戦姫絶唱シンフォギア コドクの神が求めるモノ   作:@sora@

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決着予定、だったんです…!(訳:もう一話追加します)
自分でも驚くほど文章量が増えてしまってw
削りたくなかったので分割します。

先日久々に日間ランキングにお邪魔させて頂きました。
高評価を頂きとても嬉しいです!


第170話

その後も一同は街中を散策しながら色々な対戦を行った。特にゲームセンターに立ち寄った時はクリスがガンシューティングで無双したり、ダンスゲームでレイアが圧倒的スコアを叩き出したり、自信満々でクイズゲームに臨んだプレラーティとキャロルが流行や一般常識問題で切歌に負けて床に崩れ落ちたり、響、カリオストロ、ミカがパンチングマシンを大破させてナナシと共にDOGEZAする事になったりと大騒ぎしながら競い合っていた。

 

騒動を起こしては逃げるよう移動するような事を何度か繰り返したところで、奏がナナシに一つ質問をした。

 

「なあ、あたしら何となくあんたの後に付いて行ってるけど、何処か目的地とかあったりするのか?」

 

「基本はノープランだけど、サイコロ以外にも一つだけ対戦の場を準備しているな!」

 

「対戦の場…?」

 

「ここだ」

 

丁度その対戦の場とやらに到着したようで、一同がナナシの視線の先を見ると…シンフォギアチームだけが何かに気付いたような顔をした。

 

「あれ?ここって…」

 

「この前の喫茶店デス!」

 

そこはつい先日、ナナシが切歌の悩み相談を聞く際に利用した喫茶店だった。

 

「ここが対戦の場?…あっ!あのチャレンジメニューのパフェですね!?」

 

「チャレンジメニューとは何だ?」

 

「制限時間内に食べきるとタダになったり景品がもらえたりする大盛りメニューだよ!このお店にはキャロルちゃんが椅子に使えそうな容器に山みたいに積み上げたパフェがあるの!美味しかったよ!!」

 

「ミカ、任せた」

 

「わーい!おっきいパフェなんだゾ!」

 

「この怪物胃袋共と大食いで競えってのか!?あたしらのチームが束になっても敵う訳ないだろ!!?」

 

「むう、大食いか…」

 

「我々の中なら、一番体の大きいカリオストロが適任なワケダ」

 

「え~体型が崩れちゃうじゃない。リタイアで良いでしょう?」

 

すっかり大食いの流れだと思い込んだ一同がそれぞれ感想を口にするが、ナナシは肯定も否定もする事なく喫茶店の中に入っていった。仕方なく全員がその後に続き、『本日貸切』と書かれた札のかかった扉を開けて店内に入ると…

 

『ワァアアアアアアアアアアア!!!!!』

 

『えっ!!?!?』

 

突如聞こえてきた大歓声に、全員が驚いて入り口で固まってしまった。そんな事はお構いなしに、店内に用意された舞台の上に立ったナナシがマイクを手に笑顔で話し始めた。

 

『レディース・アンド・ジェントルマン!それではこれより、『可愛い子グランプリ』を開催したいと思います!』

 

『はぁあああああああああああ!!?!?』

 

『ワァアアアアアアアアアアア!!!!!』

 

響達の困惑の声が店内の人々が上げる歓声によってかき消される。熱気に包まれた喫茶店の中で、ナナシが臆する様子もなく司会進行していく。

 

『先程入店してきた見目麗しい彼女達は、現在四つのチームに分かれております。各チームには代表者を選んでもらい、こちらで用意した衣装の中から好きな物を着てこの舞台に一チームずつ来ていただきます!その可憐な姿を審査員であるこの喫茶店の店員二名と店長さんに1~10の点数でジャッジしてもらい、最も合計点が高かったチームの勝利となります!!』

 

ナナシが手を翳した先には審査員席が用意してあり、そこには以前クリスに声をかけられた女性二人と眼鏡をかけた壮年の男性が座っていた。三人と周囲の人間はとてもワクワクした様子でナナシの説明に聞き入っている。

 

(お、おいナナシ!?何なんだこの盛り上がりは!!?)

 

異様なその状況に、奏が全員に“念話”を繋いだ状態でナナシに問いかけた。百歩譲って可愛さを競うという対戦内容は良い。会場と審査員としての協力をこの喫茶店に交渉したと言うのもまあ理解出来なくはない。しかし、席を埋め尽くすこの場の全員が喫茶店の関係者とは思えない。単なる賑やかしのためだけにわざわざこの人数を集めたのだろうか?

