戦姫絶唱シンフォギア コドクの神が求めるモノ   作:@sora@

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第40話

「例え大切な相手の心に大きな傷を作ることになっても、押し殺し続ける想いを無理やりにでも白日の下に晒してもらおうか。なあ…小日向未来(・・・・・)

 

ビクリッと、名を呼ばれた未来が体を震わせた。

 

「どうした?突然名前を呼ばれてびっくりしたか?それとも、うまく隠せているつもりだったか?」

 

震える未来を見て、それでも尚ナナシは楽しそうに笑っていた。

 

「おい、お前ちょっと調子に乗ってるだろ!」

 

未来の様子を見て、涙を拭ったクリスが怒気を露わにナナシに食って掛かった。

 

「てめえはズカズカ他人に踏み込み過ぎなんだよ!誰だって隠したいことの一つ二つあるだろ!?もしそれを打ち明けなきゃならない場合でも、それがいつかは、そいつ自身に決めさせてやるべきだ!」

 

「…『いつか』ね。その『いつか』はいつ来るんだ?未来の心が歪んで、砕けて、何もかも取り返しがつかなくなった後でも問題ないと?既に目に見える形で現れ始めているのに」

 

クリスの言葉にナナシは表情を変えることなく、口調を乱すことなく答える。いつ来るか分からない『いつか』を待ち続ける気は毛頭ないと。

 

「悪いが気を使ってやるのは今回だけだ。もしこの場で話を切り上げるというのなら、俺は時間と場所を選ばずに話を蒸し返しに行く。学校の寮だろうと授業中だろうとお構いなしに」

 

「てめえ!」

 

「ナナシ!いくら何でも横暴が過ぎるぞ!」

 

「それは超えたらいけない一線だろ!」

 

それぞれがナナシを非難する中、響が震える声でナナシに確認する。

 

「ナ、ナナシさん。未来が自分のせいでわたしが傷ついたと思ってることなら、わたしは…」

 

「響、これは『過去』の話ではなくて『現在(いま)』の話なんだ。小日向未来が現在抱えている想いで、どうしようもないと考える想いで、言葉にしてはいけないと押し殺している想いについて話している」

 

ナナシは未来の方を見る。陽だまりは見る影もなく、顔を伏せ、ナナシの言葉に怯え震えていた。

 

「お前の想いを自分で口にするか、俺に代弁させるか、好きな方を選べ。例えお前にどれだけ恨まれたとしても、俺はさっき言ったことを取り消すつもりは一切ない」

 

笑いながら語るナナシ。もはやクリス達はナナシに飛び掛かる寸前、ギアペンダントに手をかけるところまで感情が高ぶっている。そんな中…俯き続ける未来の口が、震えながら開いていった。

 

 

 

 

 

「私は……………………響がどこかの誰かのために傷ついているのが嫌です」

 

 

 

 

 

「私は私の親友が、どこかの誰かのために体を傷つけるのが嫌です。誰かを守れないことで心を傷つけることが嫌です。『どこかの誰か』なんて曖昧なもののために、響が傷つくのが嫌です!響が誰よりも傷ついてるのに、それを誰かのために平気にしているのが嫌です!!私の知らない時、知らない場所で響が傷ついてるのが嫌です!!!響と過ごしている楽しい時間が、通信音が響く度に壊されるのが嫌です!!!!『行ってくる』って出かけて、もう二度と響が私のところへ帰ってこないことが頭によぎるのが嫌で嫌で仕方ないんです!!!!!」

 

 

 

始まりの呟きは消えそうな程小さく、だがそれを切っ掛けに抑圧された想いは止まらない。言葉は徐々に勢いをつけ、溢れ出た感情は絶叫に変わる。

 

「み、未来…」

 

「分かっています!!分かっているんですよ、どうしようもないことは!!!響達にしか戦う力がなくて、その力が、助けるための力が全然足りていない中で、響だけ戦わずに済ませることができないなんて!!響以外の人が傷つくのが良いわけじゃない!!でも、どうして響がって想いが止まらなくて、言葉にしても皆を傷つけるだけで、ならこの想いは押し殺すしかないじゃないですか!!?」

