戦姫絶唱シンフォギア コドクの神が求めるモノ 作:@sora@
「ヴァネッサ!ヴァネッサ!!」
「しっかりするんだゼェエエエ!!」
S.O.N.G.本部に拘束された、エルザとミラアルク…その二人の間に、同じように拘束されたヴァネッサが座らされていた。しかしヴァネッサはここに連れて来られる時の刺激が少々強すぎたようで、虚ろな目をして真っ白になっていた。そんなヴァネッサにS.O.N.G.の面々が憐れむような視線を向ける中、ナナシは我関せずといった様子で再びカンカンとアイアンメイデンの調整を続けていた。
「情け容赦ないな、おい」
「え~?きちんと自分で降伏を選択させた上でちゃんと家族の元までエスコートしてやったんだぜ?充分優しいと思うんだけどな?」
奏の言葉にナナシは悪びれる様子も無くそう答える。ミラアルクがキッとナナシを睨むが、そんな視線を一切気にする様子も無くナナシは響達へと声をかけた。
「それで?俺がいない間に口を自由にしたみたいだけど、何か情報は聞き出せたのか?」
「そ、それは…」
「ずっと拘束を外せ、自由にしろと叫ぶだけで、まともな話し合いは出来ていないな」
答えに詰まる響の代わりに、弦十郎がそう言ってナナシの問いに答えた。
「だったら煩いだけだし、また口を塞いで良いんじゃないか?反抗の意志を持っている間は拘束を解くのは論外だぞ?」
「も、もうちょっとだけ待ってください!彼女達の目的を、何を望んでいるのかを聞く事が出来れば、きっと分かり合えるはずです!」
「『皆と仲良くしたい』らしいぞ?」
「へ?」
突然のナナシの言葉に響が呆けていると、ナナシが“投影”を使ってヴァネッサとのやり取りを映し出した。
『私達はね、皆と仲良くしたいだけなの。だから…』
ヴァネッサが色っぽい仕草でナナシに近づき胸のファスナーを握らせ、ナナシがニヤニヤしながらヴァネッサのファスナーを降ろしていく…
「わあああああああ!!?」
響が顔を真っ赤にして“投影”の映像を打ち消すように手を振るう。そんな響の様子をナナシが面白そうに見ていると、何人かナナシにジトッとした視線を向けていた。
「随分と、その女と楽しんでいたようだな?」
「そりゃもう楽しかったぜ!思わず体のアチコチが固くなるくらいにな!」
「楽しいと体が固くなるんデスか?」
「男なら仕方がないよな?弦十郎!」
「そこで俺に話を振るな!?」
翼の追究を難なく躱し、弦十郎をからかってナナシが笑う。一頻り笑った後、ナナシは先程のヴァネッサの発言について語り始めた。
「色仕掛けに興味を示した俺を内心でめっちゃ小馬鹿にしたり、自分の色気が通じた事が嬉しくて割とノリノリで演技していたみたいだけど…さっきの一言だけは、心の底から言っているように感じた。あくまでも俺の“妄想”だけどな」
あくまでも自分の憶測であると念を押すナナシであったが、仲間達の中でそれを疑う者は一人もいない。ナナシの言葉に誰もが納得している様子に、寧ろエルザ達の方が困惑していた。
「まあ、それで神の力を奪おうとしたり、ライブを襲撃しようとしているのは正直意味が分からないけどな?皆と仲良くしたいなら、普通に仲良くすれば良いじゃないか?」
「普通、に…?」
ナナシの言った『普通』と言う言葉に、茫然自失だったヴァネッサが僅かに反応を見せた。
「Exactly!!誰かと仲良くなるのなんて、ちょっと会話をすれば出来る事だろう?もちろん個人差はあるから、この『ちょっと』が数分で済む場合もあれば、数年かかる場合もある。それでも分かり合う事を諦めさえしなければ、途中でどれだけ嫌われてもいつの間にか仲良くなれるものだ。根拠は俺の妹弟子」
