戦姫絶唱シンフォギア コドクの神が求めるモノ 作:@sora@
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ナナシが了子に質問をした夜
「どう、いうことだ?…お前は、何を、言っている…?」
予想とは全く異なる質問の内容に、了子…フィーネは、思わずそう聞き返してしまった。
「やっぱり、了子の隠し事には月が関係しているのか。唐突に核心を突けば、動揺くらいしてくれると思ったけど、予想以上に上手くいったみたいだ」
「……」
「了子がずっと前から何か隠し事をしていたのは察していた。確信した時を強いて言うなら…了子が俺に、異性に“解析”を使わないよう約束させた時かな?かなり焦っていたのが伝わってきた」
「…『伝わってきた』?」
「ああ、そう言えば能力って訳では無かったから言ってなかったな…俺は、相手の感情の動きが何となく分かるんだ」
「ッ!!?」
「心が読めるのとは違うぞ?喜んでいるとか怒っているとか漠然と伝わって来るだけ。後は相手の反応を見てこういうこと考えているのかなって俺は妄想している。了子がちょこちょこ俺のこと邪魔に思っているのも、大分前から気づいていた」
そう言って、ナナシは頭上の月を見上げて眺めた。
「…俺がこっちに来てから、ずっと気になっていたんだ。あの月から何かが降り注ぐ感覚に、懐かしいものを感じて良く見ていた。と言っても、俺は除け者にされているみたいだけど…まあ、もし神様があの『祝福』を降り注がせているなら、突然現れた“紛い物”にまで祝福をくれる理由なんて無いから、この世界から追い出されないだけありがたいんだけどさ…」
「…何故、月から降り注ぐものをお前は『祝福』だと思った?」
ナナシの言葉を聞いて、フィーネが質問をする。
「…最初は、月から降り注ぐものに籠められた感情が何か分からなかった。だけど、二課の皆と一緒に過ごしていて、あいつらの周りに溢れる感情を知ってから、これが『守りたい』とか『助けたい』に近い感情だって気が付いた。それが世界中に降り注いでいるんだから、月にはこの世界の神様が居て、祝福をかけ続けているのかなって考えた」
そう言ってナナシは…“収納”から車を取り出してその場から離れ始めた。
「ッ!?どういうつもりだ!」
「…?『聞いてくれ』とは言ったけど、『答えてくれ』とは言ってなかったはずだぞ?それとも、質問の答えを聞かせてくれるのか?」
「……」
「急いでいるんだろ?なら、答えは今度会った時で良いよ」
そう言って、ナナシはその場から離れようとして…ふと立ち止まり、再度了子に話しかけた。
「ああ、そう言えば最近あの月と了子のことで気が付いたことがあったな」
「ッ!?…それは、なんだ?」
「あの月から感じる感情と了子が月に向ける感情、全然違うはずなのに…ほんの少しだけ、同じ感情が混じっているのに気が付いたんだ。最近になって…翼が絶唱を歌った後くらいから、その感情の正体が分かった気がする」
「…その…感情というのは…」
「…『逢いたい』、だな。多分」
「!!?!?」
「全部、何の根拠もない俺の妄想だけどな…じゃあ、またな、了子」
そう言って、今度こそナナシはその場を後にした。
(…戯言だ!!…私の計画に気が付いたあの“紛い物”が、こちらの感情を揺さぶるために言っただけの、ただの戯言…カ・ディンギルはもう完成している…もう、あの“紛い物”が何をしようと…私が止まることなど無い!!)
そう自分に言い聞かせ、フィーネはアジトへ向かって行った。
「前も言ったけど、あくまで俺の妄想だ。何一つ根拠なんて無いし、保証も無い。俺がそう思っただけ」
フィーネの問いに対して、ナナシは淡々と答える。それを聞いてフィーネが何か考え込んだ後、ナナシに対して問いかけた。
「…誓えるか?」
「誓う?」
「お前の言葉が、私の行動を止めさせるための戯言ではなく、お前の本心だということを誓うことはできるか?」
「う~ん…」
フィーネの問いかけに、ナナシは少し考えた後…奏達の方を指さして言った。
「なら、こいつらの歌に誓うよ」
「!?」
「俺にはこれ以上の誓いは思いつかない。これでいい?」
「…ああ、充分だ…」
そう言ってフィーネは、少し黙った後…ナナシの顔を真っ直ぐ見て、口を開いた。
「ナナシ、お前に『取引』がある」
「…また?今度は一体何を言うつもり?」
「以前の時間稼ぎとは違う。この交渉結果次第で、私とお前達の関係が決定する。真面目に聞け」
「…で?お前の要求は?」
「…バラルの呪詛…月遺跡の真相を調査するのに協力しろ」
「「「「「!!?」」」」」
フィーネの言葉に、ナナシ以外の全員の顔に驚愕が浮かぶ。ナナシは、黙ってフィーネに話の続きを促した。
