戦姫絶唱シンフォギア コドクの神が求めるモノ   作:@sora@

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第41話

「小日向未来は立花響にとっての陽だまり…帰ってくる場所だ。この役割は他の装者にも程度の差はあるが影響している。響と未来のやり取りを見て『戦場』から『日常』へ認識を明確に切り替えられるのは大きい。未来本人が思っている以上にこの役割は重要だ」

 

「だけど、未来の『待つ』という役割は、『装者達が無事生還する』という目的に対して能動的な行動ができない。民間人協力者として役には立っているけど、目に見える形で結果が出ることが少ないから実感があまり持てない。だから未来は自分の役割に自信を持つことができない」

 

「役に立ちたいけど行動できない。そうすると人は『思考』に意識がいく。『どうすれば役に立てるか』、『どうすれば皆が傷付かないか』、この思考は自然と問題の根幹、『何故友人達が戦わなければならないのか』という思考に導かれる」

 

「プラス思考で問題解決の方法を導き出せれば万々歳だが、大人達が雁首揃えて解決策が出ない問題を女子高生一人が頭を捻ったぐらいで画期的な解決策なんて出るわけがない。解決できない問題に対してマイナスな思考が頭の中に残る。解決策のない問題を口にしたところで装者達の負担にしかならない。だから言わない。不安は募るばかりだ」

 

「致命的だったのはルナアタックで未来は装者達の『死』を疑似的に体験してしまったことだ。最悪の結末を体験してしまったことで曖昧だった『いつか友人達が帰ってこなくなる』という恐怖がより鮮明にイメージできるようになった」

 

「…つまり根本的な原因追及すると肝心な時にポカやらかした挙句に月の一部欠けさせた俺に責任が回ってくるのかこれ?」

 

未来が泣き止むのを待った後、ナナシは話を再開したいからと全員に座るよう促した。思うところはあるが、五人はとりあえずナナシの言葉に従い席に着いた。未来は泣き続けたことで目の周りを腫らせていたが、どこかすっきりした様子だった。まだ不安が残っているのか響と手を繋いでいるが、先ほどまでの危うさは感じられない。

全員が話を聞く姿勢を整えたところで、ナナシは未来の思考についての考察を一気に説明していった。最後にサラッと原因が自分にあることに思い当っていたが…

 

「あ、あの時はあんなことになるなんて誰も思わなかったですし、ナナシさんが悪いわけでは…」

 

「あー悪い悪い。謝罪大会の再開はやめよう話が進まなくなる…現状、奏が未来とほぼ同じ立場だけど、奏は元装者。戦う側の感情を理解できる立場にいる。だから装者達の負担については経験からある程度推し量れるから未来と比べて精神的な余裕がある…まあ、それはそれで別の苦悩はあるみたいだけどな」

 

「茶化すなよ」

 

「大真面目だよ。まあ、だから未来は奏に相談することから始めるのがいいんじゃないか?少し年上の同姓で近い立場ってことでかなり話はしやすいと思うぞ?逆に近いからこそ相談しにくいって思うならそれこそ二課の大人達に頼れ」

 

未来にそう言ったナナシは、今度はその場の全員に視線を向けた。

 

「これはお前ら全員に言えることだからな?お前らはもっと二課の大人達を見習えよ。あいつらは一人にならないことのプロだ。単独で活動をすることもあるが、それは組織と繋がっていることを前提とした行動だ。全員が二十に届かないガキのくせにちょっと特別な力があるくらいで突っ走るな。お前らから頼られたら大人達は超喜ぶぞ?」

 

「…ナナシ、お前がここに来た当初の状態を考えると、精神年齢的にお前は二歳ぐらいのはずなんだが…あと、お前にだけは言われたくない」

 

「ご都合主義の塊を人間の尺度で測ろうとするな。これだからSAKIMORIは…」

 

「防人は今関係ないだろ!?」

 

「さて、ここまでが未来の抱える問題の考察と対応策についてだが、もう一つ言っておきたいことがある」

 

「まだあるのかよ…」

 

「一応これで話したいことは最後だ。これは捉え方次第でまた謝罪大会が開催されそうだがもうあまり暗い雰囲気は無しの方向で行きたい。今回未来の問題に気づいた切っ掛けになることだからあんまり気負わず聞けよ、妹弟子」

 

「っ!?わたしですか…」

 

「お前の『へいき、へっちゃら』、この言葉は本来困難な状況を乗り越えるために自分を鼓舞する『祝福』だと俺は思っている。だけど、お前はこの言葉を逃避に使うことがあるよな?別に逃避が悪いわけじゃない。ただ分かるやつには丸わかりなんだよ、それ。お前の陽だまりがそれに気づかないと思うか?自分より辛いはずの相手が、気持ちを押し殺して『へいき』って言っているのに自分の不安を言葉にできるわけがないだろ?」

 

「だからお前の陽だまりはこんな表情を浮かべることしかできない」

 

そう言ってナナシが手を前に掲げると、目の前に映像が浮かぶ。それは“投影”で写し出したある光景、お好み焼き屋ふらわーで響が例の言葉を言った直後の未来の表情。

感情が現れたのは刹那の間だったかもしれない。だが、ナナシはそれを見逃さなかった。

 

親友が辛い想いを隠していることを感じ取ったために、眉を顰め、目を伏せ、閉じた唇に力が入った…苦悶の表情。

 

「っ!?」

 

「例え自分は大丈夫だと相手に伝えようとした言葉だとしても、捻じ曲がって想いが伝わるならそれは『呪い』だ。お前が未来に『我慢するな』と言ったんだ。なら、まずお前が実践していくべきだ」

 

「…はい」

 

