戦姫絶唱シンフォギア コドクの神が求めるモノ   作:@sora@

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第25話

響が病院から出て少し経った頃…二課本部に警報が鳴り響いた。

 

「ネフシュタンの鎧を纏った少女が、こちらに接近してきます!」

 

「周辺地区に避難警報の発令!そして、ナナシ君と響君へ連絡だ!」

 

弦十郎の指示に従い、周囲の人間が迅速に動き始めた。

 

 

 

 

 

「はい、分かりました!すぐに向かいます!」

 

『ふらわー』に向かっていた響は、その道中で本部からの通信を受け、急いで現場に向かっていた。その途中で…

 

「あ、響~!」

 

「っ!?未来…」

 

親友の小日向未来と、バッタリ鉢合わせてしまった。響に気が付いた未来は、響の方へ駆け寄ってくる。しかしそこに…

 

「お前はぁ!」

 

「っ!?来ちゃダメだ!!ここは…」

 

…響の存在に気付いた鎧の少女が、鞭による攻撃を仕掛けてきた。その一撃は響と未来の間の道に命中し、その衝撃で未来の体が宙を舞う。

 

「きゃあああ!?」

 

「ッ!?しまった!あいつの他にもいたのか!?」

 

目標の響とは異なる人間の悲鳴を聞き、鎧の少女は狼狽える。

地面に倒れ込んだ未来の上空に、先程の衝撃で吹き飛ばされた車が迫ってくる。

 

Balwisyall nescell gungnir tron

 

ガシャンッ!!

 

響は、未来の目の前でシンフォギアを纏い、未来に迫る車を拳の一撃で吹き飛ばした。

 

「…響?」

 

「…ごめん」

 

響はそれだけ言い残し、人の少ない方向へ駆けて行った。

 

 

 

市街地から離れた林の中で響が立ち止まると、響目掛けて少女が鞭を振るう。だが…

 

「よっと」

 

バチンッ!

 

…直前に駆け付けたナナシが、鞭の一撃を手で弾き飛ばした。

 

「また来やがったか!ご都合主義野郎が!!」

 

「そりゃ何度でも来るさ。嫌なら大人しくその鎧を渡してくれ」

 

「ハッ!欲しけりゃ力ずくで脱がしてみせろ!」

 

「絵面がとんでもないんだけどな…仕方がないか…」

 

ナナシがそう言って少女に近づこうとしたところで、響から声がかかる。

 

「兄弟子!お願いです!わたしに行かせてください!」

 

「…やれるのか?」

 

「分かりません!でも、わたしはあの子に、わたしの想いを伝えたいです!」

 

「…後始末は任せろ。お前の想い、叩きつけてこい!」

 

「はい!」

 

そう言って、響は少女の前に躍り出た。

 

「ハッ!どんくせぇ奴が前に出て、何をするつもりだ!」

 

「どんくさいなんて名前じゃない!」

 

「あぁ?」

 

「わたしは立花響!十五歳!誕生日は九月の十三日で血液型はO型!身長は、この間の測定では157センチ!体重は…もう少し仲良くなったら教えてあげる!趣味は人助けで好きな物はご飯&ご飯!後、彼氏いない歴は年齢と同じ!!」

 

「へえ、意外だな?その容姿と性格、何より素晴らしい歌声ならモテただろ?碌な男がいなかったのか?」

 

「ちゃ、茶化さないでください、兄弟子!」

 

「な、なにをトチ狂ってやがるんだお前!?」

 

「わたし達は、ノイズと違って言葉が通じるんだから、ちゃんと話し合いたい!」

 

「なんて悠長、この期に及んで!」

 

そう言って少女が振るう鞭の連撃を、響は全て回避してみせた。

 

(ッ!?こいつ、何が変わった?…覚悟か?)

