戦姫絶唱シンフォギア コドクの神が求めるモノ   作:@sora@

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ここでまさかのオリジナルエピソードです。


第154話

パヴァリア光明結社の幹部二名を打倒し、残るはサンジェルマンと統制局長アダム・ヴァイスハウプトのみ。それでもたった二名と侮ることの出来ない戦力を持つ上に、神の力を顕現されては有利な状況をひっくり返される恐れもある。故にS.O.N.G.では調神社で得た情報から対策を講じるだけに留まらず、神の力に対抗する手段…『神殺し』の伝承について調査を進めることが決定した。

 

何やらOTONA達とナナシは他にも動いているようだが、響と切歌以外の装者がギアの反動汚染で戦場に出られない状況と言うのもあり、装者のほぼ全員が緊張感を持って今後の展開について真剣に思案している…はずだったのだが……

 

 

 

 

 

夕暮れ時、とある喫茶店の中で向き合って座る男女の姿があった。

 

一人は切歌。普段の明るい表情が鳴りを潜めて、少し暗さを感じる真剣な表情で目の前の男を真っ直ぐに見ている。

一人はナナシ。いつも通りのニコニコした余裕を感じさせる笑顔で、真剣な表情の切歌と対面していた。

 

しかしながら、そんな笑みからは考えられない程に、ナナシは現状に困惑していた。それは切歌の背後の席から、赤やら青やら桃色やら、カラフルで特徴的な髪形が見え隠れして目まぐるしく切り替わる感情が伝わってくるから…ではなく。

 

何故か…本当に何故か、ナナシと切歌に一切心当たりが無い、切歌はそれに気づいてすらいないにも関わらず…喫茶店の人間ほぼ全員が、“認識阻害”を施しているにも関わらずナナシに好奇の目を向けていたからだ。

 

 

 

 

 

まず、ナナシ達にも分かる状況から説明していこう。

S.O.N.G.本部にてブリーフィングを行い、装者達だけでも色々と憶測などを語り合った後、切歌がナナシに一人近づいて、相談があるからこの後一緒に出掛けて欲しいと話を持ち掛けてきたのだ。

 

当然ナナシはその話を了承した。しかし切歌自身はこっそりナナシに近づいたつもりだったが、実際にはそれなりに挙動不審であったために調やマリアにはその様子がバレており、二人からナナシと何を話していたのか聞かれてしまった。

 

慌てふためく切歌に、ナナシが“念話”で次のように助け舟を出した。

 

(上手に隠し事をするコツは、下手に嘘をつかない事だ。ちょっと俺と出掛けてくるって素直に伝えれば良いと思うぞ?)

 

そんなアドバイスをもらった切歌は落ち着きを取り戻して、二人に対して笑顔で答えた。

 

「ちょっと、ナナシさんとデートに行ってくるデス!」

 

 

 

 

 

そんな訳で、初手切歌の自爆によってマリア達から話を聞きつけた装者全員プラス奏、未来が集まってきたのは別に不思議では無かったのだが…喫茶店に着いて注文を終えた数分後から、何故か店員と客がナナシ達とその隣の席に陣取る装者達に注目を集め始めたのだ。

 

奏、翼、マリアのアイドル三人は“血晶”で対策済みだ。向けられる感情から、こちらに注目しているのは他国のスパイではなく一般市民だ。では何故こうも大勢の好奇心を集めているのか…その原因は、この喫茶店の店員達にあった。

 

「やっぱり…!あの可愛い子は、以前声をかけてきた子!!」

 

「つまり、あの子が見ているあの席の男が…!!」

 

その店員達とは、以前クリスが情報収集のために声をかけた女性二人だった。(GX編 第114話登場)

 

女性の一人はナナシ達を席に案内して、もう一人はその直後に入店してきた美少女の集団が凄まじい剣幕でナナシ達の傍の席を指定してきたことに好奇心故に心の中でテンションを上げていたのだが…その集団の中に見覚えのある美少女、雪音クリスの存在を見つけてしまったのだ。

