戦姫絶唱シンフォギア コドクの神が求めるモノ 作:@sora@
バラルの呪詛によって統一言語を失った人類が歩んだ歴史をナナシに見せつけられた月遺跡の神は、それでも表に出る事は無く守護者を操り徹底抗戦の構えを見せていた。
そんな守護者と、周囲から伝わってくる月遺跡の神の感情を感じ取ったナナシは…苛立ちの形相から一転して、貼り付けたような笑みを浮かべた。
「なるほどなるほど…この程度の些事如きでは、神であるあなた様からのお言葉は頂けない、と…承りました!それでは神様…これより、先程ご説明した悲劇全てに関わる大罪人をご紹介しましょう!」
『…?』
ナナシの言葉に、月遺跡の神は疑問を抱いた。先程ナナシが詳らかにしたのは、統一言語の失った人類の不和によって巻き起こった悲劇の数々であったはずだ。その元凶は、バラルの呪詛を施した自分のはず。しかしナナシの言い方では…
まるで他に罪人がいるかのような…
「世界全土を巻き込む騒動を起こした『錬金術』…これは『ある人物』が『ある目的』を果たすために生み出し、広めた技術だ」
ナナシが再び“投影”で錬金術師…ファウストローブを纏って暴れ回るキャロルやサンジェルマン達の姿を映し出す。
「そんな錬金術で巻き起こった騒動を治めた『シンフォギア』…実はこれも錬金術を生み出した『ある人物』が、錬金術を生み出したのと同じ『ある目的』のために生み出した技術だ」
対比するように、今度はシンフォギアを纏ってノイズと戦う響達の姿を“投影”で映し出す。見比べるとその類似点が良く分かり、それが同じ人物の設計思想と言われれば確かに頷ける…
ゾクリッ…
…その気付きを得た途端、月遺跡の神は何か悪寒のような物を感じた気がした。シンフォギアにファウストローブ、聖遺物を纏って戦う姿はまるで…
「錬金術が世に広まり始めたのは千年くらい前。それに対してシンフォギアは開発されてから十年経つかどうかってところだ…時代が合わないよな?俺の言葉が本当なら、開発者は千年以上生きている事になる。だが錬金術の到達点の一つは不老不死とされており、俺達が出会った錬金術師達も様々な方法で人としての寿命を超越していた。肉体を完全な物へと作り変えて老いを克服したり、自らの肉体の複製を無数に生み出して記憶と人格を引き継がせたり…錬金実を生み出した件の大罪人も、後者に近い方法で今日まで生き延びてきた。最も、人格を引き継がせていたのは自分の複製ではなく、他人の人格を無理矢理塗り潰す形で乗り移っていたがな?」
『!!?』
ゾクリッ!
先程よりも大きな悪寒が神の心を蝕む。他者の人格を塗り潰し乗っ取る…それを聞いて真っ先に思い浮かぶのは、かつての宿敵であるシェム・ハであるはずだった。
しかし…
『だって私は、出来る女の『櫻井了子』だもの』
…月遺跡の機能が観測していた記録が、否が応でも別の可能性を浮かび上がらせた。
「流石に誰でも乗っ取れる訳じゃなく、事前に作り出した自分の遺伝子情報を持つ子孫に限定されてはいたがな?例え自分が根源であろうと、既にある人格を塗り潰して乗っ取るなんて事が許されるはずがない。しかもそんな方法で命を繋いで何をしていたかと言えば、パラダイムシフトの引金となって度々人類の歴史の裏で暗躍をしていた…つまり、人類が碌でもない歴史を辿った原因が少なからずその大罪人にある訳だ」
最初にその姿を見た時は、自分の未練だと思った。もう二度と会えないはずだった彼女が、数千年の時を経て全く変わらない姿で現れるなんてあるはずがないと…実際、異なる名前を宣言したのを聞いて、自分は『安堵』していた。
「実際、そいつが本気で統一言語を失った直後の人類を纏めようと動いていれば、人類は今より多少はマシな形で歴史を進めていたかもしれない。先史文明期が滅んだ原因は、統一言語の消失と同時に創造主であった神々がいなくなり、神々の元で等しく平等だった人類が統率者を失った混乱からだ。その混乱を治めて神に代わる統率者を務められる可能性があったのは…当時、神の言葉の代弁者として最も神々に近しい立ち位置にいたそいつ以外にはいない」
