戦姫絶唱シンフォギア コドクの神が求めるモノ 作:@sora@
初めての投稿から丁度三年が経ちました。
年月が過ぎるのは早いですね…
これからもよろしくお願いします!
真っ暗な闇の中に沈んでいく…そんな感覚を未来は感じていた。
(何処まで…落ちていくのだろう…?)
このまま沈んでいくのはマズいと理解していながら、未来の意識は未だぼんやりとしたままで、何かが自分を引き寄せるような力に抗う事が出来なかった。
(何とかしないと、響に心配かけちゃう…そうだ、私は響と仲直りしなきゃいけないんだ…)
響と喧嘩していた事を思い出した未来は、少しだけ意識がハッキリとしてきた。自分はこの空間を出て、響と再会して、ちゃんと響に謝らないと…
『何に対してだ?』
未来の脳裏に、そんな言葉が響いた気がした。
(何にって…私は響に…響のあの人への想いを否定するような…酷い事を…)
『それっていけない事なのか?』
今度は言葉と共に、未来の頭にぼんやりとしたイメージが浮かび上がってきた。それはとても朧気ではあるが、自分と誰かがブランコに座りながら話しているのは理解出来た。
(これって、私とあの人が初めて会った時の…でも…)
イメージの中で話す自分達に、未来は違和感を持った。それが何かも分からない内に、暗闇ばかりだった空間に光が現れる。光の中央では、金色の腕輪をつけた人物が両手を広げて未来を待ち構えているように見えた。
(あなたは…)
再び未来の意識が薄れていき、未来はゆっくりと光の中に佇む人物へと近づいて行く。意識と共に薄れてゆくイメージの中で、未来の隣に座る人物は最後にこう言っていた。
『なあ、未来…賭けをしないか?』
「調査結果はこの中に納めています」
アタッシュケースの中身を緒川に見せた後、調査員がケースの蓋を閉じて緒川へと引き渡す。ヴァネッサがアルカノイズで破壊していた施設の瓦礫から発見された、欠けた歯車のような物体の解析が完了したのだ。
「確かに受領いたしました」
複数の部下を引き連れた緒川はケースを受け取ると、すぐさま本部へと帰還するために車へと乗りこんだ。
「証拠物品と共に、これより帰投します」
音声通話で弦十郎に報告しながら、緒川と部下達の車が駐車場を出発する。しかしその様子は、上空を飛行する小型カメラによってヴァネッサに観測されていた。
「疑いはまだしも、証拠となる物を持ち帰られるのはマズイかもね?」
ナナシが察しているような事を言っていたが、明確な証拠を持ち帰られてしまったら今後の動きに支障が出るかもしれない。そう判断したヴァネッサは、まず自分の家族達に現状を報告した。
(二人共、聞こえて?警戒監視網にてS.O.N.G.の動きを捉えちゃった。私達と風鳴機関の繋がりも本格的にバレたみたいだけど、どうしよう?)
丁度エルフナインと対峙していたエルザ達は少しだけ驚きを露わにするが、すぐにエルザがヴァネッサへと返答した。
(位置は把握しているでありますね?だったら、迷う事はありません!)
(やっぱそうよね?ここはお姉ちゃんとして強襲…しかないわね!)
(神の力の具現化はウチらで進めとく。そっちは任せたゼ!)
エルザ達の同意も得た事でヴァネッサは迷いなく高所から飛び降りると、足のブースターを起動して緒川達を追跡し始めた。
『間違いないのだな?』
「はい。技研による解析の結果、廃棄物処理場で取得した物品は119.6%の確率で『アンティキティラの歯車』との事です」
『冤罪ロジック構築可能な数値で、本物と立証されてしまったか…』
ヴァネッサが追ってきている事にはまだ気付かず、緒川は本部へ向かいながら弦十郎へ調査結果を報告していた。
『先立っての事故以降、保管物強奪の知らせは受けていない』
「護災法施行後、国内の聖遺物管理は風鳴機関に一括。それなのに敵のアジトでこの聖遺物が発見されたと言う事は、やはり鎌倉とノーブルレッドには何らかの繋がりがあると見て…っ!?」
急に言葉を詰まらせる緒川に、弦十郎も異変を察した。
『どうした!?』
「敵襲です!恐らくは、証拠物品を狙ってと思われます!」
緒川の視線の先では、上空から先回りして車の進路上に立ち塞がったヴァネッサが非常に艶めかしい所作で上着のファスナーを降ろしていた。そして露わになったヴァネッサの胸部から、二本の巨大なミサイルが飛び出す…
コツン!
…途中で、その先端が『何か』にぶつかった。
「へっ…?」
ドゴオオオオオン!!
