戦姫絶唱シンフォギア コドクの神が求めるモノ 作:@sora@
楽しいお出掛け…のはずが、何故か唐突にナナシ争奪戦が勃発したため、公園に集まった全員は四つのチームに分かれる事になった。
シンフォギアAチーム
天羽奏
マリア・カデンツァヴナ・イヴ
立花響
小日向未来
シンフォギアBチーム
風鳴翼
雪音クリス
暁切歌
月読調
錬金術師Aチーム
キャロル・マールス・ディーンハイム
エルフナイン
ガリィ・トゥーマーン
レイア・ダラーヒム
ファラ・スユーフ
ミカ・ジャウカーン
錬金術師Bチーム
サンジェルマン
カリオストロ
プレラーティ
景品
風鳴ナナシ
対戦ルール
・本日遊び回る中で各チーム及び景品が対戦方法を全チームに提案する
・勝利チームにはポイントが一点ずつ付与される
・日没までに最も多くポイントを集めたチームの勝利
・対戦方法に納得出来ない場合は対戦を拒否する事が可能
・二チーム以上が対戦に同意すれば同意したチームのみで勝負が開始され、勝利チームにポイントが付与される
・他チームへのポイントの譲渡は不可能
・他チームと協力する場合は、対戦開始前または対戦中に全チームへ宣言する事。対戦終了後に共謀が発覚したチームはポイントを0にリセットする
・他チームとの
・ルール違反の判定は景品が行う。景品の判定に異議は認められず、従わない場合はそのチームを失格処分とする。
「色々と言いたい事はあるが…自分の事を堂々と『景品』と明記するな!!」
配布された用紙に記載されたルールに目を通した直後、翼が思わずそうツッコんでいた。
「ちょっとゴチャゴチャしてて分かりにくいデス…」
「要するに『今日一日皆で遊ぶ方法を考えよう!』、『嫌な人は見ているだけで良いよ!』、『コッソリ協力するのは禁止ね?』、『審判に逆らったら退場!』って事だ」
「なるほどデス!」
「あーしとしては気に入らないのがその男の決定が絶対ってとこね。これだとあーしらが
「そうだな。そうなったら諦めろ」
ナナシのおざなりな返事にムッときたカリオストロだったが、そんなカリオストロの腕をキャロルが掴んで引き止めた。
「落ち着け。確かにその男は人を良いように欺き嘲笑うが…定められたルールを都合良く歪める真似はしない。それこそ信頼の問題だ。もしその男がルール違反を指摘して、貴様らがそれを否定した場合…全員がその男を信じる程度には、その男の言葉には重みがある。そうでなければ、オレが口約束に知識など賭けるものか」
「随分とまあ、高く評価しているじゃない?恋は盲目ってヤツ?」
「ふざけた事を言っていると分解するぞ!!?…その男が人の輪の中で生きている事実が何よりの証明だ。それでも納得出来ないなら、勝負を降りればいい」
「…良いわ、その男の判断に従いましょう」
キャロルの説得によって、カリオストロがルールを認めた事でサンジェルマン達もゲームへの参加を表明した。
「キャロル…やっぱり考え直しませんか?幾ら何でも、ナナシさんが可哀想です」
「そうだよキャロルちゃん!兄弟子は物じゃないんだよ!?」
エルフナインの意見に響が賛同してキャロルを説得しようとするが、キャロルはフンと鼻で笑って逆に二人を説得し始めた。
「エルフナイン、立花響、先に誤解を解いておくが…別にオレはアンノウンを隷属させようという意図は持っていないぞ?」
「え?」
「そうなの?」
「オレはあくまで新たな研究対象を手元に置いておきたいだけだ。気を抜くとフッと消えてしまいそうだから、いざという時引き寄せるための鎖に繋いでおきたい程度の事で、特に自由を奪ったりなどせん。そんな事をして逃げ出そうと考えられては敵わないからな。そうだな…オートスコアラー達と同程度の立場と言った所だ」
「そ、そっか~」
「安心しました!」
響とエルフナインがキャロルの言葉に安堵した様子を見せた。
「そういう訳だから、貴様らもそう焦る必要は無い。もしオレかサンジェルマン達が勝利したとしても、これまで通り貴様らの世話が出来るようにそいつを