「さて、今回の集まりの目的だった『立花響の過去と言う装者達にとっての爆弾の処理』と『小日向未来の精神状態のケア』は一応無事に達成できたかな?」

 

「わたしの過去、危険物扱いですか…」

 

「ここは敢えて茶化した方が良いと思ってな。少しずつ重さを抜いていって、最後には『あの時は大変だったなぁ』ってお前が思い出して笑えるようになることを目指して欲しい。気に障ったか?」

 

「…いえ、大丈夫です」

 

「…………」

 

「…ごめんなさい。少し思うところはあります」

 

「よろしい。やっと吐き出したな。調子に乗ったことを言いました。ごめんなさい」

 

 

 

「それじゃあ、後は美少女五人を号泣させたクズを退治して万事解決だな!組織の機密情報を盗んだ裏切り者の粛清って大義名分もあるし、丁度いいだろ?」

 

響に謝った後、突然ナナシが笑顔で明るくそんな事を言い出したため、五人は思わずポカンとした表情を浮かべる。そして、奏がナナシにある事を尋ねた。

 

「…ナナシ、お前話の流れ次第では本気で私達と敵対する気だったろ?」

 

「Exactly!!」

 

ナナシは奏の問いにそう返して、自分の考えを説明していった。

 

「こういう時こそご都合主義の“紛い物”の出番だ。今の関係を無理やり続けていると、いつか何もかも壊れてお前らの歌が聴けなくなりそうだったからな。なら、再起可能な段階で俺が全部ぶっ壊して、関係を積み上げ直したお前らの歌を敵として聴けるなら悪くないと思った。誰かを傷つけることに抵抗があるお前達が感情をぶつける相手として、不死身の“紛い物”は最適だ。まあ、最良の結果をお前達が掴めたようで良かったよ!」

 

そう言って、ナナシはどこまでも楽しそうに笑うのだった。

 

 

 

「…呆れて言葉が出ないよ、このバカは…まあ、今回のことは、あたしはこれで大目に見てやる」

 

ガスッ!(ナナシの左頬に奏が右ストレートを放つ)

 

「…淑女として男の顔面にグーパンはどうなんだ?」

 

「あたしにそんな可愛げを求めるな」

 

「…この程度で済ますのか?」

 

「許すさ。当たり前だろ?」

 

「……」

 

 

 

「さて、なら次は私が行かせてもらおう」

 

バチン!(ナナシの右頬に翼が平手打ち)

 

「…他の私怨が混ざってなかったか?」

 

「お前の日頃の行いが原因だ。完全には切り離せん」

 

「SAKIMORIは相変わらず色んなところが固いな」

 

バチン!!(ナナシの左頬に翼が平手打ち)

 

「二発目!?」

 

「私怨だ!誰のどこが固いだと!?」

 

「頭の中とか表情とかだな。逆にどこだと思ったんだ?」

 

「っ!?うるさい!」

 

 

 

「…女の顔を滅茶苦茶凝視してるんだな?」

 

「…あー、否定できないところ突いてきやがった」

 

「この変態め」

 

「ここ数日、あの二人が暗い顔しているのに真っ先に気が付いてオロオロしていたお前もよく見ている方だと思うぞ?」

 

「ッ!」

 

ガッ!(ナナシの口元にクリスの拳が当たる)

 

「ッ!!?!?」

 

「狙いがブレッブレだバカ。歯に当ててどうする。傷は付いてないな?良かったな、素の力はへなちょこで」

 

 

 

「わたしも行かせてもらいます!」

 

「…先に聞かせてくれ。どこ殴る気だ?」

 

「お腹です!」

 

「外に…いやなんとかなるか。一応ソファーの前に移動するぞ」

 

「人の家壊すなよ…」

 

ドゴンッ!!!(ナナシの腹に響の拳が突き刺さる)

 

「凄い音がしたな」

 

「くの字に折れ曲がったぞ」

 

「わたしは強くなります!皆を守るために!!未来に心配をかけないように!!目標は師匠を超えることです!!」

 

「…OTONAを超える。いいじゃないか…だけど焦るな。『一緒に、積み重ねて』だ(ガクガク)」

 

「はい!!!」

 

 

 

「…えっと」

 

「構わない。お前も俺に思うところはあるだろ?」

 

「…はい」

 

「よし来い!」

 

ぺちん(ナナシの左頬を未来の平手が撫でる)

 

「…あ、あはは、情けない感じですね?」

 

「…正直、弦十郎の一撃より効いた」

 

「…そうですか」

 

「…悪かった」

 

「…はい」

 

 

 

 

 

「お前も不器用だな」

 

「お前らにだけは言われたくない」

 

全員からけじめを受け終えたナナシは、その場に座り込んで脱力していた。そんなナナシに言葉をかけた奏に、ナナシはジッと視線を向けていた。

 

「…なんだよ?」

 

 

 

「想いを伝えることは大切だ。例え今の関係が壊れてしまうかもしれなくても、それを恐れて激情を押し殺すなら壊れるのが『周り』から『自分』になるだけだ。歌を、感情を力に変えて戦うのがシンフォギア装者だろ?胸の歌を信じろよ(・・・・・・・・)

 

 

 

そう言ってナナシは立ち上がり、奏から距離を取る。奏はナナシの言葉について追及することはなく、俯いてその場に立ち尽くした。

 

(…ああ、クソッ…全部お見通しってことかよ)

 

「…奏?」

 

翼の呼びかけに、奏は答えずに少しの間俯いていると…やがて顔を上げて、その場の全員に話しかけ始めた。

 

「ここにいる皆に頼みがある。協力してくれ」

 

 

 

 

 

「フィーネと…了子と面会したい。その場に一緒にいてもらえないか?」

 

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