「え!?わたし!!?」
「これまで何人も出会い頭に殺し合いになって、途中で無自覚に相手の地雷を踏み抜いたりしているのに、最後は生涯の友レベルで誰とでも仲良くなっているじゃないか?」
「それを言うなら兄弟子の方でしょう!?わざと相手の地雷を踏んでいるのに最後は皆から好かれているじゃないですか!!」
「いやいや、俺は嬉々として嫌われようとしたら何故か程よい距離感に相手の方が納まってくるだけで、自発的に仲良くなろうとして笑顔で相手の古傷抉っているのに最終的に仲良くなれている響の方が凄くないか!?」
相手を褒めているのか貶しているのか分からないナナシと響に、周囲は正直どっちもどっちだと思っていた。
「…分かり合うなんて、出来る訳ないじゃない」
そんなヴァネッサの一言が、兄妹弟子達の愉快なやり取りを止めさせた。周囲の注目を集めたヴァネッサは、不快感を隠そうともしない表情で口を開いた。
「その『普通』を奪われた私達は、『人』と分かり合うなんて出来るはずがない…だって『人』は、異質な存在を拒み隔てるものだから…当然のように『普通』の立場を享受出来るあなた達に、私達の事なんて理解出来るはずがない!!」
悲痛な叫びを上げて、ナナシの言葉をヴァネッサが否定する。ヴァネッサの両隣に座るエルザとミラアルクも、ヴァネッサの言葉に同調するようにナナシ達に憎悪を籠めた視線で睨みつけていた。
そんなヴァネッサ達の言葉と感情を受けたナナシは…とても面白い物を見つけた子供のような、とびっきりの笑みを浮かべた。
「え?マジで?まさか、こんなアニメみたいな事がリアルに!?目の前に!!?おい、お前ら!!」
「な、何よ!?」
「まさか、まさかだけど…お前らの目的って、神の力で普通の人間になりたいって事なのか?」
「「「っ!!?」」」
ナナシの言葉に、ヴァネッサ達が動揺を露わにする。それを見たナナシは…堪えられないと言った様子で大爆笑し始めた。
「あっははははははは!!凄え!凄えぞ弦十郎!!王道だ!こいつら王道で真っ当な人外だ!!妖怪人間だ!ああいや、錬金術関係なら鎧の弟の方か?あ〜同作品の豚とカエルの軍人がまさにこんな感じか!!そうだよな~、本来人に焦がれる人でなしはこんな感じで暗くて面倒くさい感情を抱えるものだよな!!あっははははははは!!!」
収まらないナナシの笑い声に、最初は困惑していたヴァネッサ達は徐々に怒りを覚え、ついにミラアルクがナナシに噛みつくように叫んだ。
「何がそんなに可笑しいんだゼ!!」
「いやこの状況の何もかもが可笑し過ぎるだろ!?『普通』じゃないから自分達は分かり合えない?拒まれる?クソ重い感情が籠められているのに、言葉の内容がペラペラに軽くてヤバイな!ハッキリ言わせてもらえば、そんなのはお前らの気のせいだ!お前らが人と仲良く出来ないのは、単純にお前らが仲良くしようとしてないだけだろう?」
「言わせておけば好き勝手な事を!何を根拠に貴様はそんな事を言っているでありますか!!」
「根拠ならこの部屋の中にずっとあるじゃねえか?」
スッとナナシが指を上に指す。ヴァネッサ達はついその先に視線を向けるが、そこにあるのは天井と照明だけだ。からかわれたと判断した三人は、再び憎悪を籠めた視線をナナシへと向けて…
体中の至る所に無数の眼球を埋め込んだ化け物を目撃した。
「「「ぎゃああああああ!!?」」」
「あっ、ヤバいクラクラする。感覚器官作ったらちゃんと全部機能するのか…ハッ!?つまり耳も沢山生やせば機能するって事か!!?歌姫達の歌を比喩でなく全身で感じる事が出来るのか!!?」
ニョキニョキニョキニョキ!!
