戦姫絶唱シンフォギア コドクの神が求めるモノ   作:@sora@

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第24話

ナナシが公園で少女と会話をして、数日後

 

あの後、デュランダル移送計画は正式に中止となり、代わりに防衛システム及び本部の強度アップを行うことで話は落ち着いた。それらの作業もあり、二課の大人達は忙しなく働いていた。

 

そんな中、響とナナシは遂に…翼のお見舞いへと赴いていた。

 

 

 

 

 

「スー…ハー…」

 

「大丈夫か?」

 

「はい…失礼します!」

 

響が翼の病室前で深呼吸を行い、気合を入れて病室の扉を開けて…手に持っていたカバンを床に落とした。

 

「どうした!?一体何が…」

 

「…あなた達、人の病室の前で何をしているの?」

 

ナナシが室内を確認する前に、いつの間にか背後から近づいてきた翼が、二人に声を掛けた。

翼の姿を確認した響が、血相を変えて翼に詰め寄った。

 

「大丈夫ですか!?本当に無事なんですか!!?」

 

「入院患者に無事を聞くって、どういうこと?」

 

「響、さっきからお前どうしたんだ?」

 

「だって、これは…」

 

そう言って、響が室内を指さすと、そこには…ナナシには見慣れた光景が広がっていた。

衣服がそこかしこに散らばり、本が投げ散らかされ、倒れた飲み物の容器がそのままになった…いつもの翼の汚部屋の光景である。

 

「わたし、翼さんが誘拐されちゃったんじゃないかと思って…二課のみんなが、どこかの国が陰謀を巡らせているかもしれないって言ってたし」

 

心配そうに翼に声を掛ける響に対して、翼は頬を赤く染めて俯いていた。そんな翼の様子を横で見ていたナナシは、少し考え事をしていた。

 

「……」

 

 

『あなたはこれまでの全部を変えてしまうんじゃなくて…あなたは、あなたのままで変わっていくべきだと思うんです!』

 

 

先日の少女の言葉を思い出しながら、ナナシは翼達に声を掛け始めた。

 

「…確かに、これは由々しき事態だな」

 

「!?」

 

「やっぱりそうですよね!?ナナシさん!」

 

「ああ、響も知っているだろうけど、こいつと奏はこの国中に名を轟かせるアーティストだ。当然、良からぬことを考えて近づいてくる輩もいる。だが、今俺達を取り巻く状況を考えると、これをただのファンの暴走や空き巣の仕業と考えるのは早計だ」

 

「ナナシ!?あなた何を…ムグッ!?」

 

「バカ!大きな声を出すな!お前がここにいることを周りに知らせてどうする!」

 

そう言ってナナシは翼の口を手で塞いだ。

 

「響、今すぐ本部に通信を…いや、それが目的か!俺達の通信を探知することで、より正確な本部の場所を探ろうとしているのか!」

 

「なるほど!流石は兄弟子!」

 

「ムー!?ムー!?(ナナシ!?貴様何のつもりだ!?)」

 

「いいか響、これからお前に重要な任務を与える。今お前に“認識阻害”を施した。お前が初めて俺達にあった時に翼の正体が分からなかったアレだ。俺はここで翼を守っているから、お前は直接本部まで向かってくれ」

 

「わたしが、ですか!?」

 

「そうだ。そして本部に無事辿り着いたら、この部屋の惨状について、丁寧に、事細かに説明するんだ。できるか?」

 

「…任せてください!その役目、必ず成し遂げてみせます!」

 

「ムー!?ムームー!?(待って!?お願いだから待って!?)」

 

「良いか響、焦るな。無理に急ぐ必要はない。ここから本部まではそう遠くない。だが、焦ればそれだけ思わぬ事故を招く。お前はあくまで自然に、まるで忘れ物を取りに行った学生のようにリディアンに向かえばいい。大丈夫だ。頼りない兄弟子かもしれないが、お前が本部から応援を連れて戻ってくるまでは、必ずこいつを守り抜いてみせる」

 

「はい!兄弟子なら必ず翼さんを守り切れます!待っていてください、翼さん!わたし、今度こそお役に立ってみせます!」

 

「ムーーーー!!!(待てーーーー!!!)」

 

 

 

三十分後

 

「……」

 

「あははは…何だか、申し訳ありません…」

 

「全く…ナナシ、あんたも久しぶりなのに容赦ないね?」

 

「こいつのポンコツ具合は二課に知れ渡っているからな。何も知らない響の反応が正常だってことをちゃんと再認識させるのに都合が良かったんだ」

 

