戦姫絶唱シンフォギア コドクの神が求めるモノ   作:@sora@

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第31話

二課本部に戻った弦十郎とナナシは、本部の職員と情報を共有し、シンフォギア装者の翼と響にも情報を伝えるために通信を行っていた。

 

『はい、翼です』

 

『響です』

 

「収穫があった…了子くんは?」

 

「まだ出勤していません。朝から音信不通でして…」

 

「そうか……」

 

『了子さんならきっと大丈夫です。何が来たって私を守ってくれた時のようにドカーンとやってくれます!』

 

『いや、戦闘訓練もロクに受講していない櫻井女史にそのようなことは…』

 

『え? 了子さんって人間離れした特技とか持ってるんじゃないんですか?』

 

響が困惑した声を上げていると、ちょうどそのタイミングで了子から通信が入った。カメラが機能していないのか、モニターには『SOUND ONLY』と表記されていた。

 

『やぁっと繋がった。ごめんね、寝坊しちゃったんだけど、通信機の調子が良くなくて…』

 

「無事か? 了子くん、そっちに何も問題は?」

 

『寝坊してゴミを出せなかったけど、何かあったの?』

 

『良かったー』

 

「ならばいい。それより聞きたいことがある」

 

『師弟揃ってせっかちね、何かしら?』

 

「『カ・ディンギル』、この言葉が意味するものは?」

 

『カ・ディンギル』について弦十郎が質問すると、少し間を置いて了子から返答があった。

 

『…『カ・ディンギル』とは、古代シュメールの言葉で高みの存在…転じて、天を仰ぐほどの塔を意味しているわね』

 

「何者かがそんな塔を建造していたとして、何故俺達は見過ごしてきたのだ?」

 

『確かに、そう言われちゃうと……』

 

「だが、ようやく掴んだ敵の尻尾。このまま情報を集めれば勝利も同然。相手の隙にこちらの全力を叩き込むんだ。最終決戦、仕掛けるからには仕損じるな!」

 

『『了解です』』

 

響と翼がそう返事をして、通信を切る。

 

『ちょっとヤボ用済ませてから私も急いでそっちに向かうわ』

 

最後に了子がそう言って、通信を切った。

 

「……」

 

 

 

 

 

二課の職員が総出で『カ・ディンギル』についての情報を集めるが、有力な情報は上がってこなかった。

 

「些末なことでも構わん。『カ・ディンギル』についての情報をかき集めろ!」

 

弦十郎がそう言い終わるのとほぼ同時に、本部内に警報が鳴り響いた。

 

「飛行タイプの超大型ノイズが三体…いえ、もう一体出現!」

 

「現場に行ってくる」

 

「ああ、頼んだぞ、ナナシ君。翼達にはこれから連絡する」

 

ナナシは本部から出るため通路に向かおうとして…一度立ち止まり、背を向けたまま弦十郎に声を掛けた。

 

「弦十郎」

 

「どうかしたか?ナナシ君」

 

 

 

「…よろしくお願いします」

 

「…………ああ、任せろ」

 

 

 

ナナシは弦十郎とそんな短いやり取りをして、今度こそ現場に向かって行った。

 

 

 

 

 

ナナシが移動している途中、本部から通信で超大型ノイズはスカイタワーも目指して進んでいると情報が入り、本部は『カ・ディンギル』=スカイタワーと仮定して装者達とナナシに現場に向かうよう指示を出してきた。

 

現場に到着したナナシは、超大型ノイズが落下させて来るノイズを塵に変えつつ目標を撃破する方法を考えていた。

 

(あー…ヤバいな。飛び出したは良いけど、あそこに行く手段がない。某ゲームの赤い帽子の配管工みたいに空中の小型ノイズを足場にして進むか?ミスって落下しても俺ならコンティニューすればいいだけだし…)

 

ナナシがそんなことを考えていると、超大型ノイズの上空に一機のヘリが接近したと思うと、直後に中から響が飛び出してその歌声を響かせた。シンフォギアを纏った響は、超大型ノイズに上空から一撃を加えてそのまま落下。超大型ノイズは塵と化した。

 

「あー…マジで兄弟子の威厳なんてあったもんじゃないな。全く頼もしい妹弟子だよ」

 

ナナシがそう呟いていると、ナナシの傍を翼が乗ったバイクが通り過ぎた。ギアを纏った翼は、超大型ノイズに向かって斬撃を飛ばした。

 

蒼ノ一閃

 

超大型ノイズに迫る斬撃は、空中に漂う小型のノイズに阻まれて届かない。

 

「くっ!相手に頭上を取られることが、こうも立ち回りにくいとは!!」

 

そこに、先程落下してきた響も合流した。

 

「ヘリを使って、わたし達も空から…」

 

そう響が提案するが…

 

(ッ!?死にたくなければ今すぐ飛び降りろ!!)