 

(いや~、俺もここまで大事にするつもりは無かったんだが…この喫茶店に協力を申し出たら、何故か聞き耳を立てていたこの店の客が大勢詰め寄ってきて熱心に見学させてくれと頼まれたから、いっそ大々的なイベントにしてしまおうって事になった。撮影や情報の拡散禁止の署名をさせた上で俺がひとりひとり確認して他国のスパイやどこぞのジジイの手下共が混ざっている事は無いから安心してくれ!)

 

ナナシも当初は喫茶店の店員数名と店長にのみ協力してもらい、こじんまりしたファッションショーをしようと思っていたのだが、「新しい同僚(女の子)達と友人(女の子)達がまだ折り合いが悪いから、いっその事思いっきり競わせたい!」と言って可愛さで優劣を決めさせようとしている状況に、以前ナナシ達の様子を見ていた客達の好奇心が爆発してしまったのだ。バッチバチである。この男ヤベェと思いつつお金を払ってでも見たい!と思ってしまうのは無理からぬ事だ。そのためならルールを破れば即退出&喫茶店出禁程度の条件など余裕で飲めるし破る気も起きない。

 

『盛り上がってるかー!!』

 

『オオオオオ!!』

 

『声が小さい!賑やかしも出来ないなら叩き出すぞ!!盛り上がってるかー!!!』

 

『オオオオオオオオオオ!!!!』

 

あまりの熱狂ぶりにカルトじみた雰囲気が漂うが、ライブ会場で発せられる感情と大差無いと感じているためナナシは寧ろ楽しくなっていた。他の面々はアイドル組も含めてドン引きしている。

 

「ハン、上等よ!女の格付けにおいてこれ以上ない方法じゃない!受けてあげるわ!」

 

「あーら、私達のマスター相手に可愛さで挑もうだなんて無謀ねぇ?マスターの尊さを前に平伏すがいいわ!」

 

『オオオオオ!!』

 

カリオストロとガリィが睨み合う光景に再び周囲が盛り上がる。ガリィのセリフにキャロルが異を唱えない事から、対戦自体は成立という事だろう…キャロルは遠い目をしているため、賛同と言うよりは諦めといった雰囲気である。

 

「可愛さならこっちだって負けないよ!」

 

「私達のチームだって!」

 

「世界を狙える可愛さデス!」

 

「す、凄い自信ね、響。まあ、確かにこっちには奏さんやマリアさんがいるから…」

 

「こっちも先輩がいるから、後輩共の自信も理解出来る…」

 

「未来の可愛さは誰にも負けないよ!」

 

「「クリス先輩の可愛さは宇宙一です(デス)!!」」

 

「何故そこで私(あたし)!!?」

 

まさか現役アーティストを差し置いて自分が指名されるなど思いもよらず、未来とクリスは驚愕の叫びを上げてしまった。

 

(そもそも我々は出場して問題ないのか?)

 

(出るならそっくりさんで押し通す。万が一バレて情報が漏れたところで物証が無ければ噂止まりだ。撮影禁止にした上で俺が感情の動きを見て観察しているから問題ない。まあ、そんな心配は無用だとは思うがな?どいつもこいつも和を乱す気が無いと言うか、何が何でも見届ける!!っていう強い意志を感じる)

 

(ほ、ほら!ご都合主義の奴が問題ねえって言ってんだ!あたしなんかよりも先輩やお前らの方が適任だろ!!?)

 

(そ、そうだよ響!?私よりも奏さん達か、それこそ響の方がずっと勝ち目が…)

 

(何を言っている、雪音?お題は『可愛い』だぞ?いずれにせよ私には荷が重い)

 

(あははは!あたしみたいなガサツなのに可愛いは無理だって!)