「…ああ」
「…そうだな」
キャロルが笑いながら伝えた説明に、奏と翼も笑顔でそう答えるが…目が笑っていない。奏達の他にも同じような目をしたり、何だか分からないけどムッとした気持ちになった者達がキャロルに視線を向けたため、サンジェルマン達は三チームの間に火花の散る光景を幻視した。
「おおお!?何か良い具合に全員のやる気が上がっているな!!少しくらい場を盛り上げられればと思って提案したけど、まさかキャロルが積極的に交流の協力をしてくれるとは…これなら意外とお前らも早く馴染めるかもな!」
「貴様…本気で言っているのか?」
「ん?そりゃ本気だよ。流石にお前らとあいつらの親睦を深めようって考えに裏は無いぞ?」
「…オッケー、良く分かったわ。確かにちょっと面白そうじゃない」
「このような催しなら、結末まで付き合うのも吝かではないワケダ」
「あはははは!そりゃ良かった!!」
サンジェルマンがドン引きした様子でナナシを見つめ、カリオストロとプレラーティが好奇の目を他のチームに向けていた。
「それじゃあ、ゲームスタートだ!楽しく仲良く喧嘩するとしよう!!」
ナナシが宣言と共に歩みを進めて、その後に各チームがある程度纏まりながら付いて行った。
『……』
無言。ひたすらに無言である。大多数が真剣に対戦の内容を考えながら進み、極一部の者が重苦しい空気を感じて押し黙っている。とても親睦を深める集まりとは思えない。
「お前らなぁ…和気藹々とまでは言わないが、嫌味の応酬くらいしたらどうだ?親睦会を何だと思っている?」
『この状況を作り出したお前が言うか!!?』
あまりにも身勝手な事を言うナナシに、思わずそんなツッコミが入れられた。
「しょうがない、俺が一発目の対戦内容を決めて空気を変えるか」
そう言ってナナシが“収納”から大きなサイコロを取り出した。
「このサイコロの出目に書いてある内容で勝負だ!行くぞ!!」
ナナシの投げたサイコロがコロコロと転がり、やがてピタリと止まった。全員が見守る中で、ナナシがサイコロの出目に貼ってある紙を剥がすと、そこに書いてあったのは…
『早口言葉』
『ブフッ!!?』
その内容に、サンジェルマン以外が思わず吹き出してしまった。
「おい、サンジェルマン…神の力になんか手を出したせいで呪われたんじゃねえかお前?」
「それを言うなら、道化の貴様に宿ってしまった神の力が暴走しているだけではないのか!?そもそも不正は無いのであろうな!!?」
「誓って無いぞ!?サイコロは幾つか用意したが、早口言葉を入れたのはこの目だけだ!!」
ナナシが伏せてあるサイコロの目の紙を幾つか剥がすと、『あっち向いてホイ』や『叩いてかぶってジャンケンポン』など平和な内容が露わになる。本気で不正はしてなさそうだ。
「まあ、出ちまったものはしょうがないと割り切れ。それとも初手から逃げるか?」
「ぐっ!?…い、良いだろう!受けてやる!!」
恐らく狙って『逃げる』という言葉を使ったのを察しつつ、サンジェルマンは参加を表明した。他のチームも参加を宣言したため、ナナシが用意したクジを引いて順番と代表として勝負に挑む者を決定した。
一番 シンフォギアAチーム マリア
二番 錬金術師Aチーム エルフナイン
三番 シンフォギアBチーム 翼
四番 錬金術師Bチーム サンジェルマン
代表者にまで選ばれてしまったサンジェルマンだったが、これは寧ろ運が良いと言える。
「マジwwwメンゴwwwww」
「済まな…フュフッ…ワケダ…」
…他の二人は使い物にならない。
嫌な予感を感じつつ、傾向を観察出来る最後の順番となったサンジェルマンは緊張した面持ちでマリアの挑戦を見守っていた。
「お題を発表して十秒以内に開始だ。少し詰まるくらいは見逃すけど、あんまり酷いようなら審議が入るからな?」
「わ、分かったわ」
「じゃあ、行くぞ…!」
ドン!!
