戦姫絶唱シンフォギア コドクの神が求めるモノ   作:@sora@

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第206話

キャロルがノーブルレッドにナナシの想いと自身の選択を告げている間、チフォージュ・シャトーの上空ではエクスドライブを纏った装者達とレナが異形との戦いに臨んでいた。頭上を舞う装者達に向けて異形がレーザーを照射するが、装者達は素早く回避して切歌と調が一気に異形へと接近する。

 

「チフォージュ・シャトーは動かせなかったデスけれど!」

 

切歌が異形の下へと潜り込み、へその緒のように異形とシャトーを繋ぐ管を鎌で切断した。

 

「形と掴んだ、この輝きがあれば!」

 

異形が切歌へ触手で反撃を繰り出す隙に、調がヨーヨーのようなアームドギアを異形へとぶつけてそのバランスを崩した。

 

切歌と調がコンビネーションで異形を翻弄する隙に、異形の正面に立った翼が円を描くようにゆっくりと剣を頭上に構える。集中の末、翼がその場で剣を振り下ろすと、一瞬で異形の触手が細切れに断ち切られていた。

 

畳みかけるように、クリスとマリアがお互いのギアを合体させて巨大な砲台を作り出した。エネルギーを収束させた砲台は赤い光線を放ち、異形へ直撃して大爆発を起こした。

 

「ガァアアアアアアアアアアアアア!!!」

 

間髪入れず、異形にレナが赤い拳を叩きつける。ボロボロになっていた異形の体はレナの一撃によって木っ端微塵に砕け散り、完全に仕留めた…誰もがそう考えたが、少し経つと異形の残骸が一瞬ブレて、次の瞬間には完全な状態に戻ってしまった。

 

復活した異形が、空中のマリア達にレーザーを放とうとする。そこへレナがその大きな体を異形とマリア達の間に差し込み、体を張ってマリア達を守った。

 

「レナ!?レイア!!?」

 

『地味に問題ない。我々はサブマスターのお力で守られている』

 

レイアの声がレナの体に取り付けたスピーカーを通して伝わってくる。その言葉通り、全身を“血晶”で覆われているのと変わらないレナ達の体には傷一つ付いていなかった。

 

『しかしこちらがどれだけ派手に攻撃しても、地味に回復されては埒が明かない。この状況を派手に覆せるのは、やはり…』

 

レイアがそう呟いていると、何処からか異形目掛けてミサイルが飛んできた。異形がレーザーを放ってミサイルを撃ち落とすと、煙の中からギアを纏った響が飛び出してきた。

 

『人類の切り札!神殺しの拳か!!』

 

「ガングニール!」

 

「うおおおおお!!」

 

空中へと体を投げ出された響は、腰部のブースターで加速しながら異形へと向かって行く。響の纏うガングニールを本能的に恐れてか、異形は周りの装者達やレナを無視して響にレーザーを何本も放ってきた。響はブースターで全てのレーザーを回避しようとするが間に合わず、あと少しで直撃を受けそうになった所で、翼が間に入ってレーザーを剣で弾き飛ばした。

 

「立花の援護だ!命を盾とし、希望を防人れ!!」

 

「行くわよ、皆!!」

 

翼とマリアの呼び掛けに応えて、エクスドライブを纏った装者全員が響の前に躍り出る。異形が凄まじい量のレーザーを放ち、響は躱しきれずレーザーにギアの一部を掠め取られる。それでも翼が懸命に響へ直撃しそうなレーザーをその剣で受け止め、切歌と調が囮となってレーザーを引き付ける。

 

遠距離攻撃では中々仕留め切れないと考えたのか、異形が触手を伸ばして直接響を叩きに来た。必死に回避する響を、マリアがブレードを操って触手を切り裂き援護する。

 

『派手に邪魔だな!その触手は!!』

 

レナが体に纏う血液を操り、異形の伸ばしていた触手を絡め捕ると、一束に纏めてその体で抑え込んだ。

 

『我々が地味に道を作る!派手に決めろ!!』

 

(頑張って!響お姉ちゃん!!)

