戦姫絶唱シンフォギア コドクの神が求めるモノ   作:@sora@

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第46話

りんごは浮かんだ お空に…

 

りんごは落っこちた 地べたに…

 

燃え盛る炎に囲まれ、瓦礫の上に佇む少女がいた。

少女は、迫り来る炎に何の反応もせず、何か白い塊を持って動かない。

少女によく似た少女…少女の姉が、何かを叫びながら瓦礫を越えて少女に近づくが、炎に阻まれて進めない。

姉の声に反応し、今まで動かなかった少女はゆっくりと振り返った。

少女は、目や口から血を流しながら、何か言葉を紡いでいた。

姉は叫びながら、炎の壁を無理やり越えようとする。そんな姉の頭上の天井が、音を立てて崩れ落ちてきた。

姉は、駆けつけた女性に庇われたが、代わりに女性の体が瓦礫に潰されてしまう。

女性と共に倒れ込んだ姉の目の前で、少女は崩れ落ちた瓦礫に埋もれ、炎に包まれていった。

姉は、涙を流しながら決して届かない手を伸ばして叫んだ…

 

 

 

 

 

雷の轟く豪雨の中、闇夜を高速で移動する列車があった。

 

その上空を、無数のノイズが飛行し列車を追跡する。

列車は搭載した武装でノイズに攻撃を仕掛けるが、ノイズには一切の効果を発揮しない。ノイズは上空から急降下して車両を襲撃、ノイズが直撃した箇所では爆発が起こり衝撃で列車全体が揺れ動く。

 

「きゃあ!?」

 

「大丈夫ですか!?」

 

振動で倒れ込む友里を、大きなアタッシュケースを抱えた白髪の男が心配し駆け寄る。

 

「平気です!それより、ウェル博士はもっと前方の車両に避難してください!」

 

すぐに立ち上がった友里は、男…ジョン・ウェイン・ウェルキンゲトリクス、通称ウェル博士にそう促した。

 

「大変です!凄い数のノイズが追ってきます!」

 

「連中、明らかにこっちを獲物と定めていやがる…まるで、何者かに操られているみたいだ」

 

そう言いながら、響とクリスが二人の元まで駆けつけてきた。

 

「急ぎましょう!」

 

友里はそう言って進み、三人が後に続いた。

 

 

 

 

 

特異災害対策機動部二課 仮設本部

 

「第七十一チェックポイントの通過を確認!岩国の米軍基地到着まではもう間も無く…ですが!」

 

指令室の中で、オペレータの藤尭がそう叫ぶ。

 

「こちらとの距離が伸び切った瞬間を狙い撃たれたか…」

 

それを聞いた弦十郎が、険しい顔つきでそう呟く。

 

「司令、やはりこれは…」

 

「ああ、何者かが、『ソロモンの杖』強奪を目論んでいると見て、間違いない」

 

弦十郎はそこで言葉を区切った後、誰にも聞こえない程小さな声で呟いた。

 

「“妄想”が“現実”となってしまったか…」

 

 

 

 

 

「はい…はい…多数のノイズに混じって、高速で移動する反応パターン?」

 

本部から連絡を受けた友里の口から、そんな言葉が漏れる。

 

「三ヵ月前、世界中に衝撃を与えた『ルナアタック』を契機に、日本政府より開示された『櫻井理論』。そのほとんどが、未だ謎に包まれたままとなっていますが、回収されたこのアークセプター『ソロモンの杖』を解析し、世界を脅かす認定特異災害『ノイズ』に対抗しうる、新たな可能性を模索する事ができれば…」

 

移動しながらそう告げるウェル博士の言葉を聞き、クリスが立ち止まる。

 

「ソイツは…ソロモンの杖は、簡単に扱っていいものじゃねえよ」

 

「クリスちゃん…」

 

俯いてそう告げるクリス。響は心配そうに彼女の名を呼んだ。

 

「最も、あたしにとやかく言える資格はねえんだけどな…ッ!?」

 

クリスの手を、突然響が掴んで両手で包み込んだ。響の行動に、クリスは顔を赤くして慌てた声を出す。

 

「バカ!お前こんな時に…」

 

「大丈夫だよ」

 

「ッ!?」

 