『
「た、玉屋のタマに偶々会ったたマやが…」
『ブッ!!』
「アウト―!」
見事に言い間違えて、たやマさんが膝から崩れ落ちた。
「たやま?田山さんってこと?」
「『た』だの『や』さしい『マ』リアさん、で『たやマ』。状況によって『や』は『やかましい』や『やるせない』だったりする」
「あなたが勝手に呼んでるだけでしょう!!?」
「ほら、やかましくなった」
「何ですってええええ!!!」
たやマさんが赤い顔でナナシの肩を掴んでガクガク揺らす。どうやら早口言葉はナナシのオリジナルらしい。
「よーしドンドン行くぞ~!エルフナイン、準備は良いか?」
「は、はい!」
「ほい!」
ドン!!
『キャロルがキャルルンキャピキャピきゃわいく媚びを売る』
「キャ、キャロルがキャルルンキャピキャピきゃわわッ!?」
「アウトー!惜しい!!」
「あうう〜!」
「それではマスター、実演の方をどうぞ!!」
「誰がするか馬鹿者!!」
『フフッ』
エルフナインが顔を赤くして頬を押さえ、キャロルがガリィにお題をネタにからかわれる。再び全員が笑ってしまうが、吹き出すのではなく思わずホッコリ微笑んでしまうような笑みである事に、サンジェルマンは謎の羨望を感じてしまった。
「さてさて次はSAKIMORIの番だ!分かってるな?」
「無論だ!」
「よし行け!」
ドン!!
『
「仮名で鹿撫でる歌奏でる奏哉!!」
『おお〜!!』
「どうだ!これでお前の身の安全に一歩近づい…」
「バッカお前何も分かってないな!?ここはツヴァイウィングのバラエティ担当として「相棒の名前噛むなよ〜」ってひと笑い取るところだろうが!!?」
「なあっ!!?」
『理不尽!!?』
成功したのに駄目出しを受けた翼に同情しつつ、サンジェルマンは自分が窮地に追い込まれた事を理解した。自分が失敗すれば、シンフォギアチームに先行を許してしまう事になる。
「さて…サンジェルマン、覚悟は良いか?」
「…無論だ」
ナナシの確認に、サンジェルマンは臆する様子を見せず毅然とした態度で答えてみせる。その声にナナシは、サンジェルマンの決して逃げないという強い想いを感じ取った。
「それじゃあ見せてもらおうか…お前の覚悟を!」
ドン!!
『サンジェルマンサンジュルマンジェントルマン』
『ブフッ!!』
お題の発表と共に何人かが吹き出す。しかしサンジェルマンは前の三チームの傾向から名前をネタにさせる覚悟はしていたため動揺はない。
「十…九…八…」
「スー…ハー…」
十秒の制限時間を活用して、サンジェルマンは意識を落ち着かせるように深呼吸をした。
(惑わされるな。難易度は他のチームに比べて大分低いはずだ。意識せず普通に言えば良いだけ…この程度の試練など、数々の苦難を乗り越えた私ならば容易い!)