「月には、人類を監視し、バラルの呪詛を維持し続けるために、あの方が作り上げた遺跡があるはずだ…その調査に、お前が協力することがこちらの要求だ」
「……」
「こちらの見返りは、今後も聖遺物に関する知識及び技術を提供すること、お前達に対して敵対行動を取らないことだ。知識や技術に関しては、今までこちらが秘匿していた情報も開示し、全力でお前達の補佐を行う。お前達にとって、私が持つ聖遺物の知識は何より重要なはずだ」
「……」
「ネフシュタンと融合した私を、お前達が拘束、殺害する術は無い。何より、私が生きてお前達の監視下に収まることの意味が、お前達にはもう分かるはずだ」
「……」
ナナシは終始無言で…どこか冷めた目をフィーネに向けていた。
「私は…あのお方に胸の内の想いを伝えることを諦めるつもりは無い!もしお前がこの条件を飲めないと言うのなら、私はお前達と再び敵対する他ない。この不滅のネフシュタンと、リインカーネイション…輪廻転生システムに対抗する術は、お前達には無いはずだ!それともお前達は、今みたいに四六時中私が逃走しないように見張り続けるつもりか!?」
反応が無いナナシの様子に、フィーネの口調が徐々に荒れ始める。そんなフィーネの言葉を受けてナナシは…手に持った漫画に視線を向け始めた。
「ッ!?何が望みだ!!?」
遂にフィーネは、ナナシの襟元を掴んで引き寄せた。その様子に弦十郎と装者達が警戒を強めるが、フィーネはそんなものを気にすることなくナナシに言葉を放ち続ける。
「お前はあの時、私が行動を起こすことを分かっていたはずだ!なのにお前は私を見逃した!こんな裏切りに近い行動をしたからには、何か理由があったはずだ!!お前は私に何をさせるつもりだった!?天羽奏の体の治癒か!?お前の出生の解明か!?答えろ!!」
怒鳴りながら一気に言葉を吐き出し、息を整えながらフィーネはナナシの答えを待つ。そんなフィーネに対してナナシは…深くため息を吐いた後、フィーネに対して話し始めた。
「なあ、了子」
「……」
「俺はさ、頭が消し飛んだせいかちょっと思い出せないことがあるんだ。本調子じゃないから“投影”を使うのも億劫だ…ちょっと教えて欲しいんだけどさ」
「…何だ?」
「人に何かをお願いする時って、なんて言うんだったっけ?」
「ッ!!?」
『人に何かをお願いする時は…』
それは、かつて了子がナナシに教えた言葉。誰にでも気安く話しかけるようになったナナシにとっては少し不自然な、それでも今も使い続ける言葉。
「…私は、あのお方にこの胸の内の想いを伝えたい。だから、協力してくれ…よろしく、お願いします…」
ナナシから手を離したフィーネは、そう言ってナナシに頭を下げた。
「ああ、うん。良いよ。俺も月のことは気になるし」
…それを聞いたナナシは、ひどくあっさりその要求を了承した。
「…お前は、何を考えてるんだ?」
あまりにもあっさり自分の要求を飲んだナナシに、フィーネは困惑しながら訪ねた。
「正直、あんまり考えてないな。俺は何時だって、自分がやりたいことをやっている」
「……」
「何で了子を見逃したか、だったな?それを答える前に幾つか質問させて貰うけど…俺が何を言ったところで、了子は計画を止める気は無かっただろ?実際、了子が隠し事をしているのを知っていることを伝えても、止まらなかったし」
「…ああ」
「それでも俺が了子を止めようと行動したら、多分全力で抵抗するよな?形振り構わずノイズをまき散らしたりして」
「…ああ」
「そうなると、俺が了子を止めるためには…了子を殺すしか無くなる訳だ…鎧と融合したのは知らなかったから、それは不可能だったみたいだけど」
「そう、だな…」
「俺はただ、了子に生きて欲しかっただけだ」
「!!?」
「そんなに驚くことか?もっと早く了子の秘密を聞けたら良かったけど、了子はずっと俺を警戒していたから、ちょっとでも核心に触れたら何処かに消えちゃいそうだったし…弦十郎も気が付いていたみたいだから、俺には無理でも弦十郎なら大丈夫だと思ったんだ。弦十郎の言葉なら、了子を殺さずに止めてくれるって。だから俺は、弦十郎に了子のことを『よろしくお願い』した」
「……」
「まさか、了子が弦十郎を倒すとは思わなかったけど…弦十郎なら、了子がノイズを召喚する前に対処できるだろうし」
「弦十郎のダンナに対する信頼が凄いね?ナナシ…」
「当たり前だろ?戦闘も言葉も、全然敵う気がしない。俺の自慢のお師匠様だ」
「ッ!?…」
「…おっさん、大丈夫か?目にゴミでも入ったか?」
「…ああ、そうだ。だから気にしないでくれ」
「まあ、了子が弦十郎を倒した方法は途中で分かったよ。俺も納得して思わず動きを止めちゃった…俺の考えていることなんてこの程度だよ。話はこれで終わりかな?」
「………ああ」
