながら水中を高速で移動していた。カリオストロが水中で活動出来るならば、愚者の石を捜索する翼達の存在がバレてしまうことが考えられるが…その心配はなさそうだった。

 

(クスクスクス…お姉さ~ん、こっちで一緒に踊ろうよ~…)

 

「あーもう!気持ち悪いわね!!」

 

真っ赤に染まる視界の中で、カリオストロが時折見え隠れする人影に光線を放つ。人影が光線を避けて動いた軌跡にはまるでタコの墨のように赤いモヤが残ってカリオストロの周囲を包んでいた。

 

カリオストロが攻撃の手を止めると、人影もピタリと動きを止めてその姿を露わにする。そこには海藻で顔を隠し、カリオストロを引き摺りこむと同時に自らの腹にナイフを突き刺し、そのまま縦に体を切り裂いて心臓にナイフを突き立てたナナシが、傷口から血液と『中身』を零しながら踊るようにフラフラと海中を漂っていた…完全にホラーの生き物である。それもR18G。

 

カリオストロ達の周囲は既にナナシの血液で完全に覆われて碌に周囲の状況が見えない。これならカリオストロに翼達の姿は見えないだろう。

 

「いい加減お化けのフリはやめなさいよナンパ男!あーたみたいなジャパニーズホラーがそうポンポン現れて堪るもんですか!!」

 

既にカリオストロは目の前の怪異の正体に気付いているが、ナナシはそれでも気にせず怪異として振舞い続けた。

 

(ナンパ…ごめんなさい、お姉さん…僕、抱きしめたら暖かそうなお姉さんをどうしてもお家に招待したくて…ねぇ?皆もそう思うよね?)

 

「へ?」

 

ピタ…

 

ピタピタピタ…

 

ピタピタピタピタピタピタピタピタピタ…

 

困惑するカリオストロの視界が、バリアの表面に次々と現れた大小様々な血の手形に埋め尽くされた。

 

「ぎゃああああああああああああ!!?!?」

 

(クスクスクス…ほら?皆もお姉さんを抱きしめたいって…だからお姉さん、その壁消してよ?冷たくなるまで皆で抱きしめてあげるから…)

 

「ひぃいいいいいいいいいいいい!!?!?」

 

…ナナシは海中に漂う血液を操って手の形を作っただけなのだが効果覿面である。バルベルデから戻ってから視聴したパニック・ホラー映画の知識が活きている。ナナシは正体を察せられようともお構いなしにカリオストロに恐怖を刻み、そして畳みかける。

 

(クスクスクス…ほら、後ろを見て?他にもお姉さんと仲良くしたいお友達が…)

 

「そ、そんな古典的な手に引っかかるもんですか!!どうせ振り返ったところで攻撃してくるつもり…」

 

ヌゥッ…

 

気丈に振舞うカリオストロだったが、突然自分の周囲が暗くなったことでピシリと言葉と動きを止めてしまった。

 

(い、いやいやいや!無い無い無い!!きっとこれはアレよ!あの男が撒き散らした血の匂いでサメか何かが寄ってきただけよ!!それぐらいなら何の問題もないわ!!…で、でも、流石に確認くらいはした方が良いかしらね~?ほ、ほら?戦ってる最中に体当たりでもされたら危ないかもしれないじゃない?か、影の大きさ的にとっても大きそうだしね!?それこそあーしを丸飲み出来そうな…あ、ああ!なるほど!!きっとクジラさんが通りかかったのね!!?そうに決まって…)

 

混乱する頭でそう自分を落ち着かせながら、カリオストロが目の前の怪異を警戒しつつゆっくりと振り返ると…

 

カッ!!

 

姉とお揃いの改造によってその眼光から光を照射する巨大な人影が…

 

「ぎゃあああああああああああああああああああ!!?!?!!?」

 

チュンチュンチュンチュンッ!!

 

ガキンガキンガキンガキンッ!!

 

一心不乱に光線を放つカリオストロだったが、人影…レナが手に付けた巨大“血晶”によって全て防がれる。そうしている間に、レナはその巨大な腕を掬い上げるように大きく振るって…

 

ズガァアアアアンッ!!