 

(私も可愛いと言われる事はあまり無いから、あなたと響の方が適任と言う意見には賛成ね)

 

『う~ん、難しいところだ。こういう催しだと、確かにお前ら三人は可愛いの『質』がちょっと違うかもな?クリスや未来は思わず頭を撫でたくなるような小動物的可愛さなのに対して、お前らの可愛さはギャップと言うか…普段は信頼、包容力、リーダーシップなんかの頼もしさ全開だから、不意に力が抜けた時に現れる女の子の部分が凄まじい破壊力を発揮する、お前らの事を知れば知る程に瞬間火力が上がる可愛さだからな?上手い具合にそういう雰囲気を表現出来れば審査員の心をガッチリ掴めるから、最初から無理って決めつける必要は…』

 

「「「わざわざマイク使ってそういう事言うなぁああああ!!!」」」

 

『ワァアアアアアアア!!!』

 

奏達が顔を真っ赤にして叫び、観客達が更に湧き立つ。唐突に公衆の面前で何の躊躇いもなく女性を口説くナナシをやっぱりヤベェと思いつつ、赤い顔で文句を言いつつも満更でもない雰囲気が“認識阻害”越しに伝わり、審査員達も思わず10点の札を上げそうになってしまった。

 

『まあ、代表者は各チームで相談してもらうとして、とりあえずクジを引いて出場の順番を決めたら控室で着替えをどうぞ!控室には全員分の衣装と化粧品、小道具等が用意されているので、好きに使ってくれ!』

 

「ああ、私達に衣装の追加依頼したのはこのためだったのですね?てっきり月刊アルケミストの増刊のためかと…」

 

『当然その用途も兼ねた依頼だ!特典として今回の記録も入れるつもりだからガリィ、見逃すなよ!』

 

「分っかりました〜!瞬き一つ致しませんとも!!」

 

そんな風に話をしばしば脱線させつつ、各チームは大勢に注目されながら順番を決めるクジを引いていった。

 

一番 シンフォギアAチーム

二番 錬金術師Bチーム

三番 錬金術師Aチーム

四番 シンフォギアBチーム

 

『それじゃあゆっくり着替えてくると良い!女がお洒落にかける時間を待てない奴がこの場に居るなら制限時間を設けるが…』

 

永遠(とわ)に待たせていただきます!!』

 

『…との事だ。にしてもほぼ全員赤の他人のはずなのにこの一体感、凄まじいな?何だこの集まり?』

 

各チームが控室に移動する途中で聞こえてきたその疑問に対して、何名かは心の中だけで次のように答えていた。

 

(((邪神崇拝の類いでしょう?)))

 

 

 

 

 

『俺があいつらに可愛いと言った理由は、たた俺がそう想っている事を伝えたかったから。そして可愛い扱いに慣れてないあいつらの反応が見たかったから…全ては俺の我儘だ。あそこで返ってくるリアクションが「何言ってんだこいつ、キモッ」みたいな反応でも全然問題ない、寧ろ予想と違って面白いとさえ思える。とどのつまりは…この『予想外』を受け入れる覚悟があるなら、恋人に可愛いと言う事は何ら問題無いんじゃないか?』

 

各チームが着替えをしている間、マジックでも披露して場を保たせようかと思っていたナナシであったが、「何故入店時に既にチームが分かれていた?」という観客からの質問があり、「現在俺への命令権を賭けてゲームの真っ最中、このグランプリもその一つ」と言う回答を皮切りにナナシへの質問コーナーが始まっていた。今のは「恋人に可愛いと言うのは良くない事か?鬱陶しいと思われないか?」という男性からの質問への答えだ。

 

『可愛いに限らず、どんな想いも伝える事自体は決して悪い事なんてない。だけど、その反応が意図した物と異なる事で相手に不満を覚えるのはハッキリ言ってお門違いだ。可愛いと褒めれば喜んだり照れたりしてくれる事はあるだろう。だけど戸惑ったり、お前が心配するように鬱陶しいと思われる可能性は当然あるわけだ。ここで期待した反応と違うからって『恋人なら〜』とか『夫婦なのに〜』みたいな立場を利用した押し付けをせず、素直に『喜んで欲しかった』、『照れた顔が見たかった』と伝える事が大事だと思う。お互いの『したい』、『してあげたい』の気持ちを確かめ合って、お互いを気遣う事を繰り返していけば、お互いにとって丁度良い距離感が見つけられるんじゃないかな?』

 

「は、はい!」

 

『所詮は彼女いない歴イコール年齢のモブ男の戯言だから、あんまり当てにはならないけどな?どうせ気遣うなら、彼女さんに内緒で可愛い子グランプリ(こんな催し)を見に来るのを控えた方が良いとは思う』

 

「は、はい…」

 

『まあ、そこの彼女さんらしき子の幸せそうな照れ顔を見る限りお似合いなんじゃないかとは思うけどな?お幸せに~』

 

「はぃいいいい!!?!?」

 

…どうやらこのカップル、別々にこの喫茶店でナナシと愉快な仲間達のやり取りを目撃していたらしい。お互いがお互いを気遣った結果、他人の修羅場見物に相手を誘わなかったために予期せぬサプライズが発生してしまったようだ。

 

周囲の人間が拍手や口笛でカップルを囃し立てつつ…ナナシの『彼女いない歴イコール年齢』発言に衝撃を受けていた。え?あの中の誰も彼女じゃないの?彼女でもない美女達を自分への命令権を餌に争わせているの?モブどころか勇者や魔王飛び越えて裏ボスの邪神なのでは???