フィーネは、何処か呆けたようにナナシに返事をした。それを聞いたナナシは、立ち上がって部屋の出口へと向かう。
「ほらほら、お前達もさっさと行くぞ。まだまだ聞いておきたいことがたくさんあるんだ。特に翼、体は本当に大丈夫だよな?ちょっと歌を聴かせてくれよ。“解析”よりもずっと分かりやすい」
「それは貴様が聴きたいだけだろう?」
「ダメなら“解析”を使うしかないな!体の隅々まで調べさせてもらう!」
「そんなことが許可できるか!!」
「翼さんは今更な気がしますけど…同じアイス食べたり下着の片づけ頼んだり…」
「ッ!?や、やっぱりこいつらはそういう関係なのか!!?」
「ち、違う!!そのようなことは断じて!!」
「じゃあどういう関係なんですか?聞かせてください!!」
「そ、それは…」
「俺もその辺はよく分からない…前に奏から、翼は俺のこと仲間だと思っているって聞いたけど、直接聞いた訳じゃないし…だから、二人に聞いてくれ。仲間でも家族でも奴隷でも、二人の言った通りってことで。ちょっと気になるから聞いたら後で教えて、妹弟子」
「なっ!!?」
「おい!こっちに判断をぶん投げるんじゃないよ!?」
「任せてください兄弟子!!ついでにクリスちゃんにも聞いておきます!」
「よろしくお願いします!」
「「「お願いするな!!」」」
「ハイハイ、ほら行くぞ。とりあえず了子のことは任せたぞ、弦十郎。細かいことはそっちで決めてくれ」
「あ、ああ…」
そう言ってナナシは、弦十郎とフィーネを残して全員を部屋から出るように促し、最後に自分が部屋から出ようとして…何かを思い出したかのように振り返ってフィーネに声を掛けた。
「ああ、そうだ。了子!」
「…何だ?」
「これからも、よろしくお願いします!」
そう言って、ナナシは今度こそ部屋を出て行った。
「…あの男は、一体どうするつもりなのだ?」
「…どう、とは?」
「とぼけるな…私達が気づいていることを、あの“紛い物”が気づいていない訳が無いだろう?」
「……」
あの日から三週間、響達の捜索は打ち切られることになりました。
弦十郎さんからは、作戦行動中の行方不明から、死亡扱いになると聞きました。
ナナシさんも、未だに目を覚まさないそうです。このまま目を覚まさない可能性もあると話を聞きました。奏さんとも、あの日以来会えていません。
郊外にお墓が建てられましたが、そこに響はいません。
機密の関係上、名前も彫られてはいません。
外国政府からの追求をかわす為だと言われましたが、私にはよく分かりません。
私が弦十郎さんに渡した写真が飾られていれば、それだけが、立花響の墓標であることを示す、寂しいお墓です。
それでも私は、響が辿った軌跡の終着に、通い詰めている。
私は、響の写真が飾られているお墓の前に座り込んで涙を流した。
「会いたいよ…もう会えないなんて、私は嫌だよ、響…私が見たかったのは、響と一緒に見る流れ星なんだよ!」
私がお墓の前で涙を流して動けずにいると…突然何かの衝突音と、女性の悲鳴が聞こえてきた。
「きゃあぁぁぁっ!!助けてえぇぇぇっ!!!」
私は立ち上がって、声の聞こえた方へ駆けていくと、そこにはノイズに襲われそうになっている女性がいた。
私はすぐに女性の元まで行き、その手を掴んだ。
「こっちへ!!」
私は女性の手を引っ張って、ひたすら走り続けた。
息苦しくて、足に痛みが出始めても、走るのを止めなかった。
諦めない…絶対に!
だけど、女性の方が道路に膝をつき、その場に蹲ってしまった。
「わ、私…もう…」
「お願い!諦めないで!!」
そうしている間に、ノイズが私達の周りを取り囲んだ。
私は両手を広げて女性の前に立つ。
ノイズを睨みつけ、何とか逃げる隙を探す。
絶対に…生きることを諦めない!!
そう考えていると、突然目の前のノイズ達が跡形もなく消し飛んだ。
「えっ?」
私は驚いて、周囲を見回す。すると、道路の向こうに奏さんと翼さん、クリスとナナシさん、緒川さん、弦十郎さん、そして…
「ごめん…色々機密を守らなきゃいけなくて…未来にはまた、本当のことが言えなかったんだ」
そう言って、困ったような笑顔を浮かべる…私の…お日様が…
私は全力で駆け出して、親友をその手で抱きしめた。
ノイズの脅威は尽きることなく、人の抗争は終わることなく続いている。未だ危機は満ち溢れ、悲しみの連鎖は、止まることを知らない。だけど、俯かない。諦めない。だってこの世界には、歌があるのだから。
これにて無印編、終了です。
投稿を始めてから約二ヵ月、執筆をしていたらあっという間に過ぎた気がします。
ここからG編…の前に、無印後日談が入ります。
これまでの話と、これからの話、恐らく賛否両論あるかと思いますが、叶うならば最後までお付き合い頂ければ嬉しいです。