心の中でそう自身を鼓舞して、サンジェルマンは遂に覚悟を決めて口を開いた。
「サ、サンジュルラッ!!?」
~~~しばらくお待ちください~~~
…シンフォギアBチーム 一点獲得
「さて、それじゃあ改めて出発するか!」
「ヒュー…シュコー…ヒュー…シュコー…」
ぐったりするプレラーティを小脇に抱え、その口元に酸素マスクを押し付けながらナナシが歩き出す。その後に各チームが無言で続いた。しかしその沈黙は少し前の重苦しい物とは異なり、全員がそうあろうと必死に口元を押さえて維持しようとしている気遣いの賜物であった。時々声が漏れるのは致し方ない。
最後尾ではまともに顔を上げられなくなったサンジェルマンが、カリオストロの肩に両手を掛けて先導してもらっている。
(…気に食わないわね)
サンジェルマンが真っ赤な顔でプルプル震えながら自分の背に縋りつく現状は笑いも引っ込む程の役得なのだが、それはそれとしてカリオストロはジッと前方を歩くナナシを睨みつけていた。
(自分が率先してリスクを飲む事で、あーしらを公平なルールの中で競わせて交流させる…そう見せかけて、あーしらや仲間達を盤外から笑い者にしているだけじゃない。そのルールだって一見公平に見えて、指摘する程ではない程度に自分の仲間達を贔屓している)
まず、装者とその関係者達のチームを分割した事。一チームの人数に偏りを無くすためと見せかけて、錬金術師チームが共謀して一方的に点数操作をしないようにするためだ。そうしないとサンジェルマンとキャロルのチームが錬金術をお題にしたクイズでも連発すれば、ナナシがキャロルの所有物になる未来が確定してしまう。
そしてシンフォギアチームは完全にお互いが味方であるのに対して、錬金術師チームはそうではない。キャロルにとってサンジェルマン達は保険でしかなく、知識を支払わないならその方が良いに決まっている。ポイントの譲渡や秘密裏の共謀・密談を禁止しているのはゲームの公平さを保つためではない。状況次第でサンジェルマンチームがキャロルチームを勝たせる協力をして見返りを求めるなどの交渉を防ぐための措置だとカリオストロは認識している。
(別に、あの男が仲間を依怙贔屓したりあーしらを冷遇する事自体は構わない。過去の事は水に流して、皆仲良く平等に~って態度で接して来る輩よりよっぽど好感が持てる。その気になればそれこそあーしらを奴隷同然に酷使出来る立場にいながら、敢えてそれをせずにこうやって適度な距離を保つ事であーしらの許容出来るレベルを見極めて、長く効率良くあーしらの力を利用する腹積もりなんだわ…それでも負けたあーしらにとって、この現状は存外の幸運と言って良い。笑い者にされる程度、別に問題ない…だけど、負けっぱなしは女が廃るってものよ)
思えば自分達が本格的にS.O.N.G.へ接触し始めてから、腹の探り合い化かし合いは自分の領分であるにも関わらずナナシには自分の思惑を悉く暴かれ利用までされてしまった。この辺で一矢報いたいと考えたカリオストロは、おもむろにスッと手を上げて全員に呼び掛けた。
「ちょっと良いかしら?あーしから提案したい対戦方法があるのだけれど?」
「おっ!初の提案だな!さてさて一体どんな方法だ?」
「悪いけど、あーたには聞かれる訳にはいかないわ」
「ん?」
「あーたを対象にした対戦方法なの。だから一回あーしらから離れて欲しいんだけど、構わないかしら?」
「ん~…嘘じゃないみたいだし、俺以外にちゃんと説明するなら構わないが…こいつはどうする?」
「ヒュー…シュコー…ヒュー…シュコー…」
「…どうせ話を聞く余裕も無さそうだから、もうしばらく看てあげて。ああ、順番を決めるクジだけ置いてってもらえる?」
「了解」
ナナシが少し離れたベンチでプレラーティを看病し始めたのを確認して、カリオストロが全員に話しかけていった。
「このままだとあーしら今日一日、あの男にからかわれてばかりになりそうだから…ちょっとした反撃も兼ねて、あの男に何か奢ってもらうってのはどう?」
「奢ってもらう?」
「それぞれのチームであの男に交渉して、自分の欲しいと思った物を買ってもらうの。その金額が高いチームが勝利。これならもし勝負に勝てなかったとしても、何か買ってもらえれば儲けものよ。これだけ美女達を侍らせてるんだもの、あの男にも甲斐性を見せてもらわないと!」
