戦姫絶唱シンフォギア コドクの神が求めるモノ   作:@sora@

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第190話

それはナナシ達が月遺跡に向かう直前の事だ。

 

「ただいま~!俺の愛しいペット達、元気にしていたか!!」

 

「「「!!?」」」

 

扉を開けてテンション高く入ってきたナナシに、ヴァネッサ達はビクリと身を震わせてしまった。

 

自分達を蹂躙して以来、一切接触してこなかったナナシの唐突な訪問にヴァネッサ達は咄嗟に反応出来ずに固まってしまう。そんな三人の心境などお構いなしに、ナナシは一番近くにいたエルザに近づくと、その体を抱き寄せて頭をワシャワシャと撫で始めた。

 

「ふぇっ!?な、何をするでありますか!!?」

 

「何って飼い主としてペットを愛でているに決まっているだろう?うりうり~♪」

 

「わううううう!!?」

 

犬耳を重点的に撫で回されて、エルザは顔を真っ赤にしながら叫び声を上げてしまった。

 

「ちょ、ちょっと!?エルザちゃんに妙な真似しているんじゃないわよ!!」

 

「ハイハイ分かっているって!ちゃんとお前の相手もしてやるから!」

 

ぎゅむっ!ワシャワシャワシャ!

 

「なっ!?ちょっ、何を!!?」

 

エルザを助けるために近づいたはずのヴァネッサもまた、ナナシに抱き寄せられて頭を撫でられる。これまでも世話と称して色々手入れをされた事はあったが、ここまで直接的なスキンシップは初めてだったので、ヴァネッサはどう反応して良いか分からず顔を赤くしながらナナシにされるがままになってしまった。

 

「てめえ!エルザとヴァネッサに気安く触ってんじゃ…」

 

家族の体を無遠慮に弄るナナシにミラアルクが鋭い爪を構えるが、自分達がナナシに逆らえない事を思い出して歯を食いしばりながら動きを止めた。

 

「うん?どうした?せっかく爪を出したのに突き立てに来ないのか?」

 

そんなミラアルクに対して、ナナシは心底不思議と言った様子で首を傾げる。そんなナナシの仕草が自分を煽っているようにしか思えず、ミラアルクは額に青筋を立ててますます憎悪を増大させた。

 

「このクソ野郎…ウチらがお前に逆らえないからって…!」

 

「あっ、なるほど、そういう事か!この前の『躾け』はあくまで他人に迷惑をかけないようにするためで、飼い主の俺にお前らが牙や爪を立てる事まで我慢させるつもりはねえよ。寧ろドンと来い!」

 

「はあっ!?」

 

「ご主人様がじゃれつく事を許可してやるって言ってんだ。怖いなら無理しなくて良いぞ?嫌がるお前を俺が一方的に可愛がるだけだからな!あははははは!!」

 

「調子に…乗るなぁあああああ!!!」

 

挑発だと分かっている。例え手傷を負わせたところですぐに治って何の意味もない事も承知しているが、苛立つミラアルクはせめて僅かな間だけでもナナシの言葉を遮りたくて、ナナシの喉にその鋭い爪を突き立てようとした。

 

「よっと」

 

ドスッ!

 

「!!?」

 

しかしナナシは避けるどころか自ら一歩前に出た。それによってミラアルクの狙いが外れてナナシの胸を貫く。そして…

 

ズブズブズブ…

 

…ミラアルクの腕はどんどんナナシの胸部に埋まっていき、遂には肩付近まで飲み込まれてしまい、碌に身動きが出来なくなったミラアルクの頭をナナシは胸や口から血を流しながら笑顔で撫でまわした。

 

「ゴフッ、あっはははは!元気そうで何よりだ!食事を取らなくなったって聞いた時は心配したんだぞ?やっぱりペットは元気でいてくれないとな!」

 

ガブッ!!