「「「ぎゃあああああああああああ!!?!?」」」
「がぁあああああ耳があああああ!!?!?」
アダムとの決戦でその身に様々な異常を生じさせ、騒動終結後もしばらくは周りを心配させたナナシであったが…神の力を取り込んで尚、ナナシは何処までも“紛い物”のナナシのままであった。
しかし、全く変化が無かったわけではない。それはかつてナナシが恩人から受けた『あなたはあなたのまま変わればいい』と言う言葉を実行するかのような変化がその身には起こっていた。
ナナシの在り方を保ったまま、それでもより理想に近づく変化…即ち、進化。
ナナシが持つ既存能力の向上である。
“高速再生”は再生速度が飛躍的に向上。
“血流操作”はより精密に、より大量の血液の操作が可能に。
“収納”は両手という制限が無くなり、全身…本体と接していれば、“血流操作”で操る血液を起点に物を出し入れする事さえ可能となった。
特に飛躍的に能力が向上したのが、“浮遊”と“身体変化”である。その性能は凄まじく、ナナシが改めて能力名を付け直す程だった。
フワフワと宙を漂うだけであった“浮遊”は、かつてナナシが望んだ高速での飛行が可能となり、“飛翔”と名を改められた。
そして手足をゆっくりと武器に変化させる“身体変化”は、全身を瞬時に、様々な姿形へと変貌させる事が可能となり、“千変万化”の名を与えられた。
どの能力も短所を消して長所を伸ばす方向で纏まった形である。しかし、制限の全てが無くなったという訳でもない。
例えば“千変万化”は、ナナシの思うままに姿を変えられる。アニメキャラの設定を借りて体表を硬質な炭素で覆ったり、鋭利で伸縮自在な爪を生やして攻撃するといった事も出来る。それこそ全身を変化させて人間以外の動物などに変身する事さえ可能となった。しかし、一定以下の大きさ…具体的には、人の頭部より小さな姿にはなれなかった。
厳密に言えば、能力で変身する事自体は可能ではあったが、試しに小動物に変身しようとした際、意識の混濁があったために慌てて取りやめたのだ。検証を共にした了子やキャロルらの考察では、脳の構造を変化させようとしたため人並みの思考能力を失いかけたのではないかという仮説が立てられた。このことから、脳を損傷した際の意識消失という欠点も継続していると考えられる。
完全たる神に近しい力を有していても、未だ欠点を抱えた不完全…まさに“紛い物”の名にふさわしいと、ナナシ本人はその結果に苦笑するのだった。
目玉と耳の怪物と化し、ヴァネッサ達の甲高い悲鳴にダメージを受けたナナシは、しばらく床にのたうち回ってからよろよろと立ち上がった。
「ぐおおお、頭が割れるかと思った…だが、俺は諦めない!いつかこの力を駆使して、ライブで翼達の歌を浴びるように堪能してやる!!」
「いや三人の悲鳴で死にかけているのに、その状態でライブに行ったら観客の歓声で死ぬだろ?」
熱意を燃やすナナシに奏が冷静なツッコミを入れる。そんな光景を、ヴァネッサ達は信じられない物を見る目で眺めていた。
「話を戻して…こんなモロに化け物の俺が『普通』に馴染めているのに、たかだか耳や羽が生えている程度で無理とか言われても滑稽で笑うしかないだろう?なあ、弦十郎?」
「ナナシ君のその姿は我々にとっても初見なのだが…とりあえず全身の眼球をギュルンギュルン回すのはやめようか。流石に気味が悪いぞ」
そんな風に言う弦十郎であったが、その声音にナナシへ対する嫌悪や恐怖は感じられない。響達も驚いたり苦笑したりギュルンギュルン回る目玉に嫌そうな顔をする事はあるが、ナナシの奇行を『異常』として捉えている者は一人もいなかった。
その光景をヴァネッサ達が呆然と眺めていると、部屋の扉が開いて誰かが入ってきた。
