戦姫絶唱シンフォギア コドクの神が求めるモノ   作:@sora@

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第156話

夜…パヴァリア光明結社の錬金術師が儀式を行うであろう氷川神社群、鏡写しのオリオン座の中央に位置する神社でS.O.N.G.所属のエージェント達が不審な人物が現れないか目を光らせていた…全員が何らかのお面を被って。

 

「…なあ?いつまで俺達はこんな状態で任務に出続けるんだ?これじゃどっちが不審者か分からないだろ?」

 

電光刑事バンのお面を被ったエージェントの一人が、隣に立っている快傑☆うたずきんのお面を被った同僚に思わずそんな愚痴を零してしまった。

 

「ナナシが飽きるまでだろ?全く、あいつはこんな事ばかり力入れて認可をもぎ取るんだから…どうせなら、普段俺達に隠している事を表立って協力出来るようにする努力をして欲しいな…」

 

「そういえば…アレってマジなのか?緒川さんと諜報部が接触したって言う…」

 

「事の真偽は明日にでもナナシに司令達が確認するつもりらしいけど…何をやっているんだか…」

 

周囲への警戒を怠らないまま、何やら二人が世間話をしてお面の下に苦笑を浮かべていると…

 

ガキンッ!

 

…突如飛来してきた青い光が、エージェントの身に着けていた“血晶”によって弾かれた。

 

「っ!?敵襲ぅううう!!」

 

「本部!即時撤退指示を!!」

 

異変を感じ取った直後、エージェント達は全体に情報を共有しながら駆け出していた。元より自分達が錬金術師相手にこの場を死守出来るなど考えていない。エージェント達の役割は異変の察知と一般人が入り込んで巻き込まれないようにするための監視だ。“血晶”の自動展開が確認されたら即撤退と事前に取り決めがされている。

 

エージェント達が蜘蛛の子を散らすように散開する中、最初に奇襲を受けたエージェント二人は錬金術師…サンジェルマンの目に留まってしまったらしく無数の光弾が二人に襲い掛かった。

 

「七万三千七百九十一…七万三千七百九十二…」

 

サンジェルマンの冷たい眼光は、逃げる二人を捉えて離さない。決して逃がさないという覚悟の現れなのか、無情にも既に奪う命としてカウントを刻んでいる。

 

一人の“血晶”が力を失い、このままでは遅からずもう一人の“血晶”も尽きて二人の命運はここまでと思われたが…

 

「くっ!お前だけでも逃げ延びろ!!もうすぐ父親になるんだろう!?子供の顔も見ないままで死ぬんじゃない!!」

 

「馬鹿野郎!お前だって新婚だろうが!!これからだろうが!!!下らない事言ってないで死ぬ気で走れぇええええ!!!!」

 

「っ!?」

 

…その叫びを聞いたサンジェルマンの動きが止まってしまい、その間に二人の姿は木々の間に消えてしまった。サンジェルマンは無言で翳していた手を降ろしてきつく握り締めて身を震わせた。

 

そんなサンジェルマンの様子を気にした素振りも無く、ティキが鳥居に背を凭れたまま不機嫌そうに声をかけた。

 

「有象無象が芋洗いってことは、こっちの計画がモロバレってことじゃない!どーすんのよ、サンジェルマン!!」

 

「どうもこうもない」

 

サンジェルマンが羽織っていたコートを取り払い、一糸纏わぬ姿で社の前に立つ。

 

「今日までに収集した生命エネルギーで、中枢制御の大祭壇を設置する」

 

サンジェルマンが何やら呪文を唱えると、その足元から光が溢れて出す。背中に刻まれたオリオン座を形作る文様が呼応して、氷川神社群の各神社に溢れた光が伸びていった。

 

「それでも門の開闢に足りないエネルギーは、第七光の達人たる私の命を燃やして……うっ!?」

 

自らの命を捧げて儀式を進めるサンジェルマンの口から苦悶の声が漏れる。溢れ出た光は周囲の夜闇を打ち消し、遠目にも何らかの異変が起こっていることがハッキリと見て取れた。

 

 

 

 

 

当然、そのような目立つ儀式がS.O.N.G.に捕捉されない訳もなく、エージェント達からの通報もあって装者達は本部へと集結すべく動き出していた。寮のベッドで眠っていた響にも連絡が入り、ギアを使える響と切歌は合流して直接現場に向かうよう指示が出された。

 

「はい…はい…はい、分かりました」

 

「…響?」

 

本部との通信を終えたところで、隣で眠っていた未来が響の声に反応して起きてしまった。

 

「行かなきゃ!」

 

「あ、待って!」

 

離れる響に、目覚めたばかりの未来は咄嗟に手を伸ばして引き留めてしまった。

 