 

しかし突如、異形の背後に展開された後光のようなエネルギーが煌めいたかと思うと、響の周囲に無数のエネルギーが出現して…響の周囲を覆い尽くすように大爆発が巻き起こった。ここに来て新たな攻撃パターン…だが、想定外を警戒して響の傍に控えていたクリスが、爆発の中から響を自分のギアに乗せて見事救出してみせた。

 

異形が我武者羅にレーザーを放つ。素早い動きで回避していたクリスだが、遂にギアのブースターを撃ち抜かれてしまい動きが止まってしまった。

 

「行けよバカァ!!」

 

「っ!!」

 

クリスに促され、響がクリスのギアを足場に飛び降りる。仲間達が身を挺したお陰で、異形との距離はあと僅か…しかしそれは、至近距離で攻撃に晒されるという意味でもある。異形が範囲の広いレーザーを響へ撃ち放ってきた。回避は不可能、響の周りにもう仲間達はいない。極太のレーザーは響の体を容易に飲み込んで…光の中から、黄金のバリアフィールドに守られた響が姿を現した。

 

使用を禁止されているアマルガムの展開。バレれば罰則は免れないが、命の危機を前には致し方ない。何より、自分の最も大切な存在を救いたい響にとって、そんな些末事はもはや頭に残っていなかった。

 

「勝機を零すな!」

 

響の意志を後押しするように翼が叫び、響が再び前へと進む。すると、異形の頭部が花弁のようにガバリと開いたかと思うと、その中央に凄まじい量のエネルギーが収束して…キャロルの絶唱にさえ匹敵しそうな、超高威力のレーザーが撃ち放たれた。

 

「はああああああああ!!!」

 

しかし響は臆することなく、バリアフィールドを解除して黄金の双腕を展開させる。守りを捨てて攻撃に特化させたその双腕を組み合わせ、響は異形の攻撃へ真っ向から突っ込む。

 

「「最速で!」」

 

「「最短で!!」」

 

「『(真っ直ぐに!!!)』」

 

レーザーと拮抗する響にボロボロの仲間達が呼びかけ、その言葉と想いを力へと変えるように響も叫ぶ。

 

「一直線にぃいいいいいいいい!!!!」

 

双腕から炎が噴き出し、響の体から分離してレーザーを押し返しながら突き進んでいく。そして遂に双腕が異形のレーザーを打ち破り、神殺しの拳を受けた異形の頭部が銀色の花のように形を崩した。

 

 

 

 

 

キャロルが儀式場の部屋に戻ると、儀式の中断を進めていたはずのエルフナインが呆然と佇んでいた。嫌な予感がしたキャロルが急いでエルフナインへと近づき、その肩を揺する。

 

「どうした!?何かあったのか!!?」

 

「違う…」

 

エルフナインが否定の言葉を呟く。しかしそれは、キャロルの懸念を否定するものではない。

 

「依り代となった未来さんに力を宿しているんじゃない…大きな力が、未来さんを取り込む事で…!」

 

その言葉が真実である事を証明するように…エルフナイン達の目の前で、未来の体と腕輪が、光の粒子となって消えてしまった。

 

 

 

 

 

「未来ぅううううううう!!!」

 

異形にめり込んだ双腕に、響が自らの拳を叩きつける。その衝撃で双腕は異形の体を貫き、響は異形の内部へと潜り込み…

 

「っ!!?」

 

…響の目前に、シャトーの何処かに囚われているはずの未来が現れた。

 

「何で…そこに…?」

 

状況が理解出来ず、響の口からそんな疑問が零れてしまう。響の声に反応したのか、未来の閉じられていた瞼が開き、赤い輪郭が輝く冷たい視線が響へと向けられた。それと同時に未来の胸にある銀のペンダントが花のように開くと、まるで響達が纏うシンフォギアのように未来の全身に鎧が展開される。その姿は、かつてウェル博士が未来に纏わせた神獣鏡のシンフォギアに酷似していた。

 

「未来!」

 

浮かべる表情も、纏う雰囲気も、普段の未来とはかけ離れている。それでも響は繋いでもらえると信じて必死に未来へと手を伸ばすが…その想いは、最悪の形で裏切られる事となった。

 

 

 

「遺憾である。我が名は『シェム・ハ』…人が仰ぎ見るこの星の神が、我と覚えよ」

 

 

 

その見た目と声は未来そのものであるはずなのに、響を見つめる無機質な瞳と、冷ややかなで威厳に満ちたその声音は、否が応でも響に未来の『中身』が異なっている現実を突きつけてきた。

 

伸ばしたその手は虚しく空を切り、響の体は未来の…シェム・ハの隣を通過して、そのまま重力に従い落ちていく。

 

「行っちゃ駄目だ…遠くに…未来ぅううううう!!!」

 

ズガアアアアアアン!!!