「只今帰還した。邪魔するぞ…おおおお!!?」
「「ぎゃああああ化け物おおおお!!?」」
「がぁあああああ耳があああああ!!?!?」
「ええい、いい加減耳と目を仕舞え!!」
ナナシの姿を見て入室してきたサンジェルマン達が悲鳴を上げ、再びナナシがのたうち回る。少ししてよろよろ起き上がりながらナナシが元の姿に戻った事で、サンジェルマン達もようやく落ち着きを取り戻した。
「ひ、一仕事終えた部下に心臓に悪いサプライズはあんまりじゃない!?ちょっとくらい労ってくれても良いでしょう!!?」
「ごめんごめん、ご苦労様。立て続けに仕事を頼んで悪かったな。とりあえずお茶でも飲んで寛いでくれ」
「い、いや、まずは報告を…」
「フム、殊勝な心掛けなワケダ」
「話の分かる上司ってサイコー!あ~マカロン美味しい~♪」
「二人共…」
ナナシがカリオストロの要望に応えて“収納”から椅子とテーブル、紅茶とマカロンの乗った皿を出して一仕事終えたらしい三人を労う。真面目なサンジェルマンは仕事を優先しようとしていたが、当然のように寛ぐカリオストロ達を見て苦笑しつつ席へと着いた。
「もうすっかり馴染んでんな…ご都合主義、一体こいつらに何を頼みやがったんだ?」
「ゴミ箱漁ってもらってた」
『ゴミ漁り!!?』
元とは言え何世紀にも渡り裏世界の錬金術師達を牛耳っていたパヴァリア光明結社の最高幹部達にゴミ漁りをさせるなど、響達どころかヴァネッサ達までもが驚愕してしまった。
「サンジェルマン、目的の『ゴミ』は見つかったのか?」
「ゴミ…そう言われても仕方がないか…ええ、あなたの所望したそこの三人、ヴァネッサ・ディオダティ、ミラアルク・クランシュトウン、エルザ・ベートの情報は確かに手に入れたわ」
「「「なっ!!?」」」
自分達の情報をゴミ漁りで見つけたという訳の分からない発言に再び三人が驚愕する。ハッタリと考えたいが、先程サンジェルマンが口にしたフルネームは確かに自分達の物だったため、三人は唯々言葉を失うしか出来なかった。
「ゴミ箱…例の施設の事か?」
「Exactly!!パヴァリア光明結社崩壊後、最高幹部三人からの情報提供で捕縛した大量の錬金術師を収監するため、基地候補として確保していた無人島に急遽建造してもらった監獄、その名も『ダストボックス』!!」
「何でそんな名前にしたのよ…」
「錬金術師ってどいつもこいつも選民意識が高くて、大半が錬金術の使えない人間はゴミみたいな価値観だったから当て付けだな」
「全く、思うがままに拠点の設計と建築をするはずだったのに、あんな三下共のお陰でつまらない監獄の設計などさせられて堪った物ではないワケダ!」
「まあまあ、元々拠点に関しては別の案が出たから保留だっただろう?それに錬金術師用の大監獄なんて前代未聞の設計も結構ノリノリで楽しんでいたじゃないか?」
「フン!」
「そんな危険思想の者達を一カ所に集めて大丈夫なのか?結託して騒動を起こされるのでは…」
「そこは大丈夫、もうほとんどが錬金術師じゃなくなっているから」
「え?」
「錬金術師キャロルの秘術である想い出の転送技術、そして我が英雄が作り出したダイレクトフィードバックシステムを応用する事で、脳の記憶領域から特定の記憶をピンポイントで抽出する…つまり、『錬金術に関する記憶のみ』を頭から抜き取る方法を確立させた」
『!!?』
「だからあいつらは、世界の真理を識るために生涯に渡って探求を続けてきたという自尊心を持ったまま…その全てを失った訳だ」
「流石にちょっと同情しちゃうわ。前にも言ったけど、錬金術師にとってその知識は命と同等以上の価値がある。それを奪われるなんて、殺される方がマシかもしれないわね?」
「理解している。