翼の病室の中には、ベッドの上で膝を抱える翼、部屋の中を掃除する奏、響、ナナシの姿があった。あの後、本部に到着した響は、最初に出会った奏に翼の部屋の状態について事細かに説明し、奏は状況を把握。ナナシは一緒にお見舞いに行かなかったのかと確認を取ったところ、ナナシの指示で自分が本部へ向かい、ナナシは現在翼の護衛をしていると聞いたところで、全てを察した奏と共に翼の病室に戻って現在に至る。

 

「意外です。翼さんって何でも完璧に熟すイメージがありましたから」

 

「ファンのイメージを崩すのは忍びないが、こいつ歌と戦闘以外はかなりポンコツだぞ?」

 

「あははは!そこは否定してやれないね!未だに掃除もナナシに任せっぱなしだし」

 

「えっ!?男の人に、ですか!?」

 

「男って言っても“紛い物”だしな。認識は掃除ロボットと大差ないだろ。まあ、俺が無理な時は慎次に任せているから、その疑問は間違ってないけどな」

 

そんな会話をしながら、三人は膝を抱えて不貞腐れる翼を横目に掃除を進めていった。その最中、衣服を畳みながら、ナナシが翼に声を掛けた。

 

「翼」

 

「……何だ?」

 

ナナシに声を掛けられた翼は、膝を抱えながらぶっきらぼうに返事をした。

 

「お前の絶唱…良い歌だったよ。お前の覚悟、全部伝わってきた」

 

「……そうか」

 

「でも、もう二度と聴きたくない」

 

「!」

 

「こう言っても、お前は必要ならまた歌うだろうな。『防人』として、『剣』として」

 

「……ああ」

 

「俺は、お前が無理を続けるくらいなら、そんなものやめてしまえばいいと思っていた。楽しんでいたのは確かだけど、いつかお前が『防人』であることを嫌がってくれたらと思ってバカにしてきた」

 

「……」

 

 

 

「でも、もうお前が『防人』でいることを止めようとは思わない…勝手にしろ」

 

 

 

「っ!?」

 

ナナシの、突き放すように淡々と告げる言葉に、翼はビクリと体を震わせた。傍で聞いていた響が、思わず二人に声を掛けようとして…それを奏が手をかざして抑えた。

 

(…ああ、私は…ナナシに見限られたのだな…)

 

翼は頭の中で、ナナシの言葉をそう解釈し、深く納得して…大きな喪失感を感じていた。翼はそれを、とても身勝手な想いだと分かっていた。この結末は簡単に予想できたことだ。あの日、ナナシの制止を振り切って、行動した結果で無様を晒したのだ。もはや、ナナシが自分を気にかけてくれる理由は無い。自分の歌を、もう二度と聴きたくないと…ナナシが今まで自分のために動いてくれていた理由を、自分で捨てたのだ。これで、もう…

 

そう意気消沈している翼に対して、ナナシは更に言葉を続けた。

 

「だけどな、翼。それならせめて、前を向いてくれよ」

 

「……ま、え?」

 

ナナシの言葉の意味を理解できず顔を上げた翼は、いつの間にか手を止めて翼の方を見ていたナナシと顔を合わせた。

 

「お前が見ているのはいつも後ろばかりだ。過去に失った命を気にして、俯いて、無理して…お前は、奏と一緒に前を、上を目指してツヴァイウィングを結成したんじゃないのか?お前ら両翼は、何処までも遠くに飛んで行くためにこの名前を付けたんじゃないのか?ましてやお前は『翼』だろ!?いつまでお前は、お前の相棒を待たせる気でいる!!?お前が過去の後悔を糧に努力を続けてきたことを否定するつもりはない!!!だけど!!!!」

 

そこで話を区切ったナナシは、視線を奏達の…響の方へ向けて、続きの言葉を放った。

 

 

 

「お前はいい加減…自分が守ることができた命に対しても、目を向けてもいいだろ…」

 

 

 

「……」

 

翼は、ナナシの言葉を聞いて少しの間沈黙した後…響の方を向いて、声を掛け始めた。

 

「…報告書は、読ませてもらっているわ」

 

「えっ?」

 

「私が抜けた穴を、あなたがよく埋めているということもね」

 

「っ!?そんなこと、全然ありません!いつも兄弟子や、二課の皆に助けられっぱなしです」

 

響の言葉を聞いて、翼は小さく微笑んだ。

 

「うれしいです…翼さんにそんなこと言ってもらえるなんて」

 

「…でも、だからこそ聞かせて欲しい。あなたの戦う理由を」

 