 

(ッ!!?)

 

ヘリを視界に収めたナナシが、操縦士に向かって“念話”を飛ばす。その数秒後、ヘリにノイズが殺到し爆発が起こった。操縦士は間一髪ヘリから飛び降りることに成功し、落下地点に先回りしたナナシが受け止めた。

 

「これに乗って避難しろ」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

“収納”から車を取り出したナナシは、操縦士をその場から撤退させた。

 

「…今後はヘリも“収納”に常備させてもらうように弦十郎に頼もう。操縦の仕方を覚えないと…」

 

「兄弟子!」

 

「敵の懐に飛び込む術を失った!どうする!?」

 

「…響、ロープを出すから俺の足に括り付けろ。そしてハンマー投げの要領であのノイズまで俺をぶん投げろ」

 

「ええええ!?」

 

「弦十郎ならそのまま俺を鞭みたいに使って攻撃できるかもしれないけど、響には無理だろうからこれしかない。大丈夫だ。失敗しても俺が建物に激突するだけだから」

 

「全然大丈夫じゃありませんよねそれ!?」

 

「ナナシ、今はふざけている場合では…」

 

「なら他に方法あるか?」

 

「それは…っ!?来るぞ!!」

 

三人の頭上から、大量のノイズが降り注いでくる。三人はそれぞれノイズを処理していくが、その度に超大型ノイズは小型ノイズを落下させる。

 

「空飛ぶノイズ、どうすれば…」

 

「臆するな立花!防人が後ずされば、それだけ戦線が後退するということだ!」

 

「かと言って、このままじゃジリ貧だ!本部からヘリの追加を出してもらうか、マジで俺が人型砲弾になるしかないんじゃないか!?」

 

そんな会話をする三人に、今度は飛行型ノイズの群れが一気に降下して襲い掛かってきた…だが

 

ズガガガガガッ!!

 

飛行型ノイズの群れは、三人の背後から飛んできた弾丸によって全滅した。

 

「えっ?」

 

響が思わず声を漏らして背後を確認すると…そこには、両手にガトリング砲を構えたクリスが立っていた。

 

クリスを見た響が笑顔を浮かべ、翼が警戒して顔を険しくする。そしてナナシは…

 

「おお~、来てくれたのか!…えっと…めでたい奴!」

 

「よりによってそこだけ残すんじゃねえ!!めでたいのはてめえらの頭の中だ!!」

 

「失敬な!それは響だけだ!!」

 

「ちょっ!?酷くないですか兄弟子!!?」

 

…フレンドリーに語り掛けながらクリスに近寄って行った。

 

「こいつがピーチクパーチク喧しいから、ちょっと出張ってみただけ…それに勘違いするなよ!お前達の助っ人になったつもりはねえ!!」

 

そう言ってクリスが見せてきた通信機から、弦十郎の声が響いてきた。

 

『助っ人だ。少々到着が遅くなったかもしれないがな』

 

「なっ!?」

 

それを聞いたクリスが、頬を赤らめる。

 

「いやいや、思っていたよりずっと早く来てくれたよ。流石は弦十郎!カッコいいセリフで口説いて抱きしめて号泣させただけはある!!」

 

「なっ!?てめえご都合主義!!?」

 

「ええええ!?」

 

「…一体何をしたんですか司令…それに助っ人って」

 

『…悪戯ばかりの子供には帰ってきたら説教だな。ああ、助っ人だ。第二号聖遺物『イチイバル』のシンフォギアを纏う戦士、雪音クリスだ!』

 

弦十郎の言葉を聞いた響は、一直線にクリスのもとまで駆け寄り抱き着いた。

 

「クリスちゃ~ん!ありがとう!絶対に分かり合えるって信じてた!」

 

「ッ!このバカ!あたしの話を聞いてねえのかよ!!」

 