 

「グウウウウウウ!!!」

 

自分の行いの何もかもが通用せず、せめてもの抵抗でナナシの肩に牙を突き立ててミラアルクが唸り声を上げる。それでもナナシはミラアルクを愛でる事をやめる様子はなく、更には腕を伸ばしてヴァネッサやエルザまで引き寄せて三人まとめて抱き締めてしまった。ナナシのあまりのしつこさに、ヴァネッサがようやくナナシに対して異を唱え始めた。

 

「い、一体何なのよ!?私達をあんな目に遭わせた挙句にしばらく放置していたくせに!今更ご機嫌取りのつもり!!?」

 

「ん~、ペットに嫌われっぱなしなのも辛いからそうしたいのは山々だが、そんな時間はもう無いからちょっと強引に愛でさせて貰うことにした。何せあと一時間もすれば俺は月へ向かうからな…最悪の場合、これがお前らと触れ合う最後の時間になる」

 

「「「!!?」」」

 

サラリと告げられた情報に、ノーブルレッドの三人は藻掻く事も忘れて固まってしまった。

 

「月の遺跡は紛う事無き神の領域…“紛い物”の俺でも無事に帰れる保証なんて無い」

 

「「「……」」」

 

「ああ、心配するな。もし俺が帰ってこられなくなった場合のお前らの扱いについては諸々手配してある。お前らが良い子にしていれば徐々に行動制限を見直してもらえるはずだし、最悪暴れさえしなければ現状維持はしてもらえる」

 

「「「!!?」」」

 

ナナシの言葉に、ノーブルレッドの三人が再び驚愕する。これまで自分達の行動を咎め、罵倒し、徹底的に糾弾してきたナナシが何故自分達に対してそのような手間をかけるのか、三人には全く理解出来なかったからだ。

 

「あなたは、一体何を…今更何の目的で私達に関わろうと言うの!?」

 

「目的も何も、自分にもしもの事があった場合のペットの行く末を考えるのも飼い主の義務ってだけだ」

 

「いい加減にして!いつまでそんなお遊びで誤魔化すつもり!?情報が欲しいなら力尽くで口を割らせれば良いでしょう!?やらせたい事があるなら脅して従わせれば良いでしょう!?散々私達を痛めつけて!希望を踏み躙って!!生殺与奪を完全に掌握しておきながら!!!何でまだ私達に歩み寄るような姿勢を見せる必要があるのよ!?」

 

ヴァネッサがこれまでの鬱憤を吐き出すように叫び散らすが、ナナシはそんなヴァネッサの叫びを聞いてもヤレヤレと言った様子で苦笑するだけだった。

 

「信じる信じないは好きにすれば良い。俺は間違いなく飼い主としての義務で動いただけだ。少なくとも、お前らに対する同情や憐みでは一切無いから勘違いするな」

 

「…だったら何で…そんな義務を負ってまで、あなたは我々の身柄を引き受けたのでありますか?」

 

今度はエルザが静かな口調でナナシにそう問いかけた。

 

「お前らの見た目や境遇が創作物によくある設定みたいで面白かったってだけだ。あとは…元々拾われた立場の俺が、拾う側の気持ちを理解するのにお前らは丁度良さそうだったってくらいか?つまりは全部、俺の都合だ。まあ、憧れだけでペットを飼うのはやっぱり良くなかったかもな?正直お前らの被害者面にはイラッとする」

 

「っ!!?」

 

その言葉にミラアルクが反応しようとするが、ナナシがミラアルクの頭を抱えて牙を更に深く自分の肩に食い込ませる事で動きを封じ込めた。

 

「奪われた未来を取り戻す…御大層な事をほざいているが、お前らはただ過去の理不尽を免罪符に感情のまま暴れているだけだ。さも自分達には正当な理由があるとでも言うような態度で、全ては自分達をこんな体にした奴らが悪いと言うように怪物の力を行使する。だがな…その力を振るう事を選んだのは、紛れもないお前ら自身の意志だったはずだ」

 

そう言ってナナシは“投影”を使い三人の前に映像を浮かべる。それは今まさにナナシを爪で貫き、牙を突き立てるミラアルクの姿だった。

 

「殺意を煽ったのは確かに俺だ。だが、言われるがままにその手を血に染めたのはお前自身だ。こんな顔で躊躇いすらなく流血沙汰を起こすような奴が人と仲良くなりたいなんて言ったところで、誰が信じられる?」

 

「っ!!」

 

“投影”によって映し出されたミラアルクの顔はまさに鬼の形相であり、その手と牙を血に濡らした姿は言い逃れの余地が無い程に…怪物であった。

 

「未来ってのは選択の積み重ねだ。現在(いま)この瞬間の選択が、そこから先の一生を左右する可能性は常に存在する。だからこそ人は『理性』を以って最善の選択を模索し続ける。過去や感情はあくまで理性の補佐する指針であって、絶対的な根拠には成り得ない。どれだけ強い決意や覚悟を抱いていたとしても、そこに理性が無いならそれはただの『衝動』だ。過去を根拠に衝動のままにしか現在の行動を選べないお前らの生き様はケダモノと大差無い。そんなお前らだから俺は分相応の扱いをしているだけだ。文句を言われる筋合いはねえよ」

 

ブチッ!