本当は分かっていた。彼女が自ら啓示した情報を見て、呆然自失となった姿に嫌な予感を感じていた。それからしばらく無言だったにも関わらず吹っ切れたように笑った姿を見て、それが杞憂だと判断した…そう思い込んで自分を騙していたのだ。
「『痛みだけが人の心を繋ぐ絆、たった一つの真実』。それが数千年の時の中で悟った真理なのか…その胸の内に宿る痛みを、未だ繋がっている絆だと信じたい未練だったのかは分からないが、あいつはそれを信条にいくつもの争いの火種を世界にばら撒き、その果てに培った技術を終結させて遂に目的を果たそうとした…その結果の一端を、お前は既に身を以って味わったはずだ」
ナナシが“投影”で二つの月を映し出す。一つはかつての完全な月、もう一つは現在の一部が欠けた不完全な月。かつてその身を襲った厄災、それが何によって…誰によって齎された結果なのか、神はようやく答えに辿り着いた。
「それでは登場して頂きましょう!稀代の大罪人!!この世で最も罪深きその者の正体は!!!」
やめろ…ヤメロ…その真実を、詳らかにするのは…!!
不都合な真実を全て塗り潰さんと、守護者の口から漆黒の炎が零れだそうとしたその時…それをかき消すように、突如として黄金の輝きが周囲に溢れ出した。
ライブ会場の一角が消失すると同時に現れた、太陽の如き光と熱…かつてない程の力を収束させたデュランダルを頭上に掲げて佇んでいるのは、周囲の光景が一変してから姿を隠し続けていたもう一人の神域を犯す侵入者…
「先史文明期の巫女…おっと失礼、『元』巫女である、フィーネでございます!」
神の想いを察しつつ…その想いを真っ向から踏み躙るように、ナナシが高らかにその姿を見せつける。苦悶の表情でデュランダルから溢れたエネルギーにその身を蝕まれるフィーネの姿は、まるで神罰の炎で身を焼かれる咎人のようだった。
そんなフィーネに、自身の体も焼かれるのも気にせずにニコニコ笑顔で近づいたナナシは…その髪を掴み上げて、俯き気味だった顔を強引に上げさせた。
『!!?』
驚く守護者と黙したままナナシの所業を受け入れるフィーネに、ナナシは見せつけるかのように過去の映像を“投影”で次々と映し出した。
『桜井了子の肉体は、先だって喰い尽された。いや、意識は十二年前に死んだと言っていい』
『超先史文明期の巫女“フィーネ”は、遺伝子に己が意識を刻印し、自身の血を引く者が、アウフヴァッヘン波形に接触した際、その身にフィーネとしての記憶、能力が再起動する仕組みを施していたのだ。十二年前、風鳴翼が偶然引き起こした天羽々斬の覚醒は、同時に実験に立ち会った櫻井了子の内に眠る意識を目覚めさせた…その目覚めし意識こそが、“私“なのだ』
『全ては『カ・ディンギル』のため!!』
『これこそが!地より屹立し、天にも届く一撃を放つ、荷電粒子砲カ・ディンギル!!』
『月が何故、古来より不和の象徴と伝えられてきたか…それは!月こそがバラルの呪詛の源だからだ!!人類の相互理解を妨げるこの呪いを、月を破壊することで解いてくれる!そして再び、世界を一つに束ねる!!』
『月の破壊は、バラルの呪詛を解くと同時に、重力崩壊を引き起こす!惑星規模の天変地異に、人類は恐怖し、狼狽え、そして聖遺物の力を振るう私の元に帰順する筈だ!痛みだけが人の心を繋ぐ絆!たった一つの真実なのだ!』
そこに映し出されたのは、かつてカ・ディンギルと共に本性を現したフィーネ。己の目的のために暴れ回り、他者を傷つけ、月の一部を崩壊させた咎人の姿。
「全く、よくもまあ神の御前にこの顔を出せたものですよねぇ?これだけの事をやらかしておいて!」
ガスッ!