 

落下の最中も未来へと必死に手を伸ばす響だったが、どんなに抗ってもその手が未来へ届く事はなく、遂に響はシャトーの屋上へと落下してしまった。その衝撃でギアも解除されてしまう。

 

「立花!?」

 

よろよろと身を起こす響の傍に、翼達が急いで駆けつけようとする。そんな翼達よりも先に、シェム・ハはゆっくりと響の前に舞い降りた。

 

「良き哉、人の生き汚さ…百万の夜を超えて尚、地に満ち満ちていようとは」

 

「よしなさい!あなたにそんな物言いは似合わない!!」

 

ようやく響の元へと辿り着いた翼達がシェム・ハを取り囲む。しかしシェム・ハは焦る様子もなく、翼達を一瞥だけするとすぐに視線を外して頭上の月を眺めた。

 

「後は、忌々しき月の…っ!!?」

 

その直後、シェム・ハは何故か頭を抱えて苦しむように悶え始めた。

 

「未来…?」

 

「小日向!?」

 

シェム・ハの様子に響達が困惑していると、クリスがシェム・ハの背中を見て何かに気付いた。

 

「身に纏うそいつは、まさかあの時と同じ…!」

 

カランカラン…ボシュウウウウウウウウ!!!

 

『!!?』

 

装者達が状況を飲み込めない間に、何処からか飛来してきた物体から大量の白い煙が発生して周囲一帯を覆い隠してしまった。

 

「ゲホッ、ゴホッ!?一体何が!!?」

 

視界が遮られ、咳き込みながら周囲を警戒する装者達。すると調と切歌が咄嗟に機転を利かせて丸鋸と大鎌を扇風機のように回転させ煙を霧散させた。ようやく視界が晴れて装者達が周囲を見回すと…既にシェム・ハの姿は何処にも見えなくなっていた。

 

「馬鹿な!?幾ら視界を遮られたからと言って、我々の包囲がこんなにも容易く!!?」

 

そもそもチフォージュ・シャトー周辺は、神の力が具現化した異形が暴れ回った事で更地に近い状態となっている。例え異形と激闘を繰り広げていたとしても、身を隠す場所が碌に無いこの場所に近づく者がいれば誰かが気付くはずだ。にも関わらず、まるで装者達の認識から外れるように接近してシェム・ハの身柄を掠め取られるなど…

 

「まさか…!」

 

「皆さん!」

 

翼が何かに気付きかけた時、装者達の元へエルフナインが駆け寄ってきた。

 

「エルフナイン!良かった、無事だったのね!?」

 

「はい!ご心配をおかけして申し訳ありませんでした…そ、それより、神の力は!?未来さんはどうなりました!!?」

 

エルフナインの問い掛けに、全員が顔を伏せてしまった。

 

「済まない…今し方、何者かに連れ去られてしまったようだ…」

 

「そんな…ボクが、儀式を止められなかったから…!」

 

「そんな事は無い!寧ろ、囚われの身でありながら無事に脱出を果たしただけであなたは充分立派よ!頑張ったわね、エルフナイン」

 

泣き出しそうなエルフナインを、そう言ってマリアが抱き締めながら慰めた。

 

「頑張ってくれたのは、キャロルやガリィ達で…そうだ!皆さん、キャロルとガリィ達を見ませんでしたか!?屋上まで一緒に来ていたはずなのに、いつの間にかいなくなっていて…」

 

「キャロルにガリィ達…?こっちに来てくれたのは、レイアとレナだけのはず…あれ?」

 

「およよ!?レナ達は何処へ行ったデスか!!?」

 

エルフナインの指摘によって、あれだけ派手に目立っていたはずのレナ達の姿も地味に消えている事に装者達は気が付いた。

 

「さっきは質問どころじゃなかったけど、あの大きな兄弟子みたいなのってやっぱりレナちゃんだったんだ!?それにキャロルちゃんって…キャロルちゃん達、さっきまでここに居たの!!?」

 

「あ、ああ、そのようだが…」

 

「何をそんなに慌ててんだ?」

 

キャロル達が援軍に駆けつけていたという情報を聞き、響は妙に取り乱し始めた。確かにS.O.N.G.本部で監視されていたはずのキャロル達が抜け出していた事は問題といえば問題だが、響なら仲間の危機に駆けつけてくれたのだと納得しそうなものだ。響がキャロル達の存在にこれほど動揺する理由とは…?

 

 

 

「大変なんです!実はわたしが目を覚ました時、S.O.N.G.本部がとんでもない事になっていて…!」

 

 




原作にはあったS.O.N.G.本部の描写が無かったのは作者がサボったからではありませんw
理由は次回をお楽しみに。

こんな引きをしておいて申し訳ないのですが、来週は執筆時間の確保が難しそうなのでお休みさせて頂きます。
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