 

「ひゃああああああぁぁぁぁぁぁ……!!?」

 

…真下からバリアをぶっ叩かれて、カリオストロは勢い良く海面へと吹き飛ばされていった。

 

(ナイスだったぜ、レナ!見たかよあの顔!あっはははは!!)

 

(……)

 

(あれ…?レナ、どうかしたか?)

 

カリオストロを嘲笑っていたナナシだったが、レナが無言で肩を落としている様子に疑問を覚えて声をかけた。

 

(…わたしって、そんなにこわいかな?さぶますたー…)

 

(わー違う違う!?俺がそういう空気を作っただけだから!!変なお願いして悪かった!今度お前用の可愛い衣装作ってやるから許して~!!)

 

ナナシはカリオストロへの追撃も忘れて、すっかり落ち込んでしまったレナを全力で慰めるのだった。

 

 

 

 

 

作業船の上では、切歌と調の二人がプレラーティを相手に戦闘を進めていた。クリスは奏を護衛しつついつでもフォローに入れるよう切歌達の戦況を見守っている。

 

災輪・TぃN渦ぁBェル

 

切歌がコマのように鎌を高速で振り回してプレラーティを攻撃する。プレラーティが錬金術の防壁で切歌の攻撃を防いでいると、調が二つのヨーヨー型丸鋸を投げて空中で合体、一つ巨大な丸鋸をエネルギーの糸で操ってプレラーティへと飛来させた。プレラーティが巨大けん玉を振るって調の攻撃を逸らすが、その隙に切歌が鎌の刃を飛ばして攻撃する。次々と繰り出され、ユニゾンによって強力になっていく二人の攻撃にプレラーティは防御と回避が追い付かなくなっていた。バランスを崩して床に倒れ込むプレラーティだったが、圧倒的に不利な状況でもその瞳に宿る強い意志は消えることなく立ち上がる。

 

「うだつの上がらない詐欺師紛いだった私達に、完全な肉体と真の叡智、そして理想を授けてくれたのはサンジェルマンなワケダ!だから!!彼女のために負けられないワケダ!!!」

 

ドバンッ!!

 

そのタイミングでカリオストロが海面を突き破って現れ、船上にその体を転がらせた。

 

「ゲホッ、ゲホッ…プ、プレラーティ!?」

 

カリオストロはプレラーティが苦戦している光景を見て驚愕した。二対一とは言え相手はシンフォギア、それも適合係数が低い切歌と調の二人ならラピスのファウストローブで圧倒出来るはずだとカリオストロは考えていたからだ。

 

「楽しい事気持ちいい事だけでは!理想には辿り着けないワケダァ!」

 

叫びながら巨大けん玉を構えるプレラーティに、切歌と調は勝負を決めにいく。二人は空中へと跳躍すると、お互いのアームドギアを合体させた。

 

禁合β式Zあ破刃惨無uうNN

 

切歌の鎌の先端に調の丸鋸を合わせて形成された巨大な車輪状の刃を回転させながら、二人は鎌の柄を掴んでブースターを全開にしてプレラーティへと突っ込む。プレラーティは二人の攻撃に巨大けん玉で真っ向から迎え撃った。

 

「理想のために!!」

 

両者の攻撃は僅かな間拮抗したが、切歌と調の攻撃は巨大けん玉を輪切りにしてそのままプレラーティを吹き飛ばした。

 

「うわああああぁぁ!!」

 

「っ!?ここまでにしてあげるわ!!」

 

カリオストロは捨て台詞を残して海の中に叩き込まれたプレラーティの元へ跳躍する。水中で気を失ったプレラーティを抱えると、テレポートジェムを握り潰して拠点への転移を始めた。

 

(また失敗…それも、あの二人にプレラーティがやられるなんて…!)

 

転移が終わるまでの束の間、カリオストロが悔しそうに顔を歪めながら周囲を警戒して…

 

(待ぁぁぁぁぁぁぁてぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!)

 

…深海から迫ってくる血液の衣を纏った巨人(プレゼントを約束した衣装の仮デザイン)と、その頭の上に鎮座する怪異を目撃した。

 

(ひぃいいいいいいいいいいいい!!?!?)