「きゃああああああああ!!?」
突然の事態に対応する事が出来ず、ヴァネッサは盛大に自爆してしまい爆風で宙を舞う。その隙に緒川達の車はスピードを落とす事さえないままにヴァネッサの横を素通りしていった。
「くっ…せっかく誘ったのに、目もくれないなんてつれないじゃない!…って、あれ!?」
困惑しながらも身を起こしたヴァネッサが怒りの形相で緒川達の方へ視線を向けると…三台あったはずの車は、既に一台しか見当たらなくなっていた。
「この一瞬で脇道に逃れたと言うの!?くうっ…せめて、一台だけでも逃がさない!!」
既に見失ってしまった車に証拠物品があればヴァネッサの完全敗北である。せめてもの報復として、残った一台は必ず仕留めると意気込み、ヴァネッサはブースターを全開に緒川の乗る車を追いかけていった。
そして…緒川の部下達は、そんなヴァネッサが自分達のすぐ傍を素通りしていくのを何とも言えない表情で眺めていた。
「何と言うか…傍から見ていると中々に滑稽だな?」
そう呟きながら、部下の一人はクチャクチャ噛んでいた『ガム』で風船をプクリと膨らませた。
事前に緒川から『ガム』を支給されていた部下達は、ヴァネッサの出現と同時に緒川から“念話”(実際は“以心伝心”)で指示を受け、大技を放とうとするヴァネッサの目前に“障壁”を展開、そしてヴァネッサが混乱している間に車を急停止させてエンジンを切り、車の周囲を風景に溶け込む配色を施した“障壁”で囲んでヴァネッサをやり過ごしていた。
「しかし、本来護衛である我々が緒川さんを残して真っ先に離脱するのは…」
「敵を少しでも足止め出来ただけ上等だと思おう。流石に全員が隠れては周囲を探られて偽装がバレかねない。あの人ならきっと大丈夫だ」
部下達から信頼を寄せられる緒川は、実際に車とは思えない機動力でヴァネッサの銃撃やミサイルを次々と躱してヴァネッサを翻弄していた。業を煮やしたヴァネッサは遠距離武器での襲撃を諦め、一気に接近して直接車を破壊する事を決めた。
「行かせない!スイッチオン、コレダー!」
ヴァネッサの片足が変形して、三本のスパイクに電撃を纏わせながら飛び蹴りを繰り出す。ブースターで加速しながら迫るヴァネッサの一撃は、車では到底回避出来ない…はずだった。
“忍法 車分身”
しかしヴァネッサの攻撃が直撃する寸前、車の輪郭がブレたかと思うと一台だった車が三台に分裂してヴァネッサの攻撃をすり抜けてしまった。
「どういう事!!?」
何が起こったのか全く分からないヴァネッサは本日何度目かの驚愕に追跡も忘れてしまう。緒川の車は少し進んだ後に再び一台に収束してそのまま走り去ってしまった。
「現代忍法…?」
そんな言葉では納得し切れないヴァネッサだったが、背後から自分へ猛スピードで接近して来る車に意識を切り替えた。明らかに自分へと突っ込んでくる車にヴァネッサがロケットパンチを放つと同時に、車からクリスとマリアが飛び出した。
「Killiter Ichaival tron」
ギアを纏ったクリスは速攻でヴァネッサ目掛けて発砲する。ヴァネッサは後退する事で射線上から外れるが、クリスの放った弾丸は途中で形状を変化させてヴァネッサをホーミングし始めた。
「何ですって!?」
追いかけてくる弾丸を、ヴァネッサは電磁バリアを展開して弾き飛ばす。しかしそのせいで後退速度が激減してしまった。
「隙だらけ!!」
その隙を狙ってマリアがヴァネッサへと接近する。しかし先程ロケットパンチで放っていたヴァネッサの手がマリアの背後で蠢き、その指先からマリアの背中に無数の弾丸を放った。
「ぐあっ!!?」
不意打ちを受けたマリアが体勢を崩している間に、ヴァネッサがジェムをばら撒いてアルカノイズを召喚する。セグウェイのような足で素早く動き回るアルカノイズだったが、クリスはその動きに惑わされる事無く引き金を引いた。
“HORNET PISTOLS”
四発の弾丸は軌道を曲げながら正確にアルカノイズを貫き一掃する。しかしその間にヴァネッサは通りかかったトラックの上に飛び乗り、そのまま高速道路に入って行ってしまった。
「卑怯な手を使って…!」
ようやくマリアが起き上がると、クリスと共にヴァネッサを追う。そんな二人を眺めながら、ヴァネッサは憂鬱そうにポツリと呟いた。
「証拠隠滅は失敗…こうなったら、装者の足止めくらいはしておかないとね?」
車の上を伝ってようやく追いついてきたマリア達に、ヴァネッサはその指の銃口を突きつけた。
「一般人を巻き込むつもり?」
「ご名答♪」
そう言ってヴァネッサは躊躇う事無く弾丸を乱射した。
「そうは…させない!」