響の言葉に、クリスは更に顔を赤くし…目の前に持ち上げられた自身と響の腕に填められた『モノ』に視線を止める。

 

「……」

 

「ん?…はは~ん、クリスちゃん」

 

「ッ!?な、なんだよ!?」

 

「いや~、早速『お守り』のご利益があったみたいだね!」

 

「ッ!!バカ!お前、本当のバカ!!」

 

ニヤニヤ笑う響の手を振り払うクリス。そして、その手に填まった『お守り』に再び視線を向ける。

 

「全く、あのご都合主義が…似合わない真似しやがって…」

 

 

 

 

 

時は過ぎ、最大規模の音楽祭典『QUEENS of MUSIC』のメインステージの準備が着々と進められ、会場に入場した観客達は、メインステージの開始を今か今かと待ち焦がれていた。そんな会場の特別席の一室に、響の親友達…小日向未来、安藤創世、寺島詩織、板場弓美の四人の姿があった。そして、もう一人…

 

「じゃあ、弓美の推しはやっぱりこの主人公か?」

 

「ええ!正義を信じて、悪に立ち向かっていくこの主人公が、最高に燃えるじゃないですか!!ナナシさんはどのキャラが推しですか!?」

 

「俺は…コイツだな」

 

「え!?このキャラって、悪役キャラじゃないですか…それも、セリフや行動も群を抜いて悪辣な…」

 

「どんな言葉や障害にもブレることなく、自分の目的のためにあらゆる手段を躊躇わないで実行に移す芯の通ったところは好感が持てるし、主人公が心身ともに成長するにはこのキャラの存在はなくてはならなかったはずだ。そして、相手の感情を揺さぶり、人の心を真綿でじっくり締め上げていくように追い込んでいくセリフの数々は、実に参考になった!」

 

「そ、そうですか…参考にしちゃったんですか…」

 

板場と一緒に漫画を覗き込みながら話すナナシの言葉に、四人が苦笑を浮かべた。

 

 

 

ルナアタックでの戦闘を、シェルターのモニターで見ていたこのメンバーには、ナナシのことは響達と同じ組織に所属する…ノイズを倒せる超能力者のようなものと説明していた。心臓を貫かれたり、左手一つになっても修復される場面を見られては、流石に全ては誤魔化しきれない。響の友好関係を壊さないためにも、響の現状を知ってしまった三人には詳細は伏せつつナナシに異能の力があることは説明していた。

 

ちなみに、弦十郎は未来が民間人協力者になる際も同様の説明をしていた…が、実はナナシは、未来には自身の出生の仮説も伝えていた。

 

以前の話し合いで酷いことをしたお詫びとナナシは言ったが…響と未来の間に、これ以上隠し事をさせない配慮だということに、未来は気づいていた。詳細を伝えた後に響と同様の反応をする未来に「響と同じくらいお人好しだな?」とナナシが言ったところ、「ナナシさん程ではありません」と返され、ナナシは苦虫を噛み潰したような顔をしていた。

 

 

 

「それにしても、ビッキー遅いね?もう少しでメインステージが始まっちゃうよ?」

 

「マリア・カデンツァヴナ・イヴ…デビューしてから僅か二ヶ月で全米チャートの頂点に上がった方です。そんな方と、あのツヴァイウィングの今夜限りの特別ユニット…楽しみです!」

 

「全くだ!世界中に熱狂的なファンを持つ、世界の歌姫…そんな人物と、あいつらが一緒になって奏でる歌が聴けるなんて、俺は今日という日をどれだけ待ち焦がれたか!何かしてないとおかしくなりそうだったから、最近までず~~~~っと何か仕事を入れてもらっていたよ!そのせいで昨日から「休め!」って職場から追い出されたけど」

 

恍惚とした表情のまま興奮した様子で話すナナシを、四人は苦笑しながら見ていた。ナナシの歌に対する情熱は、短い期間でも充分に理解されていた。

 

そんなナナシの携帯がブブブッと震える。ナナシは携帯を確認すると、席から立ち上がった。

 

「さて、それじゃあ俺はそろそろ移動するから、皆はここで楽しんでくれ」

 

「あれ?ナナシさんはここで一緒に聴かないんですか?」

 

