戦姫絶唱シンフォギア コドクの神が求めるモノ 作:@sora@
正直、凄く驚いていますが、それ以上に嬉しいです!今後も読み続けて頂けるよう頑張ります!
先に部屋の外で待っている、そう奏は言って部屋を出た。
他の面々はそれに続こうか、少し間を開けた方がいいか迷っていた。そんな中、ナナシはクリスの方に視線を向けていた。
ジーーー…
「…何だよ?」
ジーーーーーーーー…
「…だから何だよ!?」
ジーーーーーーーーーーーーー…
「ッ!あーーーーーもう!分かったよ!!話してくりゃ良いんだろ!!」
ダンダンと足を踏み鳴らしながらクリスはフィーネの前に移動する。
そして奏がしていたようにフィーネの胸倉を掴んだ。
「フィーネ!!」
「ッ!?」
奏との対話で疲弊していたせいか、フィーネはクリスの突然の行動に動揺を見せた。
「フィーネ!!あたしもあんたがやったことを許してねえ!!」
それはまるで先ほどの奏の再現、クリスもフィーネに対して想いをぶつけ始めた。
「あんたはあたしを騙して、たくさんの人に迷惑をかけた!!あんただけに責任を押し付けるつもりはねえよ!!あたしはあたしでこれから自分のケジメをつけていく!!だけど、あんたがあたしを騙して、いらなくなったあたしを捨てたことを忘れるつもりはねえ!!!」
「……」
「だけど!!!」
そうクリスが言った後、言葉を詰まらせ、顔を真っ赤に染めながら、何かを抑え込むように顔を伏せ、溜めて、溜めて、溜めて、ついに意を決したように叫ぶ。
「あんたがあたしに手を差し伸べて、あたしと一緒にいてくれたことが嬉しかったのも忘れるつもりはねえ!!」
「ッ!?」
「許せねえもんは許せねえ!!だけど!!あたしがあんたを嫌いじゃなかったことも忘れるんじゃねえ!!!」
そう叫んでクリスは逃げるように出口へ向かう…途中でナナシの方に向き直り叫んだ。
「これで満足か!!?」
「いや、俺は一言も喋ってないじゃん…」
「てめえの顔面は爆撃よりも喧しいんだよ!!」
「物凄い言いがかりだなおい!?何だ喧しい顔面って!!?」
「…分かる」
「何だとSAKIMORI!!?」
「あはは、ちょっと分かります」
「声聞こえてきそうな時ありますよね?」
「マジかよ…何処かに静かな表情の仮面とか売ってないかな?」
「
言うだけ言って、クリスは足を踏み鳴らしながら外へ出た。
「さて、役目も終えたことだし私も退出しようか」
「お前は了子に言っておくことはないのか?」
「思うところがないわけではない。ただ、奏や雪音が想いを吐き出した後に伝えるほどの言葉を私は持っていない。二人が心配だから先に行く。後は頼んだぞ、ナナシ」
そう言って、翼も部屋から出て行った。それを見送ったナナシは、今度は響と未来に視線を向けた。
「わたしが伝えたいことは、あの戦いの中で全部伝えました。だから大丈夫です」
「未来は?響達が死んだと思った原因の半分はあいつのせいだぞ?」
「もう半分はひょっとして自分だと思っています?大丈夫ですよ。あれから響や他の人達ともちゃんと話すようにしています。もう誰か、何かを責めるようなことはしたくないです。だから…」
「「へいき、へっちゃらです!」」
満面の笑みでそう言った二人も、部屋の外へ出て行った。
ナナシは特にフィーネに声をかけることなく、無言で出口に向かおうとしたところ、背後から声がかかった。
「…ありがとう」
「…それは奏に鬼の形相でボロクソに言われたことに対して?それとも顔真っ赤にした超絶かわいい表情のクリスに大好きって言われたことに対して?どっちだとしても今後の了子への接し方に関わるから明言して欲しいんだけど?」
「茶化すな…償うべき相手から、道を示して貰えるのは…迷わなくて済むのは、救われるものなんだな…」
「…そうか」
「私はあのお方に想いを伝えることを諦めるつもりはない。だから、ナナシ…これから、よろしくお願いします…」
「任せろ…“紛い物”の俺には、お前の気持ちが分かるなんて言葉は言えない。だけど、ちゃんと想いを伝えたいって気持ちは、知っているつもりだ…伝えられると良いな。その想い」
そう言ってナナシは部屋から出る。残されたフィーネは、しばらくの間その瞳から涙を流したまま部屋の中で佇んでいた。
ナナシが部屋を出ると、先に出て行った五人が全員部屋の外で待っていた。
「悪い、待たせた。先に戻ってくれてよかったのに」
「…奏がな、ナナシを待っていたんだ」
そう翼が言ってナナシを伴って奏の元へ進む。奏は皆に背を向けた状態で佇んでいた。
「どうした?気分でも悪くしたか?」
「……」
「…奏?」
ナナシと翼の声に奏は反応を示さない。どうしたものかと二人が顔を見合わせていると、突然奏が振り返り…