「あ…ごめん…」

 

ようやく意識がハッキリした未来は、伸ばした手を引っ込めようとして…そんな未来の手を響が掴み、ニッコリと微笑みかけた。

 

「大丈夫、誕生日だって近いから。すぐに帰ってくる」

 

「うん…」

 

響の笑顔と言葉に、未来が安堵の笑みを浮かべたのを見届けて、響は寮を出て現場へと駆け出した。

 

 

 

 

 

「あ、ああぁ…ああああああ!!」

 

自らの命を削って儀式を行うサンジェルマンが苦しむ様子を、ティキはとても嬉しそうな笑みを浮かべて眺めていた。すると、ベルの音と共に固定電話が境内に出現したため、ティキはすぐさまサンジェルマンから視線を外して受話器を取った。

 

「アダム!」

 

『順調のようだね?全ては』

 

「ホント、サンジェルマンのお陰だよね!」

 

そう言ってティキは受話器を持ったまま頭上の星空を眺め始めた。

 

「天地のオリオン座が、儀式に定められたアスペクトで向かい合う時、ホロスコープに、門が描かれる。その刻と位置を割り出すのが、あたしの役目!そして…」

 

ティキの無機質な瞳がその瞬間を捕えようと待ち構える間、サンジェルマンは苦しみの中で走馬灯のように自分の大切な者達のことを思い出していた。

 

(カリオストロ…プレラーティ…二人の犠牲は無駄にしない……そしてお母さん…全ての支配に革命するために、私は…私は…!!)

 

そして儀式は進み、レイラインから流れてきたエネルギーが鏡写しのオリオン座へと集って…遂に、その時が訪れる。

 

「開いた!神出る門!!」

 

「レイラインより抽出された星の命に、従順にして盲目なる、恋乙女の概念を付与させる…!」

 

サンジェルマンが手を翳すと、ティキの体が浮かび上がって光の柱の中へと進んでいく。そしてティキの体を依り代に、門より神の力が流れ込んでいった。

 

「見るデスよ!凄い事になってるデス!」

 

ヘリによって現場上空に近づいた切歌と響は、その光景に圧倒された。

 

「あれが…!」

 

「鏡写しの、オリオン座デス!」

 

上空から地上を見下ろした二人には、儀式によって輝く神社が光のラインで繋がり、鏡写しのオリオン座を形作っている様子がハッキリと見て取れた。

 

 

 

 

 

S.O.N.G.本部のモニターで、弦十郎と装者達が険しい表情で儀式の様子を眺めていると…モニターの端に八紘の顔が映し出された。

 

「お父様!」

 

『こちらの準備は出来ている。いつでも行けるぞ』

 

八紘の言葉に弦十郎が頷くと、藤尭達から報告が入った。

 

「レイラインを通じて、観測地点にエネルギーが収束中!」

 

「このままでは、門を超えて神の力が顕現します!」

 

『合わせろ、弦!』

 

「おうとも兄貴ぃ!!」

 

二人が鍵を取り出して、それぞれの目の前にある鍵穴に差し込む。

 

『決議!』

 

『「執行!!」』

 

二人が同時に鍵を回して、要石起動の承認を下す。各地で機能を発揮した要石によって、氷川神社群周辺のレイラインが遮断されてエネルギーの収束を妨害することに成功した。

 

「各地のレイポイント上に配置された要石の一斉軌道を確認!」

 

「レイライン遮断作戦、成功です!」

 

『手の内を見せ過ぎたな、錬金術師。お役所仕事も馬鹿には出来まい!』

 

レイラインが遮断され、急速に輝きを失っていくオリオン座の様子に、八紘はニヤリと笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

「あっ…あっ…無い…無い……」

 

レイラインからのエネルギー供給を失い、ティキの体が重力に従ってガシャンと地面に落下した。その傍に、儀式を邪魔されて同じように地面に倒れ伏すサンジェルマンの姿もあった。

 

「ティキ!…ッ!?」

 

サンジェルマンが体を起こそうとしていると、上空からヘリが接近して…ヘリの中から、響と切歌が飛び出してきた。

 

Balwisyall Nescell gungnir tron

 

二人は空中で聖詠を奏でてギアを身に纏い、サンジェルマン達の前に降り立つ。すると…

 

(よう!夜分にお勤めご苦労さん!遅かったな!)