『!!?』
言葉と共に、ナナシがフィーネの腹部に拳を叩き込んだ。
「神々に寄り添う立場にいながら!何一つ神々の思惑を察する事が出来なかったばかりか!!人類の進化を碌でもない方向に誘導した挙句に!!!かつての神々の慈悲を無に帰して危うく世界を滅ぼそうとした!!!!」
罵倒を浴びせかけながら頬を叩き、鳩尾に拳をめり込ませ、背を足蹴にして…ナナシから受けるそれら全てに一切反論する事無く、フィーネは黙して耐えながらデュランダルに力を集め続けていた。
「最終的に俺と仲間達の手によって敗北したこの女は、それでも往生際悪く捕まった後に我々へ取引を持ち掛けてきました。その取引でこの女が求めたのが月遺跡の真相解明、そして…」
そう言ってナナシが再び“投影”で過去の映像を浮かび上がらせ…
『…私は、あのお方にこの胸の内の想いを伝えたい。だから、協力してくれ…よろしく、お願いします…』
…フィーネが数千年に渡って追い求めた目的を暴露した。
「この期に及んで、あなた様にお目通りしてまで何を伝えようとしたんですかねぇ?恨み言でしょうか?皆目見当もつきませんが…その見返りに、この女は我々に自身の全てを捧げる事を誓ったので、月遺跡の真相解明は我々にとっても共通の目的であったためにしょうがないから取引を受け入れた訳です」
『!!?』
驚愕に固まる守護者の前で、ナナシの体から伸びた血液がフィーネの首へと巻き付いた。そして血液と入れ替わるように、フィーネの首に鎖に繋がった首輪が現れ、ナナシは嬉々とした様子でその鎖を引いてフィーネと自分の体を密着させた。
「一応は、神々のお言葉次第では情状酌量の余地はあると考えていました。罪だ咎だと人類が騒ぎ立てたところで、神の御言葉に勝る決定は無い。バラルの呪詛に纏わる出来事において、神々が自らその責を認める事などがあれば…この女の処遇を考え直す事も視野に入れていたのですが、やはり無駄な配慮でしたね?完全たる神が間違うはずなど無いと!全ては捨てた元巫女が勝手にやった事だと!!重々承知いたしました!!!」
もしも罪を受け入れていたら、その咎を共に背負う事が出来た…遅過ぎた気付きにその身を震わせる守護者を前に、ナナシは厭らしい動きでフィーネの体に手を滑らせる。
「聖遺物と融合して永遠の存在となったこの女は、同じく永遠の存在である俺に全てを委ねた…この俺の管理下の元、永遠にその罪を償ってもらうのでご安心ください♪どんな罰を与えましょうか?やっぱり奪った命の数だけ増やしてもらいましょうか?その遺伝子が聖遺物との適性が高い事は、この女が自分の子孫を使って実験した結果で判明していますから、とても合理的な罰ではないでしょうか!幸い高い再生能力と持つネフシュタンと融合しているので、多少無茶したところで問題ありませんしね!名案ではないでしょうか!どう思われますか?神さ…」
ズガァアアアアアン!!!
…フィーネの体を弄り続けるナナシの問いに対する返答は、守護者による拳の振り下ろしだった。
「ちょっと神様!?大罪人はそっちですって!!?何でこっち狙うんですか!!?」
次々と繰り出される拳をひょいと躱しながら軽い口調でナナシが神を窘める。戦略的な意味でもデュランダルに力を集め続けるフィーネを潰すのが正しいはずであるが…そのような合理を考える思考能力は既に神には残っていない。その心に渦巻くのは…ドス黒い殺意のみ。
この男だけは…絶対にここで葬る…!
その決意を固めた神には、もはや奇策は通用しない。奇抜な格好の集団も、バラルの呪詛による被害者達の写し身も、全て等しく叩き潰し、業火で薙ぎ払い、逃げるナナシを追い詰めて…
ズグシャッ!!