 

「話し合おうよ!わたし達は戦っちゃいけないんだ!だって、言葉が通じていれば人間は…」

 

「うるさい!!」

 

少女は響の言葉を遮って絶叫した。

 

「分かり合えるものかよ人間が!そんな風にできているものか!」

 

俯き、体を震わせながら、少女は怒りの感情を言葉に籠めて響にぶつける。

 

「気に入らねえ、気に入らねえ、気に入らねえ、気に入らねえ!!分かっちゃいねぇことをペラペラ知った風に口にするお前があぁ!!」

 

「っ!?」

 

「…お前を引き摺ってこいと言われたがもうそんなことはどうでもいい。お前をこの手で叩き潰す!!今度こそお前の全てを踏みにじってやる!!」

 

「わたしだって、やられるわけには…」

 

「吹っ飛べ!!」

 

“NIRVANA GEDON”

 

少女は、鞭の先端に集めたエネルギーの塊を響に放つ。それを響は、腕を交差させて真っ向から受け止めた。だが…

 

「持ってけダブルだ!!」

 

ドォォォン!!

 

…少女が追撃で放ったエネルギー弾が、響に当たり爆発した。

 

「ハア…ハア…次は、てめえだ!」

 

少女の視線がナナシに向けられる。だが、そんな少女に対して、ナナシは笑みを浮かべながら告げる。

 

「次?まるで響との戦いを終えたみたいなことを言うな?この程度で、あいつの歌を止められるとでも思ったのか?」

 

「はぁああああああ!!」

 

「ッ!?」

 

土煙の中から響の声が響く。響の手の中で、エネルギーが可視化できるほど集束し…固定化できずに爆散した。その衝撃で響が倒れる。

 

「この短期間に、アームドギアまで手にしようってのか!?」

 

響は立ち上がり、再度エネルギーを手に集束させる。

 

(ダメだ。翼さんの様に、ギアのエネルギーを固定できない…でも、エネルギーはあるんだ。アームドギアに形成されないのなら…その分のエネルギーを、ぶつければ良いだけ!)

 

響は、集束させたエネルギーを右手で握り潰す。エネルギーを取り込んだ右腕のギアが僅かに変化した。

 

「させるかよ!」

 

少女が響に二本の鞭で攻撃を仕掛ける…が、響はその二本の鞭を、右手一本で掴んで止めた。

 

「何だと!?」

 

そのまま、響は鞭を一気に自分の方へ引き寄せる。鎧と一体である鞭を引っ張られ、少女の体が響の方へ引き寄せられた。

そして響も、背中のブースターで急加速して少女に迫り、二人の距離が一気に縮まる。

 

(最速で!最短で!真っ直ぐに!一直線に!!胸の響きを、この想いを…伝えるためにぃぃぃぃ!!)

「うおおおおおおお!!」

 

掛け声と共に振るわれた拳が、少女の腹部に突き刺さる。響の渾身の一撃を受け、ネフシュタンの鎧に罅が入る。そして少女の体は、数メートル吹き飛ばされて、後方の壁に激突した。

 

「が、はぁ…くっ…」

 

(何て無理筋な力の使い方をしやがる!?…この力、あの女の絶唱に匹敵しかねない!!)

 

そう考えながら少女が起き上がろうとする。その少女が纏う鎧が、まるで生きているかのように破損個所が修復されていくが、露出した少女の体に、まるで鎧に浸食されているような線状の跡がいくつか見られた。

 

「く、あぁ…」

(食い破られるまでに方を付けなければ…)

 

苦悶の表情を浮かべ、隙だらけの少女に対して…響は、目を閉じてその場に佇んで歌っていた。

 

「お前…バカにしてるのか!?あたしを…雪音クリスを!!」

 

「…そっか、クリスちゃんって言うんだ…ねえクリスちゃん、こんな戦いもうやめようよ?ノイズと違って、わたし達は言葉を交わすことができる。ちゃんと話をすれば、きっと分かり合えるはず…だってわたし達、同じ人間だよ!」

 

「…お前くせぇんだよ…嘘くせぇ!青くせぇ!!」

 

憤怒の表情で少女…クリスは、今度は鞭を使わずに直接響に攻撃を仕掛ける。殴り、蹴り、一方的に響を痛めつける。その途中、鎧の修復が進んだことで思わず動きを止めてしまう。

その隙に響は立ち上がり…諦めずにクリスに手を伸ばした。

 

「クリスちゃん…」

 

「ッ!!吹っ飛べや!!アーマーパージだ!!!」

 

クリスがそう叫んだ瞬間…クリスが纏っていた鎧が四散して、破片が周囲の物を貫いた。

 