「オレは別に構わないぞ」
カリオストロの提案に、キャロルが参戦の意志を示す。この時点で対戦は成立だ。
「「欲しいと思う物…」」
「…まあ、良いでしょう」
そして調と切歌の二人が興味深そうな反応を示した事もあり、シンフォギアチームもそれぞれ参戦する事になり、クジによって交渉の順番を決定した。
一番 シンフォギアBチーム
二番 錬金術師Bチーム
三番 シンフォギアAチーム
四番 錬金術師Aチーム
交渉役は各チーム自由に選ぶ事にしたため、早速先程興味を示していた二人がナナシへと近づいて行った。
「先生!」
「お願いがあるデス!」
「良いぞ、何をすれば良い?」
内容も聞かず即了承の言葉をナナシが返す。翼とクリスが調達に交渉役を任せたのは、二人が興味を示しただけではなくナナシが二人に甘い傾向があるという打算もあっての事だ。
調達はお互いを見てコクリと頷き合うと、ある方向に指さした。
「まずは…」
「あそこまで一緒に来て欲しいデス!」
そう言って二人が指さす方向にあったのは…コンビニだった。
『ん…?』
全員が思わず疑問を覚えるが、二人は至って真剣な様子だったのでとりあえずそのまま様子を見る事にした。二人に連れられてプレラーティを抱えたナナシがコンビニへと入り、他のメンツもその後に続く。調達は店内をキョロキョロと見回すと、目当ての物を発見してそこに近づいて行った。
「あった…!」
「ゴクリ…」
二人は緊張した面持ちで商品を一つ手に取ると、ナナシの傍へと近づいて行った。
「先生、あの…」
「これを、買って欲しいのデス!」
二人が恐る恐るといった様子でナナシに差し出したのは…
『贅沢チョコレートケーキ 税込八百円』
『……』
「さ、最初に見つけた時は何かの間違いかと思いました。こんなサイズなのに、お店のケーキよりも高いなんて…!」
「恐ろしくて手を出せなかったんデスけど、どうしても味が気になって…」
全員が何とも言えない表情で調達を見てしまうが、二人は至って真剣な様子でナナシに交渉を続ける。
「い、今までも色んな理由で高価な物を頂いた挙句に、嗜好品でまで贅沢してしまうのは良くないと思っていますが…!」
「お、お願いデス!ナナシお兄ちゃん!!勉強も訓練も頑張るので、どうか!どうか!!」
二人の言葉からどうしようもなく本気の想いを感じ取ったナナシは、フッと笑みを零して…
「店員さん、すみません。そこのスイーツコーナーにある商品、丸ごと頂けます?」
…シンフォギアBチーム 合計金額一万円
「「ほあああああ…!!」」
「以前お前達に倹約家は良い事だと言ったが…訂正する。お前らは一回本気の贅沢というものを学べ!気になった物は衝動買いしてしまえ!!節約なんてのはそういった後悔を経験してからで良いんだよ!!!いい加減にしないと涙を流せないはずの“紛い物”でも泣くぞおい!!?」
ベンチに座ってケーキの甘さに打ち震える調達に、ナナシが滾々と説教のような愚痴を零し続けていた。
「あーたら…まさかボランティアで戦わされてるの?」
「違うの…あの子達はまだお金を使う自由に慣れていないだけなの…特に食べ物に関しては、昔苦労をさせたせいで贅沢はいけないって感覚が染みついちゃっていて…」
項垂れるマリアに全員が『ああ、今はやるせない方のたやマさんだ』と思いつつ、調達にお裾分けしてもらったスイーツをそれぞれが堪能していた。あくまで調達が購入してもらった物を配っただけで、合計金額の変動はしない。
(初手を逃しちゃったのは痛いと思ったけど、結果的に正解だったわ。まさか敵からアシストしてもらえるとは…)
アレでは流石のナナシも金額を競っているとまでは確信出来ないだろう。エクレアを頬張って口の端に付いたクリームを色っぽく舐め取りながら、カリオストロは思わずほくそ笑んだ。
(正直この勝負、チームの勝ち負けに関してはあまり重要視していない。ちょっとでも傍観者であるこの男に嫌がらせして、あーしが美味しい思いを出来れば万々歳。一番重要なのは、あーしとこの男で直接対決出来る状況を作り出す事…今度こそ、ギャフンと言わせてあげるわ!)