 

思わず声をかけそうになるのをグッと堪えて、女性は内なる心の高ぶりを抑え込みながら要望通りクリス達をナナシ達の隣の席に案内して、すぐさま友人に情報を共有。そして二人共仕事を放り出して状況を観察していた。当然そんな者達がいれば周りは不審に思って視線を追う訳で…美少女の集団が、暗い顔をした美少女とニコニコ笑顔の男が対面している状況を監視しているという光景に、店内の全員が修羅場を感じて興味を持ってしまったのだ。

 

ナナシにサプライズを成功させるという偉業を成した切歌とクリスだが、本人達には当然そのような自覚は無く、切歌はどう話を切り出そうか悩んでいる様子だし、クリス達はナナシ達に意識を向けつつひたすら無言…しかしその脳内では、“念話”を使って賑やかに話し合っていた。

 

(切歌ったら、私に内緒であの男とコソコソと…!相談なら私達にすれば良い事でしょう!?)

 

(落ち着けマリア。家族だからこそ言いにくい事もあるだろう?)

 

(先生が頼りになるのは分かるけど、私にも内緒だなんて…)

 

(まあまあ、そんなこともあるって。あたしだって翼に内緒でナナシに相談する事はよくあるからな。大体翼が固くなっているからどう柔らかくするかって計画を立てる場合だけど…)

 

(何してるんだ奏!!?)

 

(どうせ、そこのバカみたいに宿題溜め込んだから手伝ってくれとかそんなとこだろ?ったく、こんなことであたしらを集めやがって…)

 

(そんなこと言って、クリスちゃんも切歌ちゃんが心配だったくせに~)

 

(ばっ!?そんなんじゃねえよ!!)

 

(あんまり感情を乱すと、ナナシさんにバレちゃう気が…)

 

(そんなものは想定内よ!どうせこの会話だって盗み聞きしているんでしょうナナシ!!?)

 

…どうやら今回は、ナナシに尾行を隠すつもりは無いらしい。しかしナナシは知らない体を装った方が面白そうだとマリアの“念話”を聞かなかったことにしつつ、いっそこの状況を楽しんでしまえと切り替えて悩む切歌に話を切り出すことにした。

 

「それで?話は纏まったか?俺に相談したい事って言うのは、一体どんな事なんだ?」

 

「えっと…デスね…」

 

ナナシの問いに、切歌は少しの間躊躇った後…意を決したように、ナナシに悩みを打ち明け始めた。

 

「アタシって…やっぱりお気楽なんデスかね?」

 

(なっ!?あ、あたしのせいか!!?)

 

先程クリスが現状で響の誕生日会について語ろうとする切歌に放った言葉を思い出し、自分が切歌を傷つけたと知って動揺してしまった。そんな事は露知らず、切歌が言葉を続ける。

 

「調も、クリス先輩も、いっぱい悩んで、苦しんで…それでも諦めずに頑張って、何だか前よりもずっと強くなったように見えるデス…分かってるデス。今は色々と大変で、楽しい事を考えてる暇なんて無いって…それでも、アタシは響さんの…誰かの記念日を、大切にして欲しくて…皆が頑張ってるのに、アタシだけがお気楽なままで…調達みたいに、一人で頑張ろうとしたデスけど…どうすれば良いか分からなくて…結局、一人で抱えることも出来なくなって…ナナシさんも……大変なのに………」

 

切歌は申し訳無くて仕方がないと言った風に、瞳に涙を溜めながら自分のままならない想いを精一杯言葉にしていく。そんな切歌の言葉にクリスが頭を抱えて蹲り、全員が切歌とクリスを心配していると…

 

ナデナデ…

 

…ナナシが身を乗り出して、切歌の頭を優しく撫で始めた。

 

「デス!?な、何デスか!!?」

 

「切歌は良い子だな〜…俺なんかと話をしてくれて…」

 

ナナシは優しい笑みの中に、嬉しさと寂しさを合わせたような雰囲気を醸し出しながらシミジミとそう呟いた。

 