 

最後の最後までその心に恐怖を刻み込まれながら、カリオストロはプレラーティと共に拠点へと姿を消した。

 

 

 

 

 

戦闘が終わり、夕日に照らされる中で切歌と調は手を取り合っていた。

 

「重ね合ったこの手は…」

 

「絶対に離さないデス!」

 

「そういう事は家でやれ…」

 

「何だ、羨ましいのか?ホレ」

 

二人の様子に愚痴るクリスの手を、奏が笑いながら握った。

 

「なっ!?おい!!?」

 

「守ってくれてありがとな、クリス!」

 

「お、おう…」

 

ニッコリと笑ってお礼を言う奏に、クリスは夕日の下でも分かる程顔を赤く染めながらそっぽを向きつつそう答えた。

 

ザバァアアアン!!

 

「おーい、そっちは全員無事かー?」

 

すると四人の近くの海面からナナシを乗せたレナが勢いよく飛び出してきた。

 

「どわあああああああ!?」

 

それに驚いたクリスが悲鳴を上げてアームドギアを構えたため、それを見たレナがピシリと固まった後、首から下を再び海の下に沈めて暗い雰囲気を漂わせた。

 

(やっぱりわたし、こわいんだ…)

 

「わあああ!違うって!急に飛び出したからビックリしただけだって!!クリスは特にちっちゃくて気が弱いだけだから気にしなくて大丈夫だ!」

 

「誰がチビでビビリだおい!?」

 

「うっさい!何なら証明するために俺特製のホラーハウスでも作ってそこに放り込んでやろうか!?」

 

「それ多分クリスじゃなくても絶叫するから証明にならないぞー」

 

結局その日は作業を中断して皆でレナを宥めることになった。

 

 

 

 

 

日が沈み、夜空に星が輝く頃。

パヴァリア光明の拠点ではティキがプールの水面に浮かびながら、その瞳から照射する光で夜空に広がるソレとは異なる天体を投影させていた。その傍らでは、寛ぐアダムと難しい顔のサンジェルマンが話をしていた。

 

「順調に行っているようだね?祭壇の設置は」

 

「はい。ですが、中枢制御の大祭壇設置に必要な生命エネルギーが不足しています」

 

これまでサンジェルマン達で集めた数万もの命から抽出したエネルギーを用いても、神の力を降臨させるには不足していた。

 

「じゃあ生贄を使えばいいんじゃないかな?」

 

「え…?」

 

軽い口調で告げられた言葉の意味が分からず、サンジェルマンは疑問を口にする。そんなサンジェルマンに、アダムは笑みを浮かべたまま言葉を続けた。

 

「あの二人のどちらかを…」

 

「っ!!?」

 

「充分に足りるはずさ、祭壇設置の不足分だってねぇ…完全な肉体より錬成される生命エネルギーならば…」

 

「局長…!あなたは、どこまで人でなしなのか!?」

 

「選択してもらおうか?君の『正義』を…」

 

何の躊躇いも感じさせず、アダムはサンジェルマンに選択を迫る。どちらを生かして、どちらを殺すのか…よりによってサンジェルマン自身に、その答えを決めさせようと言うのだ。

 

 

 

『こいつが今の在り方のまま歩みを進めるつもりなら…いつかきっと、こいつは目的のために仲間を犠牲にする』

 

 

 

かつて“紛い物”がキャロルに語り掛け、サンジェルマンに聞かせていた“妄想”…その『いつか』は、既に足音が聞こえるほどサンジェルマンの近くに迫っていた。

 




色々考えながら書いてたら、レイアの妹に個性が生えてきましたw

この作品でのレイアの妹プロフィール
命名:レナ
性格:妹ということでレイア達より精神的に幼いイメージ。レイアとは逆でシャイで大人しい。”血晶”によって会話が可能となったが恥ずかしくて姉のレイア以外には積極的に声を掛けられない。主人公は頻繁に訪ねてキャロルやレイア達の話をすることで好感度を上げたため普通に話せるようになった。
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