 

ここは素直な『知りたい』の気持ちに従って、いっそ根掘り葉掘り全てを聞いてしまおうかと全員が思い始め…

 

『おっ!どうやら準備が出来たようだぞ!』

 

『オォ~…』

 

『あれ?歓声おかしくない?何か後ろに『マイゴット』が付きそうな『オォ~』だな?』

 

…狙いすましたかのようなタイミングで質問コーナーが終わってしまったため、仕方なく観客達は気持ちを切り替え、本来のメインイベントに集中する事にした。

 

控室から代表者以外のメンバーがゾロゾロと出てきて用意されていた席へと着く。代表者以外にも何名か姿の見えない者達もおり、シンフォギアBチームに至っては一人も戻っていない。どうやらギリギリまで代表者のサポートをするためのようだ。

 

ガリィ(1カメ)が席について舞台をジッと見つめ、ナナシ(2カメ)が審査員席の隣に移動した事で、いよいよ『可愛い子グランプリ』が開催される。

 

『それでは最初の代表者の方、舞台へどうぞ!』

 

ナナシの合図と共に、喫茶店店員がスポットライトで照らす入り口から現れたのは、レースやフリル、リボンで飾られた真っ白なドレスを身に纏ったシンフォギアAチームの代表者…

 

『代表者に選ばれたのは小日向未来さん!衣装はゴスロリ!それも白ゴスだー!!』

 

「うぅ…」

 

『オオオオオオオオオオ!!!!』

 

フリルの付いた小さめの白い日傘を差しながら朱に染まった顔を僅かに俯かせ、ゆっくりと舞台へ出てくるその可憐な姿に、観客達はすっかり魅了されていた。

 

「いや~我ながら良い仕事した!」

 

「あんなに可愛いんだから、あの子ももっと自信を持てば良いのに」

 

奏が心なしかツヤツヤした様子で未来の仕上がりを満足そうに見つめる。マリアは自信無さげな未来に苦笑するが、傘でなるべく顔を隠そうとするその様は保護欲を刺激して観客達には寧ろ好評である。

 

「わああああ!未来可愛い!可愛いよ未来~!!こっち向いて!笑って~!!」

 

…そして、誰よりも未来の姿に魅了された響が人目を憚ることなく大絶賛の言葉を叫ぶため、ますます未来は顔を赤くして体を小さくするため、そのやり取りが更に観客達を笑顔にするのだった。

 

『さながら太陽の寵愛を受けた陽だまりの妖精のような愛らしい姿を披露した未来選手!審査員の得点は!?』

 

店員A 8点

店員B 8点

店長  9点

 

「ええええ!?満点じゃないの!!?」

 

上げられた点数に、響が思わずそう叫んでしまう。その叫びに審査員達は苦虫を噛み潰したような顔をしてしまった。

 

『初手だからな~。満点を付けたいのは山々だが、勝るとも劣らないレベルの選手が後に控えているのに満点は上げづらかったんだろう。察してやれ、響』

 

「むぅ~…」

 

ナナシのフォローにホッとした表情をする審査員達の様子を見て、響は渋々引き下がった。未来が代表者用の席に座ったのを確認して、ナナシが再び司会進行していく。

 

『さてさて、これは非常にハイレベルな戦いとなりそうです!次の代表者はどんな可愛い姿を見せてくれるのでしょうか!?』

 

「次はサンジェルマンさんのチーム…出るのはカリオストロさんみたいだったよね?席にはプレラーティちゃんしか戻ってないけど、サンジェルマンさんは何かお手伝いでもしてるのかな?」

 

響の言う通り、錬金術師Bチームはプレラーティのみが席に座って優雅に紅茶を飲みながら待機している。未来の姿を前に落ち着いた様子を保つプレラーティには、相当の自信が見て取れた。

 