ちょっとでも高い物を買ってナナシに経済的ダメージを与えられれば良し、勝負に勝てれば尚良し、奢らせる事自体に失敗した場合は、ゴネて空気を悪くする切っ掛けにしてしまえば良い。盤外から余裕綽々で傍観しているナナシにささやかな嫌がらせを出来れば、カリオストロにとっての勝利となる。
全員がスイーツに舌鼓を打ち、再び移動を開始して少し経った頃、カリオストロが勝負に出る。
「あっ!ねえねえ、あのお店良い感じじゃない?ちょっと覗いて行きましょうよ?」
さりげなくナナシの腕に抱き着きながら、カリオストロがバックを主力に扱う高級ブランド店を指さす。ポイントは無理して嘘をつかない事。カリオストロは展示されていた商品が良い物と感じたために、その想いを全面に出して自然にそう提案した。
「おっ、良いじゃん。見ていこうか!」
特に反対の意志を見せる事無くナナシとカリオストロが店内に入り、他の面々も後に続く。全員がナナシ達の動向に意識を向けつつ店内の物を見て回り、カリオストロと同様に興味を持ったり、そのお値段に驚き固まったりと様々な反応をしていた。
「ん~…あっ!アレ見て見て!すっごく可愛くない!?」
カリオストロが少しテンション高めにナナシの肩を引き寄せて密着しながらバックの一つを指さした。値段に意識が向かないように敢えて値札は見ていない。それでも割と目立つように配置されている事から、それなりの値段だと思いつつあくまでも自分の感性に従ってカリオストロはそのバックに狙いを定めた。
「この集まりって~、とどのつまりはあーしらの歓迎会みたいなものでしょう?色々期待しちゃっても良いのかしら~?」
ここからがカリオストロにとって勝負の始まりである。これまで散々自分を出し抜いてきたこの男と腹を探り合い、巧みな話術を駆使して勝利を掴まんとカリオストロは意気込んで…
「へえ~!良いセンスしてるじゃないか!確かに可愛いしお前に似合うデザインだと思うよ!それじゃあこれは購入で…あっ、ポシェット(約十万)とかスカーフ(約五万)とかも同じ柄があるからどうせなら揃えて買ってしまおう!こっちのサンダル(約十五万)もお前に似合わないか?あ~でもこっちのヒール(二十万)も中々…両方買って気分で変えれば良いか!あとはアレと、ソレと~…」
…錬金術師Bチーム 合計金額二百万円
「さて、次は何処行こうか?」
心なしか弾んだ声でそう全体に確認を取るナナシ。一番近くに居たカリオストロは六十万円のバックを含む様々な商品の入った紙袋を大切そうに抱えながら立ち尽くしている。話術のわの字も披露する暇もなくアッサリ手に入ってしまったプレゼントに心ここに在らずと言った様子であった。
「次はオレの番だ。丁度目当ての店も近くにある事だし、ついて来い」
カリオストロを含めて数名が衝撃で固まる中、キャロルが先程の記録に臆する様子もなくそう言って歩みを進め始めた。笑顔のナナシがキャロルの後に続き、他の面々も動揺しながら二人を追いかけて…数分程進んだところで、キャロルが目的地へと辿り着いた。
「おい…!」
「ここって…!」
何人かがその店の正体を察して顔を引き攣らせる。そこはかつてナナシとガリィが訪れていた…宝石店だ。
「ここはゾロゾロ大人数で入るような場所ではない。各チームから一人だけついて来い」
「それじゃあ未来、クリス、サンジェルマン、行くぞ!」
ニヤリと悪い笑みを浮かべながら、何の躊躇いも無くキャロルが店に歩みを進める。ナナシがサクッと人選を決めて強引に三人を引き連れて後に続いた。恐らく人選は最低限のマナーを守れる常識人枠で選んだと思われる。
丁度店内に客がおらず、扉が開いた瞬間に店員の注目が入口へと集まり…キャロルとナナシの姿を捉えた途端、店員の一人が店の奥へと消えて、残った店員が全員でナナシ達を出迎えた。
『いらっしゃいませ!ようこそおいでくださいました!』
突然訪れた私服姿の若者達に対して深々頭を下げる店員達の対応に、クリス達はナナシ達が頻繁にここを訪れているのだと確信した。