ナナシの声音に、室内の全員がゾクリと体を震わせる。それが決して優しさからの判断でない事は誰もが容易に理解出来た。恐らく、錬金術師達の拠点を制圧する際にそれ相応の光景を目撃したのだろう。
「つまり、ゴミ漁りとは…」
「収監されたゴミ共からの事情聴取、あとは抽出した錬金術に関する知識を貯蔵している『ゴミ溜め』から、こいつらに関する情報をサルベージしてもらった。それじゃ、報告を聞かせてもらおうか?」
「…我々が情報を聞き出した者達が所属していた拠点では、『完全な生命の創造』を主軸とした研究が行われていた。そこの三人は、その研究の被検体だ」
『っ!!?』
サンジェルマンの報告に、響達が驚愕する。ナナシは無言のまま視線でサンジェルマンに報告を続けるよう促した。
「そこの獣の因子が混ざっているのがエルザ・ベート。フランス出身、近親者によって暴行・監禁を受けた後、結社の実験台として引き渡された。神経機能の増幅手術が施されており、反応速度の高速化と並列処理の複雑化を実現させている。また、マニピュレーターデバイス『テール・アタッチメント』を尾てい骨に接続する事で、アタッチメントに対応した戦闘能力を発揮する事が出来る」
「えっと、つまりこういう感じ?」
ナナシが頭からピコリと犬耳を生やし、腰の辺りから先端に鋭い爪や獣の顎、ふさふさした毛の付いた尻尾を複数生やしてみせた。
「…まあ、そんなところだ。次にミラアルク・クランシュトウン。オーストリア出身、旅行でスロバキアに訪れた際に会員制の拷問俱楽部にかどわかされた被害者。その後エルザと同様に結社の実験体として引き渡された。神話や伝説上の怪物の再現という試みで作られたヴァンパイアの失敗作。バイオブーステッドユニット『カイロプテラ』を纏う事で身体能力を強化させたり、翼を成形して飛行能力を獲得する事が可能だ。また、『
「えっと、つまりこういう感じ?」
両手両足を“血流操作”で肥大化させ、背中に蝙蝠の羽を生やしたナナシがモスト・マスキュラ―のポーズをして瞳をステンドグラスのような配色に変化させた。
「……まあ、そんなところだ。最後にヴァネッサ・ディオダティ。香港出身、元々は結社の構成員としてファウストローブの開発に関わっていたが、実験中の事故によって体の大部分を損壊させてしまった。損壊した体を義体に換装する事で一命を取り留めたが、『完全なる命』を至上とする結社にとってその在り方は異端であり、結社内での地位は失墜して実験の被検体として扱われた。全身に様々な武装を内蔵させた錬金術由来のサイボーグと言ったところだ」
「エット、ツマリコウイウカンジ?」
体表を金属質に変化させたナナシが、合成音声のような声を出しながら“収納”から取り出した重火器を全身に組み込んでロボットダンスのような動きをしていた。
「………まあ、そんなところだ。そういった経緯でこの三人は失敗作として結社の構成員から『卑しき錆色』と呼ばれ蔑まれていた」
「その名でウチらを呼ぶなぁ!!」
『卑しき錆色』とサンジェルマンが口にした瞬間、ミラアルクが凄まじい剣幕で怒声を上げた。
「ウチらは誇り高き『ノーブルレッド』だ!卑しき錆色なんかじゃない!!」
「…『ノーブルレッド』とはまた、随分と大きな口を叩くワケダ」
「どゆこと?」
「『赤』は錬金術の到達点である『黄金』に至る色なの。だから錬金術師としてその色を冠する名乗りを上げるなら、相応の格式が求められるでしょうね?」
「ふ~ん…」
カリオストロの説明にナナシは軽い返事を返しながら憤るミラアルク達の様子をジッと眺めた。そうしている間に、サンジェルマンがまだ報告していない三人の情報を補足していく。