 

「っ!?ゲホッ、ゴホッ!!?」

 

言い終わると同時に、ナナシは肩の肉が抉れるのも気にせずミラアルクの体を強引に引き剥がす。ミラアルクは蹲って口内に溜まった血液や肉片を吐き出した。ナナシが手を放して自由になったヴァネッサとエルザがそんなミラアルクに近づき介抱する。

 

「おっといけない、また話が長くなってしまった。『自分達は被害者だから悪くない』で自己完結する奴らに何を言ったところで無駄なのに…ああでも、会話が通じている態でペットに語りかけるのはある意味飼い主らしいと言えばらしいか?…そうだ!長期出張に向かうご主人様が、言葉の通じているか怪しいペット達にピッタリな『お(まじな)い』をしてやろう!」

 

体の傷を修復しながら何やらブツブツ呟いていたナナシが突然そんな事を言い出した直後、テーブルの上に“収納”から取り出したエルザのキャリーケースとミラアルクのカイロプテラを置いた。

 

「「「!!?」」」

 

自分達の武装の出現に、先日の蹂躙劇を連想してノーブルレッド達の体が震え上がる。そんな三人に、ナナシはニコニコ笑いながら語りかけた。

 

「お前らの玩具は返してやる。流石に月からピンポイントでお前らの体内にある血液を操るなんて真似は出来ないから、俺がお前らを止める心配なんかせずに好きに遊ぶと良い!俺と了子を見送るために、装者達を始めとした主だったS.O.N.G.の戦力は今種子島に集まっているから、俺が出発して数時間はお前達の思うがままに動けるはずだぞ?」

 

再び自分達の前に示された好機を前に、ノーブルレッド達は喜ぶどころか更に恐怖で体を縮こませる。もう三人は過去の経験から理解している。この“紛い物”の言葉に希望を抱く事ほど愚かな選択は無いと言う事を…

 

「力尽くで口を割らせる?脅して従わせる?あはははは!そんなの必要ない!お前らの行動なんて俺には手に取るように分かる!だから強制なんてしない。指針なんて与えてやらない。『俺の言葉を信じて』玩具で暴れまわるのも、『俺の言葉を信じて』良い子で大人しくしているのも、お前らの衝動のまま好きにすると良い!人と仲良くする(笑)を続けるのも、諦めて手当たり次第に虐殺を繰り広げて最後は駆除されるのでも、元飼い主の老人に縋り付く(・・・・・・・・・・・・)のも、全てはお前達の自由だ!!」

 

ナナシが邪悪な笑みを浮かべながら、ノーブルレッド達の瞳を覗き込む。全てを見透かすようなナナシの視線から逃れようとするが、三人の体はピクリとも動かない。まるで蛇に睨まれた蛙のように、パチモノ達は“紛い物”の存在を意識から外す事が出来ず…

 

 

 

「お前らの飼い主として、俺は既に選択を終えている。もうお前らがこれから先、どんな選択をしたところで…俺の思惑から逃れる事は出来ない」

 

 

 

…“紛い物”による『(まじな)い』の言葉を、その心に刻み込まれてしまった。

 

「必死に悩んで、足掻いて、俺の思惑を超えるような…そう自分達を騙せるような未来を選択してみせろ。そんなお前らを、月から帰ってきたら目一杯可愛がってやる。おっと、忘れていた。これはオマケだ」

 

ナナシが何かを三つテーブルの上に放り投げる。それはナナシが月へ出発する直前に仲間達へと配った物と揃いの御守りだった。

 

「飼い主として、ペットが健やかである事くらいは素直に祈っておいてやる。精々頑張れ。クククク…あっはははは!」

 

高笑いを響かせながら、ナナシは硬直するノーブルレッド達の前から姿を消した。ナナシが去った後も、ノーブルレッドの三人はしばらく蹲ったまま動く事が出来なかった。

 

 

 

 

 

その約一時間後…丁度ナナシ達を乗せたロケットが打ち上がった頃に、S.O.N.G.本部に破損が発生した警報が鳴り響き、職員が現場であるノーブルレッド達の部屋を訪れると、部屋の壁には大穴が空いて室内はもぬけの殻となっていた。

 