「いや〜、何となく分かってはいたんだけどな?俺のやり方を続けていたら、そのうち避けられるようになるってことは。寧ろ長く付き合ってくれたとさえ思うけど…覚悟していても実際に「話しかけてくんな!」って言われるとさ…一番長い間心配していたSAKIMORIに至っては、今や自分の言葉で立派に後輩達を導けるようになっててさ…嬉しいんだよ?間違いなく嬉しいんだけど…俺が無理矢理悩みを暴き出さないでも、今回みたいに成長したあいつらが自然と周りの奴らの話を聞けるようになったら、こうやって俺がお前らの深い部分に関わらせてもらう機会は無くなるんだろうな~って…まあ、元々俺が楽しく茶化すための建前みたいなものだし、大差無いか!あはははは!」

 

…そう言ってナナシは心底楽しそうに笑っていたが、その笑顔は周囲に強い哀愁と、「あれ?思ったより年上?確実に二、三人くらい子供いるよね?この状況ひょっとして事案?」と言う疑念を抱かせた。

 

「そんな訳だから、俺は切歌が相談してくれてめっちゃ嬉しいから気にしなくて良いぞ?寧ろどんどん話に来てくれ…いつか、俺の事を避けたくなるまでで、構わないからさ…」

 

「ならないデスよ!?皆ナナシさんの事頼りにしているから安心してほしいデス!!お悩み相談じゃ無くてもいっぱいお話しましょう!?」

 

「ありがとう…でも、無理はしなくて良いからな?必要な時だけ都合良く頼ってくれれば、充分だからな…」

 

ナナシの言葉に、店内にいた数名の父親が目元を押さえたり、将来の不安で青い顔をして胸を押さえていた。

 

(おい!?勝手に話を盛るなよ!!?別に話しかけるなとまでは言ってないだろ!?そ、その…キツく言い過ぎたのは悪かったけどさ…)

 

(せ、先生には普段からお世話になってばかりで、それに甘え続けるのは、良くないと思っただけで…)

 

(お、おい、まるでもう自分が必要ないみたいな言い方はするな!?私にはまだお前が…い、いや、決してお前に何もかも押し付けようと言う訳ではなくてな!!?しかし私にはまだまだ至らぬ点が多々ある故、それを厳しく指摘してくれる存在は非常にありがたくてだな…)

 

クリスと調による必死の弁解と翼の動揺が怒涛の勢いで伝えられるが、ナナシは心の中でほくそ笑みながらその全てをスルーして切歌との話を続けた。

 

「さて、話を戻そう。お前は一人で頑張ろうとして上手くいかなかったと言っているが…そりゃそうだ。切歌、お前はそもそも一人でいることに向いていない」

 

「えっ!?」

 

「お前は以前言っていたな?世界がどうなろうと、家族がバラバラになる方が嫌だと…お前にとって最も大切な想いは家族と、大切な人達と共に在ること。そんなお前がよく分からないままに一人で頑張ろうとしたところで、そりゃ苦しくて耐えられないさ」

 

「うっ…」

 

「お前の悩みの根幹も本質は同じだ…切歌、お前怖いんだろう?周りが前に進む中で、自分だけが取り残されることが」

 

「あっ…」

 

ナナシの言葉に、切歌はここしばらく感じていた不安の正体に気づけた気がした。

 

「そっか…アタシ、皆に置いていかれるのが怖かったんデス…皆が誰かのために頑張ってるのに…アタシは結局、自分の事しか考えてなくて…こんなアタシじゃ、皆に置いていかれても、当然デス…」

 

すっかり塞ぎ込んでしまった切歌に、調達が席を立って声をかけようか悩んでいると、それより先にナナシが切歌に声をかけた。

 

「ん~?…切歌、一つ質問良いか?」

 

「何デスか…」

 

それの何が悪いんだ(・・・・・・・・・)?」

 

「えっ…?」

 

ナナシの質問の意味が分からず、切歌は戸惑いの声を出してしまった。

 