 

感情の激流が言葉として溢れ出す。零れた想いが涙となって流れる。この想いが大切な人達の心に傷を作ることは理解している、でも止まらない。もう止められない。

 

「人の命のため!世界のため!!そんな大きなものを何で響達が背負わされなきゃいけないんですか!!?何で『仕方がない』の一言で押さえつけられなきゃいけないんですか!!!?何で皆はその重みを受け止め続けるんですか!!!!?何で!?何で!!?何で!!!?」

 

「未来!未来!!落ち着いて!」

 

響は思わず未来を抱きしめる。このままでは、強すぎる想いに未来が壊れてしまう。そう思って何とか未来を宥めようとする。

 

「未来、ごめん!ごめんね!!いっぱい我慢させて、辛い想いさせてごめんね!!」

 

「響ぃ…」

 

「未来に甘えてた。未来は陽だまりで、傍にいてくれるとあったかくて、わたしはとっても安心できて…でも未来は、わたし達のことをずっと心配してくれてて、ずっと不安にさせてたんだね?ごめんね。ありがとう」

 

「私は、待ってることしかできなくて…」

 

「『しか』なんかじゃない。未来が待っていてくれるから、お帰りって言ってくれるから、辛くてもわたしは元気になれる。わたしは頑張れる。未来が笑ってくれるから、わたしは幸せになれる。未来が優しくしてくれるから、わたしの心は癒されるんだ。いっぱい、いっぱい未来から色んなものをもらってる…でも、代わりに未来に我慢させちゃった。辛い想いさせちゃった。未来、我慢しないで。気持ちを押し殺さないで。未来になら傷つけられたって構わない。未来だけが辛い想いをしている方が、わたしには耐えられない。だから、わたしに今の未来の気持ちを聞かせて」

 

「…月の欠片の落下を響達が止めて、死んだって聞かされて、もう二度と会えないって思ったら、目の前が真っ暗になった。響達が戦いに行くたびにそれを思い出して、体が震えて、待っている間が怖くて怖くて仕方がない…」

 

未来は、響達が帰ってきたことが嬉しかった。だが、いなくなる恐怖を知ってしまった。いつか来るかもしれない未来の可能性を…その恐怖は、未来の心にずっと残り続けていた。

 

未来の言葉を聞いた響は、辛そうな顔をした後…真っ直ぐ未来の顔を見ながら、何かを決意して未来に話しかける。

 

「…強くなる。未来が心配しなくても良いくらいに強く。でも、すぐには無理なんだ。その間に多分、いっぱい未来に心配させちゃう。だから未来、我慢するのはやめよう?さっきクリスちゃんに言ったよね?『一緒に積み重ねて』って。未来、一緒に強くなろう。わたし達を傷つけるのを怖がらないで。わたし達への想いを押し殺さないで。一人にならないで…」

 

そう言って、響は未来を抱きしめる力を強くする。響の温もりを感じて、響の鼓動を聞いて、少しずつ未来の体から力が抜けていった。

 

「…うん…うっ、うぅっ…」

 

響の胸に顔を埋め、未来は嗚咽を漏らす。響は未来の頭を優しく撫でる。

 

 

 

温もりを失った陽だまりに、ようやく太陽の光が差し込んだ。

 

 




色々と唐突な流れだったと思いますが、詳細については次回説明があります。

シンフォギアという作品において、未来さんはとても心の強いキャラだと思っています。ただ、強いことは決して良いことだけでは無かったはずです。全てを耐えて抑え込んだ結果、何かを切っ掛けに感情が爆発する。原作の中でも、そういった描写は多々あったと思います。今回は主人公が無理やり爆発させました。

そして、皆さんも気が付いているとは思いますが、強い故に耐えてしまっている方が、もう一人…
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