「ガフッ!?」
…遂に守護者の腕が、ナナシの体を貫いた。
ザシュッ!!
「グアッ!?」
それだけに留まらず、ナナシを貫いた守護者の腕から無数の針が生えて、ナナシの体を完全に固定してしまった。身動きの取れないナナシに、守護者が漆黒の炎を浴びせるべくエネルギーを収束させる。逃がさない、今度こそ、絶対に…
「ゴフッ…
守護者の腕と無数の針に体を貫かれたナナシ…
完全に思考が停止した神は、呆然としたままデュランダルを構えるフィーネに視線を向けて…その体表が溶けるように崩れて現れた、邪悪な笑みを浮かべるナナシの姿を目の当たりにした。
一体どうやって…?いつから…?
まるで走馬灯のように、これまでの戦闘記録が神の頭に流れ込んでいく。ナナシがデュランダルを構えた了子に近づいた時?違う、そのような隙は無かったはずだ。過去の被害者、フィクションの存在が守護者に襲い掛かってきた隙に?違う、心を揺さぶられ動揺していたのは確かだが、次々と現れる者達に紛れてナナシを見失わないように神は月遺跡の機能でナナシを監視していた。
神が唯一、ナナシとフィーネの姿を同時に見失ったのは…この空間がライブ会場に変貌した直後、ナナシが放出した大量の血液を焼き尽くして全てが赤い霧に覆われたあの時だけだ。
つまり…そこからずっと?幻影の裏に潜んだナナシは、自分を装ったフィーネが守護者の攻撃に晒される姿を眺めながら、安全な場所でずっとデュランダルに力を集め続けていたのか?
道化の如き振る舞いで神の怒りを煽らせ…
古傷を抉るように、自らの罪過を茶化しながら神へと報告させ…
フィーネの想いを理解していながら…
神の想いを察していながら…
…神の写し身たる守護者の手で、フィーネの体を貫かせた。
『~~~~~~~~~~~~~ッ!!!!!』
その手に穴だらけとなったフィーネの体を抱きながら、守護者が声無き叫びを上げるように天を仰ぐ。憎悪や殺意を超えた、形になり切らない感情の激流が守護者と月遺跡全体から溢れ出すのを感じて、ナナシはより一層邪悪な笑みを深めるのだった。
ギュアアアア!!!
フィーネの体から伸びた一本の刃の鞭が、隙だらけの守護者の体全体に巻き付く。それだけに留まらず、伸びた鞭は部屋中を縦横無尽に駆け巡り、白銀の茨が蔓延るが如く部屋中に鞭の檻が形成された。
「転移はそう単純な技術ではない!だからこそ、その力を自在に扱える広大な空間を用意して我々を誘き寄せたのだ!異物が大量に纏わりつき、転移先に遮蔽物がある現状では行使出来まい!」
貫かれた自分の体を楔として守護者の動きを封じたフィーネ。そのような事をしなくても、今の守護者にはまともに体を動かす思考能力は戻っていない。
「構わんナナシ!
「
『!!?』
しかし続いたフィーネの言葉と、それに一切の躊躇もなく応えるナナシに守護者は思考停止する事さえ許されなくなった。
かつて無い程に力を収束させたデュランダルをナナシが守護者へと振り下ろす。刃の鞭を喰い破りながら迫る膨大なエネルギーが、守護者を飲み込まんと近づいてきた。
残された猶予は数秒、転移は出来なくても守護者の力なら刃の鞭に拘束されながらでも多少は動く事が出来る。
その数秒で守護者が取った行動は回避ではなく…フィーネを貫いた腕を背に隠し、真っ向からデュランダルの一撃を受け止める事だった。
光の奔流が全てを飲み込み、少しして光が収まると…部屋中に張り巡らされていた刃の鞭は全て消し飛んでいた。
そして、デュランダルの最大火力を真っ向から受けた守護者は…全身を赤熱化させながらも、原型を留めたままデュランダルの攻撃を耐え切ってみせた。
多少動きが鈍っているようではあるが、時間が経って体表の温度が下がれば再び動き出すはずであり…デュランダルの最高火力を以てしても、その体を傷つける事は叶わなかった。
…そう、デュランダルだけでは。
ダンッ!