「これはこれは!キャロル様、ナナシ様、ご来店頂き誠にありがとうございます!そちらの方々は当店に来られるのは初めてですな?私はこの店のオーナーでございます」
店の奥から現れたオーナー自らがナナシ達に対して丁寧な接客で応対する。ナナシもオーナーに合わせて丁寧な言葉遣いで語り掛け始めた。
「頻繁に訪ねて申し訳ありません。友人達と外出中に、キャロルお嬢様がどうしてもこちらに訪れたいと…」
「いえいえ、いつでも歓迎致します!どうぞごゆっくり当店の品を見て頂いて…」
「悪いが外にも待たせている者達がいる。要件は手短に済ませるとしよう」
オーナーの言葉を遮り、キャロルが普段通りの口調でナナシにニヤリと笑いかけた。
「おい、アンノウン…買えるだけ買え」
「少し前にそれなりの数買ったからな。他の客との兼ね合いもあるし、ああいう店でのOTONA買いはあまりよろしくないぞ?」
「まあ、目的は果たせたのだから良しとしよう」
…錬金術師Aチーム 合計金額一千万円
アタッシュケースを手に店内からナナシ達と顔色の悪いクリス達が出てきた。
「お前ら…普段、一体どんな買い物してんだ…?」
「そう頻繁って訳じゃないが、突発的に純度の高い貴金属や宝石を使った錬金術実験を試したくなった時には足を運んでいるだけだ。ここのオーナーとは既にS.O.N.G.としてOHANASHIをさせてもらったから色々と融通が利きやすいんだよ」
そう言ってナナシは残るシンフォギアAチームへととても良い笑顔を向けながら話しかけた。
「それでそれで!?次は何処に行く!!?不動産とかその辺にも顔が利くから別荘でも買いに行くか!!?」
調達とのやり取りで朧気ながら予想を付け、カリオストロの反応でほぼ対戦内容を確信しているナナシは、とても期待に満ちた瞳で奏達の事を見ながらそう問いかけて…
「「「「リタイアで!!」」」」
「なああああっ!!?!?」
…錬金術師Aチーム 一点獲得
「諦めるなよ!?一億でも十億でも貢がせれば良いだけじゃん!!?」
「遊びでそんな額を浪費させようとするんじゃねえよこのバカ!!」
目論見が外れてついナナシが奏と言い争いをしていると…
「ねえダーリン?その子達がいらないんだったらあーしが別荘欲しいな~♡」
「「おいコラァ!!?」」
…瞳に¥マークを浮かべたカリオストロがそう言ってナナシに甘えるような声で媚びを売り始めたため、サンジェルマンとプレラーティが思わずツッコんでしまった。
「幾ら何でも変わり身が早すぎるワケダ!!?」
「や~ね~今更あーしらがこの男に反発したところで百害あって一利なしでしょう?だったらトコトン仲良くなった方がお互いのためじゃな~い♡」
「だからと言って…」
「別荘と言えば、それなりの数の錬金術師が集まったんだから実験で周囲に影響を与えないように無人島を改造して拠点化する計画があったな?プレラーティ、お前シャトーの設計やってたんだろう?諸々手配するから全体の要望を聞きつつお前の好きに設計してみてくれないか?俺の能力の有効活用の検討って事で、“収納”とか“浮遊”とか駆使すれば建築も相当手間が省けるはず…」
「島の広さは?気候は!?地質は!!?可能な限りの詳細を今すぐ徹底的に教えるワケダ!!?!?」
「プレラーティイイイイ!!?!?」
あっという間に懐柔されていく仲間達の姿に、サンジェルマンは思わず叫んでしまった。
「「所有権…(ゴクリッ)」」
「ふ、二人共?我々のスタンスを忘れてはいないか?」
「だ、大丈夫よサンジェルマーン!」
「流石に我々もそこまでチョロくないワケダ!」
「「アハハハハハ!!」」
白々しく笑う仲間達にジトッとした視線を向けながら、サンジェルマンはまだ始まったばかりのゲームの行く末に不安を感じるのだった。
作者の文章構成能力が低くてルールを決めた割には上手く活用出来そうにないです。
途中ダイジェストで進行予定なので読者の皆様はポイントの推移とかあんまり気にしなくて良いです。たった二個のゲームでこの文章量という事でお察しください。一応次回で決着予定です。