戦姫絶唱シンフォギア コドクの神が求めるモノ 作:@sora@
前話のノリを期待されている方々には申し訳ありませんが…独自解釈が多分に含まれた暗めの話となっています。
そんな訳で、作者も余り間を開けたくないので、今日から無印後日談終了までは投稿頻度を一日一話に変更しようと思います。
どうか最後までお付き合い頂けますよう、よろしくお願いします。
装者達の行動制限が明けた、ある日のことだ。
ナナシは家事全般を終わらせて、いつも通り翼をからかった後、涙目の翼に「どこかへ行ってしまえ!!」と家から追い出されてしまったため、何か仕事を求めて二課の仮設本部を目指して歩いていた。ちなみに翼はそんな暴言(だと思っている)を言ってしまったことの自己嫌悪で膝を抱えて蹲っているところを奏に慰められていた。
その道中、ナナシの視界に見覚えのある顔が映ったためそちらに注目すると、響と未来の二人が、同世代くらいの男と何か会話しているようだった。
気になったのはそれぞれの表情だ。男がにやけた顔で何やら一方的に喋っているのに対し、いつもは人一倍元気の溢れた笑顔でいる印象の響は何かに耐えるように目を伏せて暗い顔をしており、未来は男のほうを睨みつけながら響の手を握っていた。
質の悪いナンパにでも引っかかったのかと思ったが、もしそうならシンフォギア装者として訓練を受けている響と、元陸上部の未来なら男を巻いて逃げるなど容易なはずだ。
気になったナナシはコッソリと響達に近づいた。
耳を澄ませば三人の…いや、男が一方的に話している声が聞こえてくる。
「いやー、まさかこんなところに逃げてるとは思わなかったぜ。人殺しの化け物とそれに付き合う変態女がよ」
「「……」」
「まさか俺の家族と他大勢を見殺しにしておいて何の償いもせずに黙って消えるとはな。そうやってあの会場からも自分一人でさっさと逃げたのかよ。人殺し」
「響は人殺しなんかじゃない!!」
「は?同じだろ?自分が助かるために他人なんて目もくれずに見捨てておいて何責任逃れしようとしてんの?」
「言いがかりです!今すぐそこをどいてください!!」
「……」
「てかうるさいんだよ変態女。もともとこっちはそこの化け物に話しかけてんだよ。てめえもいい加減口開けよおい。会話する知能もないのかよ」
そこまで会話を聞いたナナシは、いつもの笑顔を浮かべながら二人の背中に声をかけた。
「響に未来じゃないか!こんなところで奇遇だな。今からお好み焼き食いに行くとこだから一緒に来いよ。奢るから」
ナナシは男の存在など気づいていないかのように声を掛けつつ二人の正面にまわり、いつもと変わらない態度と笑顔で二人を食事に誘う。響と未来は驚いた表情を浮かべ、ナナシが二人の正面に回り込んだことで二人から遮られることになった男は苛立たし気にナナシを怒鳴りつけた。
「おい、なんだてめえは?今その化け物には俺の相手をさせてやってんだよ。邪魔してくんじゃねーよ」
「化け物?」
ナナシは怪訝な表情を浮かべて男のほうに振り返る。視界の端でナナシが「化け物」と口にした瞬間にビクッと震えた響に気づかない振りをしつつ、ナナシは周囲をきょろきょろ見回した後、まるで可哀そうなものを見るような表情で男を見た後、響達の方に向き直る。
「見えたらいけないものを見ちゃってるタイプの人みたいだ。響、未来、目線を合わせちゃダメだよ。いくらお前たちが優しくてもこういうタイプの人を相手するならちゃんとした知識と経験が必要だ。中途半端な対応はお互いに良くない。今回は諦めてここから離れよう」
そう言ってナナシは困惑する二人の肩を掴み男から距離を取り始める。男の方はナナシの言葉に怒りで顔を赤くするが、すぐにまたにやけた表情を浮かべながら携帯を取り出し…
「あーハイハイ、また逃げるのか。んじゃ俺は世間話でダチに今日のことを話すとするか。しばらく暇な奴らがいたはずだし化け物狩りに協力してくれるはず…」
グシャッ!