「っ!?響!無事か!?」

 

「は、はい!なんとか…」

 

 

 

Killter Ichaival tron

 

 

 

ナナシが響の安否を確認していると…土煙の向こうから、歌が響き渡った。

 

「この歌って…!?」

 

「まさか…!?」

 

響達の疑問に対して、答えはすぐに帰ってきた。

 

「見せてやる。『イチイバル』の力だ!」

 

 

 

 

 

同時刻、二課本部では…

 

「イチイバルだと!?」

 

弦十郎が叫ぶのと同時にモニターには大きく『Ichii-Bal』の文字が表示される。

 

「アウフヴァッヘン波形、検知!」

 

「過去のデータとも照合完了…コード『イチイバル』です!」

 

「…失われた第二号聖遺物までもが、渡っていたと言うのか…」

 

 

 

 

 

響達の前には、赤いシンフォギアを纏ったクリスが立っていた。

 

「クリスちゃん…わたし達と同じ…」

 

「二課の資料にあった、過去に紛失した聖遺物の適合者ってことか」

 

「…歌わせたな」

 

響達の困惑を他所に、クリスは怒りを隠さない声音で語り出す。

 

「あたしに歌を歌わせたな…教えてやる。あたしは歌が大っ嫌いだ!!」

 

「歌が、嫌い?」

 

「何を…」

 

ナナシが言葉を言い終わる前に、クリスは歌を歌いながら響達に武器を向け攻撃を開始した。

 

「マズい!!」

 

「ふぇ!?」

 

ナナシは咄嗟に響を抱えて回避する。直後、響達がいた場所に矢の形をしたエネルギー弾が命中し爆発する。連続で放たれる矢をナナシが回避していると、クリスの武器が形を変えた。

 

BILLION MAIDEN

 

クリスの両手に2連装ガトリングガンが形成され、そこから弾丸が一斉射撃される。

 

「はぁ!?イチイバルって確か『弓』の聖遺物だろ!?それのどこが弓だ!!?」

 

ナナシはそう叫びつつ、響を脇に抱えて片手で倒木を持ち上げ盾にしつつ攻撃を回避し続ける。その間に、クリスの腰部にあるアーマーが左右に展開される。

 

MEGA DETH PARTY

 

そこに収納された小型ミサイルがナナシ達に向けて放たれる。ミサイルはナナシ達を追尾しながら周囲に着弾し爆発を起こす。

 

「くっ!!」

 

ナナシは咄嗟に手に持っていた半壊した倒木をミサイルに投げつける。爆炎が二人を覆い隠すが、クリスは尚もガトリングでナナシ達がいた場所に攻撃を続けた。

 

「ハア…ハア…ハア…」

 

しばらく射撃を続けたクリスは、ようやく攻撃を止めて乱れた息を整える。そして、爆炎と土埃が治まるのを待って視線を向けると…そこには白と蒼の金属の光沢があった。予想外の光景にクリスは思わず呟く。

 

「…盾?」

 

「剣だ!」

 

「ッ!?」

 

クリスが声の聞こえた上空に視線を向けると、巨大化した剣の先に立った…風鳴翼の姿を確認した。

 

「ハッ!死に体でお寝んねと聞いていたが、足手まといを庇いに現れたか」

 

「もう何も、失うものかと決めたのだ」

 

翼が戦線に出たことを知った弦十郎から、翼に通信がかかる。

 

『翼…無理はするな』

 

「…はい」

 

翼に守られたナナシも、抱えていた響を下ろしつつ声を掛ける。

 

「翼!お前何で出てきた!?怪我が治るまで無理せず奏と待っていろよ!助けてくれてありがとう!俺はともかく響は怪我したかも!」

 

「…怒るのか感謝するのかどちらかにしろ」

 

「怒ってない!心配してんだ!ちゃんと伝えずにまたすれ違うのは御免だからな。大切なことは言葉にするべきだ!」

 

「…翼さん」

 

「気づいたか、立花。だが私も十全ではない…あなたもナナシも、力を貸して欲しい」

 

「!…はい!」

 

「当たり前だ!」

 