「先程言ったようにこの三人の体には人以外の因子が混ざっている。それによって本来引き起こされる拒絶反応を、血中に含まれる『パナケイア流体』によって抑えこんでいる。しかしそのパナケイア流体は力を使えば使うほど淀んでいき、逆に体を蝕む死毒へと変貌していくため、三人が生きるためには定期的な人工透析が必要不可欠だ。それも透析に使用するのは百四十万人に一人の割合でしか見つからないと言う稀血『Rhソイル式』でなければならない」
「えっ?欠点あるの?」
サンジェルマンの説明を聞いたナナシは、とても残念な物を見るような視線で三人を見てしまった。
「何と言うか、完全な生命の創造を目指した割にはパッとしないな?基本俺の下位互換じゃないか?」
「「「っ!!?」」」
「似たような経緯で作られたんじゃないかって仮定された俺が“紛い物”だとすると、こいつらは精々…『パチモノ』ってところか?」
「パッ!?」
「パチッ!!?」
「パチモノ、ですって!!?!?」
「「ブッフ!!?」」
あまりにもあんまりなナナシの評価にヴァネッサ達は言葉を失い、プレラーティとカリオストロは吹き出してしまった。サンジェルマンと響達は何とも言えない顔でヴァネッサ達に同情するような視線を向けている。
「パチモノwww一気に安っぽくなったわねwww」
「ふひゃひゃひゃ!ノーブルレッドや完全なる生命の失敗作などと言う御大層な肩書に比べれば、今のこいつらにはお似合いの呼び名なワケダ!!」
「はあ、全く…それで?わざわざ私達に情報を集めさせた訳だが、貴様は彼女達にどのような沙汰を下すつもりだ?」
「順当に考えれば、全員『ゴミ箱』行きだろうな?」
『!!?』
至極あっさりとヴァネッサ達を収監すると言ったナナシに全員が言葉を失った後、響が慌ててナナシに詰め寄った。
「ま、待ってください兄弟子!聞いたでしょう!?その人達は…」
「結社で実験動物扱いされた被害者って言いたいんだろう?こいつらは俺達が拠点を潰し回った時には既にいなくなっていた。アダムが倒れた混乱に紛れて脱走でもしたんだろう。それは別にいい。問題は自由になったその後、こいつらは被害者として保護を求めるのではなく、自分達の目的のために俺達を襲撃する事を選んだんだ。当然、錬金術とその体に宿る力を使ってな?その時点で、こいつらの立場は明確に錬金術の被害者から加害者に変わったんだよ。確かにこいつらには同情に値する境遇に身を置いていた。だがな、それがライブを…一般市民を襲撃していい理由になるのか?」
「で、でも…だとしても…!」
「俺は錬金術師共の収監施設を作るに当たって、国連を通じて各国に捕縛した錬金術師共の処遇をある程度S.O.N.G.が自由に決められる権利を認めさせた。大半はどうしようもないゴミばかりだったが、それでも収監した奴らの経歴は精査した上で俺は全員と話す時間を設けた。極一部には脅されて実験に協力している奴らもいたが、そいつらはきちんと『リサイクル品』として分別して経過を観察している。確かにライブを襲撃しようとしていたそいつらをぶっ殺したいと思ったし脅しもした。それでもサンジェルマン達に指示して情報を集めさせた上で俺は判断した。響、お前には俺の判断を覆すだけの言葉を紡ぐことが出来るか?」
「……」
ナナシの言っている事も理解出来る。それでも、どうしても納得のいかない響は今にも泣きそうな顔でナナシをジッと見つめていた。
「…まあ、可愛い妹弟子に免じて?あくまでも未遂って事で特別保護対象としてこのS.O.N.G.で預かる事を提案しても良い」
「兄弟子…!」
「だが、それが出来るのは犬と蝙蝠までだ。そこのサイボーグは無理」
「なっ!?」
「何でヴァネッサだけ!!?」
「……」