「ツンデレのセリフを言葉通りに受け取る必要はないからな。響、そのまま抱きしめてやれ。今まで人と接してなかった分、照れが大きいみたいだけど、内心で絶対喜んでいるから」

 

「は~い」

 

「てめえご都合主義!!変なこと言ってんじゃねえ!!お前も離れろ!!」

 

「とにかく今は、連携してノイズを…」

 

翼がそう言うと、クリスは無理やり響を引き剥がして三人から距離を取る。

 

「勝手にやらせてもらう!邪魔だけはすんなよな!!」

 

「えっ!?」

 

クリスはさっさと三人から離れて、一人で空中のノイズを殲滅し始めた。

 

「空中のノイズはあの子に任せて、私達は地上のノイズを!」

 

「あ、はい!」

 

「しょうがない、やるか」

 

そうして、それぞれがノイズを相手に奮闘を始めたが、元凶である三体の超大型ノイズが健在のため、ノイズが居なくなることはない。そして、戦闘中に後ろに跳躍した翼とクリスが、お互いに気づかずぶつかってしまった。

 

「何しやがる!すっこんでな!」

 

「あなたこそいい加減にして!一人で戦ってるつもり!?」

 

「翼からそんなセリフが聞けるなんて…本当に『柔らかく』なったみたいで俺は嬉しいよ」

 

「茶化すなナナシ!!貴様は私の母親か何かか!?」

 

「全く何をバカな…あれ?掃除して洗濯して飯作ってお小言言って…否定できる要素が少ない?…翼ちゃんが立派になってお母さん嬉しいわぁ(了子風の女声)」

 

「ブフッ!?」

 

「笑うな立花!!」

 

「漫才なら家でやれ!あたしは何時だって一人だ。こちとら仲間と馴れ合ったつもりはこれっぽっちもねえよ!」

 

「くっ」

 

「確かにあたし達が争う理由なんて無いのかもな…だからって、争わない理由もあるものかよ。この間までやり合ってたんだぞ…そんなに簡単に、人と人が…」

 

「できるよ。誰とだって仲良くなれる!」

 

怒鳴り声を上げるクリスの手を取り、響がそう宣言する。響はもう片方の手を翼の方に伸ばして、翼の手を取った。

 

「どうしてあたしにはアームドギアが無いんだろうって、ずっと考えてた。何時までも半人前はヤダなって。でも、今は思わない。何もこの手に握ってないから、二人とこうして手を握り合える!仲良くなれるからね!」

 

そう言って、響は二人に笑顔を向けた。

 

「立花…」

 

「ほら!アームドギアが無い兄弟子も二人の手を繋いであげてください!」

 

「忘れないでくれたことはありがたいが、まずはちゃんとその二人で手を繋いでからだ。露払いはこのナナシお母さんがしてやるからさっさとしろよ!ウチの子達には手を出させない!」

 

そう言って、ナナシは三人に近づくノイズを撃退する。

 

「あはははは!ほら、翼さん!クリスちゃん!」

 

響が、二人に手を繋ぐよう促す。黙り込んだ翼は…手にした剣を地面に突き立て、空けた片手をクリスに差し出した。

 

「!?」

 

それを見たクリスは、頬を赤く染めて、恐る恐る自分の手を翼の手に近づける。そんなクリスの手を翼はしっかり握り込んだ。

 

「ッ!?このバカ共にあてられたのか!?」

 

驚いたクリスは咄嗟に手を振り払ってしまった。だが、一瞬ではあるけれど、二人は確かに手を繋いでいた。

 

「そうだと思う。そして、あなたもきっと…」

 

「冗談だろ…」

 

「えへへ…」

 

二人の様子を見た響は、嬉しそうに笑う。そんな三人の頭上に、超大型ノイズの影が差した。そのタイミングでナナシも三人の元に戻る。

 

「ちゃんと二人も手を繋げたか?妹弟子」

 

「はい、兄弟子!しっかりと、二人が自分から手を伸ばして!!」

 

「なら、そろそろ親玉を何とかしよう。このままだとキリがない」

 

「だったら、あたしに考えがある。あたしでなきゃできないことだ」

 

そう言って、クリスは三人に自分の考えを話し始めた。

 

「イチイバルの特性は、長射程広域攻撃。派手にぶっ放してやる!」

 

「まさか…絶唱!?」

 

「却下だ!俺はそんな形で約束を果たしてもらうなんてまっぴらだぞ!」

 