「フッフッフッ、皆には悪いが関係者ならではの特等席がある!あいつらにも一回声を掛けておきたいし、俺はここで失礼するよ。弓美、今度オススメの漫画教えてくれ!こっちもオススメ持ってくるから!」

 

「任せてください!周りにこういう話をできる人は少ないので楽しみです!ナナシさんのオススメも期待してます!」

 

ナナシは四人に手を振りながら部屋を出ようとして…途中で未来の方を向いた。

 

「そうだ、未来。良かったらこれ着けておいてくれ」

 

そう言ってナナシは、“収納”から何かを取り出して未来に渡した。

 

「今…空中から何かを取り出した?」

 

「お話には聞いていましたが…」

 

「わぁ!!凄い!!まるでアニメみたい!!」

 

その光景を見た三人が騒ぎ出す。

 

「ナナシさん、これは?」

 

「『お守り』。妹弟子の『陽だまり』の無事を願ってね。ご利益はそこそこあると思うから、良ければ貰ってよ」

 

「え~、未来だけですか?」

 

「悪い!数が揃わなくてな!どうしても欲しいなら近々手に入れるから、それまでは未来にくっ付いていればご利益を得られると思うぞ!それじゃ!」

 

そう言ってナナシは早々に出て行った。

 

「何だか最後は慌ただしかったね?」

 

「…うん、そうだね」

 

「ところで、どんなお守りだったんですか?」

 

「えっと…」

 

 

 

 

 

「状況は分かりました。やはり…」

 

奏と翼が待機している場所の近くで、緒川が誰かと通信をしている。少しして、通信を終えた緒川が二人に近づいてきた。

 

「弦十郎のダンナは何だって?」

 

「今日のステージを全うして欲しい、と」

 

奏の問いに対する緒川の答えを聞いた翼が、険しい表情をして立ち上がり緒川に近づく。

 

「眼鏡を外したということは、マネージャーモードの緒川さんでは無いということです。自分の癖くらい覚えておかないと、敵に足元を掬われ…」

 

「お時間そろそろでーす。お願いしまーす」

 

翼の話の途中で、スタッフがそう声を掛けてきた。

 

「はい。今行きます。あっ…」

 

反射的にそう答える翼。そんな翼に奏と緒川が苦笑をしていると、そこへ…

 

「SAKIMORIに勘付かれるなんて、慎次もまだまだ甘いな」

 

「「「っ!?」」」

 

緒川の背後にいつの間にか近づいたナナシが、声を掛けて三人を驚かせた。

 

「…ナナシさん、“認識阻害”まで使って近づくのはやめてください」

 

「流石に能力無しで慎次の不意を突くのは難しいかな?」

 

「…貴様は今日、マネージャーの仕事は休みのはずだ。何故ここに来た?」

 

「ただのファンとしての応援に来たのと…はい、コレ」

 

ナナシはそう言うと、翼と奏に何かを手渡した。

 

「ん?何だ?」

 

「これは…」

 

「『お守り』だよ。今日のステージも期待しているぞ!」

 

そう言って、ナナシが翼達に手渡したのは…ブレスレットだった。ギアペンダントに似た、赤い水晶のようなものが付いた、シンプルなデザインのブレスレット。ナナシは翼と奏にそれぞれ手渡した。

 

「今日のステージの動きに邪魔にならないなら、着けておいてよ。よろしくお願いします」

 

「へえ…良いね。気に入った。ありがとよ」

 

「…まあ、一応礼を言っておく。ありがとう」

 

そう言って、二人はお守りのブレスレットを身に着けた。

 

「うん、良かった。二人共似合っている」

 

「っ!?…そ、それより、誤魔化すな!ナナシも緒川さんも、何か隠しているだろう!?」

 

「特にナナシ、あんたはここしばらくこっそり何か企んでるね?」

 

「Exactly!! 流石は奏。よく見ているな」

 

翼と奏の追究を、あっさり認めるナナシ。

 

「ちょっと俺の妄想に弦十郎達を付き合わせているだけだよ。ステージが終わったら説明するから…こいつらを信じて、全力で歌ってこい」

 

緒川の方を指さしながら、優しく微笑んでナナシはそう二人に告げた。

 