「翼ぁ…ナナシィ…」
泣きながら二人に抱き着いた。
「奏!?」
「突然どうした?」
翼は驚きながら、ナナシは落ち着いて奏を受け止める。
「あたしは、了子さんを許せない…だけど、死んで欲しいとも、苦しんで欲しいとも思えなくて…あたしが了子さんをひどい目に合わせたら、皆はあたしから離れてく気がして…いっぱい考えたんだ。いっぱいいっぱい悩んで決めたのに…今になって本当にあれで良かったのか分からなくなって…勝手にナナシに大変なこと押し付けて…勝手に翼も巻き込んで…でも皆と一緒にいるためには他に何も思い浮かばなくて…もう頭の中がぐちゃぐちゃで訳が分からなくて…」
「か、奏、大丈夫だ。私も奏と一緒に歌っていきたいのは同じだから、巻き込んだなんて気負わなくてもいい」
「あーあー、感情が行ったり来たり頭の中とっ散らかってるな。まるで翼の部屋みたいだ」
「貴様はいちいち茶化さないと会話できないのか!?」
「Exactly!!」
「力一杯肯定するな!!」
ナナシは翼をからかった後、未だに涙を流す奏に対して笑いながら語り掛けた。
「奏、そんなの答えは簡単じゃないか?」
「?」
「我慢できなくなったら、「やっぱりやーめた」って言って了子をボコボコにすればいいだけだろ?」
「「ッ!?」」
「別に一回決めたことを変えちゃいけないなんてことは無いだろ?さっきの奏の答えに奏自身が納得できないなら、全部無かったことにして了子の顔面にグーパン入れればいいし、翼を自分の都合に巻き込むのが嫌なら…ツヴァイウィングを…か、解散させることも…可能性として…考えていいんじゃないか?だから、俺に対する見返りについても………………………………………」
「…いや、長いぞナナシ。そこはスパッと諦めろ」
「未練タラタラなんだよ。ま、そういうわけで、未来のお前に丸投げして、この先我慢できなくなったらその時決めれば良いんじゃないか?さっきの答えで奏が納得できる間は今のままでいいだろ」
「…いい加減だな」
「お前がらしくなく真面目過ぎなんだよ。何年も積み上げた想いをたった数日悩んだ程度で完全に払拭できる訳ないだろ?同じかそれ以上の時間をかけて考えなよ。相談ぐらいは乗ってやる」
「…ああ、頼む」
「…奏、『私達の歌』だ」
「翼?」
「ナナシへの見返りだ。私は奏の隣から離れるつもりはない。もし奏が私から離れると言うのなら、私は追いかけて奏の隣に居続けてやる。私達の全力で歌い続けよう。私達の限界を超えて最高の歌を歌い続けよう。だから、勝手に巻き込んだなんて、悲しいことを言わないでくれ」
「…ああ、悪かった。一緒に歌おう。一緒に飛ぼう。どこまでも…」
奏はそういうと、二人の肩に顔を押し付けて涙を流す。翼は奏の背中を優しく摩って、ナナシはガシガシと少し乱暴に奏の頭を撫でた。
「ったく、そういうことは家でやれ…」
「ちゃんと話せて良かったね!超絶かわいいクリスちゃん!」
「ッ!?」
「良かったね。超絶かわいいクリス」
「ばっ、おま、お前らッ!?」
「こっちにも聞こえていたのか、それ」
「静かだったのでギリギリ聞き取れました」
「奏は先に部屋出たから見逃したな。ほら、これでも見て元気出せ」(“投影”でナナシがクリスの顔を写す)
「ッ!?てめえ!!」
「あははは、確かに超絶かわいいな!」
「…ナナシ、後で画像データにして送ってくれ」
「良いぞ」
「おい!!?」
「いいね、私も欲しい」
「そんなことできるんですか!?わたしも欲しいです!」
「私もお願いします。しばらく待ち受けにしようかな?」
「ッ!!?やめろバカ共!!!」
怒りと羞恥で顔を真っ赤にして怒鳴るクリスを見て全員が一頻り笑った後、涙を拭った奏が口を開いた。
「さて、皆この後時間あるか?もうちょっと付き合って欲しいんだけど」
「まだ何かあるのか?一応この後、弦十郎達に今回のことの経緯を説明しに行く約束があるんだけど…」
「歌いたいんだ!思いっきり!!全員でどこか近くのカラオケにでも行かないか?」
「(ピッ)ああ、弦十郎?悪い突然用事が生えたから説明するのはまた後日でよろしくお願いします!(ピッ)さて、それじゃあ行くか!」
「怒られちゃいますよ…」
「後でDOGEZAでも何でもする!さあ、早く早く!OTONAが突撃してくる前に!」
そう言って全員を急かすナナシに対して、未来があることを口にする。
「ああ、そうだ。ナナシさん、先日ふらわーで言ったこと、少し訂正します」
「ん?何だ?」
「ナナシさん、響よりもずっとお人好しです」
…その後、カラオケに向かう道中でナナシが上げる猛抗議の声に、耳を貸す人間は誰一人としていなかった。