誰もいなくなった部屋のテーブルには、三つの御守りだけが残されていた。

 

 

 

 

 

「あ〜、やっぱり出ていっちゃったか、あのパチモノ共…」

 

弦十郎がナナシを見送った直後に職員達から報告された事を指摘すると、ナナシは悪びれる様子もなくアッサリと月へ向かう直前の自分とノーブルレッド達のやり取りを暴露しながら苦笑してそんな事を呟いた。

 

「いやいや、明らかにそう仕向けておいてあーた何言ってんのよ?」

 

「確かにお膳立てはしてやったが、生活が保障されたS.O.N.G.からの逃亡はあいつらにとってリスクなのは間違いない。あいつらが逃げずに現状維持する可能性は充分にあった」

 

「つまり、この状況はお前にとっても想定外だと?」

 

「いや?正直あいつらが逃げても逃げなくても、どっちでも良かったんだ」

 

サンジェルマンの問いに対して、ナナシは軽い調子でそう答えた。

 

「どっちでも良かった?」

 

「あいつらをこのままS.O.N.G.で保護するメリット・デメリットがそれぞれあったから、どうせならと本人達に好きな方を選んでもらった」

 

「メリットは分かるが、あの危険生物共を野に放つ程のデメリットが何かあったワケダ?」

 

「あるぞ?と言うかプレラーティ、お前はそのデメリットを被る可能性の大きい一人だぞ?」

 

「何…?」

 

「俺達が月遺跡を調査している間、地球の方で警戒する必要があるのは、南極で回収した聖骸を巡るトラブルだ。そして現状、最も大規模でそのトラブルを起こしそうなのが…」

 

「ノーブルレッド…いや、彼女達を陰から操っていると考えられる、風鳴訃堂…だが、だからこそ、あの三人を我々が捕らえた事でその野望は潰えたはずだ。もし風鳴訃堂が聖骸を手中に納めたところで、その力を引き出すための異端技術者がいなければどうにもならない。我々の情報でパヴァリア光明結社の錬金術師は大半が捕縛済み。ノーブルレッド…より正確に言えば、組織の実力者でありながら被検体に身を落としたヴァネッサ・ディオダティのような例外がいる可能性はゼロではないが、聖骸から神の力を引き出せるような錬金術師を風鳴訃堂が他に確保しているとは思えない。それなのに、何故…」

 

「いや待て、サンジェルマン。今まさに貴様が述べた事が答えだ。神の力を引き出せる程の実力を持つ錬金術師なら、探すまでもなく身近に存在しているであろう?」

 

『!!?』

 

キャロルの指摘によって、ようやくサンジェルマン達は気が付いた。そう、もしもノーブルレッドの生存を秘匿したまま保護を続けた場合、訃堂が次に目を付けるのは…

 

「我々…S.O.N.G.に所属する錬金術師というワケダ」

 

「なるほど、あの護国ナントカ法を使ってあーしらを口説きに来るわけね?幾らお金持ちの権力者でも、白髪のお爺ちゃんはノーセンキューだわ~」

 

「中身は貴様の方が何倍もジジイなワケダ」

 

「失礼ね!?あーしは身も心もピチピチギャルよ!!」

 

「ナナシ!貴様は我々が、力による支配に屈して貴様らを裏切るなどと本気で思っているのか!?」

 

「やり方なんて幾らでもあるだろう?実際俺があの手この手で裏切りを誘発させたから、お前らもパヴァリアからS.O.N.G.に来たんじゃないのか?」

 

「ぐっ!?」

 

「あーたと同レベルで考えられても…実際のところ、その訃堂お爺ちゃんってそんなにヤバいわけ?あーたはやたら警戒しているみたいだけど…」

 

「個人の戦闘力は恐らく弦十郎と同等、つまり俺より上。装者六人を同時に相手して完封出来るレベルだ。心理戦でも俺が危うく黒星付けられるところだった。俺からお気楽さとギャグ要素と引いて、代わりにアダムの残虐さと傲慢さを詰め込んだ感じ?」

 

「化け物じゃない!?」

 

「あのパチモノ共よりよっぽど怪物なワケダ!!?」

 

「Exactly!!」

 

「あ、あの、その辺でそろそろ…弦十郎さんがどんどん落ち込んでいるので…」

 

身内が散々な評価を受けつつ、それを全く言い返せないため、弦十郎が頭痛を堪えるように頭を押さえているのを見たエルフナインがナナシ達を諫めた。

 