「…そこは普通『自分を』信じて、だろう…分かったよ。ちゃんと後で教えなよ。行くぞ、翼」

 

「…不承不承ながら、了承しよう。詳しいことは後で聞かせてもらうぞ…ちゃんと、お前のことも信じている」

 

「失敗続きの“紛い物”を信じてくれて嬉しいね…楽しんで来い」

 

「お二人共、頑張ってください」

 

ステージに進む二人を、ナナシと緒川は見送った…そして、二人の姿が見えなくなったところで、ナナシが緒川に声を掛ける。

 

「慎次…よろしくお願いします」

 

「…ええ、任せてください」

 

 

 

 

 

時が経つ程に観客達の期待が高まる中で…遂に、その瞬間が訪れる。

ステージの照明が消え、一気に辺りが暗くなる。それに呼応して観客達は興奮の声を出し、手にした白、青、赤のサイリウムを輝かせる。

 

伴奏と共に、ステージの上に三人の人影が姿を現し、剣を模したマイクを使ってその歌声を会場に…世界に、轟かせた。

 

三人が歌声を響かせながらステージの上を舞う。その動きは刃の様に鋭く、ライブ衣装はまるで空へ飛び立つ鳥の翼の様に大きく揺れ動く。ステージギミックで噴き上がる炎が、三人を幻想的に照らし出し、その端正な顔に浮かぶ笑顔を一層輝かせる。ステージの上の三人は、その振る舞いと歌声で全ての人間を魅了していった。

 

 

 

急いで会場全体が一望できる高所まで登ったナナシは、観客達と共にその歌声に魅了されていた。笑みを浮かべ、熱狂する観客達と、三人の歌に籠められた感情を感じ取りながら、全身全霊で三人の歌を聴くことに意識を集中する。

 

(本、当に…奏と、翼の歌は、際限なく進化し続ける…これ以上なんて、俺には想像できないと、何度思ったことか…ああ、なんて、素晴らしい…)

 

世界に飛び立つと決めたツヴァイウィングの二人の歌に、満面の笑みを浮かべて酔いしれるナナシは…もう一人の歌姫の歌にも意識を向ける。

 

(…マリア・カデンツァヴナ・イヴ…全米チャートの頂点に上がった、世界の歌姫…)

 

その力強く、不思議な魅力のある歌声に、確かにナナシは聴き入り、魅了されていた。だが…その心中には、別の想いも存在していた。

 

(…もったいないなぁ)

 

 

 

 

 

ステージの大型モニターに、炎で形作られた不死鳥が映し出され、三人の歌が終わりを迎える。会場にいる観客達はもちろん、中継によって世界に響き渡った三人の歌声に、聴いた者達は歓声を上げていた。

 

『ありがとう、皆!』

 

翼が告げたその言葉に、観客達は歓声で応える。

 

『私は、いつも皆から沢山の勇気を分けてもらっている。だから今日は、私達の歌を聴いてくれる人達に、少しでも勇気を分けて上げられたらと思っている』

 

翼が言葉を言い終えると、今度は奏が前に出る。

 

『皆、楽しんでるかー!』

 

ワァアアアアアアアアア!!

 

奏の元気な声に、観客達も全力で応える。

 

『これからもあたし達は最高の歌をプレゼントするから、あたし達と、もっともっと盛り上がっていこうな!!』

 

会場がさらなる熱狂に包まれる中、最後の一人…マリアが、一歩前に出る。

 

『私の歌を全部、世界中にくれてあげる!』

 

マリアは力強い言葉で、堂々と観客達にそう宣言する。

 

『振り返らない、全力疾走だ!ついてこれる奴だけついて来い!!』

 

力の籠ったその言葉に、観客達のテンションは最高潮に達する。その光景を眺めた後、マリアは更に言葉を続ける。

 

『今日のライブに参加できた事に感謝している。そしてこの大舞台に、ツヴァイウィングの天羽奏、風鳴翼とユニットを組み、歌えたことを』

 

『私達も、素晴らしいアーティストに巡り合えたことを、光栄に思う』

 

『ああ、凄い歌だった!一緒に大暴れできて本当に良かった!!』

 

奏と翼が差し出す手に、マリアはそれぞれ応えて手を取った。

 