男が言葉を言い終わる前に、気が付けば距離を取っていたはずのナナシが男の前に移動していた。それに気が付いた男が驚いて思わず一歩後ろに下がると、携帯を持っていたはずの手が妙に軽いことに気が付いた。視線を携帯の方に向けると、そこには手に持った部分しか残っていない携帯の残骸があった。
「は?」
目の前の光景に理解が追い付かない男を他所に、ナナシは先ほど握りつぶした携帯の残骸を投げ捨て、空けたその手で男の髪を掴む。
「痛っ、ヒ、ヒィッ!?離せよ!?」
「どうやら喋り足りないみたいだけど、あの二人はこれ以上お前の臭い息を嗅がされるのはたまったものじゃなさそうだから仕方なく俺が相手してやるよ。一体二人に何の用があったんだ?」
「いいから離せよクソッ!!だ、誰か、助けてくれ!警察呼んでくれよ!!」
どれだけ男が暴れてもナナシの手の力は欠片も緩まず、頭に感じる激痛と時折聞こえるプチプチと髪の毛が千切れていく音に耐えられず男は周囲に助けを求める。
だがナナシは男を掴むと同時に“認識阻害”を使っていた。響達以外の人間は関わりにならないために視線を外している者ばかりだったので、もうこの男に意識を向ける人間はいない。
「二人に何の用があったんだ?」
「クソッ、いい加減はなっっ!!?」
ナナシは響達に話しかけた時と変わらず、張り付けたような笑顔を男に向けながら男に質問を繰り返す。笑顔を浮かべるナナシの目からは、怒気や嫌悪などは感じられない。ただ、男のことなど本当に視界に映しているのかも分からない空虚を感じさせ、その目を見た男が思わず言葉を詰まらせた。
「二人に何の用があったんだ?」
「そ、その女は、俺の家族を、他の人間を見殺しに自分だけ生き残りやがった……だ、だからその償いを……」
「で、二人に何の用があったんだ?」
「なっ!?だから俺の家族への償い「それ嘘だよな?」っ!?」
ナナシの発した言葉に、男だけでなく響達も驚愕する。響の口からは消え入りそうな声で「ぇ?」と言葉が漏れていた。
「お前の家族は死んでないよな?」
「ふ、ふざけんな!俺の家族はあのライブに行って……」
「いや、いい加減そのクソみたいな嘘垂れ流すのやめてくれない?葛野君」
「えっ!?」
「一方的に痛めつけるのが好きだったんだよな葛野君?反撃できない理由があれば便利だったんだよな葛野君?似たような友達と口裏合わせてたんだよな葛野君?ばれないようにコソコソ味方しかいない状況を作ってたんだよな葛野忠人君?」
男の顔が恐怖に歪む。確信をもって告げられる言葉が、全てを見通すような空虚な目が、男のフルネームが知られている事実が、男の陳腐な嘘が見透かされていると告げている。
ナナシは男の手に残った携帯の残骸を取り上げて、目の前でグシャリッ、と潰して見せた後、男に短く一言呟いた。
「消え失せろ。臆病者」
「ひぃぃぃぃ!!?!?」
悲鳴をあげながら男は走り去る。“認識阻害”を解いたため、男に奇異の目を向けたり、距離を取る人の姿が見える。その人達は男が向かってきた方向に目を向けるが、特に何も見つけることなく再び歩みを進める。
少ししてナナシは、地面に散らばった携帯の破片を集めた後、それを“収納”してから呆然としている響達に声をかけた。
「じゃ、ご飯食いに行くか!」
遂に評価のバーに色が付きました!しかも高評価!本当にありがとうございます!
そのお陰か、UA数とお気に入り登録の数か急増しててかなりびっくりしました。もう少し先だと思っていたお気に入り登録数100人、達成です。
そんなタイミングで暗めの展開に入るため、せっかく読み始めてくれた方々が離れてしまわないかちょっと心配です…