「えっ?」

 

「ノイズとの戦いは遊びではない。それは、今日まで死線を超えてきたあなたなら分かるはず」

 

「……」

 

響は翼の問いかけに、少し沈黙した後、ポツリ、ポツリと話し始めた。

 

「…以前、ナナシさんにも聞かれました。お前はなんで戦うんだって」

 

「……」

 

「…切っ掛けは、やっぱりあの事件かもしれません。二年前の、あのライブ…あの日、沢山の人がそこで亡くなりました」

 

「……」

 

「でも、わたしはここにいる皆さんのお陰で生き残って、今日も笑ってご飯を食べたりしています。だからせめて、誰かの役に立ちたいんです。明日もまた笑ったり、ご飯食べたりしたいから…人助けをしたいんです」

 

そう言って、響は翼に笑いかけた。

 

「…あなたらしいポジティブな理由ね。だけど…その想いは前向きな自殺衝動なのかもしれない」

 

「じ、自殺衝動!?」

 

「誰かのために自分を犠牲にすることで、古傷の痛みから救われたいという、自己断罪の表れなのかも…」

 

 

(…それは本当に響のことを言っているのか?翼…)

 

(……)

 

 

「あの、わたし…変なこと言っちゃいましたか?あ、あはははは…」

 

急に黙り込んでしまった翼に、響が苦笑しながら問いかける。そんな響を見て、翼も思わず苦笑して肩を竦める。

 

「…ちょっと、場所を変えましょうか?」

 

 

 

「ん~、風が気持ちいいね~。やっぱり部屋に籠ってばかりじゃなくて、外の空気も吸わないと」

 

「全くだ。それに外に出れば、部屋を散らかす心配も無いからな」

 

「…あなたは一言余計なのよ」

 

「あはははは…」

 

四人は病室から出て、建物の屋上まで移動した。そこでそれぞれが思い思いに体を伸ばした後、翼は先程の響の問いに答え始めた

 

「変かどうかは、私達が決めることじゃないわ。自分で考え、自分で決めることね」

 

「考えても、考えても、分からないことだらけなんです。デュランダルに触れて、暗闇に飲み込まれかけました。気が付いたら、人に向かってあの力を…わたしがアームドギアを上手く使えていたら、あんなことにもならずに…」

 

「力の使い方を知るということは、即ち戦士になるということ」

 

「戦士…」

 

「それだけ、人としての生き方から遠ざかることなのよ…あなたに、その覚悟はあるのかしら?」

 

翼は響を真っ直ぐ見据えて、真剣な表情で響に問う。そんな翼を、響も真っ直ぐに見つめ返して答えを口にした。

 

「守りたいものがあるんです。それは…何でもないただの日常。そんな日常を大切にしたいと、強く思っているんです…だけど、思うばかりで、空回りして…」

 

「戦いの中、あなたが思っていることは?」

 

「ノイズに襲われている人がいるなら、1秒でも早く救い出したいです!最速で!最短で!真っ直ぐに!一直線に駆けつけたい!!そして、もしも相手がノイズではなく誰かなら…どうしても戦わなくちゃいけないのかっていう胸の疑問を、わたしの想いを届けたいと考えています!!」

 

「…今あなたの胸にあるものを、出来るだけ強くはっきりと思い描きなさい!それがあなたの戦う力、立花響のアームドギアに他ならないわ!」

 

「…はい!」

 

翼の言葉に、響は力強く答えた。

 

 

 

…なのだが。

 

「う~ん、そう言われてもアームドギアの扱いなんて、すぐには考えつきませんよ…」

 

「まあ、だろうね。そんな簡単にはいかないだろうさ」

 

「お前も弦十郎の弟子なら分かるだろうけど、こういうのは何気ないことが切っ掛けになるものだ。焦らずに考えてみろ」

 

「分かりました!兄弟子!」

 

「…少し気になっていたのだけれど、この子が叔父様に教えを受けていることはともかく、あなたのことを兄弟子と言っているのはどういうことなの?」

 

「…聞くな。いつの間にか出来ていた師と妹弟子の存在に、俺が一番困惑している」

 

「そ、そう…」

 

やはり、そんなに急には変わることはできない。響は難しい顔をしながら色々考えていると、そのお腹から「ぐぅ~」と空腹を訴える音が聞こえてきた。

 

「あ、あははは…そ、そうだ!知っていますか皆さん!?お腹空いたまま考えても、碌な答えが出せないってこと!!」

 

「なによ、それ?」

 