「私達が世界に伝えていかなきゃね。歌には力があるって事を」

 

「それは、世界を変えていける力だ」

 

マリアの言葉に、翼も笑顔で答える。

 

「…そして、もう一つ」

 

マリアが翼達に背を向け、会場の方を向いた後…右手を大きく横に振り、衣装の布を靡かせた、その瞬間…

 

 

ステージと観客席の間に、無数のノイズが出現した。

 

 

一拍遅れて、観客達がノイズの出現を認識し、観客達はパニックを起こして一斉に動き出そうとする。このままでは、将棋倒しになった人同士によって被害が出るかもしれない。そう思われた瞬間…

 

 

(動 く な !!)

 

 

…観客達の動きが一気に鈍くなった。突然頭に響いてきた声に、全員が困惑した表情を浮かべ、何が起こったのか理解できないようだ。そこへ…

 

『狼狽えるな!!!』

 

突如響き渡ったその声に、会場は静まり返り、観客は声の主…マリアに注目する。

最初はノイズの出現に気を取られた翼だが、今はマリアの方を睨みつけながら、首の衣装を取り外し、その下にあるギアペンダントを露出させる。奏も、マリアの方を睨みながら、何時でも駆け出せるよう身構えていた。

 

「怖い子達ね…この状況にあっても、私に飛び掛かる機を伺っているなんて」

 

そんな二人に、マリアは笑みを崩さずに言葉を掛けた。

 

「でも、はやらないの。オーディエンス達と…あなたの相方が、ノイズの攻撃を防げると思って?」

 

「くっ」

 

「チッ」

 

翼を見ながら告げるマリアの言葉に、二人の表情が歪む。

 

「それに…」

 

マリアは、会場にあるモニターに目を向ける。そこには、世界中のニュース番組がライブの様子を報道している様子が映っていた。

 

「ライブの模様は世界中に中継しているのよ?日本政府はシンフォギアについての概要を公開しても、その装者については秘匿したままじゃなかったかしら?ねえ、風鳴翼さん?」

 

「甘く見ないでもらいたい!そうとでも言えば、私が鞘走る事を躊躇うとでも思ったか!?」

 

マリアの挑発に、翼は手にしたマイクを突きつけながら迷いなく叫ぶ。

 

「…フッ、あなたのそういう所、嫌いじゃないわ…あなたの様に、誰もが誰かのために戦えたら、世界はもう少しまともだったかもしれないわね」

 

笑みを消して、何処か悲しそうにマリアはそう言った。

 

「なんだと?…マリア・カデンツァヴナ・イヴ、貴様は一体…」

 

「そうね、そろそろ頃合いかしら?」

 

そう言って、マリアはマイクを口に近づけて…宣言する。

 

『私達は、ノイズを操る力をもってして、この星の全ての国家に要求する!!』

 

「世界を敵に回しての交渉!?これではまるで…」

 

「宣戦布告のつもりかい!?」

 

マリアの宣言に、翼と奏が呟く。

 

『そして…』

 

マリアは、手にしたマイクを真上に放り投げる。そして…

 

「Granzizel bilfen gungnir zizzl」

 

その口から…聖詠を奏でた。

 

「っ!?おい、今…」

 

「まさか…!?」

 

奏と翼は、マリアが聖詠を奏でたこと…そして、そこに含まれた『ある言葉』に驚愕した。

 

そして、目の前でその姿を変える、世界の歌姫。

身に纏った黒い鎧…その形を、二人が見間違うはずは無い。

 

「黒い…ガングニール!?」

 

奏は、自身の罅割れたギアペンダントを握りながら、そう呟いた。

驚愕で動けないツヴァイウィングの二人を置き去りに、マリアは落下してきたマイクを掴み取り、口元へ近づける。

 

『私は…私達は『フィーネ』…』

 

そして、世界に対して、自分達の正体を告げる。

 

『…『終焉(オワリ)』の名を持つものだ!!』

 

…その光景を、“紛い物”は静かに見つめていた。

 




歌推し主人公の話なのに、本家と状況が違うため会場の描写のみで誤魔化していますw妥協してそのまま歌詞を載せるのもアレなので、三人の歌は皆さんの脳内で補完して頂ければ…
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