『!!?』
赤熱する守護者の前に立ちはだかり、力強く踏み込んで投擲のような構えを取るのは…体を貫く腕や棘を無理矢理引き抜いて、いつの間にか離脱していたフィーネ。構える右腕から、ナナシを装うために纏っていた血液の膜が零れ落ちて…中から白銀の輝きを放つもう一本の鞭が姿を現した。
完全聖遺物に力を蓄えていたのはナナシだけではない。月遺跡攻略中に攻撃の要として使用していたデュランダルでは、最大火力を以てしても耐えられる可能性は想定していた。
故にこその二段構え。ネフシュタンの鎧から繰り出されるのは、かつて地球から月の欠片を瞬時に貫いてみせた神速の一撃。
デュランダルに匹敵する輝きを放つネフシュタンに危機感を感じた守護者。しかし体の動きが鈍ろうとも、既にその身と部屋中を覆っていた鞭は消滅している。転移さえしてしまえば、その一撃を躱す事など容易い。
『!!?』
転移の準備を進める中で守護者の目に映ったのは、鞭を構えるフィーネと…フィーネの背後でデュランダルを構えるナナシ。
邪悪な笑みを浮かべて守護者を見つめるナナシ。その目は言葉など無くても雄弁に語っていた。
『避けたら殺す』
何処までも、フィーネと言う罪人を使い潰して自身を追い詰めるナナシに再び激しい憎悪を覚えながら…守護者は転移を中断して、フィーネの一撃も身を以って受け止める構えを取った。
そんな守護者の選択に、フィーネは一瞬だけフッと笑みを零して…神速の一撃を、守護者の喉元へと撃ち放った。
ギュリリリリリリリリ!!!
刹那に守護者の喉へと到達した刃の鞭は、その先端を守護者の体に食い込ませた状態で凄まじい音を立てながら拮抗していた。デュランダルの攻撃によって多少は脆くなっているはずにも関わらず、守護者の堅牢な体にネフシュタンは攻め切れずにいた。
「ハァアアアアアアア!!!」
それでもフィーネは決して諦めない。この攻撃が不発に終わればもう後は無い。有言実行と言うべき、本当に碌でもない方法であったが…それでも、ナナシが全身全霊で生み出してくれた可能性を掴み取るために、己の全力をその一撃に注ぎ続ける。
「穿てえええええええ!!!」
そんなフィーネの想いを受けたネフシュタンが一際眩い輝きを放ち、遂に…
パキィイイイイイイン!!!
ネフシュタンの一撃は、守護者の喉元に僅かな傷を残し…力に耐え切れず、刃の鞭は甲高い音を響かせながら粉々に砕け散ってしまった。
「そん、な…」
フィーネが放った一撃は、少しだけ守護者の内部を覗かせる程度の極々僅かな傷を生み出す事しか叶わなかった。その結果を見たフィーネは、力尽きたかのようにその場にへたり込んでしまった。
ザシュッ!!
「ガフッ!?」
そして…その一瞬の隙に、転移でナナシの背後へと回り込んだ守護者が、今度こそナナシの体をその手で貫いてみせた。力無く垂れ下がったナナシの手から、デュランダルが零れ落ちる。
まるでフィーネに見せつけるように、高々と頭上にナナシの体を掲げた守護者は、ナナシの体を一片残さず焼き尽くすために口内にエネルギーを収束させる。
「ああ…」
何もかも希望が潰えたような光景を前に、フィーネは息を零すようにそう呟いて…
「「チェックメイト…!」」
『!!?』
…ナナシとフィーネは、ニヤリと笑いながら同時にそう宣言した。
人類の営みから目を逸らし続けた神は、それが人類の生み出した遊戯における『勝利宣言』である事に気付けぬままに…
バァアアアアアアアアアン!!!
次の瞬間、その言霊が現実となったかのように…守護者の体が内から爆ぜるように弾け飛んだ。
月遺跡戦、決着です。
執筆が想定より遥かにしんどかった…早く後日談ネタ書きたい…