「おお、よく分かっているじゃないか響。二課の大人達もよく飯食うのも忘れて仕事していたりするけど、それだと碌な結果が出せない。それで俺もよく差し入れ作ってやったりする」

 

「相変わらず、あんたは二課の連中と仲が良いね?」

 

「前に、わたし言われたんです!お好み焼き屋のおばちゃんに!蓋し名言ですよ!!」

 

「そ、そう…」

 

「皆さん、わたし、『ふらわー』のお好み焼きをお持ち帰りしてきます!お腹いっぱいになればギアの使い方も閃くと思いますし、皆さんも気に入ってくれると思います!」

 

「えっ!?」

 

「なら場所を教えてくれれば俺が買いに行くぞ?さっき本部まで向かわせたし疲れているだろ?お詫びに奢るぞ?」

 

「いいえ!わたしが皆さんにご馳走したいんです!なので、ちょっと行ってきます!」

 

「いや、ちょっ!?待ちなさい!立花!」

 

慌てて翼が声を掛けるが、響はそのまま走って行ってしまった。

 

「もう…」

 

「あははは!やっぱり元気で良い子だね!あいつは!」

 

「良いじゃないか。お前達の専属料理人兼栄養士としても、今日くらいお好み焼きを食べるのは問題ないさ。特に翼、部屋片づけていて気づいたが、お前基本栄養剤で済ませているだろう?少しでいいから食べておけ」

 

「…分かったわよ」

 

そう答える翼のことを、ナナシはジッと見つめていた。

 

「…なによ?まだ何か言いたいことがあるの?」

 

「…いや、やっと響の名前を呼んだなと思って」

 

「!?」

 

「ほら、一旦部屋に戻るぞ。あんまり風に当たって冷えると、体に障る」

 

そう言ってナナシが移動しようとすると…翼がナナシの服の端を掴んで引き留めた。

 

「ごめんなさい」

 

「…響にも言ったことがあるが、謝罪するなら理由を言ってくれ。何に対してだ?」

 

「…勝手に無茶をして、あなたや、奏や、立花…そして二課の皆に心配をかけたこと。いつも、私達のことを支えてくれているのに、素直にお礼を言えないこと。『信じろ』なんて言っておいて、結局失敗して、何も為せなかったこと…」

 

「お前が無茶をするのはいつものことだ。俺は気にしていない。ただ、流石に今回は他の連中にはちゃんと元気な顔を見せて謝っておけ。お前達の世話は、俺がやりたくてさせて貰っているだけだ。お前達の歌が聴けるなら何だって、幾らだってやる。そして…失敗しても、別に良いじゃないか。何度失敗しても、成長して、前に向かってくれるならそれでいい。お前はそうやって、卵焼きを作れるようになったじゃないか。それと同じだよ。後始末なら全部やってやる…」

 

 

 

「お前達が…お前が『信じろ』と言うなら、何度だって信じる」

 

 

 

「…ナナシ、その…ありが…」

 

「酷いことを言って悪かった」

 

「!」

 

「突き放すようなことを言って悪かった。お前を追い詰めて、絶唱を歌わせるまで追い込んで悪かった。俺の願望を押し付けて悪かった。目を覚ました後、会いに行かなくて悪かった」

 

 

 

「…生きていてくれて、ありがとう」

 

 

 

「わた、し、も…ごめ…ありが、とう…ありがとう…」

 

翼は、涙を流しながら、繰り返し感謝の言葉を口にした。その様子を眺めていた奏は、小さく呟いた。

 

「…ようやく、翼を『柔らかく』できたな。ナナシ…」

 

 

 

 

 

「ああ、お前が『防人』であることにもうとやかく言うつもりはないが、今後もお前をからかうことをやめるつもりはないから、それは覚悟しておけよ、SAKIMORI」

 

「っ!?そ、そこはお前も心を入れ替えてもうやめるべきだろうナナシ!?」

 

「とある俺の恩人が言ってくれた。俺は俺のまま変わるべきと…残念ながらお前をからかうことはもう俺にとって生活の一部だ。諦めろ。ほら、早く部屋に戻るぞ、SA・KI・MO・RI」

 

「なっ!?おい、ちょっと待て!ナナシ!!」

 

「…やれやれ」

 




あーここまで長かった!!
今執筆中の話がシリアスなのもあって、ずっとギャグ描写を投稿したくてウズウズしていましたw何度ここまで一括投稿してしまおうと思ったことか…
今後もシリアス展開は多々ありますが、それに負けないくらいシンフォギアキャラをからかうことに力を入れる予定なのでご期待ください。
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