マリアは短剣を蛇腹状に展開して全ての弾丸を弾き、周囲の車を守り切った。
「それが『アガートラーム』?妹共々、よくその輝きを疑いもせず身に纏えるわね?」
「どういう意味…?」
「イラク戦争の折、米軍が接収した聖遺物の一つ。シュルシャガナやイガリマと異なり、出自不明故に便宜上の呼称を与えられた、得体の知れない謎のギア…」
「ッ!!」
「なんてね?」
思わず話に聞き入ってしまったマリアは、突然ヴァネッサが放ってきたミサイルを避けられず直撃を受けてしまった。
「うわあああ!!」
吹き飛ばされたマリアの手をクリスが咄嗟に掴み取り、近くの車の上に二人で着地する。
「あいつら得意の搦手だ。揺さぶりに付き合ってペースを乱されるな」
「ええ…そうね、これ以上好きにさせない!」
「世界の果てを見せてくれ!」
突然フロントガラスに飛び乗られて動揺したのか、運転手の男がよく分からない事を叫びながら蛇行していた。クリス達と大分距離の離れたのを確認したヴァネッサは、次の一手を仕掛けに動き出す。
「それじゃあ、こんなのはどうかしら?」
ヴァネッサがトラックから飛び立つと同時に、高速道路にミサイルを撃ち込んで大穴を空ける。このままでは…
「あいつの相手は任せた!」
「了解!」
しかし二人は慌てる事無く、マリアは一人で車から飛び降り…クリスは車と共に大穴へと落下してしまった。後続の車は大穴手前で何とかブレーキが間に合い、銃やミサイルを乱射するヴァネッサを見て人々は車を捨てて逃げ始めた。
マリアが短剣で銃を弾き、ミサイルを躱しながらヴァネッサへと斬りかかるが、ヴァネッサはブースターで上空へと避難すると挑発的な笑みを浮かべる。
「あなた達が不甲斐ないから、余計な被害者出ちゃったかも?」
マリア達のせいだとでも言うようにヴァネッサが揺さぶりの言葉を放つが、マリアは微塵も動揺を見せない。ヴァネッサがそれに疑念を抱くよりも早く、その理由は大穴から現れるのだった。
『繋いだ手を引っ張るくらいにゃなった まっすぐ選ぼう Futurism』
「何ですって!?」
クリスが力強い歌声を響かせながら、大型ミサイル二本の推進力で車を大穴から引き上げる姿にヴァネッサは驚愕してしまった。
「けれど、弱点を抱えているも同じ!」
ヴァネッサがクリスの抱える車を狙って弾丸を放つが、その全てをマリアが操る蛇腹剣が弾く。
“MEGA DETH PARTY”
マリアが稼いでくれた僅かな隙に、クリスが腰部のギアを展開して大量の小型ミサイルをヴァネッサへと放つ。慌ててヴァネッサは自分に迫る小型ミサイルを撃ち落としていくが、その隙にクリスは車を無事道路の上に降ろす事に成功した。そして、車を引き上げるのに使っていた大型ミサイルをそのままヴァネッサへ向けてぶっ放す。しかし、ヴァネッサは二つのミサイルの間に体を滑り込ませて回避してしまった。
「狙いが大雑把過ぎるわ!」
難局を乗り切った事でヴァネッサはクリスを嘲笑うが、油断したヴァネッサの背後ではマリアが蛇腹剣を操作してクリスの放ったミサイル一本の軌道を強引に変えて再びヴァネッサへと向かわせていた。一度ミサイルから意識を外してしまったが故に、ヴァネッサが気付いた時には既にミサイルは回避不可能な距離まで接近していた。
「っ!!?」
『全部乗せを 喰らいやがれ!!』
咄嗟にヴァネッサは右手でミサイルを受け止めるが、直後にミサイルは大爆発を起こしてヴァネッサの体は高速道路の壁面へと叩きつけられた。よろよろと身を起こすヴァネッサの眼前に、クリスがガチャリと銃口を突きつける。
「プチョヘンザだ!」
「未来とエルフナイン、連れ去った二人の居場所を教えてもらうわ!」
遂にクリス達がヴァネッサを追い詰めた…しかしその直後、夜明けにはまだ時間があるはずなのに、まるで日の出を彷彿とさせるような眩い光が街中を照らした。それと同時に、腕輪の起動時にS.O.N.G.が観測した謎の不協和音も一帯に響き渡る。
「何だ!?」
「チフォージュ・シャトー!?」
「マテリアライズ…?だけど、早過ぎる!!」
クリスとマリアが想定外の事態と発生源に驚く一方、ヴァネッサは何が起こっているかを察するが故に二人とは別の意味で驚愕していた。
「やっぱりこの歌…私の胸には、Appleのようにも聴こえて…」
街中に鳴り響く不協和音に耳を傾けるマリアがそんな事を呟いていると…チフォージュ・シャトーの上空に、光の中から突如として巨大な赤子のような異形の存在が姿を現すのだった。
XV編の投稿を始めたのが約半年前、そして今回ようやく原作第六話が終了。
XV編後半は執筆初期から温め続けたオリジナル要素てんこ盛り…今年中にXV編終わるかな?