二人の返事を聞くと、翼は歌い始める。クリスが翼をガトリングで攻撃するが、それを翼は軽やかに避けながらクリスに接近、クリスに攻撃を仕掛ける。その剣からは鋭く、素早く、流れるように連撃が繰り出され、クリスを圧倒する。

 

(ッ!?この女、以前とは動きがまるで…)

 

それもそのはずだ。力むことも、飾ることも無いその戦い方こそが、風鳴翼が今まで積み上げてきたものだ。

 

「翼さん、その子は…」

 

「分かっている」

 

響の声に、翼は笑みを浮かべながら答える。その様子を見たナナシもまた、笑みを浮かべることを我慢できなかった。

 

(ああ、全く…やっと良い歌を歌えるようになった。これは響のお陰だな。あいつはやっと戦場での拠り所を作ることができた。おそらく昔、奏と共に戦っていた時と同じように…)

 

ナナシがそう考えながら、翼の戦闘を見守っていた…その時、上空から飛行型ノイズの群れが奇襲を仕掛けてきた。

 

「!?」

 

ナナシは翼と響を襲うノイズを撃退した。そのため…何故かクリスを襲う数体のノイズに対応ができなかった。

 

「何!?」

 

「何であいつまで!?」

 

両手のガトリングをノイズに破壊されたクリスに向かって、ノイズの一体が襲い掛かる。

 

「あああぁ!」

 

クリスを襲おうとしたノイズに、響が体当たりで攻撃してクリスを守った。だが、響はノイズの攻撃の衝撃を体に受けてクリスの体に倒れ込む。

 

「響!」

 

「立花!」

 

すぐさま翼とナナシが響達のもとに駆け寄り周囲を警戒する。

 

「お前何やってんだよ!?」

 

「ゴメン…クリスちゃんに当たりそうだったから、つい…」

 

「ッ!?…バカにして!!余計なお節介だ!!」

 

クリスがそう叫んだ、その直後…

 

 

 

「命じたこともできないなんて、あなたはどこまで私を失望させるのかしら?」

 

 

 

「「「ッ!?」」」

 

その場に、四人以外の声が響いてきた。響を除く三人が声のした方向を向くと、長い金髪の女が、いつかクリスが持っていた杖を所持して柵に寄りかかっていた。その女の上空には飛行型ノイズが旋回している。

 

「フィーネ」

 

クリスの口から女の名が告げられる。

 

(フィーネ?…終わりの名を持つもの)

(……)

 

翼がフィーネの名前の意味を考え、ナナシが何やら思案していると、クリスは抱えていた響を放り出した。すぐさま翼は響を受け止め、ナナシはフィーネの警戒を続ける。響を放り出したクリスは、フィーネに向かって叫んだ。

 

「こんな奴がいなくたって、戦争の火種くらいあたし一人で消してやる!そうすれば、あんたの言うように、人は呪いから解放されてバラバラになった世界は元に戻るんだろ!?」

 

(呪いから解放?バラバラになった世界?…少なくとも、クリスの感情は嘘を言ってないと思うが…)

 

ナナシがクリスの言葉に気を取られていると、今度はフィーネが口を開く。

 

「はぁ…もうあなたに用はないわ」

 

「ッ!?な、何だよそれ!!?」

 

そんなクリスの問いかけに答えることなく、フィーネがその右手を宙に翳す。すると、フィーネの右手が輝き、周囲に散らばっていたネフシュタンの鎧の破片が粒子状になってフィーネの右手に集まり、吸い込まれるように消失した。そうしてフィーネは立ち上がると、持っていた杖を翼達の方へ向ける。すると、上空にいたノイズ達が翼達に突撃しだした。ナナシは翼達の前に出て、ノイズを撃退する。その隙に、フィーネは何処かへ逃亡していった。

 

「待てよ!フィーネ!!」

 

クリスもそう叫んで、フィーネの後を追って行った。

 

「ナナシ!二人を…」

 

「だが断る!!負傷者とリハビリ中の奴らを置いていくなんて判断できるか。深追いは禁物。響を連れて本部まで戻るぞ」

 

「うぅ…」

 

ナナシの言葉を聞き、苦しそうに呻く響を見た翼は、静かに頷いてナナシの指示に従うのだった。

 

 

 

 

「……」

 

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