 

「「「!!?」」」

 

…神社の鳥居に、道化師の仮面を被ったナナシが背を凭れながら“念話”で呑気に挨拶してきた。

 

「兄弟子!?いつの間にここへ!!?」

 

(そこの屍女がストリップ始めるよりもずっと前だな)

 

「なっ!!?」

 

自分が儀式を始める前からこの場に居たと言うナナシの言葉に、サンジェルマンが驚愕する。

 

「馬鹿な…ならば何故、貴様は私が儀式を進めるのをむざむざ見逃していた!?」

 

(そりゃ失敗するのが分かってるんだからわざわざ邪魔なんてしないさ。俺に邪魔されたから上手くいかなかったんだって言い訳して自分を慰められても困るし?やーい!必死に頑張った挙句に失敗して全裸で蹲まるお前みっじめ~!!超ダセェ!!あっはははは!!!)

 

「貴様…!」

 

腹を抱えながら自分を指さして嘲笑うナナシに、サンジェルマンはラピスの埋め込まれた拳銃を取り出してファウストローブを纏うとそのまま発砲する。しかしナナシは“障壁”を展開するだけで弾丸を防ぎサンジェルマンを指さして嘲笑い続けた。

 

「卑怯な…!」

 

(え?ナニナニ?自分の攻撃が通じないからって相手を貶し始めたぞ?意味分かんな~い!これもバラルの呪詛のせいかな?きっとそうだ!だから俺は悪くな~い!あっはっはっは!)

 

…そして攻撃が届かないのを良い事に、ナナシがこれまで以上に徹底してサンジェルマンを小馬鹿にするように煽り散らしていた。そんなナナシにサンジェルマンが殺意を向けていると、響がナナシの傍に近づいて声をかけてきた。

 

「兄弟子、お願いします!ここはわたしと切歌ちゃんに任せてくれませんか?わたしはどうしても、サンジェルマンさんと話がしたいんです!」

 

「お願いデス!ナナシお兄ちゃん!!」

 

「この期に及んでまだそんなことを…!」

 

(オッケ~、我が妹と妹弟子よ、後は任せたぞ~!)

 

「「「!!?」」」

 

サンジェルマンの言葉を遮りながら、ナナシは軽い調子で手を振りながら響と切歌の背後に回って観戦し始めた。

 

「貴様!ふざけているのか!?」

 

(Exactly!!だってお前相手にマジになるのアホらしいんだもん。俺がここに来た理由は九割九分九厘俺の妹達の歌を聴きに来ただけだから。後は、本当は一厘も無いけど正確に言い表そうとすると夜が明けちゃうからお情けで一厘くらいの割合でお前の尊厳を踏み躙りに来ただけだ!)

 

「ふざ、ふざけるな!?覚悟と信念無き者が戦場に居座るなぁあああ!!!」

 

(あっははははははは!!!)

 

サンジェルマンが本気の憤怒を籠めて叫び声を上げるが、ナナシはそれを真っ向から受けた上で嘲笑った。

 

(その理屈だと、真っ先にお前は戦場から離れなきゃならないじゃないか?人類の未来だの何だの言っておいて妻子持ちってだけで敵を見逃すような中途半端な革命家さん?)

 

「なっ!?貴様!!?見ていて…」

 

(因みにあの二人、彼女いない歴イコール年齢の独身だからな?さっきの会話は俺がチョチョイと提案した事を実行してもらっただけだ!さっき気のせいでなければ割と殺意とかが混じった『ありがとう』の“念話”が来たな!『演技しなくて良いように頑張れ!』って返してやったぜ!あはははははは!!)

 

「っ!?」

 

(敵の戯言を真に受けて、引き金を引く指が止まっちゃうお前が覚悟?信念?お前がぶっ殺してきた七万弱が、全員木の股から生まれたとでも思ってんのかバーカ!あははははは!!)

 

何処までも自分を小馬鹿にするナナシの言葉に、サンジェルマンは歯をギリリと食いしばる。しかし悪意に満ちたその『正論』を前に、反論の言葉を紡ぐことが出来ない。

 

(そんな訳だから響、切歌。ソレを真面目に相手するのは任せるわ!俺はお前らの歌を聴きながら片手間でソレの覚悟(笑)と信念(笑)を踏み躙らせてもらうからさ!)

 

まるで本物の道化師のようなクルクルとおどけた動きで、ナナシが自分を睨みつけるサンジェルマンの周囲を煽るように動き回りながら響と切歌にそう伝えた。

 

(お前が刈り取ってきた命の数に懸けて自分の覚悟を示すならば、俺は猫のしっぽに懸けてお前の覚悟を嘲笑ってみせよう!)

 

(お前が人類の未来に懸けて自分の信念を表すならば、俺はアヒルのケツに懸けてお前の信念を貶めてみせよう!)

 

 

 

(お前が積み上げた生涯に懸けて自分の命に価値を見出すならば…俺はこの死神道化の仮面に懸けて、お前の命が『空っぽ』でしかないことを証明してみせよう!)

 

 

 

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