「バカ!あたしの命は安物じゃねえ」

 

「ならば、どうやって…」

 

「ギアの出力を引き上げつつも放出を抑える。行き場の無くなったエネルギーを臨界まで溜め込み、一気に解き放ってやる」

 

「だがチャージ中は、丸裸も同然。これだけの数を相手にする状況では、危険過ぎる」

 

「そうですね。だけど、わたし達がクリスちゃんを守れば良いだけのこと!」

 

「肉壁なら任せろ。こいつには、絶対にノイズを近づけさせない。翼、響はチャージが終わるまでどんどん数を減らしてくれ」

 

「おまえら…」

 

翼と響がノイズの殲滅に向かい、ナナシはクリスの斜め後方で待機した。それぞれが、クリスを信じて役割を果たす。

 

(頼まれてもいないことを…あたしも引き下がれないじゃねえか)

 

クリスは、そんな三人の行動に笑みを浮かべて、その口から歌を響かせ始めた。

 

なんでなんだろ?心がグシャグシャだったのに…差し伸ばされた温もりは嫌じゃなかった…

 

クリスの歌声によって、イチイバルのフォニックゲインがどんどん上昇していく。ナナシは、翼達が撃ち漏らした数体のノイズを塵に変えつつ、クリスの歌に聴き入っていた。

 

(何が『歌が大っ嫌い』だよ…嬉しい感情も、楽しい感情も、溢れそうなくらい伝わって来るぞ。やっと聴くことができたな。お前の想いの籠った歌…)

 

やがて、限界まで出力を上げたイチイバルの武装を、クリスが一斉に展開し始める。

 

「「「託した!!」」」

 

三人がクリスに向かってそう声を掛ける。その声に応えるように、クリスは展開した武装から攻撃を一気に解き放った。

 

MEGA DETH QUARTET

 

腰部の小型ミサイルと両手のガトリング砲で空中の小型ノイズを一掃したクリスは、背中に展開した巨大ミサイルを三体の超大型ノイズに発射した。ミサイルは狙い違わず命中し、三体の超大型ノイズは大爆発に飲まれて一斉に塵へと変わった。

 

「やった、のか?」

 

「ったりめーだ!」

 

「わあ!」

 

「苦労したな…今後は対空手段を考えないと」

 

四人がそれぞれ勝利を確信し、再び一か所に集まる。

 

「やったやった!わーい!」

 

響はクリスに近づくと、勢いそのままに抱き着いた。

 

「やめろバカ!?何しやがるんだ!!」

 

クリスはそんな響をすぐに引き剥がす。

 

「勝てたのはクリスちゃんのお陰だよ!」

 

それでもめげずに、響は笑いながらクリスに再び抱き着く。

 

「だからやめろと言ってるだろうが!」

 

「いい加減観念したらどうだクリス(・・・)?響の諦めの悪さはもう分かってきただろ?」

 

「そんな簡単に受け入れられる訳…ッ!?」

 

響を引き剥がそうともがくクリスは…途中で何かに気が付いてナナシの方に勢いよく振り向いた。

 

「ん?どうかしたかクリス?何かあったのかクリス?遂に観念したのかクリス?おーいクリス?クリスちゃ~ん?」

 

「ッ!?お、お前何で…」

 

「素晴らしい歌だった。またいつかゆっくり聴かせて欲しいな。あんぱんと牛乳なら何時でも用意するから今後もぜひよろしくお願いします!」

 

「ッ!?うるさい!お前もいい加減離れろ!!」

 

そう言って、クリスはずっと抱き着いたままの響を何とか引き剥がした。

 

「良いか、お前達の仲間になった覚えはない!あたしはただ、フィーネと決着をつけて、やっと見つけた本当の夢を果たしたいだけだ!」

 

「夢?クリスちゃんの?どんな夢?聞かせてよ~!」

 

そう言ってまた響はクリスに抱き着く。クリスも負けじとすぐに響を引き剥がす。

 

「うるさいバカ!お前ら本当のバカ!!」

 

「そこの兄妹弟子達と一緒の扱いは心外だな…」

 

翼がそう言い終わるのと同時に、響の通信機から着信音が響く。響はすぐに通信を繋げる。

 

「はい」

 

 

 

 

 

『響!?学校が、リディアンがノイズに襲われ(ブツッ)』

 

「………えっ?」

 

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