「…事情は理解した。我々の身を案じてくれた事には感謝する。だが…お前は、我々の身の安全のために神の力が顕現するリスクと、あの三人の身の安全を犠牲にしたと言うのか?もっと他に方法は…少なくとも、あの三人とはもっと腹を割って話し合うべきだったのではないか?あんな殺意を煽るような真似をしなくても…」

 

『妥協など、出来るものか!!全ては人類の未来のため…その障害を排除するために、私は引き金を引くことを躊躇いはしない!!!』

 

「!?」

 

『言葉と感情を理解するだけの知性が宿った、同じ命を持ちながら…力と地位で差異を生み出し、自らの血を分けた者でさえ虫けらのように扱う!!そんな理で成り立つ今の世界を生き、その恩恵を何の疑問も持たず享受する貴様らが!!!我々を理解しようなど…ましてや、会話で妥協点を見出そうなどとは片腹痛い!!!!』

 

「!!?」

 

『流れた血も、失われた命も、革命の礎だ!現在の仮初の平穏を維持することしか考えられない貴様らに、未来の真なる平和を求め足掻く我々のことなど理解出来るものか!!』

 

「!!?!?」

 

「そうだよな~?腹割って話せばきっと理解し合えたかもな~?それらしい言葉を並べて、形だけでもあいつらの言葉に共感を示して、優しい言葉だけを囁けばきっとあいつらも聞いてくれたかもな~?いや~、確かにこれは俺が浅はかだったかもな~?」

 

「もうやめるワケダァアアア!!」

 

「サンジェルマンの心はとっくにボロボロよぉおおお!!」

 

過去の自分の言動を映し出されて、サンジェルマンが円卓に突っ伏してプルプルと体を震わせる。そんなサンジェルマンの様子を一頻り楽しんだ後、ナナシはフッと笑って言葉を続けた。

 

「確かにもっと穏便な…と言うより、確実にあいつらを懐柔する方法はあったんだが、俺の個人的な我儘でいつも通りのやり方を貫かせてもらった。事後報告になって悪い」

 

「…何か考えがあるんだな?」

 

弦十郎の言葉に、ナナシはバツの悪そうな顔で苦笑した。

 

「考えってほどのものじゃない。ただ…大切なモノを一つも捨てないために、幾つかリスクを飲む必要があったんだ。そのために、ちょっとお前らへの負担が大きくなったかもしれない」

 

「フフッ…君は既に多くの事を悩み、備えて、選択した。その上で君が我々にも負担を掛けると言うならば…我々は君のその『期待』に、全力で応えるまでだ」

 

弦十郎の言葉に力強く頷く者、ヤレヤレと肩を竦める者と反応は分かれたが、ナナシの選択を非難する者はいなかった。そんな仲間達の想いにナナシは嬉しさで微笑みながら、この場にはいない歌姫達と、S.O.N.G.を去ったノーブルレッド達の事を思い浮かべる。

 

(俺が捨てたくない大切なモノの一つ…『全員で笑って過ごせる未来』のために、頑張ってくれよ、皆…そして、お前ら自身の未来のためにも、精々頑張れ、パチモノ共!)

 

 

 

 

 

そしてその頃、S.O.N.G.から逃亡を果たしたヴァネッサ達はとある施設の中にいた。怪しげな機器が設置されたその施設は、まるでナナシがヴァネッサと初めて接触した時と同じような…そこよりも更に高度な設備の整えられた場所だった。

 

当然であろう。ヴァネッサが最初に身を潜めていたのは、この場所を発覚させないために用意されたダミーの施設だったのだから。そんな物を用意していた人物と、ヴァネッサが通信している様子をミラアルクとエルザが後方から見守っている。

 

『猟犬としての役割すら果たせず、首輪を繋がれる無様を晒しておきながら連絡をしてきたと言う事は、最低限の戦果は得たのであろうな?』

 

「ご所望の物はこちらに…『シェム・ハの腕輪』でございます」

 

『そうだ。七度生まれ変わろうとも、神州日本に報いるために必要な、神の力だ』

 

ヴァネッサが米国の研究施設から奪い取った聖骸の腕輪を抱きながら頭を垂れる。モニターに映っているヴァネッサ達を操る人物。それはナナシ達の予想通り…風鳴訃堂であった。

 




雑に原作の流れに合流w
書き直し過ぎて若干文章の流れがおかしいところがある気がする…後で冷静になった頃に読み直して気になったら修正入るかもです。
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