ナナシの沙汰にエルザとミラアルクが驚くが、当のヴァネッサは黙り込んで顔を伏せていた。
「当たり前だ。お前らは第三者の悪意で実験動物にされたのに対して、その女は元々結社の研究員…そんな体になったのは自業自得だろう?何故同じように扱う必要がある?それともお前は無理矢理実験に付き合わされただけだったのか?」
「……」
ナナシの問いに、ヴァネッサは無言で俯く事しか出来ない。ここで肯定出来ないという事は、弁明の余地は無いという事だ。
「ざっけんな!お前なんかが上辺だけの情報でヴァネッサを語るな!!ヴァネッサの事を、ウチらの事を何にも知らない奴が…っ!!?」
その瞬間、その身に降りかかる圧にミラアルクは口を閉ざして身を震わせる。ヴァネッサとエルザも同様だ。恐怖に震える事しか出来ないミラアルクに、ナナシが圧を放ちながらゆっくりと近づき、その髪を掴んで無理矢理自分とミラアルクの目を合わせた。
「おい、クソ羽虫。お前らは言ったな?自分達の事なんか理解出来る訳が無いと…ちょっと体が普通とは違う程度で理解する事を諦めた奴らが…一丁前に理解されない事に理不尽を感じてんじゃねえよ。次に生意気な口を叩いたら、今度こそお前の目の前で犬の体に風穴を空けてやる」
「っ!!?」
淡々と紡がれたナナシの言葉に、ミラアルクは南極での出来事を思い出し、様々な感情からカチカチと歯を打ち鳴らしながらも何も言えなくなった。
「全員仲良くゴミ箱に入るか、汚れを一つに集中させて二つはリサイクル品に回すか、こいつらに選べるのはそれぐらいだ」
『……』
仕方がない事とは言え、全員の顔が暗くなる。選択を間違えたとは言え、普通の人間として皆と仲良くなる事を望んだ彼女達が至る結末としては、どうにも後味が悪い…
「まあ、選ばせるつもりも無いけどな?こいつらの身柄は俺が預かるから」
『…へ?』
突如として、これまでの会話を土台からひっくり返すような発言をするナナシに、全員の目が点になった。
「だってせっかくの王道人外キャラ達だぜ!?しかも犬耳娘と吸血鬼娘とロボ娘だぜ!!?こんな面白そうなレアキャラ共を捨てるなんてもったいないじゃないか!元々俺が好き勝手するために国連とOHANASHIして権利を認めさせたんだからな!!誰にも文句は言わせねえよ!あはははははは!!」
ヴァネッサ達と、まだ付き合いの浅いサンジェルマン達が未だ呆然とする中で、響達は『やっぱりこうなったか』と言った顔でそれぞれ苦笑したり呆れたり安堵してしまった。
「はぁ、全く…それで?結局三人の扱いはどうするんだ?やはり三人共特別保護対象として身柄を預かるのか?」
「いや?言ったじゃん、それじゃ理屈が通らない。こいつらの身柄を預かるのはあくまでも俺だ。場所はS.O.N.G.の施設を借りさせてもらうけどな!」
「…ならば、君は三人を一体どう扱うつもりなんだ?」
「決まっているだろう?飼うんだよ」
『………ん?』
今何か、ナナシの口から妙な言葉が聞こえた気がして全員が首を傾げる。買う?Cow?
全員が混乱している間に、ナナシが指先を切り裂いて血液を操りヴァネッサ達へと向かわせる。身動きの取れないヴァネッサ達は顔の近くに迫る血液に目を瞑って身構える事しか出来なかったが、特に痛みを感じるなどは無く恐る恐る目を開くと、三人の首には血液で出来た赤い首輪が付けられていた。
困惑するヴァネッサ達に、ナナシはとても楽しそうな笑顔を向けながら言った。
「今日からお前らは、俺のペットだ!!」
”浮遊”→”飛翔”
イメージはDBの舞〇術。
”身体変化”→”千変万化”
某強欲さんや色欲さんみたいな使い方をしていたけど、実質一番近いのは嫉妬さんの能力。
後は某ハンター漫画のキレると爆発する王直属護衛軍みたいな感じです。