『それでは次の代表者の方、どうぞ~!』

 

ナナシの呼び掛けによって、次の代表者が姿を現し…その姿に、響達は驚きを露わにしてしまった。

 

「あれ!?サンジェルマンさん!!?」

 

『代表者に選ばれたのはサンジェルマン!そして衣装は…学生服だー!!』

 

『オオオオオオオオオオ!!!!』

 

そう、登場したのはカリオストロではなくサンジェルマンだった。サンジェルマンはナナシの言う通り学生服…リディアンの制服を模した物を着ており、普段の男装のようなズボン姿からスカートになったのが落ち着かないのか、頻りに視線を足元に向けながら赤い顔でモジモジとしていた。

 

「どうよ?あの仕上がりは」

 

「完璧なワケダ」

 

カリオストロがしたり顔で席に近づき、プレラーティがグッと親指を立てて称賛の言葉を掛ける。あれだけ自信満々だったカリオストロが代表を降りた事に他のチームの面々と…

 

「な、何で…こんな事に…」

 

…誰よりも、サンジェルマンが困惑していた。

 

 

 

 

 

「格の違いを見せてあげるわ!」

 

そう意気込みながら、自分が出る気満々で仲間達と共に控室に向かっていたカリオストロ。プレラーティはカリオストロの好きなようにさせて、サンジェルマンと共に仕上がりだけ確認する予定でその後に続いていたのだが…

 

(ふーん、やっぱりそっちのチームは雄太郎が出るつもりなのか…)

 

…会場を一時退出する直前、カリオストロとプレラーティにのみナナシが突如“念話”を繋げてそんな言葉を伝えてきた。

 

(雄太郎言うな!ってか、密談は禁止じゃなかったの?)

 

(『他チームとの念話(テレパス)及び“念話”による密談禁止』…俺は景品だ。何処のチームにも所属していないから問題ない)

 

(都合の良い事を…それで?わざわざ我々に内緒話を持ち掛けた理由は一体何なワケダ?)

 

(いや、別に?ただ単に予想通りだったな~って言う世間話みたいなものだ。誰が代表に選ばれても良いよう、オートスコアラー達にはメディカルチェックで記録したデータから全員分の衣装を作るように依頼していたから、ちょっともったいないと思っただけだ)

 

(ご愁傷様~。あーしの可愛い姿を見られるだけで宝くじ一等賞レベルの幸運なんだから、セコイ愚痴はやめてよね?)

 

ナナシの言葉を適当に聞き流しながら、二人は歩みを止める事無く控室へと向かい…

 

(あははは!そりゃそうか!悪い悪い、ちょっとだけ未練だったからさ。こんな機会じゃないと俺が用意させた衣装を着てくれそうもないゲロ子と…お前らのリーダーの可愛い姿が)

 

…続いたその言葉に、二人はピタリと動きを止めてしまった。

 

「ん?どうした?二人共?」

 

「べ、別に!」

 

「何でもないワケダ!」

 

慌ててサンジェルマンに取り繕うカリオストロ達の頭には、ナナシの言葉が響き続けていた。

 

(今日のやり取りを考えれば、ゲロ子の方は対価を用意すれば今日以降もワンチャンあるかな~とは思えるけど、お前らのリーダーは無理だろうな~。今回みたいな『大義名分』は早々用意出来ないだろうし…まあ、『大勢の前で自分の推しを自慢』出来るだけで満足だから、別に良いか!)

 

一方的にそう伝えて、ナナシは“念話”を切ってしまった。

 

(…全く、思惑が透けて見えるワケダ)

 

(本当よ、何て雑な誘導なのかしら)

 

自分達で念話(テレパス)を繋いでそう伝え合いながら、カリオストロ達は遂に自分達の控室へと辿り着いた。そこには部屋一杯に様々な衣装が用意されている。カリオストロ用の衣服、プレラーティ用の衣服、そして…サンジェルマン用の衣服。

 

「よくもまあ、お遊びのためにここまで作らせたものだ…ではカリオストロ、指示を頂戴。私達であなたのサポートを…」

 

そう言って、サンジェルマンが後ろを振り返り…

 

「それじゃあ、まずは…」

 

「選ぶワケダ…」

 

「「サンジェルマンに似合う可愛い衣装を!!」」

 

…雑な誘導に全力で乗っかろうとする、仲間達の悪い笑顔を目撃した。

 