「だから、切歌は自分のために動いたり考えたりする自分が良くない、悪いと思っているんだよな?何でそう思うんだ?」

 

「だ、だって、調達は、アタシの周りは皆、誰かのために動いていて…」

 

「うんうん、それで?」

 

「それでって…」

 

「えっと、切歌は誰かのために動けない人間は悪者だと思っているのか?」

 

「違いますよ!?」

 

「じゃあ、自分のために動く人間は悪者だと思っているのか?」

 

「そ、それは…」

 

「つまり、切歌にとって俺は悪者なんだな?」

 

「どうしてそうなるデスか!!?」

 

「だって常日頃から言っているだろう?俺は俺のために動いている、他人は二の次だって。お前の理屈だと、自分のためなら他人はどうでも良いと言い続けている俺は極悪人って事に…あっ!そっか!そう言うことか!!」

 

「へっ?」

 

「つまり切歌は、自分の事を俺と似ていると思ったから嫌だったんだな!そりゃ嫌だと思ってもしょうがないな!!」

 

「全っ然違うデス!?アタシがナナシさんみたいだったらこんなに悩んでないデスよ!!」

 

「いやそこは悩めよ。『悪夢』とか『病魔』とか『人でナナシ』なんて呼ばれている俺と同列とか普通に嫌すぎるだろ?」

 

ナナシの言葉に周囲は「ひっでぇ渾名だな、何故そんな男の周りに沢山女の子が?やっぱり事案?」と思ってしまった。

 

「分からないなぁ…俺が悪者じゃないって思うのが何より謎だけど、切歌は『自分のために動く人間』を『悪』だとは言い切れないんだよな?」

 

「は、はい…他の人に迷惑をかけないなら、別に良いと思うデス…」

 

「それじゃアレか?あいつらが『私達が苦労しているのに、あのお気楽者はヘラヘラしやがって!』みたいな陰口言っているのを聞いちゃったのか?」

 

「そ、そんな事皆は言わないデスよ!!」

 

「だろうな、自分で言ってて全然想像出来ねえ。お前に内緒の話なんて、お前の母親と姉妹達プラス俺による『切歌のここが可愛い!自慢だ!』って議論くらいだろ。あの時は中々に白熱したよ」

 

「何をやってるデスかぁあああ!!?!?」

 

((何でバラしちゃうのぉおおお!!?!?))

 

「切歌、人のこと言えないだろう?お前もよく本人がいない時に家族自慢してるじゃないか?それなりの量の話題が貯まったから映像メディアに編集してみました!今度お前ら家族が全員集まった時に幸せそうに語る自分達の姿を見てもらおうぜ!!」

 

「((やめてえええええええ!!?!?))」

 

(仲良しだなお前ら…)

 

顔を真っ赤にして机に蹲る三人に周囲は生暖かい視線を向けながら、心底楽しそうに邪悪な笑みを浮かべるナナシに「本当に人でなしだ」と思ってしまった。

 

しかし、そんな風に切歌をからかって笑っていたナナシは、唐突に笑みを引っ込めてとても真剣な表情で話をし始めた。

 

「切歌…つまりお前は、明確な理由は分からないが自分がお気楽なままなのは悪い事だ、早く直して成長しなければ…そう考えているんだな?」

 

「え?その……はい」

 

「やっぱりか…そうでない事を願って探りを入れていたんだがな…切歌、お前の心を蝕むその感情の正体に、一つ心当たりがある。それを聞く覚悟はあるか?」

 

「っ!?……はい、デス…」

 

いつになく真剣な様子のナナシに、切歌は気圧されながらもハッキリと答える。只ならぬ緊張感に店内の全員がゴクリと喉を鳴らしてナナシの答えに意識を集中していると、ナナシはついに切歌の感情の正体について言及するため口を開いた。

 

 

 

「お前の胸の内にあるその感情、それは……」

 

 

 




本当は一話で終わらせるつもりでした…ハイ、また文字数が多くなり過ぎた&書き切れなかったから分割で時間稼ぎです。すみません。
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