「なっ!?何を言っているの!!?我々の代表はカリオストロでしょう!!?!?」

 

「何を言っているワケダ!?我々のリーダーはサンジェルマンなワケダ!!サンジェルマンを差し置いて代表を務めるなど、あってはならないワケダ!!!」

 

興奮しながら早口でそう捲し立てるプレラーティに、サンジェルマンが気圧されてしまう。そんなプレラーティの肩に手を置いて宥めるような仕草をしつつ、カリオストロは任せておけと言うようにプレラーティにウィンクしてサンジェルマンに話しかけ始めた。

 

「いや~女の魅力を比べるって事で、あーしもつい熱くなってたけどぉ~…お題は『可愛い』でしょう?このお題にあーしのワガママボディはちょっと刺激が強すぎると思っちゃったわけ?」

 

「な、ならば、我々の中で最も適任なのは小柄であるプレラーティのはず!?」

 

「残念な事に、対戦相手の中にはキャロルンがいるでしょう?系統が被っちゃうのはよろしくないと思わない?それにこの国では黒髪が一般的だから、どうしても金髪のキャロルンに軍配が上がっちゃうのよねぇ?他チームとの差別化を狙うなら、サンジェルマン一択でしょう!」

 

「い、いや!それならば絶対にカリオストロの方が良い!可愛さなど皆無な私では、彼女達に対抗する事など…」

 

「アハハハハハ!何言っちゃってるの?敵ながら他のチームの子達が可愛いのは確かよ?でもね、サンジェルマンの可愛さがあの子達に劣っているなんて事は絶対に無いから安心しなさい!サンジェルマンが自分を可愛いと思えないのは、今のサンジェルマンがカッコイイ感じに仕上がっちゃってるだけだから…ここにある衣服を使ってあーしが全力でサポートすれば、サンジェルマンはきっと可愛さで世界だって取れちゃう♡」

 

「だ、だが…しかし…!」

 

ナナシ相手に発揮される事の無かったカリオストロの巧みな話術によってサンジェルマンが徐々に追い詰められていく。それでも踏ん切りがつかない様子のサンジェルマンに、カリオストロとプレラーティが真剣な表情で語り掛けていった。

 

「そう、ね…ちょっと無理があったかもね?」

 

「幾ら理屈を並べたとしても、飾った言葉ではサンジェルマンを納得させる事は出来ないワケダ」

 

「二人共…!そ、それじゃあやっぱり、代表は…」

 

理解を示してくれた様子の仲間達に、サンジェルマンはホッと息を吐いて安堵する。やはり代表は自分などでは無く、二人のどちらかを選ぶべき…

 

「勝敗などこの際どうでも良くて、我々はとにかくサンジェルマンの可愛い姿が見たいワケダ!」

 

「あーしらのリーダーの可愛い姿を、有象無象に見せびらかして自慢したいだけなのよ!!」

 

「ちょっと二人共!?あの男に毒され過ぎていない!!?」

 

「いいえ!これは紛う事なきあーしらの本心なの!!」

 

「我々の勝利と願望!双方を掴み取るための最適解なワケダ!!」

 

「む、むうううううぅぅぅ…!!」

 

仲間達の並々ならぬ熱意に、サンジェルマンは否と言う事が出来ず…最終的に、ガックリと肩を落とすように頷く事になったのだった。

 

 

 

 

 

「それで?あの格好に落ち着いたのはどういう因果なワケダ?」

 

自分がいれば問題無いから結果を楽しみにしていろと部屋を追い出されたプレラーティは、スカート姿で羞恥に悶えるサンジェルマンの姿にとても満足しつつも、どのような経緯であんな服装になったのかをカリオストロに確認していた。

 

「えーっと…第一目標として、あーしはサンジェルマンにスカートを履かせたかったわけよ。それもある程度丈の短い素肌が見えるタイプ」

 

「素晴らしい考えなワケダ。それで?」

 

「まず用意された衣服の中から、スカートの丈を基準に何パターンか可愛いコーディネートの組み合わせを用意した後…一番丈の短い、ちょっと背筋を伸ばしたらマルッと中身が見えちゃいそうな超ミニから提案していったの」

 

「とても可愛いとは思えない煽情的なチョイスなワケダ。その姿も是非見てみたかった…続けて?」

 

「当然試着すら無理って話になったから、次はもうちょっとまともなデザインの、太ももの魅力が輝くミニスカを提案したの」

 

「隠すべき場所が見えなければ至って健全なワケダ。それで?」

 

「『も、もうちょっといかがわしくないデザインにしましょう?』って拒否されたのを聞いて、あーしは透かさずあの衣装を提案したの!」

 

「あの学生服を?」

 

「そう!あれはあの信号機ちゃん達も着ている未成年の女子達のために用意された衣服!いかがわしい等と言う事はあり得ない!!もしそんな意見が出るのならば、そんな考えに至ったその人間の発想がいかがわしいのだと声を高々に主張したの!!!」

 

「なるほど…普段のサンジェルマンであれば、あの丈でも大勢の前に出る事など無いワケダ。それを過激なデザインの妥協点として提示する事で、これ以上奇抜な衣装を勧められたくないサンジェルマンは飛びついた…流石は元詐欺師、抜け目ないワケダ。しかし…」

 

大勢の前に立つ、内股でモジモジとする赤い顔のサンジェルマンを見て…プレラーティはフッと笑ってしまった。

 

「…どうやら私は、いかがわしい発想の人間なワケダ」

 

「奇遇ね?あーしもよ」

 

とても満たされた表情をしながら、カリオストロとプレラーティはサンジェルマンから視線を外す事無く互いの拳を合わせるのだった。

 

『見るからに真面目な委員長が、友達に無理矢理エントリーさせられたと言った様子でしょうか?フレッシュな可愛らしさを見せてくれたサンジェルマン選手の得点は!?』

 

店員A 9点

店員B 8点

店長  9点

 

『お~っと!未来選手を僅差で抜いて、サンジェルマン選手が暫定一位となりました!9点を出した店員Aさんと店長さんは最後まで10点の札を見ていましたが満点は未だ上げられません!一方、店員Bさんは点数を上げる気が無かったように見えましたが、何か理由があるのでしょうか?』

 

『いえ、その、私が審査員を務めるのもおこがましい程レベルの高い方々なのですが…サンジェルマンさんには、あの雰囲気なら是非メガネをかけて頂きたかったな~と…』

 

『ああ~…』

 

「「メガネ?」」

 

至る所から納得の声が上がる中、カリオストロ達はあまりピンと来ていなかった。

 

『なるほど!彼女の見た目ならば、優雅に微笑んでいれば高貴なお嬢様系タイプ、背筋を真っ直ぐ堂々としていればイケメン王子様タイプに見えそうですが、今の真面目な委員長のような雰囲気なら確かにメガネが欲しかったですね!小道具には用意してあったのですが…もう点数は決まってしまいましたが、ちょっとコレをかけてもらえませんか?』

 

「え?え?あ、ああ…」

 

良く分からないままに、サンジェルマンがナナシから赤い縁の伊達メガネを受け取る。特におかしなところも見当たらず、少しでも顔を隠せるならその方が良いと考えたサンジェルマンが、その伊達メガネをかけると…

 

「「っ!!?」」

 

『オオオオオオオオオオ!!!!』

 

「え!?何!!?」

 

カリオストロ達が目を見開き、観客達が歓声を上げる。その理由が分からずサンジェルマンはただただ狼狽える事しか出来なかった。

 

しかし確かにメガネをかけたサンジェルマンの姿は、元々の真面目さを際立たせつつ、その顔を朱に染めて戸惑っている様子が非常にマッチしていた。

 

『うわ~想像以上でした!これなら私、満点を出していたかもしれません!』

 

『これは少々もったいなかったですね~。この痛恨のミスが今後どう響いて来るか…それではサンジェルマン選手、こちらの席へどうぞ!あ、メガネはそのままで大丈夫ですので!!』

 

「は、はぁ…」

 

サンジェルマンは未来の隣の席へと移動していき、自分が目の前の子よりも可愛いと評価された事が一番信じられない様子で席に着いた。

 

「不覚!まさかメガネ一つで、あんなにも映えるなんて…!」

 

「この国の美的感覚は、侮れないワケダ…!」

 

謎の敗北感を覚えつつ、記録を撮っているらしいナナシとガリィから何とか先程のサンジェルマンの絵姿を入手出来ないかと考えるカリオストロ達を他所に、グランプリは後半戦へと突入するのだった。

 

 




店員Aさんが響似のテンション高いお姉さん、店員Bさんが気持ち落ち着いてる方のお姉さんです。店長は初登場。この際名前を考えようかとも思ったのですが、ちょっと思いつかなくて…
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